留守番電話に吹き込まれていたのは沈黙だった。圧倒的で、誰も
歯向かうことの出来ない、100パーセントの沈黙。物音も、ざわめきも
そこには存在しない。漂う埃すらもその場に立ち尽くしてしまうような
ある意味においての完全性がそこには存在していた。その時、心から思っ
た。僕は、一人だ。
窓の外を見ると、いつの間にか静かな雨が降り出して、庭の草木を濡らし
ていた。音も無く降る雨。何一つ僕を救うことの無い留守番電話。この
向こうに何があるというのだろう。それはきっと、僕につきつけられた
鬱陶しいまでの命題だった。僕は、部屋の照明を消して、それからカーテン
を引いた。インターフォンから電池を抜いて、電話線も引き抜いた。
とりあえず、考える必要が僕にはあった。それも誰にも邪魔をされることなく。
そして僕の長い、ジェットコースターのような思考は始まった。