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294名無し物書き@推敲中?
面白いかどうか判りませんが、書いてみます。


桃ちゃんは今年で五歳になる。田中は桃ちゃんを現行の四歳に
留めるべく行動を起こした。とりあえず口を押さえてみた。
口から入る空気が桃ちゃんを五歳にしてしまうのではないかと
考えたからだ。だが桃ちゃんはむーむー言って暴れたり、
ぐったりするだけなので、これは違うと思い、口から手を離した。
次に田中が行った行動は、桃ちゃんにカラシを舐めさせること
であった。もしかしたらこのカラシが年齢を辛さで以って
溶かしてくれるかもしれない、と思ったからだ。
だが桃ちゃんは「からいからい」と泣き叫ぶだけである。
その様子を見て、田中は「きっと年齢も無事で溶けては
いないのだろうなぁ」と考え、落胆した。

やがて桃ちゃんのお母さんが帰ってきた。
「田中君ありがとね。桃子、悪さしてなかった?」
田中は「いい子でしたよ。ただ…」と口を濁らした。
桃子の母は怪訝そうな顔をして「ただ…何?悪い事
したなら遠慮なく言って」というので、田中は泣きそうな顔を
しながら「桃ちゃんに近々五歳が来てしまうのが困り者です」
「桃子ちゃんが末永く四歳であらんことを」と答えた。
桃子の母は無言で田中を家から追い出した。
田中は玄関の外で軽く十字を切り、扉に向かって会釈をすると
その場を立ち去って行った