僕は神なので、何でも出来た。
「そんなの虫が良すぎるね」とペットのクモノウエテントウムシが冗談を言っ
たが、もちろん僕は笑わなかった。彼が僕を笑わそうとしていることなんて、
僕が生まれた瞬間から分かっていたことなのだ。僕には知らないことなんて何
ひとつないのだ。
僕の最近トライしていることといえば、弟の嫁女神を口説いてねんごろにな
ることだったが、もちろんやろうと思えばすぐに出来た。ただ念じればいいの
だ。でもそれではつまらないので、彼女が僕にトキメかない様に集中ながら口
説く。今の僕にとって、彼女の罵倒は屈辱的で頗る好感触だった。
とはいえ、僕は何でも出来た。
下界を覗くと、人間が神の様になろうとテクノロジーを発達させていた。果
てしなく続くその作業の行く末はしかし、途中で頓挫することになる。神にな
ってもしょうがないと彼らが気付いてしまうからだ。同感だった。
僕は瞼を閉じると、いつも通り神を辞められる様に念じた。でも辞められな
かった。神を辞めたら辞めようとする念が無効になるからだ。神にだって出来
ないことはあるのだ。