この三語で書け! 即興文ものスレ 第十三層

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500499:03/09/17 14:48
お題は498さんで。
501名無し物書き@推敲中?:03/09/17 15:12
「ここは・・・・・・なんだ・・・・・・?」
高橋の声が上ずったのも無理はない。
そこにはまったく予想されなかった風景が広がっていた。
シダの類の植物群が見渡す限り大地を覆い、遠くには赤茶けた歪な山嶺が連なる。大気にさえ、やや硫黄の臭いが混じっているような気さえするのだ。
こんな場所は地球上にはない。少なくとも、いま、この時代には。
「おい、あれを見ろ!!」
石田が空を指差す。誰もが予想していなかった、されど十分に予想してしかるべきモノがそこにいた。
蝙蝠のような翼をはためかせた蜥蜴のようななにかが、何匹も何匹も木の葉のように、ゆっくりと空を乱舞しているのだ。
何かが・・・・・? 
もちろん、それが何であるかはわかりきったことだ。目にしたことがある人物だっているだろう。ただし、資料や映像に限られるだろうが。
「あれは、プテラノドンじゃないのか!!!」
「ばかな!!! ここが、古代の地球だとでも!?」
避暑地で有名な軽井沢で、偶然見つけた洞窟。面白半分に探検していくうち、それはシェルターらしき人工物へと変わり、いくつもの扉を潜った果てにたどりついたのが、ここなのだった。
信じられないような出来事。しかし、これは確かに現実であるのだった。
「これは発見だ、大発見だよ!!」
「すぐに戻って知らせよう。俺たち有名人だぜ!!」
そうはしゃいで踵を返した2人は、次の瞬間、そこにあるはずのない壁に激突。じめんに尻餅をつく。
壁・・・・・・? 
嫌な予感がした。二人は恐る恐る、ぎこちない動作で視線をあげていく。
予感が当たった。巨大な肉食恐竜の顔がそこにあった。2人と1匹の視線が絡み合った。信じられないことだが、さいつはニヤリと笑ったように見えた。
餌見〜〜〜〜〜っけ、そんな感じで。
「「あ゛〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!!!」」
2人の悲鳴をTレックスの咆哮が打ち消した。
その後、2人がどうなったのかは定かではないが、少なくともこの発見が世に出ることもはなかった。
そして、絶滅したはずの恐竜たちは、今日も地底の楽園で平和な日々を過ごしている。

おしまい

最近お題を書かない人が多いぞ
503名無し物書き@推敲中?:03/09/17 20:27
む、すまない。
「注ぐ」「飼う」「流れる」
504名無し@かいてます:03/09/17 20:51
 耳の奥のほうで、緩やかに流れる小川の水音が響く。久しぶりの音。本物の音。僕の体は喜びと感動で震えた。
思えばあの時、こんな風に鼓膜が震える感覚を、僕は当たり前のことだと思っていたんだ。


 僕は10歳までまったく正常な聴覚を持っていた。
 といっても、誰もそれが特別なことだとは思わないだろう。それが普通の人間だし、僕もそう思っていた。
時々テレビやラジオで「今に感謝せよ」と言う人がいたが、聞くたびに無性にムカツいて、「当たり
前のことを当たり前に思って何がいけないんだ」と野次ったりもした。
 でも、あっという間に、僕は当たり前の人間ではなくなった。10歳4ヶ月のある日、僕は高熱を出して、
意識を失った。母は半狂乱でヒステリーを起こし、父は病院へ電話する手が震え、何度もかけ直したという。
僕が9歳の時から飼っているミニコリーのシェリまでもが、心配そうにほえ続けたそうだ。
 当の本人は、まったくその記憶がない。あたりは暗闇で、僕はその中をさまよっていた――ずいぶん長い時間。
そして目覚めた時には、もう音とはおさらば。両親が嬉し涙を見せて話しかけてきたのを、僕は訳が分からず呆然
と見つめていた。
 あの時、僕が音が聞こえないと知った両親の表情の豹変・・・・・・まるで「終わった」とも言いたげだったのを、今でも
覚えている。
 
To be continued?
おっと、んじゃ次は
「美女」「虎」「刑務所」
507名無し物書き@推敲中?:03/09/18 03:09
男は後手を縛り上げられ、床に転がされていた。
そこは刑務所の反省房で、男は懲罰のため閉じ込められていたのだ。
「よぉ32番、そろそろ懲りたころか?」重い鉄の扉を開けて看守が入ってきた。
「最初からおとなしくしてりゃこんな目には・・・ああっ!!」
軽口を叩いていた看守は突然、息を呑んだ。
そこには大きな虎が牙を剥き、鋭い眼光でじっと看守を見据えているではないか。
「旦那、よく見てください。そいつぁ絵ですよ、絵」
なるほど落ち着いて見れば、その虎は壁に描かれた絵に違いなかった。
「ここに閉じ込められて泣いてたんですがね、その涙で、足を使って描いてみたんでさ」
「そういやお前はシャバでは名の知れた彫刻家だったそうだな。それにしてもよく描けてるもんだ・・・」
看守は壁の虎に近づき、まじまじと眺めた。と、次の瞬間!
「うぎゃぁぁぁぁぁ!!!」
絵の虎は突如として生を受け、壁から飛び出して看守に向かって跳びかかってきたのだ。
猛け狂った虎は看守を襲い、足の方からバリバリと喰らい始めた。
「旦那!旦那ぁ!」
「うううううう・・・32番よぉ・・・お前に・・・お前に、頼みがあるんだ・・・」
「何です、旦那?」
「今度は・・・壁に美女を描いてくれねえか」

NEXT
「ペンギン」「聴診器」「角砂糖」
どうも調子が悪いので近所の病院に行った。
看護婦に名前を呼ばれて診察室に入ると、中には白衣を着た巨大なペンギンがいた。
「どんな具合ですか」椅子に座った自分に落ち着いた中年男の声でペンギンが聞いてくる。妙な気分だ。
「いや、昨日からなんだかだるくて…」とまどいながら答えた。
「吐き気は」
「ありません」
「熱は?」「微熱が…」
ペンギンは前ひれで聴診器をつかむとシャツをあげるように指示した。
「ふむ。まあ風邪ですね。お薬出しときますんで、休養をとって下さい」
診察室を出る時、看護婦がペンギンにバケツから生魚をあげるのが見えた。

「じゃあこれがお薬です。食後なるべく三十分以内にのんで下さいね。お大事に〜」
看護婦から渡された袋には角砂糖が六つ入っていた。
それで風邪が治ったのだから、やっぱり妙な話ではある。

次「看護婦」「椅子」「バケツ」
 今日は看護婦の衣装を手渡された。

「い、いいから、そそこに座るんだ!」
 私は、何があろうと彼の命令通りに行動し、何があっても逆らわない。
 たとえ、私が女装をしている今でも、それは揺るがない。
 命令通りに椅子へ座ると、ひやりとした感触がピンクのスカートから身体へ伝わり、私は思わず腰をあげそうになった。
 彼の顔を見ると、案の定眉間にしわがよっていた。私が自らを叱りつける前に、彼の甲高い声があがる。
 私は悪態を後悔したが、それはいつもの後悔だけに終わらなかった。彼が怒りにまかせて立ち上がったとき、私より彼の傍にあったバケツが転んだのだ。
 バケツからこぼれた色は、様々な色の絵の具が混ぜられ、緑だか茶色だかの色をして混雑とし、床を汚している──私はひどく心が満たされるのを感じた。
 彼の傍を占拠したかわりに、汚い色で犯され、周りを汚染し、あげく転んで、役目を全うすることさえできずに終わったのだと。
 私の心情とは真逆に、「く、クソォッ!」と彼はヒステリックにそのバケツを蹴った。私は彼を、声に出さず精一杯応援する。
 やがて彼のスケッチブックが手から滑り落ち、白紙はバケツ色に染まる。彼が暴れ出す。
 いつもの発作が始まった。

 彼へ悲しさを感じることはなくなった。むしろ、今なお私と居てくれることへ感謝さえ感じている。
 端から見ると、いや、自らからしても、私は異様であるが、彼が異様である限り、私はずっとこうだろう。

「魚」「窮屈」「ノート」
  「魚」「窮屈」「ノート」


『明日の予定。新しい店の面接。あーあ、お金ほしいよお』『しんちゃん大好き まい』
男を待つ間、私はラブホテルのベットの横にあったノートのいたずら書き読んでいた。
池袋のラーメン屋の前の路地で、大学生っぽい若い男に「おねえさん、ヒマ?」って
声をかけられた。「ヒマだけどお金もってる?」って聞いたら「バイト代、出たから」と
言うので2万でついてきてやった。いつもは混んでいる駅の近くのラブホテルは水曜日の
夜のせいかすぐに部屋が取れた。ああ。疲れた。秋物の新しいハイヒールの靴ずれが痛い。
本当はガキなんて相手にしないんだけど、とにかく早く眠りたかった。部屋にはいると男は
すぐにスカートをたくし上げてきた。露骨に嫌な顔をしてやると「汗クセーかな?待ってて」と
言ってバスルームに飛びこんでいった。ふん。キスなんて百万年早い。こっちは体張ってんだよ。
私はベットの上でパラパラとノートをめくる。ノートの途中に赤のインクでびっしり何か書いてある。
『魚の刺青の男にやられた』『くすり入れられた死にたくない』『助けて 助けて』『死ぬのいや』
めちゃくちゃな字だった。私は嫌な鳥肌が立って、窮屈なハイヒールにもう一度痛む足を入れると
マジックミラーからバスルームをのぞいた。果たして、男の背中には何もなかった。なんだ、びっくりした。
だが、男が床に脱いだズボンのポケットからは、手錠とナイフがこぼれていた。「ねえ。早く逃げなよ」
突然、上から声がする。血だらけの顔の女が天井に張り付いていた。絶叫した途端、部屋の灯りが消えた。


**次は「靴」「きのこ」「廃虚」でおねがいです。
511名無し物書き@推敲中?:03/09/18 22:17
それはまるで恐竜の化石のようだった。
信じられるだろうか?
かつて、そこが都市と呼ばれたコロニーだったことを。
そこに数万をこすヒトが暮らしていたことを。それぞれのヒトがそれぞれの意思を持って懸命に生きていたことを。
ここだけではない。この惑星すべてに都市は広がり、億を越すヒトが存在していたのだ、確実に。
いまはもうなにもない。煤けたような黒く汚れた廃墟が一面に広がるのみだ。
ときおり思い出したように風が吹いて、黒ずんだ塵をまきあげる。ほかに動くものはなにもない・・・・・・。
きっかけがなんであったかは定かではない。
まったくの突然に、その惑星は一瞬にしていくつものキノコ雲に覆いつくされたのだ。
まるでその星が沸騰し膨張しているような景観だった。
核と呼ばれる殲滅兵器を、我々ではなく、彼らの同朋に向けているという信じがたい事実は、すでに遥かな以前から認知されていた。
かといって同朋を憎んでいるかと思えば、わが身を削るような保護政策を同じ同胞に対して施したりもする。
高尚な精神性と幼児的な狭量が同居する、おかしな、だが愛すべき種族だった。
ふと地面に目をやると、奇跡的に原型をとどめた靴とよばれたモノがあった。
すべてが黒く汚れた廃墟にあって、それだけが、どういうわけか、くすんではいたが、それでもまだ赤かった。
わたしはそれを拾い上げた。
これを記念にしよう。かつて、この惑星にひとつの知的種族がいたことの。ふたつの相反する精神をその内に宿していたことを。
そして、その葛藤を克服できるまで進化をなしえず、自らの炎で滅んでしまったことを。
くりかえすが、彼らは愛すべき種族だった。
少なくとも、私だけは彼らを愛していた。
512名無し物書き@推敲中?:03/09/18 22:18
「哀悼」「神聖」「晩餐」でどうぞ
哀悼
やべ、↑失敗した

最後の晩餐の時
私は深く哀悼していた
「ごめんな・・・でも俺は彼女のことが・・・」
「ううん、いいのよそれよりも食べよ」
神聖
そう彼は私を形容した、私はそう言われたのがうれしかった
しかしあまりにも純すぎる
そう言って彼は私と別れると言ってきた
「・・・・・・・・・・」
「何よ、毒なんて入ってないわよ、ほら」
そう言って私はスープに口つける
「ははは、何でも無いよ、ごめんごめん」
彼は私の何を見ていたのだろうか
何も知らない私にいろいろな事を教えて、それで飽きたら捨てるわけ?
こんな私にも、邪な、黒いことだってあるのよ

「あ・・・れ・・・・」
「ごめんね、一緒に死んで・・・・・・」

次は「携帯」「シナリオ」「走る」でお願いします
515ルゥ ◆1twshhDf4c :03/09/18 23:45
「携帯」「シナリオ」「走る」

薄い桃色の携帯電話がほしい。
もちろん、最新式のもので、アドレス帳にはぎっしり名前が登録してあるような。

朝の通勤ラッシュ時、携帯禁止の車両で女子高生がメールを打っている。
マナー違反の上、何よりも彼女のその笑顔が鬱陶しかった。
私はなるべくそちらの方を見ないようにして、手元の今度の文化祭用のシナリオに集中しようとした。
本当は、内容なんてちっとも頭に入っていない。
それでも、躍起になって、シナリオにかじりつく〈ふり〉をしていたが、
全速力で走る電車の突然の急カーブでそれもあえなく中断された。
女子高生の方に少し目をやると、彼女は何事もなかったかのようにドアにしな垂れかかって、メールを打ち続けている。
圧迫した空間の中、私には、その場所だけ、輝いているように見えた。

今時、携帯を持っていない高校生なんて、天然記念物ものだろう。
当然、携帯を手に入れること自体は簡単なことだし、社会的に見ても持っていない人口の方が少ないくらいだ。
だからこそ、私は敢えて持とうとはしなかった。
……余計寂しくなるだけだ、月末になっても料金の心配をしなくてもいい携帯は。
それでも私は――薄い桃色の携帯電話がほしかった。

☆違う理由だけど、私も携帯は持っていません。
 次は「雌鳥」「葛餅」「模試の結果」でお願いします。
516「雌鳥」「葛餅」「模試の結果」:03/09/19 01:23
「はい、模試の結果が出てるわよ」
先生が無造作に『葛餅』をわたしに放り投げた。

現在主流の生体有機コンピューターでは、
このナノチューブシナプス含有ポリマーで作られた物体が
記録メディアとして一般的だった。
それを私達はその外観から『葛餅』と呼んでいた。
ふた昔前のメディアであるCDを『お皿』とよんでいたように。

「やはりこんな結果になりますか、自分でもどうかなコレっては思ってましたけど」
「まっ、努力の跡は見えるんだけど、あなたに男の扱いは難しいようね」

CDがその役割を終え出したころから、地球全体のメス化が急速に進行した。
甲虫にはそのほとんどに角がなく、ニワトリは鶏冠の小さい雌鳥ばかりになっていた。
人類も例外ではなく、今では女だらけ、数少ない男もかなり女性化が進んでいた。

「この保護計画では5年後の人口は現在の63%に減少すると考えられます」
そう結論づけられた模試の結果を眺めながら、
私は『男をその気にさせる』プログラムの新しい試案の構想を練っていた。


次は「ストレンジ」「ノギス」「ポップ」でお願いします。
517「雌鳥」「葛餅」「模試の結果」:03/09/19 01:33
板倉環は彼が担任しているクラスの子に返す模試の結果に目を通しながら、葛餅を食べていた。
葛餅は生徒の雪村晴香が持ってきたものだ。
それは可愛らしいハンカチで雌鳥羽に包まれたタッパーに入っていた。
晴香はよく失敗した、とか作りすぎた、と言っては環に食べ物を持ってくる。
その市販のものよりモチモチと美味い葛餅も、作りすぎてしまったものらしい。
「おっと」
楊枝から葛餅が模試の用紙に滑り落ちた。
環は慌ててテッシュでそれを拭き取ったが、模試の用紙は水を吸い、ごわごわしたシミになってしまっていた。
それは晴香の模試の結果だった。
「まいったな」
仕方なく環はそのシミを丸で囲み、”葛餅の跡。上手かった”と書き入れて、教室に向かった。
「この間の模試の結果を返す。浅野、江原……高野……光浦……雪村」
晴香は返された模試のシミをじっと見つめていた。
環は居心地の悪い気分で晴香の様子を盗み見た。
晴香はシミのついた模試の結果を抱きしめて、幸せそうに微笑んでいた。

次は「コオロギ」「バケツ」「国旗」で
518517:03/09/19 01:34
すいません。
次は>>516さまの「ストレンジ」「ノギス」「ポップ」でお願いします。
519「ストレンジ」「ノギス」「ポップ」:03/09/19 02:34
聞いてくれよ、ちょっと奇妙な話なんだけどどさー。
この前、うちの電子レンジが突然動かなくなっちゃたんだ。
あれー、最近このレンジ使いすぎてたからかあ?
ストライキ起こしちゃたかな?これがほんとのストレンジ、なんちゃって。

まあ、冗談はともかく何で動かなくなったのか聞いてみたわけよ。
え、誰に聞いたかって?もちろんレンジ本人に。
教育テレビでよくやってただろ、おでこのめがねでデコデコデコリーン
とか変な呪文言ってモノと会話するやつ。それをやってみたんだ。

そしたらさ、レンジの奴最近太ってきたのを気にしてるらしい。
確かに俺はポップコーンとかフライドチキンとか脂っこいものを
よくレンジにかけるんだよね。こういうの、太るもとらしいんだ。
それでノギスを使って大きさを測ってみたら、確かに買ったときより
横幅が大きくなってる気がする。

しかたないから、レンジにお願いしちゃったよ。
コレから俺、低カロリーなヘルシー料理しか食べません。
だからまた前のように温めてください、ってね。

次は「コオロギ」「バケツ」「国歌」で
520名無し物書き@推敲中?:03/09/19 07:05
「コオロギ」「バケツ」「国歌」

 アリの生活に、休息はない。
 朝5時、起床。
 国家斉唱にラジオ体操。
 「人員点呼、番号ォー!」「本日の業務は・・・」

 新人アリの彼がそれを見たのは、そんな冬の日の事だった。
 複数のアリ達に、キリギリスが痛めつけられている!
 ズタズタになったその羽は、決して寒さのせいだけではなかった。

 「おやおや、あのキリギリス様が・・・へっへっへ」
 「そらそら、腐った胡瓜だ。欲しいか?土下座してみろ!」
 「ジャンプなんてしやがって。生意気なんだよ。ムカツクー」
 
 ここぞとばかりに向けられる、集団生活のストレス・・・
 バケツを持って黙々と、アリトイレの掃除をするキリギリス。

 若アリは来年の夏が怖い。まあ、自分はその日まで生きてはいないか。
 原因はそこだった。アリ組織は強固だが、アリ本人は重労働で短命だ。
 冬も、もうすぐ終わる。復讐の夏が近い。
 越冬能力を持つコオロギの足音がカサカサと、どこからか聞こえてきた。

 ※一行オーバーしたー
 次のお題は:「昆虫」「注射」「秘密」でお願いしまふ。
「昆虫」「注射」「秘密」

9月の夕暮れの町を私はふらふらと家路にむかう。顔に貼られた巨大な絆創膏がひきつれて
唇がめくれあがってくる。顔はおおきな花粉症用のマスクでかくしているし、鼻から上は
濃い茶色のサングラスをかけているから私の秘密は道ゆく他人には知られることはないだろう。

「で、決めました?」美容形成外科を標榜する新宿の病院の診察室で、若い医師が
せっかちに聞いてきたのは昨日のことだ。待ち合い室には、ケミカルピーリングで
顔の皮をひとむきしようとやって来た人。フェイスリフトで顔からおでこまで縛り上げ
10年分の時間を買い戻そうとしている人。様々な願望を胸に秘めた人間で市場のように
ごった返している。「……決めました。やります」「じゃ、明日予定通りオペで」

今朝から「気持ちを楽にするお薬ですからあ」という安定剤の注射をされても緊張して
オペ室に入った。全身麻酔ではなく局所麻酔にしたから、医師の作業がおぼろげに
感じられた。コツコツ、ノミのような物で削られたり、何かをグイグイ押しこまれたり。

夜になって顔の腫れがピークに達したが、ナースに薬をもらって私は退院した。小さい頃から
低い鼻のことで「昆虫」とか「せみ」とか「顔面スライディング」とか言われ苦しんできた。でも
今は他人の鼻を観察しながら笑いが込み上げてくる。不細工な鼻ばっかり。しかし、駅の鏡を見た時
私に新たな苦悩が襲ってきた。「ああ。もっと頭も小さくしたい」頭蓋骨縮小の名医を探す旅が始まった。

**次は「猫」「本名」「屋敷」でおねがいです。
「昆虫」「注射」「秘密」「猫」「本名」「屋敷」

その瞬間、ある夏の日の出来事を思い出した。照りつける日差しと草いきれ、ひどい喉の渇き……。

虫かごにはシオカラトンボ、アブラゼミ、イナゴが数匹入っている。どれも標本にするほどの価値は
なかったが、どうしても新しい昆虫採集セットを使いたかったのだ。
仲間内で猫屋敷と呼んでいる廃工場にやってくると、セットを非常階段の三段目で広げた。
注射器をおっかなびっくり取り出し、メロンシロップのような薬品を小さな容器から吸い取る。
まずはイナゴからだ。その大きさからは想像もつかないほどの瞬発力を秘めた脚力を警戒して、
慎重につかむ。クリーム色をした腹は柔らかく、針を押し当てるとぐにゃりとへこんだ。力を込めてずぶり
とやると、ゆっくり薬を注入する。小さな腹には多すぎる量だからすぐに溢れ出し、ぼたぼたと垂れたが
構わず全部使い切る。イナゴは触角や足を何となくといった感じで動かしていた。手を放しても逃げる
ことはせず、やがて死んだ。それから手当たり次第にかごの中の虫に針を突き刺した。そして、一匹も
いなくなると、セットを片してさっさと工場を後にした。結局、標本は作らなかった。当時は意識していな
かったが、ちゃんと罪悪感はあったのだと思う。誰にも話さなかったのだから。

アンフェタミン、日本名で言うところの覚せい剤を腕に注入しつつ、思い出したのはこんなことだ。
いまも注射器に関しては、あの頃と同様に秘密にしている。でも、それは罪の意識からではない。
ただ単に捕まりたくないだけだ。

次は「アンテナ」「第六感」「スランプ」
523「アンテナ」「第六感」「スランプ」 :03/09/19 22:08
その頃、僕らはよく、日が暮れてから校舎にこっそりと忍び込んで、屋上に集まったね。
仲間の誰かが持っていたBCLラジオ(クーガ2200ってやつだ)で地球の裏側からの電波をキャッチしようとしていたんだ。
手製のループアンテナを手すりにくくりつけ、雑音の中にじっと耳を澄まして声を探したっけ。
あの頃のラジオはデジタルチューニングしか知らない世代には信じられないだろうけど、アナログの目盛りを頼りに第六感で放送局を探り当てていたんだ。
僕らの探していたのは、アルゼンチンからの放送だっけ。
かすかに消えては浮かんでくる声に、僕らは息をひそめて集中してたよね。
受信状態を、今日は絶好調、今日はスランプなんて言いあったっけ。

いま、君たちは何をしているんだい?
あの頃みたいに耳を澄ましてみるけれど、君たちの声はちっとも聞こえやしないや。
きっと、僕は、大人になってからずっとスランプなんだな。きっと。




NEXT
「戦艦大和」「詩集」「緑」

あたしは物持ちがいい。
あたしが生まれてはじめてお兄ちゃんから貰ったプレゼントは20センチぐらいの
戦艦大和のプラモデルだったけれど、緑のフエルトを下敷きにそれは今でもあたしの机の上に飾ってある。
ありがとうって言うとお兄ちゃんはとても嬉しそうに笑って、その後もプラモデルがうまく出来るとあたしにくれた。
あたしはそんなプラモデルの横に置おいてある古びた高見順の詩集を手に、お兄ちゃんの入院している病院に向かった。
「ああ、雫」
病気に犯された人というのは、どうしてこんなに柔らかく笑うんだろう。
「これ頼まれてたやつ。大変だったよ。お父さんの遺品ダンボールに入れたままだったから」
癌で死んだお父さんの遺品は形見わけされることになり、あたしは棚一杯の本を貰っていた。
「ごめんな。雫なら持ってると思ったんだよ」
告知はもうこりごり。医者にお兄ちゃんの病状を聞かされたお母さんはそういって首を振った。
「……どうしてこの詩集なの?」
「ん?……なんとなくな。ちょっと読みたくなってさ」
あたしはお兄ちゃんに詩集を手渡した。
手渡す瞬間思わず涙をこぼしてしまったけれど、お兄ちゃんは何にも言わず微笑んでいるだけだった。

次は「地震」「おでん」「薬」で
525名無し物書き@推敲中?:03/09/20 21:06
「店主!!!」
差し出したおでんを一口食べるや否や、そいつはいきなり俺を怒鳴りつけやがった。
偉人めいた貫禄がある初老の男なんだが、放った言葉は滅茶苦茶だ。
「なんだ、この味は。よくもこんなものを私の前に出せたものだな!!!」
「は、はあ?」
「どれもこれも熱を通しすぎて、素材本来の味が死んでいる。つゆの中で素材が泣いているわ!!」
いきなり何を言い出すんだ。コメディアンか、この男は。
「しかも、全ての素材をいっしょに煮込むとは言語道断。がんもと牛すじでは、それぞれ最適な加熱時間が異なるはず。で、あれば、時間差で煮る程度の工夫はすべきではないか!?」
この親父・・・・・いまがどういう時だかわかってんのか?
「しかもこのつゆ、舌をピリピリ刺すような味、これは化学調味料を使っているな?
料理に対する情熱も工夫も感じられぬ。否、これは料理でさえない。どういうつもりでこの店を出しているのか、伺いたいものだな!!」
「まわりを見ればわかるだろ」
俺は冷ややかに言ってやった。見渡せば、地震で倒壊した瓦礫が広がる大地。
かつてはここが数多の高層ビルが立ち並ぶ大都市だったとは、にわかに信じがたいものがあるだろう。
この珍奇な2人連れの後ろには、家を失い、焼け出された被災民たちが列を作っている。
「俺は炊き出しやってんだよ、炊き出し。俺は俺なりによ、とにかくあったかくて美味いモンたくさん作ろうって、じゃあとにかく煮込みがいいなって、それでおでん出してんだよ。
だいたいなんなんだ、あんだら。こんな場所までベンツで乗り付けて美味いのマズイの。後ろの人たちの邪魔だから、食ったらつべこべ言わずにどっかへ行ってくれ!」
とたんに、そいつはいきなり立ち上がり烈火のごとく吼えた。
「この貝原雄山によくそこまでほざけたものだな!!! 不愉快だ、帰るぞ、仲川!!!」
ベンツに乗り込んで、何処かへと去ってゆく・・・・・・。
なんなんだ、あいつらは。最近はおいしいのが多いが、アレは極めつけだ。
薬(ヤク)でもやってんじゃねえかな。

「願望」「福音」「飢餓」
526名無し物書き@推敲中?:03/09/20 21:08
すまん
×おいしい→○おかしい でよろ

この誤字はちとひどいや(^^;)
527「願望」「福音」「飢餓」 :03/09/21 02:57
ある夕暮れの繁華街、冴えない風貌の中年男が突然叫びだした。
「はいはいはいみんな注目!、おまいらに福音や、心して聞いてや」
「ここにおる人間は皆フサフサや、これから先ヘアチェックとは無縁の人生やで」

「おまいらはフサフサや、フサフサパラダイスや!俺が保証したる。
それでもおまいらはそれを当たり前のことだと思っとるんや!
おまいらは、ヘアスタイルがどうの、髪の色がどうのと
髪をいじることばっかに夢中で、何か大切なことが忘れとるんとちゃうか?」

「見てみい、世の中にはフサフサ飢餓で苦しんでる人間もぎょうさんおるんや!
そんな人達のこと毛先ほどでも考えたことあるか?
今こそおまいらは、毛髪力をそんな恵まれない人達にわけてやるべきや!
そうすればおまいらの心は、これから先永久にフサフサやで!」

(それはお前の願望やないんか?)
まわりの群集の多くは、冷ややかな目で彼のことを見ていた。
まるで現在に降臨した預言者のように、熱く民衆に語りかける彼の頭部は
見事なまでに額と頭部の区別がつかなくなっていた。


次は「ハイボール」「接近」「二人でお茶を」でお願いします。
   「ハイボール」「接近」「二人でお茶を」

「サキがさあ、どうしても無理だっつーからさあ」店長から突然、あたしの携帯に呼び出しが入った。
サキはあたしの先輩の女王様だ。たぶん、娘のまいちゃんが熱をだしたんだろう。3歳のまいちゃんは
生まれつき体が弱い。ホテルのルームナンバーと内藤という客の名前を告げると電話は切れた。
あたしは一人でお仕事をするのは始めてだ。サキはいつも「絶対一人でデリは受けないで」
「客に無理矢理酒の浣腸されて、急性アル中で死んだコがいるんだよ」って言ってた。
でも、あたしが受ければサキにもお金を渡せる。まいちゃんのためにもお金は必要だ。

部屋のドア−をノックすると「はい」とういうくぐもった声がして、ガチャリとドアーが
開いた。客は「かけて」と言うと、テレビの前のソファーに座って何も言わずに画面を観ている。
テーブルの上には氷の溶けたグラスとウィスキーの小瓶。「君も飲む?」と聞かれて
「サイダーみたいの飲みたい」と言うと、「甘くないヤツだけどいい?」と言って冷蔵庫から
サイダーの瓶を取り出し、あたしに渡した。浴衣を着た客が接近するとカビみたいな墨汁みたいな変な
においがした。「ぼくはハイボールにしよう」そう言ってあたし頭を子供にするみたいになでた。
客の脇腹から何かの管が出て袋がぶら下がっている。「腸にね、大きなガンがあってもうダメなんだ」笑いながら言う。
「君にいっしょにビデオを観てほしい。『二人でお茶を』っていう古い洋画なんだけどね」
あたしは黙って客の背中に手をまわした。暗い病気のにおいを胸の底まで吸いこんだ。

次は「息」「泡」「くらげ」でお願いします。
529 息 泡 くらげ :03/09/21 20:18
海の中から見上げた空は、月の明りに満ちていた。
夜空は揺れて、世界の向こうに。
吐息が立ち上る。泡となって、音を立てて。
ごぼごぼ ぼぼぶっ
でもその音以上に、よく聞こえるのは、自分の音。
鼓動、血、肉の音、それに、頭の中の音。
よく聞こえる。
今、背中から沈んでいったなら、どうだろう。
世界を見つめながら潜っていく。光も、何もかもなくなるまで、どこまでも深く。
素晴らしい空想に、涙が。海に紛れる、でもそれは私の一部。溢れた。
はっとした。驚いた。
もう月は見えない。視界を遮るのは、白っぽい透明。
くらげさん。ごめんね。邪魔をした。バイバイ。
海面に上がり、顔を拭って世界を見たら、想像も出来なかった、無数の星が。
今度は涙が頬を伝う。肌を包む。私の一部。

ストーリー性はないね。うん、ないね。
つぎは『ささやき』『ぬくもり』『しあわせ』でお願いします。
530名無し物書き@推敲中?:03/09/21 20:33
俺がその気になれば、20メートル離れてる「対象」の衣擦れ
の音だって聞こえる。ほら、今お前少しだけ息を吸っただろ?それ
も、だいたい、まあ20ccってとこかな。男ならもう少し肺活量無い
とね。もちろん、悪意を持った敵に呼吸を読まれないことがそれ以前
に必要なんだけどさ。

ミズクラゲって知ってるか?まあ知ってることにしてくれ。知らなきゃ
今覚えろ。ストラビラ化してエフィラを採集するんだ。以上。

意味が分からなかったらネットで調べろよ。ざっと見積もって300
0万のバカどもがお前の問いに答えてくれる。この国はこんなに荒
れちまって、もう誰も信じねぇけど、昔はここにそれこそ天をうがつ
建物がざっと3000万はあったんだ。今お前が向かってる電子の
網も、その遺産さ。俺たちはそいつらを食いつぶして生きてんの。
「ネット・バブル(泡)」って呼ばれた時代だったね。

次は「新聞」「パイプ」「灰皿」でお願いします。
531名無し物書き@推敲中?:03/09/21 21:09
「すいません、火を貸してください」
パイプを咥えている老人に声をかけた。
パイプを借りると、そのパイプを新聞につけた。新聞に燃え移った火はしだいに
大きくなっていった。
老人がしゃがみこんで言った。
「新聞に火をつけて何をするつもりなんだ」
「消火器の性能をためすんだ、やってみるからおじさんもみててよ。
と言い、消火器を火の方へ向けた。
「あれっ、でないな」
「どれどれ」
老人は思いっきり消火器をつかみ、放り投げた。鈍い音を立て、消火器は地面に衝突した。
「灰皿はないかい」

次は、
「豚」「羊」「アヒル」でお願いします。
532豚 羊 アヒル:03/09/21 21:26
あさのじゅういちじ、
学校に着くと私は、保健室に向かいます。
 教室に、学ぶことなんてありません。

「お前が来るころだと思っていたよ」
「山根…授業は?」
「あんな豚教師どもに習うことなんかねぇよ」

本当は知ってる、私に付き合ってくれている事。
私たち、まるで迷える子羊みたいね。

「山根、わたし、自分のこと醜いアヒルの子だって信じていたいの」

次は「白」「幻想」「夕暮れ」で
533名無し物書き@推敲中?:03/09/21 22:07
回虫深沢竿無袋直樹乳酸菌生生 
昆虫長坂脳軟化症晋垂流放置戯 
卑劣野々村潰屋英樹賽河原墓守
栄養団地妻巨大便器猪刑牌屡病
534「白」「幻想」「夕暮れ」:03/09/21 22:49
From: 「白」「幻想」「夕暮れ」
Mail:
----------------
白虹、と言うんだと思う。夕暮れ時の空に白い虹が、南西から南東へとかかっていた。
幻想的な空を巡る一本の道。もし地球に土星のような輪があったなら、こう見えるんじゃないだろうか。
「綺麗だね」
「台風あけの雲だろ……おい時人、やめろよ、外じゃ嫌だって!」
瑞季はキスしようとした僕の体を押し退けた。
僕はよほど物欲しそうな顔だったらしい。瑞季はぷっと吹き出すと僕の頭を撫でた。
「時人ってさ、よっぽど溜ってんだな」
瑞季は笑いながら腰まである長い髪の毛を筆にして、僕の手をちょんちょんと刺激する。
「お前ってさ、どうしてそう女みたいなの?」
「瑞季はそういうの嫌い?」
「嫌いだよ。大嫌い」
瑞季は少し羨ましそうにそう言うと、僕の手にキスをした。
僕は手にくすぐったさを感じながら、じっとキスの跡が乾いていくのを見つめていた。
「でも僕、瑞季が羨ましいよ。すごく凛々しくて格好いい」
瑞季はすこし微笑んで長い髪に抱かれるように髪の毛を纏って寝そべった。

次は「コピー」「換気扇」「スプリンクラー」で
私はコピーする。
みんなに気に入られている人の仕草、語調、癖。
全てをコピーする。
そうするしか、私は友達を作る事が出来なかった。

今、みんなに気に入られている人は、変わっている。
家に帰ると、すぐに換気扇を回し、庭の植木にスプリンクラーで水をやるそうだ。
私の家に換気扇は無いし、植木も無い。
まして、スプリンクラーなんかあるはずが無い。
仕方なく、私は家に換気扇を取り付け、植木を植え、スプリンクラーを買った。
そして、私は彼女の癖をコピーした。

家に帰る。
換気扇を回し、スプリンクラーで植木に水をやる。
私の仕草を見ている人は居ない。
私がこれをやったからといって、みんなが私を好きになってくれるわけでもない。
癖をコピーする…一体、何の意味があるのだろうか。
庭先では、1つしかない植木に、スプリンクラーが水をかけ続けていた。

次は「故郷」「上京」「おにぎり」で
536くさりかけ:03/09/22 01:31
 長距離列車の中で食べたおにぎりは、なつかしい味がした。

 母は駄目な人で、男をとっかえひっかえしては家に引っ張りこんで
いた。どうやら彼女にとって男は消費物らしく、時間がたつと腐って
しまうらしい。そんな彼女が、死んでしまった父をかえりみるはずも
なかった。それどころか、娘の私すら邪魔なようであった。
 ある日家に帰ると、書置きが手糞な字で母の蒸発を宣言していた。
一呼吸おいて、玄関から派手にノックの音。その向うで誰かが
金を返せと怒鳴り散らしていた。

 上京すれば、働き口もあるだろう。捨てた故郷に未練はない。
でも、長距離列車の中で食べたおにぎりは、なつかしい味がした。
537くさりかけ:03/09/22 01:42
おっと、次の御題は
『箱』
『鍵』
『最後』
で、よろしく。
新スレ立てなくていいのか
539gr ◆iicafiaxus :03/09/22 03:18
「箱」「鍵」「最後」
高校の名前と共に卒業記念という文字が彫りこまれた木の蓋を開けると、オルゴールが
高い音で「イエスタデイ・ワンスモア」を奏でた。曲は途中から始まって、3回くらい
繰り返し、やがて次第に力を無くしてまた途中で消えてしまった。
私はオルゴールを持ち上げて箱の底を見た。卒業式の日にみんなに書いてもらった
寄せ書き。元気でねとかまた会おうねとかありきたりな言葉を添えて書かれた、クラスの
友達、部活の後輩、たくさんの名前の文字に、その人の顔が浮かんでくる。
箱の中を探ってみれば、ブレザーの襟につける学年章とか、自分の名前を捺すときの
ゴム印なんかにまじって、新潮文庫のキーホルダのついた、安っぽい真鍮製の鍵が一つ。

県のなんとか推進計画というのの一環だとか。戦前からあの部室長屋があった場所には、
綺麗なクラブルーム棟がこの春、完成しました。
私が3年間を過ごした文芸部の部室も、今はもう無くなってしまって。いらなくなった
この鍵は、旧部室で最後の部長の私が、記念にもらってきたのです。

夏の休暇に私は郷里へ帰って愛する後輩たちに会ってきました。新しいクラブルームに
招かれて一緒にお茶を飲みました。みんな元気で、クラブルームは明るく、活動はたぶん
私の時より盛んになっていて、彼らは本当に其処にいることが楽しそうでした。

でも、この鍵が合うドアはもう、どこにもないのですよね。

私は鍵を箱にまた戻して、蓋を閉め、オルゴールを引き出しの奥へ片付けた。

#次は「林」「うるさい」「靴」で。
#多分次の人はもう書けないので、じゃあスレ立てしときます。
何で無駄に長文が多いの?
簡潔に上手くまとめれる香具師はいないの?
541gr ◆iicafiaxus :03/09/22 03:29
もう1人か2人くらい書けたっぽいですね。早まったかな。ゴメソです>皆様

ともかく新スレ立てちゃいました。
この三語で書け! 即興文ものスレ 第十四段
http://book.2ch.net/test/read.cgi/bun/1064168742/
542名無し物書き@推敲中?:03/09/22 03:59
>>540
次スレで1度やってみ。
その時自分の文章力に気付くでしょう。
543 :03/09/22 04:30
               ∧         ∧
             / ヽ        ./ .ヽ     
             /   `、     /   ヽ    
           /       ̄ ̄ ̄ ||||| \
     .       l  -===-    -===-  |       
..━━━━━━━|   |||||   ノ        .|━━━━━━━━ 
  ミッ       |     <           .|
    ャッ     ヽ     __ノ       /
      ウチ    \            / 
何年もの間、都会と言う森林の中を私はさまよっている。
もう抜け出すことは出来ないのだろうか、靴は既にボロボロだ。
聞こえてくるのはうるさい騒音。
ここで一生を終えるのかもしれない――
望んで此処へ来たはずだったのに、何故か涙が出た。

次は「猫」「空」「真実」
>>541

あっち(新スレ)はどうなるの?
三語スレストーカーに魅入られたらすぃ
真っ白な猫は、自分の瞳の色みたいな空を見上げていた。
私はその傍らで真実味の無い文章を、ただ黙々と書き呟く。

次は「チョコレート」「スクーター」「彼岸花」
彼岸花は死人花。スクーターはやくざな玩具。電柱の根本にはチョコレート。彼の好物。
これだけ置いて帰ります。もう、ここには来ません。さようなら。

次は「プライド」「出会い頭」「ダウン」
出会い頭の右ストレートが俺の腹筋に食い込んだ時、惨めにも俺は失禁してしまった。
客席が騒然としている、だけど負けたわけじゃない、プライドが俺にファイティングポーズを取らせた。

次は「声」「夢」「捨て」