生まれてこの方、バーなどと言う小洒落た所には行った事がない気がする。
今回暇つぶしに行ってみようと思ったのはただの偶然だったろう。
小奇麗な店内に入ると、店内には静かな活気が満ちていた。
笑顔で酒を酌み交わす男女、老夫婦、会社の上司と部下、だろうか?
皆めいめいの席に座って、自分の時間を楽しんでいる。
私はカウンター席に座り、適当な酒を注文して飲んでいた。
少し酔いも回ってきた頃、私にある悪戯な考えが浮かんだ。
バーのマスターに声をかける。
「マスター、カツカレーひとつ。」
するとその老マスターは少し困ったような顔をして、問い返してきた。
「お客さん、ここはバーですよ?」
突如として、私は甲高い笑い声を上げた。なぜか狂ったように、笑いが止まらなかった。
皆が、どうしたのかと私を見ている。
当然ながらそのバーを追い出された私は、まだ10分ほどの間笑い続けていた。
もうこれ以後バーに行くことも無いだろう。だが、この愉快な思い出は何時までも心に残ると、確信していた。
AA略。