小説を書いたので、批評してくれないか?

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49筒井西京
大いなる助走・2004(仮)

 ACT0

「お前らそれでも作家か!」
 激しい怒号が石動信太郎から飛んだ。
 普段穏やかな人当たりのいい作家なだけに、
 料亭には重苦しい雰囲気が流れた。
「先生、全員の意見は一致してるんですよ」
 村田隆はそう弁明した。口調もどこか弱々しい。
「いくらだ、いくらもらったんだ!」
 再びの怒号。
「そうじゃないです、僕は将来性を――」
「なら余計悪い」
 ぴしゃりと、石動は言い放った。
「本気でそう思っているのか? 塵芥の名にかけて?
 君らも市川恭二君の事件を知らないわけじゃあるまい」
 二十五年前、つまり昭和五十四年。文壇を震撼させた事件があった。
 直廾賞に落選した作家、市川恭二が審査員を殺害していったのだ。
 四人目の犯行に及んだ後、検問のパトカーを振り切ろうとして事故を起こし、彼は死んだ。
 だが事件はそれだけにとどまらなかった。
 週刊誌に事件の詳細、及び選考過程での醜聞が載るに至り、
 結果、直廾賞の審査員は総入れ替えとなった。
「それだけじゃない。塵芥賞には亡くなった大罪修、
 小林弓彦君も落としてしまった経緯がある。
 しかし、それと比べても今回はあんまりだ。
 かつて土下座で頑として転ばなかった賞が、今や金で転ぶとは何事だ」
「先生、正直に言って下さいよ。いくら欲しいんです?」
 渡辺馴が困惑した表情で言った。
 話を通してあるものとばかり思い込んでていたのだろう。

 まだ書き出しですが、感想をお願いします。今後の参考にします。
>>49
ネタの場合
面白いです。ワロタ。
ネーミングセンスがいいなあと。

マジの場合
昔たしか、かなり有名な作家が、
同じようなネタの作品を書いていてような・・・
51筒井西京:04/01/20 01:01
どうも。感想ありがとうございます。
>50 昔たしか、かなり有名な作家が、
と言うよりもろですよ。
筒井康隆氏の「大いなる助走」と言う作品があって、
まだ文壇は変わって無いなあ、と思いまして……。





52筒井西京:04/01/20 02:35
「そうだわ。演技はよしてちょうだい」
 林田鞠もそれに追随した。読者に追随するばかりの、
彼女の作品に相応しい態度だった。
「黙れ、ポルノ作家どもが」
 心底軽蔑した声音だった。
「なんて暴言!新聞に言うわよ!」
 鈍い彼女にもそれは伝わったのだろう。林田鞠はわめき散らした。
 もっとも、彼女とてそんな文句が通用するとは思ってはいまい。
 つまるところそれは、ただ見苦しさの発露に過ぎなかった。
 ミステリー業界は甘いと言う発言で世の失笑を買った時から、
 彼女はかけらたりとも変わっていない。
「ほらほら、また莫迦を晒すぞ。そんな事言ってばかりだから、
 直廾賞の審査から外されるんだ」
 そう言って渡辺馴は止めに入った。だが目は笑っていない。
 それもそのはずだ。彼もまた混乱の責任を取らされ、
 塵芥賞へとばされたのだから。
「見苦しい真似は止めて下さいよ」
 うんざりした様子で、睦月寛は言った。
「君もいたのか。最近エッセイばかりで廃業したものと思ってたよ」
「それは言わないで下さいよ。
 私にははっきり言って小説は書けないんですから。
 通俗エッセイが今や関の山です」
 そう自嘲気味に言葉を続けた。
「この前も汐野七美と会って非難轟々だったからな。
 全体格の違う作家と会って恥ずかしいとは思わないのか。
 片や格調高くしかも面白い歴史小説家、片や通俗エッセイストだ」
53筒井西京:04/01/20 02:36
「ねえ先生、反論してるのは貴方だけなんですよ。
 貴方さえよければ、丸く収まるんです」
 再び、村田隆は弁明した。
「文体は現代語調だし、感性も若者向きです。
 おまけに映画化もされると来てる。
 これは盛り上がりますよ、絶対。若い割には破綻も少ないし」
「そりゃあ絶望の国のステイヒアよりは盛り上がるだろうよ」
 失敗作の話をされ、村田隆は顔を歪めた。
「取材ノートまで出してあれでは、君もさぞかしだろう」
「今度のは売れてますよ」
「おれの推薦文がなかったらどれだけ売れたか」
「ええ、それはもう先生には――」
「第一若い女性たちらしい小説だけど、三つとも物足りないだろう。
 肝心なものが欠けていると言わざるを得ない」
「じゃあ何で、三人目を推すのよ」
 林田鞠は不満そうな様子だ。
「今回受賞無しとなったら、君らが納得しないだろう。
 今回の直廾賞は間違いなくあの男だ。さぞ噴飯やるかたないことだろう」
 石動以外の四人に、苦り切った表情が浮かんだ。

 今日はもう寝ます。それでは。
54名無し物書き@推敲中?:04/01/20 08:59
>>53
それをいうなら「憤懣やるかたない」では?
それともわざと?
55筒井西京:04/01/20 11:49
 氷麓冬彦。当代随一の怪談作家にして、
 現在一、二を争う人気を誇る人物。
 幾度となく直廾賞の候補に挙がりつつも、
 彼が挙がったときは該当作が無しになると言うことが続いた。
 三度目ともなるとそうはいくまい。
「それを言うなら憤懣じゃないの?」
 無謀にも林田鞠は突っかかる。が、当然のように無視された。
「あれが売れたら君らは困るだろうな。
 塵芥賞に該当作無しとなれば、必然的に直廾賞に注目が集まる。
 とすると流行るのはあの男だ。分かり易いからな、彼の作品は。
 分かり易い凄さだ。加えて面白く、再読にも耐え得る。
 結果、君らの本は売れなくなるかも知れない、と。
 どうなんだね? 少しは恥ずかしいと思わないのかね?」
 そう言って、石動信太郎は嘆息した。