作家になって千里子と結婚

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私は勤労感謝の日にお見合いをすることになった。
会社を辞めたのは、父の葬式のときセクハラしてきた上司をビール瓶で殴ったからだ。
実家で暮らし職安に通う日々を送る。
自転車で車に轢かれたとき助けてくれたコンビニオーナーが見合いの話を持ってきた。
婚期を逃した36歳の私は38歳の男と、コンビニの二階で見合いをした。
相手の男は仕事大好き人間と称し、現れるなり噛んでいたガムをポケットにしまったり
食べ方が汚かったり、不細工だったりで最悪だ。
私はお見合いの途中で逃げてしまい、昔の会社の後輩を電話で渋谷に呼び出した。
後輩も会社を辞めて、今は旅行ガイドをしている。
三十代後半の女が二人、呑みながら人生を語る。
後輩は美しいカイコから汚い蛾が生まれることにたとえて、美しかった若き時の自分達が
婚期を逃した醜いものになったと愚痴る。
私は自宅に帰るのが辛くて行きつけの飲み屋に寄った。開いててよかった、勤労感謝。(了)