この三語で書け! 即興文ものスレ 第十四段

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267名無し物書き@推敲中?
私立苦狼魔帝高校英語教師、真賀仁。
ダイブツのような図体と人柄で、デカブツという愛称で呼ばれている。
指導力も意外とあるし、いろいろと面白い薀蓄も披露しくれる。
少しドジなのがたまにキズだが。
たとえば
「掘った芋いじるなってどういう意味だかわかるか?」
真賀先生はぐるりと教室を見回す。
「今何時ですか? って意味なんだ。どうしてだろうって思うだろ? What time is it now?って文型を、そのまま日本語の音読みに当てはめて、そうやって覚えてペリーたちと会話していたんだね。
こういう方法はジョン万次郎が最初に考えて・・・・・・」
ほかにハマチドリなんてのもあるぞ、と彼は続けた。
「こんなふうにだな、単語をひとつひとつ覚えて、いちいち頭の中で辞書を引いて会話するんじゃなくて、会話のいちフレーズをまるごと日本語にあてはめて覚えたほうが、日本人としちゃあやりやすいとは思わないか」
なるほど、と何人かの生徒が頷いてみせる。
「たとえばな、I Scream、私は叫ぶって意味のフレーズ、これを日本語に直して覚えると、アイスクリームになるんだ。みんな好きだろ、アイスクリーム。これは覚えやすいよな
外国人と話すときにも、アイスクリームって言えば、叫びますよ、というふうに伝わるわけだ」
「・・・・・・アイスクリームはもともと英語ですよ」
誰かがつっこんだ。
一瞬の沈黙ののち、教室は爆笑の渦につつまれた。ちなみにドジ踏んだ先生が、一番爆笑していたのだが。
こんなドジな、だけど愛すべき教師なのだった。

次「打ち上げ」「周回」「探索」

俺は打ち上げられて15年になる人工衛星だ。異常現象などの探索が仕事だったが、
そろそろ、ただ地球の周回軌道に乗っているのも飽きたのでちょっとした悪戯をすることにした。
俺を15年も無休で働かせたのだ、ちょっとくらい驚かせても罰はあたるまい。
早速、俺は逆噴射をかけ減速をはじめる。すると体が地球のほうに引かれはじめた。
慌しくなっているだろう地上の様子を想像するだけで笑いがこぼれてしまう。
俺は気がすんだので、通常の軌道に戻ることにしたがここで予想外の出来事が起こってしまった。
ちょうど地球に落ちていこうとする隕石が俺の体をかすったのだ。軌道が乱れ、俺の体はどんどん地表に引き寄せられる。
まずいなと思いつつも、仕事に飽きた俺はこれも良いなとも思った。
ゆっくり地球へ落下していく中、俺はふと自分に大量の核燃料が積まれていることを思い出した。

次は「椅子」「ガラス」「心」で
 ここ最近書斎に置いてある木製の肘掛椅子の調子が悪い。どうも脚の一本に
負担が強いらしく、ガタガタと安定しないのだ。駅への途中に在った今はもう
潰れたと聞く骨董屋で気に入って、何度も修理して三十年使い込んだ代物だ。
 ある日朝の揺らがない内から決心して椅子を処分することにした。哀惜の思いも
手伝って方法は火葬に決める。ゆっくりとマッチを擦って火をつける。ゆらめく
火を眺めていると、丸でこの椅子の命運を知って光る涙のようだった。
 いよいよ椅子の腰掛にマッチを放った。しばらく経つと煙を出しながら木が
黒く変色してゆくのが見える。もう少し待つとパチと弾ける音がして火が十倍に
膨れ上がり、三十年の亡霊に見える勢いとなった。
 それからはもう怪物と化した炎が椅子に飽きたと見えて、本棚や書物にまで火を
飛ばしだした。床等は怪物を支える太い足に踏み潰されてとうに炭になっている。
 果たして化け物は天井まで届き壁一杯を覆い尽くしてしまった。同時に凄まじい
音がガラスと耳を突き破る。カーテンに付いた火がガラスに歪みを与えたのだろう。
 大音響と共に私の視界は暗転した。何、痛いものか。妻はもういないのだから。
私の心は椅子と共に燃え尽き、果ててしまったのだから。