あなたの文章真面目に酷評しますPART10

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レス…本当に有難うです。
権助氏に指摘された部分他、書き直してみましたので、
講評お願いしまつ。

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 空気中の埃の中に、光の筋が見えた。
 天井に挿された竹筒から、日に数刻だけ光が差し込む。
<……もう、午なのだな>
 混濁する意識の中、知らぬ間に落としていた鈴を拾う。
 ゆっくり振ると、金属片の澄んだ音が満ちた。微かな振動が空気を揺らし、光の筋が形を崩し散った。
 それを目で確かめ、深く息を吐く。
 既に耳の機能は失われ、男が鈴の音を確認する術はこれしかなかった。
<まだだ>
 塵に反射し粉々にきらめく光を、男はぼんやりと見遣る。
 光。眉間に光を感じた時、一瞬「それ」が来たのかと思った。
<……まだだ、これは、まだ、オレの待っとるもんでねぇ>
 軋む身体を起こし、男は露の染み出た土壁に背を預け、結跏趺坐の形を取った。
「なもあみだぶつなもあみだぶつなもあみだぶつ……」
 男は唯一知っている経文を繰り返した。
 数ヶ月前、男を剃髪した隣村の僧に「これだけを唱えていろ」と言われた文句だった。
 僧は男の髪を剃った後、村長から得度代として麦と大根を受け取ると、己の新しい弟子の顔を振り返る事なく、寺の門を閉じた。
 僧の男を見る軽蔑しきった目や、麦と大根を受け取った時の唇の歪み。
 そんなものが眼前の薄闇に浮かび上がり、消えていく。
 男は姿勢を正し、光を薙ぎ払う様に鈴を振り続けた。
「なもあみだぶつなもあみだぶ、なもあみだ……」
 陽は傾き、再び空間が暗闇に占領されていく。
「なもあみだぶつ、なもあみだぶつなもあみだぶつ……」
 聞こえぬ鈴の音、聞こえぬ経文。
 動かしているこの舌は本当に声を発しているのだろうか。この鈴は本当に音を奏でているのだろうか。この祈りは届いているのだろうか。
「なもあみだ、なも……」
 微かに残っていた陽光の残滓も消え、男の姿は闇に没した。
750730-731 (2):03/08/13 21:33
「爺、何だら聞こえる。怖えよぅ」
 草の根の詰った籠を置き、少女は軽く耳を塞ぐ真似をした。
 老人は少女を抱き寄せ、目を閉じ、乾いた風に乗る音に耳をすませた。
「……即身仏」
「何だ?」
 少女は垂れてくる青洟が気になるのか、垢で黒ずんだ手で鼻をしきりに擦る。
「ありゃあ、仏さんだ」
 老人は乾燥した手で、少女の洟をかんでやった。
「ほとけさん」
 無邪気に覗き込んでくる少女から、老人はそっと目を逸らした。
「わっちら助けるために、仏サなろうとしてんだ……」
 消え入る様に言った後、老人は背後に聳える山を眺めた。
 微かだが、風に運ばれてくる鈴の音。
<何を迷うことがあるか。ヤツは自分で仏になると言うたでねぇか>
 老人は何度か首を左右に振り、脳裏に浮かぶ面影を振り払おうとした。
 村の厄介者でしかなかった男。何の役にも立たなかった男。いつも薄暗い瞳をして、村人のおこぼれに預かるしかなかった男。
<そうだ、だから終めぇに役目をくれてやったでねぇか。…ヤツも本望だて。生きてても何の役にも立たない男が、奉られて仏サ成れんだからな!>
 老人は己の手と同じくひび割れた地面を眺めた。
 土は吸い尽くしていた。吸い尽くし、吸い尽くし、それでも足らぬと裂け目を開け、もっと注げ、もっと注げと喚いていた。
<仕様ねぇ、仕様ねぇんだ>
 老人は孫の痩せて骨の浮き出た手足を眺め、次いで天を仰ぎ見た。
 全てが白かった。
 焼き尽さんとする陽光、乾燥した大地、何もかもが白くぼやけて平坦だった。
 ただ、鈴の音だけが白い世界に混じり、充満していく様に思えた。
<早う、早う、……逝んでくれ……>