どうせモテないし、小説でも書こうぜ

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三十路で独身の画子(かくこ)はアパート隣室が小火を出し、自室も損害を受けたため住む場所がなくなった。
画子は早稲田女で、未だに早稲田近辺に住んでおり、自立せざるを得ない環境に鬱屈していた。睡眠薬と唾液不足の暮らし。
合コンパーティーで知り合った彼氏は関西の名家の出だ。彼氏はいま海外出張をしている。
彼氏は婚約者として自分の実家で花嫁修業をしないかと画子を誘った。
画子は勤め先にリフレッシュ休暇をとり、初めて関西の地を訪れた。
運転手や使用人つきの山の手のお屋敷での生活を、画子は冷やかし半分で過ごしていたが、徐々にのめりこんでいく。
彼氏の母親であるマダムは未亡人であり、品のある高級なものしか口にはせず、服装もブランドもので洗練されていた。
マダムと同じ価値観を共有している名家の者達がいて、彼らは庶民の暮らしを見下し、自分らが別次元の人間であると意識していた。
マダムの持っている株の株主総会が東京であるので、かわりに画子が行かされた。
久しぶりに早稲田を訪れ、大学食堂で後輩女たちを見て自分の姿に重ね、昔の彼氏を呼び出してセックスした。
画子は関西に戻り、それぞれの街を堪能する。宝塚の女の子たちが集う喫茶店であれ、名家のものたちの社交界であれ。
画子は私用のために自転車を買ったが、マダムに捨てられた。自転車は下品なものであり、山の手では誰一人乗らないのだ。
ついに画子は屋敷から脱出を決意する。腹立ち紛れに屋敷の絵を盗み、バーで売ろうとするが、名乗り出た履物屋にナンパされてセックスしただけで、絵は売れなかった。
履物屋との関係はその後も続いた。また画子は脱出もやめ、会社には新たな休暇届けも出し、屋敷に留まり徐々にそこでの生活に染まっていった。(了)