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G社にとって創立以来最大のビジネスチャンスだった。
文字通り、社運を掛けた巨大プロジェクトの責任者O氏は、今人生最大の危機に立っている。
「結局のところ、君はこう言いたいんだね。給料を上げなければ今すぐ辞めると」
退職届を提出したA君は、アルバイトだった。
しかし、今回のプロジェクトはG社の、ノウハウというよりA君のスキルだけが頼りだった。
言いかえるならばA君が存在しなければ、N社自体が存在し得ないと言っても良い程の最重要人物だった。
「もう僕は、ここに来て4年経ちます。正社員の道もあると言われたから、最低基準賃金で昇給無しでも頑張っていましたが、もう限界です」
O氏は言った。
「確かに、私もそう思い総務部に、何度も掛け合った。なにも現状を先送りしていた訳では無いんだ。判ってくれ。今すぐ、社長に掛け合うから」

厚生年金法改正、派遣会社法改正。
時代は、企業にとって都合の良い法改正を行ない、搾取される側、正社員と非正社員の収入差
収入の不安定等々社会構造は歪み、不満は、飽和状態であった。
利権構造の時代は、終焉を迎えるべきであった。
正社員であるO氏の年収1200万に対しA君の収入は300万に満たない。その差は4倍であるが
事実、業務に関してはA君の方が4倍働いていると言っても過言では無い。

O氏の提言により、すぐに社長がやってきた。
「A君と言ったかね。御存知の通り今回のプロジェクトは、わが社の社運が掛かっている。
君が、とっても重要な人物だと言う事を聞いてわが社も君に対し考えなければと思う。
私も、努力しようじゃないか・・・・・・。そうだな・・・・・・時給50円上げよう」

1ヶ月後G社は、倒産した。