「方舟」「フレンチカンカン」「システム」
若き日のT.ロートレックは、ムーランルージュに入り浸っていた。
ある音楽が流れると8人のフレンチカンカンが舞台を一列に飾り立てる。
その左から2番目が彼のお気に入りだったのだ。
彼は低俗とされたその劇場を好んだ。
そして、本来あるべき人間模様を彼のフィルターを通して、カンバスにかきとめた。
彼は由緒ある階級に生まれた人間だったが、その生活を嫌っていた。
その相応しくない行動のせいで親類からは奇異な目でみられていた。
しかし、彼から見ればそのヒエラルキーのシステムによって、
とらわれたある種の人間たちがとても不思議に思われた。
まるで選ばれた存在かのようにノアの方舟に縛られて生活するのは、
彼にとって苦痛そのものでしかなかったのだ。
艶やかなスカートのフリルが舞台で舞うたびに
彼の精神は自由にカンバスの上を踊るのだった。
お題は
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