批評をよろしくお願いします。
「チャーチ」
ぼくは旅先ではとても早起きになります。前の晩に何時に寝ようが
それは関係ないみたいです。ハワイ島のコナの近くに滞在していたと
き、目の前に砂浜が広がるホテルに投宿していました。
目が覚めて窓を眺めるとカーテン越しなのですが、まだ夜は明けて
いないようです。でも早起きな小鳥たちはもうすでにさえずりあって
いました。
ベッドから出ると、ティーシャツと短パン姿に素早く着替えを済ま
せ、寝癖はほったらかしのまま、砂浜に隣接しているハーバーに出か
けることにしました。
サンダルが青々とした芝生を踏みしめるたびに、朝露がしっとりと
ぼくの足を濡らしてきます。空があかるいグレイになってきました。
後ろを振り返ると山の端が鮮やかなサーモンピンクに染まっていまし
た。もうすぐ夜明けのようです。
海からは生暖かい潮風が吹いてくるのですが、少し肌寒かったので、
ぼくにはありがたい恩恵の風でした。ヨットパーカーを取りに部屋に
戻ろうとしましたが、まあいいや、とコンクリートで固められた突堤
の奥に進んで行きました。
周囲をめぐらす椰子の木陰が濃くなって伸びてきました。空を見上
げると、厚い雲の切れ間から光の帯が何本も降り注いでいます。
光の帯を辿っていくと、ハーバーの対岸にある煉瓦造りのこじんま
りとしたチャーチの尖塔に反射していました。幻想的な薄闇の中に浮
かび上がるチャーチを見ていると知らず知らずのうちに敬虔な気持ち
になってきました。そこにはとても神聖なものがあったのです。ぼく
は世界が朝の光で満たされるまで、チャーチを眺めながら、とりとめ
もないことをいつまでも頭の中で転がしていました。