「わかってる!もうやってるよ!」
DORAEMONはジャミングシステムを駆使して、深紅のACにハッキングをかけよう
としていた。ACのメインシステムに直接介入し、操作不能の状態にしたうえで
、コックピットを開放しようというのだ。しかし、これはなかなかはかどらな
かった。当然のことだが、AC自体にも対ジャミングシステムが組み込まれてい
る。しかし、ここで手間取っては敵側も現在DORAEMONがハッキングをかけよう
としているのを察知し、妨害される可能性もある。
「せめて、直接システムに接続できれば…」
自身の持てる知識を総動員しながら、DORAEMONはうめいた。
「あとちょっとなのに…」
「DORAEMON…」
ディスプレイに表示されたSIZUKAを見つめる。いつから彼女はこんなものに乗
せられているのだろう。そもそも、ACの操作というのは想像以上に体力を消耗
させる。激しく動き回るたびに発生するGに耐えられるだけの筋力。長時間の
操作を続ける持久力。張り詰めた状況で更に神経を研ぎ澄ませる集中力。NOBI
もまともにレイヴンとしてやっていくための基礎訓練だけで半年以上費やした。
だとすれば、ごく普通の女の子でしかなかったSIZUKAちゃんはいったいどれだ
けのことをさせられたのだろうと思う。妙にやつれた彼女の顔が、そのつらさ
を物語っていた。
「出来たぞ!今からあのACのコックピットを開放する!」
DORAEMONから通信が入る。待っていましたとばかりにNOBIも身構える。しかし、
様子がおかしい。SIZUKAは前以上に苦しそうだ。
「…頭が痛い…、NOBIさん…こないで」
頭を抱えて、狭いコックピットの中でうずくまっている。
そのとき、DORAEMONが操作していたディスプレイに「Error」の文字が表示さ
れ、けたたましくアラームがなった。
「なんだ?何が起こっているんだ?」
完全に機能を停止させたはずの敵ACの機能がどんどん回復していく。DORAEMON
は焦った。そして、ろくな対応も出来ないまま…
「接続が切断された!失敗だ!NOBI君下がれ!」
「なんだって!?」
メインモニターに目を戻すと、機能を回復したACが立ち上がる様が見える。
「SIZUKAちゃん!」
もう一度回線にむかって大声で呼びかける。しかし、反応は無く、強制的に回
線は切断された。
「…作戦は終了です。お疲れ様…」
オペレーターからの通信が入っても、NOBIは放心状態のままであった。
あのあと、SIZUKAを乗せたACは急に後退。NOBIが追いかけるまもなく作戦領域
を離脱してしまったのだった。一応作戦中であったNOBIが作戦領域外まで追跡
できたはずも無く、SIZUKAがどこに行ってしまったのかもわからない。
「…NOBI君、作戦終了だ。機体を回収するから、システムを通常モードに移行
させておくんだ」
DORAEMONからの通信が入っても、NOBIはぼんやりとしたままで、SIZUKAのACが
消えていった方向を見つめていた。
おぉ静香ちゃんまで登場だ
なんか続きが気になるな
hosyuhosyu
360 :
名無し物書き@推敲中?:05/01/11 22:50:46
保守あげ
ようやく再開できそうです。
>>358,359,360
続きを気にしてくれたり、保守してくれてありがとう
自室にもどったあとも、NOBIは放心状態のままであった。そんなNOBIに
DORAEMONはかける言葉も見つからなかった。それもそうだろう、あれだけ探し
ていたSIZUKAに意外な形であったとはいえ再会できたというのに、結局助ける
事も出来ず、またすぐ行方が分からなくなってしまったのだから。
せめてあのACがどこのもので、どこに行けばいいのかだけでもわかれば…。
いや、どこのACかは大体予想がついている。出撃前にDEKISUGIが言っていたよ
うに、きっとクレスト社のものだろう。しかし、それがわかったところで、結
局どうするのだ。DORAEMONは一人押入れの中で悶々と考えていた。所詮レイヴ
ンであるNOBIでは、依頼が無ければ好き勝手に動き回る事は出来ないのだ。
そのとき、急に押入れのふすまが開いた。そこにいたのはNOBIだった。
「どうした!?」
「DORAEMON、DEKISUGI君からメールが来ていたんだ。ちょっと見てくれ」
差し出されたディスプレイを見てみると、確かにDEKISUGIからのメールだった。
「なになに?『先ほどの作戦お疲れ様。今回もACに襲われて、大変だったみた
いだね。ところでNOBI君が接触したACについていくつかわかったことがある。
メールで説明するのは少し大変だから、ぜひ後でブリーフィングルームに来て
くれ』か…」
「ね?もう何かわかったらしい。僕は早速行ってみようと思うんだけど、
DORAEMONも行くかい?」
そう言ったNOBIの顔はしっかりしていた。もうあのショックからは立ち直った
らしい。
「当然行くよ。じゃあ、早速行こうか」
ナイスタイミングだなDEKISUGI君、と内心ほっとしながらDORAEMONは答えた。
「やあ、君なら必ずすぐ来ると思っていたよ」
ブリーフィングルームに入るともうDEKISUGIが待っていて、深刻そうな面持ち
で入ってきた二人にコーヒーを渡してくれた。
「あまり良い知らせではないんだが…」
と切り出したDEKISUGIがいった事は、要約すれば次のようになる。
・今回接触したACはクレスト社所属のACであること
・そのパイロットは、何らかの強化手術を受けた強化人間であること
・しかもその強化人間が行方不明であったSIZUKAちゃんであること
・最近のクレスト社の動向から、強化人間部隊が結成されているらしいこと
・その研究施設は先日NOBIが派遣されたD1地区らしいこと
「D1地区だって!?」
DORAEMONが叫んだ。
「あそこには例の兵器開発基地しかない。でもあれはミラージュ社の攻撃を受
けて破壊されたはずだ。そのための高射砲破壊だったんじゃなかったのか?」
「確かに地上施設は破壊されたけど地下施設は無事だったみたいなんだ。ミラ
ージュ社も何度か地上部隊を投入して地下施設も制圧しようとしたらしいんだ
けど、全て謎のACに撃退されている…」
「もしかして、強化人間!?」
「その可能性は十分考えられる。しかも、一機だけでなく、複数機いるらしい」
事態はかなり悪い。
NOBIはSIZUKAがD1地区にいると聞いたとき、すぐにでも救出に向かうつもりで
いた。しかし、ミラージュ社の部隊でも失敗した侵入作戦を、NOBI一人で遂行
するのは不可能だった。そもそも、レイヴンである自分が依頼も無いのに勝手
に動き回る事は出来なかった。
一同の間にいやな沈黙が流れる。その時だった
「おうおう、なんか俺の事忘れてないか?NOBI」
ブリーフィングルームの扉が急に開いて、聞き覚えのある声がした。
「GIAIAN!」
小学校時代よりスマートになってはいたが、相変わらず筋肉質でがっちりとし
た体型の巨漢が入ってきた。
「待っていたよ、GIAIAN」
「悪かったな、DEKISUGI。ちょっとACのアセンブリに手間取っちまってな」
彼もまた、「大破壊」以後レイヴンになっていた。彼の駆るタンク型AC「グラ
ンディオース」はアリーナでもかなり有名だ。その圧倒的火力でどんな相手と
も真向勝負を挑み撃ち勝つというスタイルは人気があったし、その戦法で彼は
かなりのランクまで上がっていた。
依頼方面でも殲滅、制圧、破壊系ミッションでは100%の達成率を持ってい
る。
「今回の件ではGIAIANも他人事ってわけじゃないだろ。で、メールで相談して
みたんだ」
「おうよ、話は聞いているぜ。オレとNOBIが組めばどんな強化人間も怖くない
な」
相変わらず、強気だ。しかし彼にそういわれると何とかなるような気がするか
ら不思議だ。
「でもさ、NOBI君とGIAIANが組んで強化人間と渡り合えるとしても、依頼がな
ければ二人とも動けないじゃないか」
DORAEMONがいい感じになったところで水をさす。しかし、それは事実だ。どう
したものかとNOBIがまた頭を抱えそうになったとき、またブリーフィングルー
ムに見覚えのある男が入ってきた。
「その点なら、我が骨川グループに任せてくれ」
「SUNEO!」
骨川グループ、今はSUNEOが代表取締役となっているその企業は、先の「大破
壊」以降着実に勢力を伸ばしていた。もちろんクレスト社、ミラージュ社、
キサラギ社クラスの大企業ではないとはいえ、NOBI達がいる地域ではそれなり
に勢力のある企業である。
NOBIが直接依頼を受けた事はないが、何度かレイヴンズアークに依頼をしたこ
ともあるらしい。
「今回の件は、手続き上骨川グループが依頼したということにしておけばいい」
たしかに、彼の財力ならそのくらいの依頼をすることなどどうということない
だろう。
「でも、大丈夫なの?骨川グループ名義で依頼をするって事は、下手をすると
クレスト社から報復を受ける可能性もあるんだよ?」
またDORAEMONが茶々を入れる。心配性すぎないか、と思う。
「その点は抜かりない。僕のほうで操作して公式記録には一切骨川グループの
名前が残らないようにしておく。架空のテロリスト団体の名前でも載せておけ
ば上の連中もクレスト社も納得するだろう」
DEKISUGIがさらりと恐ろしいことを言う。
「じゃあ決まりだね」
役者は全てそろった。SIZUKAちゃんを救出するため、小学校時代からの仲間が
また集ったのである。
NOBIが高射砲を全て破壊してからミラージュ社の空爆があったD1地区。その爆
撃の傷跡がまだいえないクレスト社兵器開発基地に二機のACが投下された。
夜の闇にまぎれて、一気に地下施設入り口まで接近する。
「よし、そこが入り口だ。これから扉をこっちで操作して開けるから、開き次
第二人とも進入してくれ」
DEKISUGIから通信が入る。今回の依頼では事態が事態なので、専属のオペレー
ターではなくDEKISUGIがサポートに来ることになっていたのだ。作戦領域外で
待機するレイヴンズアーク輸送機のオペレータールームにいるのはDEKISUGI、
DORAEMON、そして依頼主であるSUNEOの三人。
「じゃあ突入するぜ!NOBI、ついて来い!」
両肩には大型リニアキャノンとグレネード、両腕にはショットガンとビームシ
ールドという重装備ACであるグランディオースが先行する。やはりこういうと
きGIAIANがいると心強い。
二機のACは狭い通路を突き進んでいく。レーダーに敵影は無い。
「こんなにもしずかだと、なんか怪しくないかな」
輸送機でモニターを見ながらSUNEOがつぶやいた。確かに、この基地にはまっ
たくガードMTというものが配備されていない。普通ならセキュリティーシステ
ムが起動して、猛烈な歓迎を受けるはずだ。明らかに怪しい。同じくモニター
を眺めているDORAEMONは心配で仕方が無かった。
そんな時、基地内に進入した二機のACが厳重に閉ざされた扉の前に到着した。
扉は電子ロックされており、たとえACでこじ開けようとしたとしてもびくとも
しないだろう。二人はACを扉の前に待機させ、DEKISUGI達に回線をつないだ。
「この扉開かないよ」
「ちょっと待ってて。今からこちらでパスを入力するから」
モニターを睨んでいたDEKISUGIが手元のキーボードをたたき始めた。厳重なセ
キュリティーシステムをかいくぐり、施設管理コンピューターに介入する。断
続的に規則正しく打ち込まれていくDEKISUGIの指を横目で見ながら、SUNEOも
モニターを眺めていた。
「さすがDEKISUGI君…」
DORAEMONはただただ感嘆のため息を漏らすばかりであった。
「よし、開いた。二人とも、扉のロックは解除したよ。もう入れるんだけど、
そこから先の施設内情報は残念ながら僕も持っていないんだ。本当に何が出る
かわからないから十分注意してくれよ」
「おう!わかってる!」
DEKISUGIからの通信が入ると同時に、GIAIANが扉を開け、先に侵入していった。
「ま、待ってよGIAIAN!」
NOBIがやや情けない声を上げてそれに続いた。
しかし、威勢良く突入した二人も、すぐに凍りついた。不気味なほど広く開け
た区画。数本しかない支柱を除いてはろくな遮蔽物も無い不自然なスペース。
そして、その空間の奥の扉の前、そこに彼らを待っていたかのように仁王立ち
をしている漆黒の機体、多少機体のアセンブリが変わっているとはいえ、それ
は紛れも無く…
「お、お前はっ!!」
鬼神とまで怖れられ、アリーナでもその名をとどろかせた男。そして以前の依
頼では敵としてNOBIを苦しめた…
「所属不明機を確認。ブレインジャックと思われます」
ブルーキャットの認識システムが過去のデータと照合させて機体を同定し、無
機的なアナウンスで報告。しかし、そんな報告をされなくてもNOBIにはわかっ
ている。
「MULLER!何でお前が!?」
ブレインジャックは右肩に装備された大型グレネードを射撃モードに設定。折
りたたまれていたグレネードの砲身が繋がり、巨大なグレネード砲のシルエッ
トが確認できる。そして、キャノン発射姿勢をとらずに、射撃。
「何だって!?」
恐るべきことに、ブレインジャックは構えの姿勢をとらずにグレネードを発射
してきたのだ。
本来、タンク型や四脚型ACで無い限り、構え姿勢なしにキャノンを発射する事
は出来ない。キャノン発射時の反動を吸収しきれず、転倒してしまうからだ。
しかし、そのACは二脚型ACであるというのに、構え動作なしに発射してきた。
しかも、転倒する様子も無い。
虚を突かれたNOBIはとっさに回避運動ができない。弾丸が飛んでいく映像が、
まるでスローモーションのビデオを見ているかのように見える。弾丸は、回避
運動が間に合わず、立ちすくんでいるブルーキャットの脇を掠め、まっすぐ
GIAIANのグランディオースに向かっていく。回避できるはずも無い。
「GIAIAN!」
しかし、GIAIANは冷静だった。射撃された瞬間、とっさに機体の向きを変更。
やや左腕を前面に押し出すようにして、左腕ビームシールドを展開。一瞬でビ
ーム粒子がシールド状に展開され、あらゆる衝撃を緩衝する大型シールドが完
成する。シールドを展開したのは、グレネード着弾予測点。まっすぐ吸い込ま
れるように弾丸はシールドに着弾。信管が作動し爆発。一見派手に見えるが、
その衝撃のほとんどはシールドに吸収されている。
「俺は大丈夫だ。そんなことより二射目が来るぞ!」
NOBIを安心させるために通信をいれ、自分も二射目に備え、移動を開始。機動
力がほとんど無いとはいえ、一つの地点にとどまっているよりはましだ。同時
にリニアキャノンを射撃モードに。折りたたまれていた砲身が展開して、ディ
スプレイに「射撃可能」の表示が点灯。FCSがロックオンのための演算を開始
する。
GIAIANからの通信で、彼の無事を知ったNOBIはすぐにサイドステップを開始。
更に右腕スナイパーライフルを構えさせ、ロックオンサイトに漆黒の敵ACを捉
える。敵はすでに武器モードを変更して、こちらに猛然とブーストダッシュで
近付いてきていた。リニアキャノンを装備したGIAIANの火線と重ならないよう
に慎重に回り込みながら、ブレインジャックと距離をとる。
本来AC1対1の戦闘、それも中距離以上での戦闘では、二機とも正面に敵を捉
えて打ち合う、というスタイルになることが多い。ディスプレイに表示された
敵を視認し、パイロットは視認した敵にたいして、自機を回避運動させたり射
撃したりする。ゆえに中距離以上での戦闘で敵のサイドやバックを取るという
事は、戦闘におけるイニシアティブをとることに等しい。そして、今回のよう
な2対1という変則的な戦闘スタイルでは、二機が効率よく動いている限り、
二機を同時に正面に捕らえることなど不可能だ。
NOBIが今回狙ったのも、まさにそれであった。わざとGIAIANと離れていくよう
に動くことで、自分とGIAIANが同時に捕捉されないようにする。ブレインジャ
ックが正面を向けたのはグランディオース。機動力の低いタンク型ACを先にグ
レネードの火力で沈黙させてしまおうという寸法らしい。
「そんなことっ!」
ガンサイトに捉えた敵影をロックオン。重量級ACとは思えない俊敏さで動き回
る敵。それでもNOBIは落ち着いた動作でタイミングを合わせる。いくら牽制弾
であるとはいえ、無駄弾は使いたくない。
敵はグランディオースとの距離をつめ、再度グレネードキャノンを射撃モード
に変更。しかし、その僅かな隙をNOBIも見逃さない。間髪いれずトリガーを二
回。敵が攻撃に移ろうとした瞬間を狙った弾丸だ。それも敵には捕捉されてい
ない。回避されるはずが無い。
おおお、カッコいいな特にジャイアンが
がんばってるなぁ・・・続き期待してます
>>374 感想どうもありがとう
最近なかなかうpできてなくて申し訳ない
しかし、スネ夫の出番が少なすぎ…
「こいつ!」
GIAIANは狭いコックピットのなかでうめいていた。小刻みに方向転換するジグ
ザグ走法で距離をとっているが、機動力では圧倒的に敵が有利だ。二機の距離
はすぐに詰まっていく。
GIAIANは焦った。ここまで近付かれると、発射後にシールドを展開しても間に
合わない。
こちらから仕掛けるか?
トリガーに指をかけた瞬間、敵がグレネードキャノンの砲身を展開。
「まずい!」
とっさにビームシールドのスイッチをオン。ジェネレーターが高速回転し、シ
ールド粒子を加速。ここで十分加速した粒子がシールド状に展開されるわけだ
が、今回のような事態で間に合うかどうかは疑わしい。直撃をある程度覚悟し
た瞬間、急に敵がバックステップ。
「!?」
予想外の事態にGIAIANが驚くまもなく、轟音とともに二発の弾丸が飛来してき
た。しかし二発とも、紙一重で回避される。
これが、ごく普通の状況であるなら単に攻撃が回避されただけに過ぎないのだ
が今回は違っている。敵は、見えていないはずの弾丸を、明らかに「意図的」
に回避したのだ。
とはいえ、せっかくNOBIが作ってくれたチャンスだ。とっさにトリガーを引く
。リニアキャノンへのエネルギー供給開始。火薬を爆破させて弾丸を飛ばす通
常の実弾兵器とは異なり、リニアキャノンは供給されたエネルギーで電場を作
り、その強力な電場から運動エネルギーを弾丸に与え、射撃する。
当然十分な運動エネルギーが得られるまでにはある程度のタイムラグが生じる
わけだが、この間も砲身自体はFCSの情報から目標を捕捉し続けている火線に
修正を加え続ける。激しく金属同士がこすれあうような音が響き、エネルギー
充填完了。同時に、弾丸発射。その初速度は通常の実弾兵器のそれをゆうに上
回る。
火線は完全に敵影を捉えていた。解き放たれた肉食獣のごとく敵に向かってい
く弾丸。
しかし、敵は急にサイドステップ。また紙一重のところで弾丸はブレインジャ
ックをかすめ、その後方の壁にめり込んだ。壁に突き刺さった弾丸はブスブス
と煙を上げる。あれだけのエネルギーが付加された弾丸が命中していれば、敵
は一撃で沈黙していたはずなのだ。
「なぜ…」
見えないはずの弾丸。認識する暇も無いはずの弾丸。どちらも「よけられるは
ずが無い」にもかかわらずよけられた。GIAIANを含め、その状況を見ていた全
員が「とんでもないものに手を出してしまったのではないか」と一瞬後悔した。
NOBIも、GIAIANの渾身の一撃が回避される瞬間を捉えていた。
「あいつ…ばけものか?」
呆然としてしまう。あれだけの反射速度…もはや反射速度がどうこうという問
題どころではなく、人間の認識能力を超えた能力をまえに、NOBIは戦慄した。
「久しぶりだな、NOBI君」
急に回線が開かれ、見覚えのある顔が表示される。
「MULLER、なんで?」
確かにそこにいるのは見覚えのあるその男であったが、様子はかなり変わって
いた。全身に強引に埋め込まれたたくさんのプラグ。いたるところに接続され
たチューブ。もはやそれは人ではなく、ほとんど機械だ。
「これがクレストの力だよ。これで私は誰にも負けない力を手に入れた」
回線から響いてくる声も、どこか無機的だ。抑揚の無いしゃべり方からは感情
というものがまったく感じられない。
「何で、そんな身体に?それじゃ…まるで機械じゃないか!」
「人間ではどうあっても超えられない壁があるのだよ、NOBI君。こんな技術を
完成させた人類を呪うがいい…。何のつもりでこんな所に進入してきたのかは
知らないが、消えてもらおう…戦闘プログラム…最終レベル…第三種戦闘モー
ドに移行…ターゲット…確認…排除、開始」
無機的に、冷酷に宣告されたと同時に、回線は切断された。同時にブレインジ
ャックはブーストダッシュ。一瞬でブルーキャットの視界から消えた。
NOBIはすぐにバックステップ。更に機体を旋回させブレインジャックを捕捉。
ブレインジャックはすでにグランディオースへの攻撃を開始していた。非情に
撃ちこまれていくハンドグレネード。
「NOBI君!GIAIANが危ないぞ!援護するんだ!」
DORAEMONの怒声。NOBIは武器モードをミサイルモードに変更。激しく動き回る
敵をロックオンし、トリガーを引く。轟音とともに八発のミサイル発射。
その瞬間、グランディオースのショットガンも火を噴いていた。銃口から発射
された散弾は確実に目標を捕らえている。ばら撒かれた散弾に、八発のミサイ
ル。普通なら全弾の命中を確信できるはずの状況でも、敵が敵なだけに確信な
どできない。
ブレインジャックは急にバックステップ、距離を置くことでショットガンから
の被害を最小限に抑え、更に小刻みにサイドステップでミサイルを紙一重でか
わしていく。しかし、その時にはNOBIも武器モードをライフルモードに戻し、
スナイパーライフルを撃ち込んでいる。サイドステップの僅かな隙を狙って撃
ち込まれた弾丸はかろうじて命中。決定打にはならないが牽制にはなる。
380 :
名無し物書き@推敲中?:2005/05/11(水) 22:03:20
381 :
名無し物書き@推敲中?:2005/05/25(水) 07:09:44
382 :
名無し物書き@推敲中?:2005/05/28(土) 08:29:22
あんあんちゃん
383 :
名無し物書き@推敲中?:2005/05/29(日) 13:41:27
丸山弁護士
384 :
名無し物書き@推敲中?:2005/05/31(火) 14:38:15
横山弁護士
385 :
名無し物書き@推敲中?:2005/05/31(火) 17:45:32
ま〜だ〜〜〜〜〜
386 :
名無し物書き@推敲中?:2005/06/08(水) 06:14:24
387 :
名無し物書き@推敲中?:2005/06/09(木) 23:23:24
のび太ならぬのび“犬”
続きまだ?
389 :
名無し物書き@推敲中?:2005/07/17(日) 05:06:30
age
あげますね
:::::::::::/ ヽ::::::::::::
:::::::::::| な あ 現 i::::::::::::
:::::::::::.ゝ い ま 実 ノ:::::::::::
:::::::::::/ よ く は イ:::::::::::::
::::: | ? ゙i ::::::
\_ ,,-'
――--、..,ヽ__ _,,-''
:::::::,-‐、,‐、ヽ. )ノ
:::::_|/ 。|。ヽ|-i、 / ̄ ̄ ̄\
/. ` ' ● ' ニ 、 / \ |
ニ __l___ノ | ・ |
/ ̄ _ | i ● ( |
|( ̄`' )/ / ,.. │. /
`ー---―' / '(__ ) \ _/
====( i)==::::/ ,/ニニニ
:/ ヽ:::i /;;;;;;;;;;;;;;;;
”インテリジェント・ゴリラスーツ”を常に身に着けることが、この未来社会での第一のルールだった。
それを着用しない外出は、まさしく死を意味した。ゴリラスーツに装備された高価な機械が発見次第
すぐ反応し、パワーアームで、即撲殺。辺り一面が肉片や汚物で汚れても、パワーアームできれいに
掃除するから手は汚れずに済む。未来社会では水は人の命よりも高価だから、それは環境にも
やさしい。指先すべてに仕込まれた、肉食の昆虫が全ての肉片や汚物を食べてしまうのだ。その後、
今度は虫が排泄した糞がゴリラスーツの動力となるのである。何と合理的であろうか。
このゴリラスーツを開発した、J・チャリティ博士はその為に大いに苦労した。
394 :
名無し物書き@推敲中?:2006/02/19(日) 16:44:56
続きマダー?
結構楽しみにしてたんだけどな・・・・・
395 :
名無し物書き@推敲中?:2006/02/22(水) 01:21:35
オペレーター「敵勢力は予想以上です、注意してくだ・・・・」
ノビタ「分かってる。」
そういうとノビタはオペレーターとの通信を切った。今回受けたミッション内容は極めて簡単なものだった。
ベイロードシティでのテロリストの排除。だが今回は少しばかり今までのテロと違うらしい。
ドラエモン「ノビタ君、暗視モード、起動するよ」
あたりは闇に包まれていた。ノビタはふと昔を思い出す。初めての夜間戦闘。慣れない暗闇での戦闘に、あたふたして
ドラエモンを困らせていたっけ―――。
ノビタ「システムに異常は?」
ドラエモン「問題ない。さぁ、思いっきり暴れていこう!」
昔とかわらないドラエモン見て、ノビタは苦笑した。もう思いっきり暴れるなんて歳でもないんだけどな。
そう思いながら、ノビタはオーバードブーストを起動させた。
396 :
名無し物書き@推敲中?:2006/02/22(水) 07:28:54
それにしても、無名草子さんたちとは、さぞやすごい作家先生の匿名書き込みなんでしょうね。
作家なんて才能が全てだから、津井ついみたいに、いくら努力したって駄目なものは駄目ですよ。
私なんか、早々に見切りをつけて趣味の世界で細々ですから。
小説現代ショートショート・コンテスト優秀賞受賞 阿部敦良
397 :
名無し物書き@推敲中?:2006/02/23(木) 01:02:10
ドラエモン「ベイロードシティ、防衛ライン到達。あと約2分ほどで敵部隊が到着するよ」
敵部隊が到着するまでのわずかな間、ノビタは目を閉じ、オペレーターからのメールを思い出していた。
最近テロが多発しているが、その中に所属不明のACがいる――。そのACの機体構成はシンプルで、
総火力を重視した重量二脚。グレネード主体のその機体は、ランカーACをすでに2体破壊しているらしい。
ノビタ「グレネード主体の重二・・・・・ジャイアンを思い出すね。」
ドラエモン「本当だね。でもその機体にジャイアンが乗ってるわけないよ。
だってジャイアンは・・・・・・・複数の敵を、レーダーに感知! ノビタ君、戦闘モード、起動するよ!」
待機モードとは比べ物にならないぐらいの情報がモニタに表示される。
レーダーを確認したノビタは、一瞬で戦闘時の作戦を組み立てる。
青い点が4。赤い点は8。その熱源の大きさと、スピードの差から判断するに、おそらく先頭の4機は戦闘ヘリである可能性が高い。
そしてその後ろから迫る5つの赤い点は高機動MTか。最後尾にいる3つの赤い点は後方支援型の重装型のMTなのだろう。
テロにしては少し火力不足だな――。ノビタは最初そう思ったが、気にしないことにした。
ドラエモン「敵勢力までの距離、1000、850、700、500・・・・来たよ!」
ノビタ「了解。ミッションを開始する」
FCSは、すでにロックを完了していた。
398 :
名無し物書き@推敲中?:2006/02/23(木) 18:09:48
『パターン青…使徒です!!』
399 :
名無し物書き@推敲中?:2006/02/23(木) 20:40:33
モニタに「ロック完了」の文字が表示されるのと、敵戦闘ヘリからミサイルが発射されたのは同時だった。
大量のミサイルがノビタのACに吸い込まれていく。
だがノビタは回避行動を取ることなくミサイル群の中にACを直進させた。
ノビタ「ドラエモン、迎撃装置を最大出力で起動してくれ。」
ドラエモン「分かった!」
コアの迎撃装置が起動した瞬間、敵が発射した初弾のミサイルが空中で爆発する。
次々とミサイルが迎撃されていく中、迎撃失敗に終わったミサイルの間を、ノビタはACを上昇させていく。
爆煙の中からAC飛び出してきた瞬間、ヘリのパイロットは絶望した。
ミサイルを全てかわされたことが、まず想定外だったのだ。
しかしそんなパイロットの心中を知るよしもなく、ノビタはロックが外れていないことを確認し、トリガーを引く。
ミサイルポッドから高機動ミサイルが連射される。ヘリにそのミサイルがかわせるはずもなく、ヘリは次々と爆散していった。
ノビタは、着地の衝撃を和らげるため、ブースタを吹かしながら、ACをゆっくりと着地させる。
ACに傷がないことを確認すると、ノビタはレーダーを確認した。
400 :
名無し物書き@推敲中?:2006/02/23(木) 20:41:05
レーダーを見ると、5つの青い点は消滅していた。どうやらミサイルは全てのヘリに当たったようだ。
ドラエモン「相変わらず無茶な戦い方だね。敵部隊の隊長から通信が着てるよ」
ノビタ「つないでくれ」
ドラエモンが通信を許可した数秒後、レーダーで赤い点の直進が止まる。敵部隊の隊長が進行の中断命令を下したのだろう。
「レイヴン・・・・・なかなか腕がたつようだな・・・・・だが、邪魔をするなら消えてもらう。」
「なぜベイロードシティにテロなんてしかけるんだ? 今からでも間に合う、撤退するんだ。」
だが通信の相手はその質問に感情を表さず、平然と答えた。
「こちらも依頼を受けて行動している。依頼内容はベイロードシティにテロを仕掛けること。我々はその依頼を遂行するだけだ」
この言葉を聞いた直後、ノビタは通信を切った。今までの経験上、初めの会話でこちらに恐れを抱いていない場合、
敵のほうから撤退する可能性はゼロ。なら戦うしかない。
だが最後の言葉が引っかかる。「依頼を受けて行動している」とテロリストの隊長は言っていた。
通常、テロリストがレイヴンにテロの支援を頼むことはあっても、テロリストが依頼を受けて行動するなどありえない。
ノビタは何か、嫌な予感がした―――。
だがミッションはミッション。依頼を受けた以上、遂行しなければならない。
ドラエモン「敵部隊が動き始めた。迎撃しよう」
ノビタ「分かってるよ。」
胸に不安を残しながらも、ノビタはACを発進させた。左右に緩急をつけながら、武装を右手武器に切り替える。
敵の攻撃はそれから約3秒後だった。敵の装備している携行ライフルのマズルフラッシュが暗闇を切り裂く。
その弾道から見て、こちらをまだ完全に補足していない。そう判断したノビタは、なおも距離をつめる。
高機動MTが目視できるまでに接近した瞬間、ついに敵の攻撃が正確にノビタのACに発射された。しかしその弾丸が
ノビタに当たることはない。敵をFCSに捕捉した瞬間、ノビタはオーバードブーストを起動していた。
スーパーチャージャーの音が響き渡り、MT部隊の視界からACの姿が消える。
刹那、上空から連射音と共にマシンガンの弾がMT部隊に降りかかった。高機動MT1機が爆発、1機が脚部の
関節部分に弾が当たり、沈み込む。だがノビタの追撃は終わらない。オーバードブーストの余勢を生かし、
支援型MTの背後に回りこみブレードを展開、一機の脚部と一機のミサイルポッドの接合部分を正確に切り裂く。
ドラエモン「敵勢力残り60%! 反撃が来るよ!」
ノビタがその言葉を聞いたのと、MT部隊が波状攻撃が開始したのは同時だった。
体制を立て直した高機動MTのうち1機が上空に、2機が左右に回りこみ、ACにライフルを乱射する。
しかしノビタは冷静に機体を跳躍させ、地上のMTの攻撃を回避、
空中からのライフル弾を左へのブーストで回避し、マシンガンを掃射する。MTは空中で爆発した。
爆散したMTの残骸が飛び散るなか、ノビタはACを自由落下させながら地上で動き回る高機動MTに照準を合わせる。
だがロックが完了するよりも先に、ミサイル接近のアラームが鳴り出した。どうやら支援型MTが発射したらしい。
しかし、すぐさまノビタは肩部に積んだグレネードランチャーを展開、
ミサイルが着弾する前に、支援型MTに目測で発射した。空中でのキャノン発射による、強烈な
反動がノビタを襲う。だがその反動でミサイルをかわし、ノビタは滞空しながら
再度ミサイルに切りかえ、地上の高機動MTに向かってロックを開始した。1.5秒後、ロック完了の文字が
モニタに表示される。ノビタは何の迷いもなくトリガーを引いた。
ブースタを最大限に吹かしてミサイルを回避しようとした最後のMTが爆発したのを見届け、
ノビタはオペレーターに通信を入れた。
ノビタ「任務完了、輸送用ヘリを飛ばしてくれ」
オペレーター「分かりました・・・・・待ってください、大きな熱源を探知! これは・・・・AC!?」
ノビタがACを旋回させると、こちらに向かってくる輸送用ヘリが視界に入った。
そのヘリのハンガーには一機のACが確認できる。
オペレーター「ACを確認、アーク未登録のレイヴンです。おそらく最近出没している未確認ACと同一のものと思われます、注意して下さい」
ノビタは頭部の光学カメラのズーム機能を使用し、そのACを凝視する。何のデザインもない漆黒の機体は、
夜の闇によく溶け込んでいた。と、ふいにACが投下された。着地時の衝撃音の大きさから、かなりの重装備であることが分かる。
そのACがこちらに向かってこないのを確認し、ノビタは
こちらに敵意があるのか確認するため、通信を入れることにした。
ノビタ「ドラエモン、あのACのパイロットと話がしたい。できるかい?」
ドラエモン「OK、任せて・・・・・ダメだ、ロックされてる・・・・・」
ノビタ「ってことは・・・敵意があるってことか。ドラエモン、残弾数を確認してくれ・・・」
ノビタはその言葉を最後まで言い終わることができなかった。敵ACがいる辺りから閃光が見えた瞬間、ノビタのACの
コアを弾が掠めていったからだ。装甲が何枚かはがれるが、ダメージは少なかった。
ノビタ「速い・・・!」
そのあまりの速さに、ノビタは驚きの声を上げる。
ドラエモン「今のはわざと外したんだ、2発目が来る前に接近しろ!」
だがノビタはすでに行動を開始していた。使い切っていたミサイルポッドを強制解除、
頭部レーダーを広域化して敵ACの正確な位置を把握、オーバードブーストを起動させる。
MT部隊とのの戦いでジェネレータのコンデンサ容量は心もとなかったが、この状況を打破するには仕方ない。
ノビタのACは、未確認ACへの接近を開始した。