ガッツポーズには、様々な用途がある。
例えばこんな時――
バカヤロー!! 金返せ――!! 死ね――!!!
ありとあらゆる怒号が鳴り響くテント内。
その標的は、表情を崩さずに言う。
「どうでしょう? お楽しみ頂けましたか? 」
この男はサーカスのピエロである。しかし、この男、とてつもなく下手なのだ。
観客に怒りを包ませるほどに………
「このからくりは――」
この下手糞――! 国に帰れ――!!! 観客の怒りが治まる気配は一向にない。
「………………だろう?」
ピエロは何かを呟く。そして、拳をぎゅっと握り、突き上げて、大声で言う。
「面白かっただろう!!!!? 」
観客唖然――そして、次の瞬間会場が今日最高の音量を発したのは言うまでもない。
次は「ダウナー」「宅急便」「文様」
218 :
名無し物書き@推敲中?:03/10/05 19:15
宅急便で送られてきたものは、土器の壷だった。
その特異な形は、それが縄文様式であることを示している。
送り主は、ウォルフガング・ダウナー。オカルト関係の権威で、本物の魔術師だ。
早くから東方の魔道体系に興味を持ち、とくに日本や台湾、インドネシア諸島といった、離島における独自の魔道の発達に著しい興味を示している。
いまは彼の言うところの「真日本呪術」、つまり縄文時代の呪術を研究するために、東北地方を遊覧しているはいずった。
ということは、これは彼が発見した何か呪術に関係した品、なんだろうが・・・・・・、はて、いったいなんであろうか。
手紙のひとつも添えられていないのでわからない。
「いったいなんなんだ、これは?」
「セツメイショウ!!!」
いきなり声が響いた。ウォルフの声だ。だが、どこから?
種ポーーーーんと蒸気が抜けるような音がして、壷の中から飛び出した人影。それは空中でクルクル回転すると、すたっと床に着地する。
ウォルフガングは振り向くと、ニヤリと笑いかけた。
「コンナフウニ移動スルタメニツカウモノサ。アル種ノゲートッテトコカナ」
俺は唖然として声も出なかった。
次〜〜「救済」「めくる」「初物」
219 :
「救済」「めくる」「初物」:03/10/05 20:41
あたしは、憂鬱な気分で目が覚めた。
「変な顔……」
隣には男が寝ている。何も考えてないような無神経な顔だ。
肌に油が浮いているような気がする。
あたしはベッドスプレッドをめくって立ち上がった。
男に触れないように注意しながら、ベッドを降りて、シャワーを浴びた。
痛みさえ感じる熱めのシャワーが肌に残った男の感覚を忘れさせてくれる。
ふと、父の顔が浮かんだ。母が死んでからずっと一緒に寝ていた父は、しがらみを断ったようなさっぱりとした顔で笑っていた。
裸になって抱きあっていても、父は私を奪うことはなかった。
あたしは、父を助けているつもりだった。父の救済者。
一週間前にキスしようとした瞬間、父がもうこういう事は止めよう、
と悲鳴に似たような声で言い出す前までは、
あたしだけが落ち込んだその気持ちを癒せるたった一人の人間だって信じていた。
でも……逆だったんだ。母が死んだとき涙が溢れなかったのは、そういう理由だったんだ。
太ももが妙に張っていた。血が股間から滴り落ちて、シャワーのお湯で薄まっていく。
「……君ははじめてだったのか」
ぶよぶよとしたものが、あたしを後抱きにした。
「でもさ、初物の割によがってたね。そんなに気持ちよかった? 自分でいじったりしてたの?」
男の手があたしの胸をまさぐっていた。その手に父を感じて、あたしは男を押し退けた。
次は「理由」「コップ」「消臭剤」で