あなたの文章真面目に酷評しますPart12

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841よろしくです1/2
昼を過ぎてから、家に帰った。団地の階段をのぼってドアを開けると、台所のイスに座
って姉の姿が目に入った。何か飲んでる。テーブルの上にはママ蔵と書かれた瓶が見えた。
「姉さん・・・なにそれ?」
「あれ?お帰り」言って、コップをテーブルに置いた。「これ?ママ蔵レモンだけど」
「メロンだろ」言って、テーブルの上の瓶を取る。緑色の一升瓶(一升瓶かよ)に真っ白
なラベルが張ってあって、『ママ蔵ジュース・メロンスメル』、と緑色の字で縦書きされて
いた。スメルとか書いてあるのが微妙にジュ―スっぽくはなかったけど、あいた口からは甘
い香りがした。
「レモンだと思ってた」姉さんはテーブル上のコップをしげしげと見る。四分の一くらい
残っているけど、その色は薄い黄色だ。なんだそりゃ。ラベルの後ろを見ると、なにもプリ
ントされていなかった。
「どこで買・・・手に入れたの?これ」
「昨日、裏の猫が自動車に轢かれそうになったのを助けたので」
「虚しい嘘はともかく」
「家に来たセールスマンさんが試飲用にくれたの」
「試飲用にって・・・」
「毎週1回、作り立てを配達するんだって、売れるわけないじゃん。ねえ?」
「さあ、どうかな?」
 それにしてもセールスマンも大変だ。おれもだけど。あ、まだ鞄を降ろしてもいないや。
842よろしくです2/2:03/10/11 11:05
「シャツを替えに帰ってきたんだよ」
 鞄をイスに置いて、台所の隣の部屋に入った。あいていたフスマを閉めて箪笥を開き、
タオルを取り出して体を拭いた。シャツを取り出して着込んだ。Yシャツも替えなければ。
 「お風呂に入っていけばいいのに」
 フスマの向こうから声がした。
 「いいよ、もう行くから」
 「あんた、新入りのくせに帰ってきていいの?」
 「いいの」
 「3ヶ月でサボリをおぼえたか」
 「うっさいな」
 Yシャツはさらに隣の部屋のクロゼットの中だ。フスマを開ける。表の通りに面していて、
窓から夏の膨大な太陽光が入ってきている。閉め切っていたらしくて、尋常じゃなく暑かった。
親父とお袋の位牌(写真も)が並んでいる仏壇と、クロゼットは向いあっている。
 仏壇に背を向けてYシャツを着た。このシャツは親父のおさがりだ、と思った。

 冷蔵庫を開けて、麦茶を取り出して、コップに入れて、飲んだ。で、冷蔵庫になおした。
 「じゃあ、いってくるわ」革靴を履きながら言った。
 「うん、あ、私、バイトの面接のあと遊びに行くからさ、今日は帰らないよ」
 そういうことは先に言ってほしいもんだ。
 「そういうことは先に言ってよ」
 「ごめん」
 「金、いる?」
 「いる」
 一万円渡した。
 「お金持ちぃ」

 姉に手を振られてドアを出た。熱風が吹いていた。階段を降りていった。
 (姉さんが働いたらクーラーをつけられるようになるかな?)と思った。