210 :
名無し物書き@推敲中?:
【トワイライトゾーン】
通勤帰りの夕暮れの街角には、各家庭の生活臭が漂う。
神社の参道に続く石の階段から蜘蛛の子を散らすように泥んこの子供たちが駆け降りてくる。門前の商店街からは、どことなく惣菜の香ばしい匂いが漂い
、買い物篭を抱えた主婦たちが帰り道を急いでいる。見慣れた風景だが私は、一人の少年に目を留めた。この子は、そういえばいつもここにいた。
階段の脇にある手水の影で、じっと私を見ているのだ。昨日もたぶん先週からいやもっと以前から。
私は、気になりその少年に声をかけた。
「こんばんは。早く帰らないとお母さんが心配するよ」少年は、うつむき首を横に振り手水の奥に駆けていった。
そのあとも何度か夕暮れ時に、少年と出会った。何度か気を引こうと話し掛けたりお菓子をあげようとしたりしたが、決まって少年は、やはりうつむき手水の奥に駆けていった。
私は、妻にこの少年のことを話した。物寂しそうな様子。背格好、年の頃。妻は、少し考え込みそして、真剣な顔で語り始めた。
昔のこの地域は、貧しい寒村で飢饉の時など多くの農民が死んだ地域だった。飢饉のない年でも貧しさは、改善されることはなく子沢山の家などでは、普通に間引きを行っていた地域だったと。
私は、夕暮れと闇とが繋がるトワイライトゾーンに成仏しきれなかった子供が現れてきたのだろうかと思った。妻は、薄気味悪いからもう神社の前は、通らないでと言った。
習慣というものは、恐ろしいもので昨日は神社の前を通らなかったのだが今日私は、無意識のうちにまたここを通ってしまった。あの少年はこちらを見ている。
私は、手水で体を清めた。そしてその少年に向かって手を合わせようと思ったその時
「おじちゃん、新しいママが家にくる為に、新しいママと別れて……」