ショートショートショートショートショートショート

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404鳥頭
酷評スレに貼ったモノですが、こっち向きかと思いましたので少し修正して貼り直しました。
評価お願いします。

しつこい電話がさっきから止まない。
「私の話を聞いて下さい。そのままだとあなたは危険なんですよ!」って男が必死で怒鳴ってる。
電話を切っても10秒もしないで同じ男はかけてくる。
「警察に言いますよ」と言っても鼻で笑って相手にしてくれない。
ちょっと感情的になって「いい加減にして!」って怒鳴ったら、
「大丈夫ですか? いま、トラブルでも抱えてるんですか!?」だって。
トラブルって、いま、まさに、この状況こそが、トラブルなのに。
言葉が通じない怖さを、わたしは初めて感じた。
「まず、落ち着いて下さい。そして、わたしを信じてください」
男はわたしをなだめるような口調に転じた。 でも、こんな変な男は信じられるわけがない。
今までわたしが出会ってきた人間は酷い人間もいたけれど、この男に比べればよっぽどマシ。
少なくとも言葉だけは通じたから。
とにかくわたしは、関わりたくないという意志を受話器越しにぶつけ続けた。
「……電話だと埒があかないみたいですね」
って電話が切れて、それからは電話は鳴らない。

家の外に車が止まった。きっと彼だ。
彼に助けを求めるために電話しておいてよかったって思う。
階段を駆け上がる足音が聞こえる。
こんな時にすぐ来てくれる彼がいることがわたしの自慢。
彼は少しばかり問題を抱えているみたい。なんとなく、わたしにはわかる。
だけど彼はわたしの前では、そんな姿は見せない。
「お前は安心して俺を信じてくれれば良いんだよ」「ここにいることがお前の幸せなんだよ」
と、いつでも優しい笑顔を向けてくれる。
まずは来てくれた彼を力いっぱい抱きしめよう。怖かった話をして慰めてもらおう。
玄関からはドアノブをがちゃがちゃ回している音が聞こえる。
合鍵は渡してあるのに……彼ったら慌てて鍵を持ってくるのを忘れちゃったのね。