マッド博士とバッド助手の研究記
■不老不死の薬
「ついに完成したぞ」
博士はそう言うと、フラスコを高く掲げた。
博士が作り出したのは不老不死の薬であった。
博士はその薬が倫理的に大きな問題を抱えていることは知っていたが、そんな事は問題ではなかった。
創りたいから創る。
そして完成したのだからこれを売る。
きっと莫大な富をもたらすはずだ。
本能的、直線的な思考しかなかった。
「おい、機材を片付けておけよ」
普段から役に立たない助手にそう言うと、博士は大々的な記者会見を開こうと電話をかけに行った。
助手は言われた通りに片付け始めた。
と、博士が邪魔だからと部屋の隅に追いやった花瓶に目が止まった。
つい先日までつぼみだったそれは、今日になって花を咲かせていた。
その花はとても綺麗で、これまでに見たどれよりも素晴らしかった。
助手はその花瓶を部屋の中央、テーブルに運ぶと、しげしげと見つめた。
「実に美しい」
その時、助手は閃いた。
先程、博士が作り上げたフラスコの中身を、意気揚揚と花瓶に注いだ。
「これでいつまでも綺麗な花を見ていられるぞ。博士も大喜びだ」
博士の戻りを待ちわびながら、助手はしげしげと花を見つめていた。