どうせモテないし、小説でも書こうぜ

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若い女性である及川は大学卒業後、トイレやユニットバスのメーカーに入社し、九州に配属された。
同期の太っちゃんは名前通りの太った男で、互いに九州を知らなかったこともあり、意気投合して社会人生活をがんばった。
二人は恋愛関係には決して落ちない。独身を貫く及川に対し、太っちゃんは職場結婚し、子供も生まれた。
時は流れ、及川は埼玉に転勤し、太っちゃんは義理の母が病気なこともあり、九州に妻と子を残し、東京に単身赴任した。
太っちゃんは久しぶりに会った及川に約束を持ちかけた。
それはもし、どちらかが死んだ場合、遺品であるパソコンのハードディスクを壊すというものだ。
他人に見られては不味いものがハードディスクにはたくさん入っているため、遺族に見られる前に壊してしまいたい。
及川はその提案を快諾した。太っちゃんは早速ハードディスクを壊すのに必要な工具一式を送りつけてきた。
太っちゃんはある日の朝、上空から飛び降り自殺者が降ってきて、命中して死んでしまった。
及川は太っちゃんの単身赴任アパートに忍び込み、工具を使ってハードディスクを壊した。
九州で葬式があり、遺族から太っちゃん作の詩集を及川は渡される。
そこには沖で待つという詩があり、死の予感などまったくなかったはずなのに、及川は感銘を受けた。
しばらくして、たまたま及川はまた太っちゃんのアパートに行ってみたくなった。
もう新しい住人がいるかと思いきや、空き部屋のままで、家具などの一切ない玄関に死んだはずの太っちゃんがいた。
幽霊である太っちゃんは及川のハードディスクに溜まっている秘密を知っていた。
及川は向かいのマンションの男性住人を盗撮し、盗聴していた。二人は最後の時間を語り合った。(了)