昼前のスーパーには、主に食料品を目当てとした主婦たちが群っている。
「すいません、トイレ貸してもらえませんか」
僕は、近くにいる若い女の店員にそう話し掛けた。
「はい、どうぞ。」
女はいかにも面倒くさそうに答えると、そそくさと立ち去っていってしまった。
僕がトイレのノブを回すと、カチャ、という、まるで拳銃に実包を込めたような不吉な金属音があたりに響いた。
そして素早く、手提げからペットボトルと、パックに詰めたドライアイスを取り出した。
そして、急いでペットボトルにドライアイスを詰めて、きつくキャップを閉めた。
これで簡易爆弾の完成だ。爆発するまでに数分かかる。
その前に逃げ出してしまえば大丈夫だ。
僕は何気ない顔でトイレを出ると、そのまま店の出口まで向かった。
このスーパーはたかだか数百円の万引を学校にチクったのだ。
そのせいで僕は長期間の謹慎処分を受け、単位は落とすは、信頼は失うはで、酷い目にあった。
今回はその仕返しのつもりだった。
しかし、良い気分でポケットに手を突っ込んだ瞬間、さっきまで持っていた財布がないことに気がついた。
どうやらあのトイレで落としてしまったらしい。
財布には学生証が入っている。万が一爆発の後、僕の学生証が見つかりでもしたら、大変なことになる。
血の気がひいた。
まだ爆弾を仕掛けて3、4分しか経ってないはずだ。
僕は急いでトイレに駆け込んだ。
その瞬間、大きな爆音と共に、僕の身体にも激しい衝撃が伝わってきた。
へへ、威力ばっちりじゃねーか。
この馬鹿でかい音なら店にいる連中も気づいてくれるだろ。
あー痛てぇ。気づけ。そして早く病院へつれてってくれ。
畜生、次はリモートコントロールできる爆弾仕掛けてやる。ざまあみやがれ。
「花」「華」「鼻」
我が家のすぐ近所に、アンティークショップがあった。常日頃から怪しげな品々
が並ぶことでその筋の好事家には知られた店だが、今日はいつもに増して珍妙
なものばかりが並んでいた。私はついつい好奇心に後押しされ、店内に足を踏み
入れた。
どこから掘り出したのか、いやでっち上げたのか、メイドインチャイナと書かれた
景徳鎮の壷とか、ゴッホが書いた向日葵の花の種とか、胡散臭いどころか怪しさ
大爆発の品ばかりが店内に並んでいる。なんというか、華々しいまでのバッタ臭い
オーラに満ち満ちているのだ。
「源頼朝が九歳のときのしゃれこうべ……」
私はとある頭蓋骨を手に、絶句した。そこに現れる店主。
「お客さん、これなどいかがかな」
差し出したのは、長さおよそ六十センチほどの木の板。
「これは……いや、当ててみましょう。聖徳太子が持っていた芍でしょう」
「惜しいですな」
店主はにやりと笑った。
「これは禅智内供の鼻を支えた、『鼻持上げの木』です」
「落語ですらないのかよ!」
次のお題は「オレンジ」「遅刻」「お徳用」で。
242 :
名無し物書き@推敲中?:03/10/07 22:02
家に小便漬けのオレンジの種が送られてきた。送り主はジョーだ。
こいつは女の匂いを嗅いだだけでもイッてしまうから早撃ちジョーと呼ばれている。
小便漬けのオレンジの種は俺たちの間で緊急集会を行うという意味だ。
集会に遅刻したら罰ゲームとして痰壺を一気飲みさせられる。
俺は通りすがりの車を奪って集会場へ急いだ。途中で何か轢いた気がしたが時間が無いから無視した。
集会場になっている地下駐車場にはすでにメンバーが集まっていた。すでに車でギシギシやってる恋人もいた。
だが時間になっても肝心の早撃ちジョーが来ない。
俺達は嬉々として罰ゲーム用の痰を集めた。痰が出なかった者は鼻水で許された。
すると車でヤッてた二人が突然裸のままで出てきた。
ラジオニュースで早撃ちジョーが何者かに轢き逃げされて死んだと言ったそうだ。
また一人惜しい奴を亡くした。
俺達はジョーの墓に痰壺とお徳用紙おむつを捧げた。
あいつはまだ寝糞が治ってなかったからだ。