どうせモテないし、小説でも書こうぜ

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中年男である私は同棲している女をスーパーで働かせて、藤澤C造という戦後まもなく死んだマイナー作家に情熱を燃やしている。
C造は生前芽がでなかったし、未だに評する人間などほぼ皆無だ。だが私はC造のすべてに取り付かれている。
私は東京に住んでいるのだが、飛行機代などの旅費を惜しみなく使い、金沢にあるC造の墓を毎月訪れ、年に一度はC造の会を開く。
そこには数人の有志が集まるだけだ。私はC造の生原稿や数々の記録を集めている。C造の講演をしたこともある。
すぐ頭に血が上り、けんか腰になってしまう私は、C造の会を手伝ってくれるお寺さんにも怒りをにじませ、そのたびに反省する。
C造は公園で凍死した。私は同じ日の同じ時刻にその地をお参りする。恐ろしい寒さだ。
私の父は強盗性犯罪者であり、私は幼い頃から親戚や知り合い等から勘当された状態で育ってきた。中卒で前科もある。
東京のアパートで同棲している女は、もてない私にとって前の女から10年以上の童貞期間の果てに出会った女だ。
私は自分の原稿や写真が載っている同人誌をこれ見よがしに女へ見せつけ、くどくことに成功した。
私は女を大切にしたいのだが、実際には些細なことで怒り、女を殴りつける。いわゆるDVだ。
女はついにアパートを出て実家に帰ってしまった。私は平謝りでしつこく食いつき、なんとか女をアパートに連れ戻した。
私はC造の墓を改修することにし、同時に自分の墓を同じ台座で隣に作ってしまった。
私は夕食時の口喧嘩からまた女に暴力をふるい、肋骨を骨折させた。
警察に捕まると、数日後に行われる墓の開眼式に参加できなくなるので、私は救急車を呼ばず、女をアパートに閉じ込めた。(了)