某国の皇太子が、侍従と共にとある靴屋に寄った。
皇太子は、后に送る靴を物色したのだがその中でひときわ目立つ鰐皮のハイヒールに目を付けた。
「これは、いい。毛艶、品格ともこれこそ后にふさわしいではないか。
侍従は、その靴を手に取り品定めをした。
「いいえ。王子。わが国には、これよりもっと素晴らしい鰐が五万とおります。王子の武勇を上げるためにも是非
本国に戻り狩をなさいませ」
王子は、それを聞き喜んだ。
「私が、じきじきに倒した鰐と知れば后もさぞ喜ぶであろう。爺、でかしたぞ」
王子は、すぐに本国に戻り弟ぎみと共に狩に出かけた。
しかし、何ヶ月たっても二人は戻ってこなかった。
心配になった国王は、侍従に捜索を命じた。
侍従は、もともと鰐の生息地を教授していたので探すのは困難ではなかった。
銃声が響く。一発、二発。
案の定、二人はすぐに見つかった。
目の前には、沢山の鰐の死体が転がる。
「王子、よく御無事で」
「おう爺!なかなか見つからんぞ!」
困惑する侍従。目の前には立派な鰐がごろごろしていると言うのに・・・・・・。
苛立ちを隠さず王子は叫んだ。
「何処にも靴を履いた鰐なぞ居らんぞ!」