酷評スレに貼ったモノですが、こっち向きかと思いましたので少し修正して貼り直しました。
評価お願いします。
しつこい電話がさっきから止まない。
「私の話を聞いて下さい。そのままだとあなたは危険なんですよ!」って男が必死で怒鳴ってる。
電話を切っても10秒もしないで同じ男はかけてくる。
「警察に言いますよ」と言っても鼻で笑って相手にしてくれない。
ちょっと感情的になって「いい加減にして!」って怒鳴ったら、
「大丈夫ですか? いま、トラブルでも抱えてるんですか!?」だって。
トラブルって、いま、まさに、この状況こそが、トラブルなのに。
言葉が通じない怖さを、わたしは初めて感じた。
「まず、落ち着いて下さい。そして、わたしを信じてください」
男はわたしをなだめるような口調に転じた。 でも、こんな変な男は信じられるわけがない。
今までわたしが出会ってきた人間は酷い人間もいたけれど、この男に比べればよっぽどマシ。
少なくとも言葉だけは通じたから。
とにかくわたしは、関わりたくないという意志を受話器越しにぶつけ続けた。
「……電話だと埒があかないみたいですね」
って電話が切れて、それからは電話は鳴らない。
家の外に車が止まった。きっと彼だ。
彼に助けを求めるために電話しておいてよかったって思う。
階段を駆け上がる足音が聞こえる。
こんな時にすぐ来てくれる彼がいることがわたしの自慢。
彼は少しばかり問題を抱えているみたい。なんとなく、わたしにはわかる。
だけど彼はわたしの前では、そんな姿は見せない。
「お前は安心して俺を信じてくれれば良いんだよ」「ここにいることがお前の幸せなんだよ」
と、いつでも優しい笑顔を向けてくれる。
まずは来てくれた彼を力いっぱい抱きしめよう。怖かった話をして慰めてもらおう。
玄関からはドアノブをがちゃがちゃ回している音が聞こえる。
合鍵は渡してあるのに……彼ったら慌てて鍵を持ってくるのを忘れちゃったのね。