先週の月曜日に35歳を迎えた俺は今、二つの事件の犯人を捜している。
一つは連続ひったくり事件。容疑者は居るがなかなか証拠が掴めないでいる。
俺はヤツの張り込みをしつつ、もう一つの事件の捜査も進めている。
そのもう一つは連続放火事件。俺が張り込みを始めた日に事件が起きたのだ。
仕事が増える上に、さらには放火は必ず俺の張り込み場の近くで発生する。しかし証拠も目撃者も無いのだ。
放火犯が俺のことを馬鹿にしてるとしか思えない。
コートをもすり抜ける木枯らしがふく。夜道でタバコをふかしながら張り込みを続ける。
飽きっぽい俺にはタバコはいくらあっても足りない。半分も吸ったら次のと取り替える。
此処は時たまコートを抑えながら木枯らしに向かって歩く人が通るが、人通りは少ない。
コンビニの袋がバサバサと音をたてる以外、物音さえしない。
俺はまたタバコを道路脇に投げ捨てた。今日はもう、帰るか。
…!
歩き始めてすぐ、背後に人の気配を感じた。
しかしそこには風に吹かれるタバコの煙しかない。気のせいか。
それにしても、刑事がタバコのポイ捨ては良くないか。
俺は火を消してタバコを拾い上げ、飲んでいたコーヒー缶に入れて持って帰った。
次の日、ひったくり犯が捕まった。
すると不思議なことに放火事件はぱったりと収まった。しかし犯人は未だ見つからないままだ。