この三語で書け! 即興文ものスレ 第十六期

このエントリーをはてなブックマークに追加
482牛、関門、ピアノ
第一の関門。まず理想と現状の差を認識する事。
私は苦学して医者となった。それも看護士か医者とよろしくしたいが為に。
もうね、白い巨塔のような生活をしつつも平凡にのんびりして医療を完遂するの。
だが現実は違う。私の白衣はどろどろになり髪もバサバサ。
看護士はいないし医者もいることにはいるのだけど洗練されてないし。
まぁ文句はない、幸せだし。
第二の関門。夢が現実を凌駕したりしない事を認める。
そりゃね、努力してればいつかは白馬の王子様に会えるなんて昔考えてたけど。
今、目の前にいる人は白馬ならぬ白牛の王子様だもんな。
おまけに肩口まで突っ込んで触診してるし。
「う〜ん、やっぱ異常ないかなぁ」
「気にしすぎですよ、花子ちゃんは異常ないですよ」
「でもちょっとなぁ……気になるし」
肛門から腕を抜き手袋を外した彼は指をコキコキと鳴らす。
ピアノコンクールに趣味で出ていたらしく女の私より繊細な指だ。
「……何?」
細めの眼鏡のレンズ越しに柔らかい目つきで彼が微笑む。
私は胸に広がる暖かさを貪りながら彼に微笑み返した。