ドラえもん のび犬のアーマード・コア

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1名無し物書き@推敲中?
『のび太、10時方向から高エネルギー反応!』
「了解!当たるかよ!」
のび汰と呼ばれた男は、自身が乗る青と白を基調にしたロボットーAC
というーを即座に反転させ、迫り来る緑色の光線をかわした。
そして、
「喰らいな!」
男が叫んだ時には、彼のACの手に握られたハンドガンが目標を火だるま
にしていた。
『目標沈黙。ミッション終了』
「どんなもんだい!」
『あざやか!と言いたい所だけど、ブースト使いすぎだよ。
敵が沢山いたらどうするの』
「エヘへ…」
『全く、君はいつも…』
軽口を叩きながらも、油断する事無く周囲を窺う。
昔は泣き虫でいじめられっこだった少年の面影が無くなってから
既に久しい。
今ここにいるのは、かつてのび犬と呼ばれ馬鹿にされた小学生では
なく、ホネカワシティを始め、全世界から恐れられる一人の戦士(レイヴン)、
青と白の鋼鉄の馬に乗り悪を撃つ、現代のガンマン。
名をノビータ・キッドという。
2名無し物書き@推敲中?:03/05/03 04:14
なんで名前が三つもあるんだ?
3:03/05/03 04:19
ノビータは高級ホテルの一室で高価な葉巻をくゆらせ静香を眺めていた。
静香は全裸にされ、縄で縛られている。ノビータが縛ったのだ。
ノビータは静香に銃口を向けて撃つそぶりをした。
「殺さないで、お願い」
ノビータは薄笑いして、「じゃあケツだせよ」
4:03/05/03 04:29
チンポを出したノビータは銃をテーブルに置き、静香のまんこの匂いをかいだ。チーズの匂いがした。
「チッ、だいぶ遊んだようだな。どす黒いまんこしやがって」
ノビータはスモールライトで静香のまんこを小さくした。
「これでお前のガバガバまんこもちっとは使えるようになったかな」
5bloom:03/05/03 04:30
6:03/05/03 04:37
ノビータはチンポを挿入した。静香の締め付けが心地よい。
「うっ、どうした。おいこら、離せっ、抜けねえぞ」
ノビータのパンチが静香に炸裂した。「締め付けるな」
だが静香はチンポを咥え込んだままだ。ノビータはピストン運動することもなく
静香の締め付けだけで射精した。みるみる萎んだチンポを静香のまんこから容易に抜くことが出来た。
ノビータは童貞を喪失した。ほろ苦い経験だった。
7:03/05/03 04:43
「のび太くん。チェリーボーイを卒業したようだね」
「ドラえもん。もう俺にかかわらないでくれ。俺は一人で生きていけるのさ」
「でものび太くん・・・・・・コンドームは使わないといけないよ」
「ゴムぐらい使ったさ」
「でも静香ちゃんが生で中出しされたって言ってたよ。スネ夫も相当怒ってたよ」
「スネ夫が何だっていうんだ」
「でもスネ夫は・・・・・・」
「スネ夫の話はよしてくれ!」
ドラえもんは黙り込んだ。
8:03/05/03 04:51
スネ夫は中学を卒業すると進学校にいったのだ。
静香と同じ高校だった。
スネ夫は静香に告白した。振られはしたが親しい友達になった。
18歳の冬、スネ夫は静香を家に呼び、犯したのだった。
静香は警察に訴えることもなく、スネ夫の彼女のようになった。
9:03/05/03 04:59
静香にしてみればジャイアンとやるよりは良かったのであろう。しかしそれがのび太には理解出来なかった。
「よりによってスネ夫なんかと」
「のび太くんあきらめなよ。静香ちゃんの体も心ももうスネ夫のものなんだよ」
「うるさいぞドラえもん。道具で何とかしてよ。スネ夫は静香ちゃんのマンコを毎日舐めてるんだぞ。そんな馬鹿なことってあるか」
ドラえもんは黙り込んだ。
10:03/05/03 05:08
そして言った、「のび太くんマンコは静香ちゃんだけにあるんじゃないよ」
のび太は驚いた。
「ドラえもん、それどういう意味だい?」
「とにかくタイムマシンで過去に行こう。手当たりしだい女を犯しに行くんだよ」
「ドラえもん。僕は静香ちゃんとやりたいんだよ」
「静香ちゃんのことは忘れようよ。それより女のマンコをいっぱい見て、ガンガン挿入するんだ」
「そんなことして未来に影響ないのドラえもん?」
「大丈夫。コンドームがある」
板を汚すな!
っていうか、あんま面白くない。
たとえばしずかちゃんがスネ夫の彼氏である事に納得いかない理由なんかを
作品の設定に甘えることなく書いていったらまだましなものになりそうなん
だけど、今のままだとただ展開を追っていっているだけって感じ。
13名無し物書き@推敲中?:03/05/03 05:36
>12
じゃあお前がやって見せろ口だけ野郎
やだよ、題材自体面白くないもん。
ちょっと批判されるとすぐキレるのはよくないよ
15名無し物書き@推敲中?:03/05/03 05:41
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16名無し物書き@推敲中?:03/05/03 05:42
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17名無し物書き@推敲中?:03/05/03 05:47
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     ハ   ヽ |      ヽ    !  |   /      |   /ヽ
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  /, -──‐-ミ」        , ‐''二二⊃、       |/  / ̄ ̄`ヽ!
  レ′   ̄ ̄ ̄`ー─---、_/ ′二ニヽ' \--──┴'' ̄ ̄ ヽ   |
18名無し物書き@推敲中?:03/05/03 05:49
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 |∵ |   __|__  | < 生きろ!
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20名無し物書き@推敲中?:03/05/03 05:57
なんだやっぱり単なるバカだったか。
22名無し物書き@推敲中?:03/05/03 06:01
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      ̄ ̄, -/へ/\/`- 、
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23名無し物書き@推敲中?:03/05/03 06:10
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   |.     ___l___)| < うるせー馬鹿!
   \    \__/ /   | 
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24名無し物書き@推敲中?:03/05/03 06:11
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次からうるせー馬鹿と言った奴はぶっとます!!
>>1

続きキボーソ!!
27:03/05/03 09:53
源静香はバスルームでシャワーを浴びていた。
そこへスネ夫が来ると、静香の背後から抱きつきチンポを静香の背中にこすり付けたのだ。
「やだスネ夫さん」
「何が嫌なものか。濡れてるじゃないか。何だってそう抵抗するんだ。静香の癖に生意気だぞ」
スネ夫は立ちバックで挿入すると腰を振りはじめたのだ。そして射精寸前でチンポを抜くと、
静香を押し倒して静香に顔射した。静香は垂れてくる精液を舌で舐め取っている。そうしなければ
スネ夫に殴られるからだった。静香は調教されていた。いろいろな事をスネ夫は静香に強いていた。
「ふふ。俺が言わなくても精液舐めとるようにやっとなったか。エロいぞ」
スネ夫は静香の顔にふにゃちんをこすり付けて弄んだり、ふにゃちんで静香の顔を
叩いたりして、日がな一日静香を辱めた。
静香はスネ夫を愛していたのだ。それは静香のはじめての男性という理由からだった。
のび太の事など眼中に無かったのだ。のび太など低学歴の池沼だと思っていたのだ。のび太とSEXするなどちゃんちゃらおかしいことだったのだ。
ストーカーのようにまとわりついてくるのび太を静香は気味悪がっていたのだ。
静香は幾度もスネ夫にその事を相談した。が、スネ夫の返事は、「あんな奴ほっとけ」と、そっけないものだった。静香の気持ちなどスネ夫は考えようともしなかった。
だが、そんなスネ夫に静香は心から惚れ込んでいたのだ。静香の両親もスネ夫を良く思っていた。
「スネ夫さんを逃がしちゃいけませんよ」と静香の母は静香の顔を見るたびに言っていた。
28:03/05/03 10:30
静香を縛っていた縄を解き、家に返してやったノビータは感無量だった。
「やっと静香ちゃんとやれたんだ。ドラえもんの道具も借りずに」
銃一丁で己を鍛え上げたノビータ。それもこれも静香とやるためだった。
静香の心を自分に向けさせることが不可能だと悟ったのび太は力ずくで静香と交わる方法を模索したのだ。
のび太は優秀なガンマンになると、ジャイアンを射殺し、出来杉の肛門に鉄パイプを入れて辱め、ドラえもんを
家から追い出し路頭に迷わせ、両親を闇へ葬った。
悪の道を突っ走ったのである。だが、スネ夫の抵抗は激しかった。
なぜスネ夫はあれほど人望があるのか。ノビータはまったく理解できなかった。
ノビータは銃のストッパーをはずした。スネ夫は静香が辱めを受けたことを聞くと怒り狂い
俺を襲撃するだろう。ノビータは立ち上がった。来るなら来い。
「静香は告げ口する女だ。卑劣な女だ。薄汚いやりマン女だ。何度でも犯してやる。スネ夫の目の前で犯してやる」
のび太はタケコプターを頭に載せると窓から飛び立った。ノビータは上空から大都会を見下した。
喧騒の町だ。人々はノビータを恐れ、それ以上にスネ夫を恐れていた。スネ夫の銅像があちこちにたっているのだ。
それだけではない。スネ夫には三百人の女がいるのだ。すべて美女で、スネ夫の性奴隷なのだ。その中には静香の母も含まれていた。
彼女たちはスネ夫に嫌々従っていたのではない。自ら進んで服従しているといった方が正しいのだ。
それほどスネ夫には男としての魅力があった。スネ夫には金も女も名声もすべてそろっていた。ただ一人逆らってくるノビータが邪魔だった。
29:03/05/03 10:47
のび太は意を決して静香ちゃんに自分の思いをぶつけた日を忘れていなかった。
「静香ちゃん。僕と付き合ってよ」
「ごめんなさいのび太さん。私好きな人がいるの」
「スネ夫だろ? あんな奴と付き合っちゃだめだよ静香ちゃん」
静香の平手打ちがのび太を襲った。「スネ夫さんのことを悪く言わないで」
のび太は死にたくなった。
「でもスネ夫はチビだし…・・・」
「あなたは何もわかってないわ。スネ夫さんはとてもいい人よ。あなたなんかより」
静香の顔は怒りで固まっていた。そんな顔もとても美しかった。のび太には静香の思いの強さがわからなかった。
静香がスネ夫なんか愛するわけが無いと思っていた。静香がスネ夫と付き合ってしまったことに後悔していて、それを突っ込まれるのが嫌で怒ってるだけだと思っていた。
「静香ちゃん、もう一度だけチャンスをあげるよ。僕はきみと付き合いたいんだ。結婚も考えてるんだよ」
「嫌だって言ってるでしょ」
「静香ちゃん、これはきみのために言ってるんだよ。何なら結婚を前提にしてもいいんだよ僕は」
「私はあなたが嫌いなのよ。軽蔑してるの。ほんとはこんなこと言いたくないのよ。でも気持ち悪いの。もうストーカーみたいなまねはやめてください」
のび太はてんぱった。
「わかった。でもスネ夫に言いつけるなよ。スネ夫はジャイアンを使って・・・・・・あいつらは悪い奴らだ。きみは馬鹿だ。こんな女だったとは思わなかった。きみはどうしようもない馬鹿女だよ」
30:03/05/03 10:58
「さあのび太君。女どもをハメ殺しに行こう!」
「そんな気にはなれないよドラえもん」
「いいから行くんだよ。きっと気分も晴れるよ。いつの時代に行く? ボクは十八世紀のスペインなんかがいいと思うけど」
「僕は静香ちゃんとやりたいんだよ」
「アンダルシア娘もいいぜのび太君。きっと強姦しなくても気軽にやらせてくれるよ。日本人なんて珍しいからさあ。珍味みたいに思ってくれるよ」
「僕は外人は好きじゃないんだよ」
「じゃあ日本人ならいいんだね。さあ早く行こう!」
「わかったよ行くよ。若いころの吉永小百合を犯しに行こう」
「のび太君もなかなかの好色家だねえまったく」
「ドラえもん。時代を間違えたら駄目だよ。まだ早稲田に入る前の吉永小百合だよ」
31:03/05/03 11:20
「静香どうしたんだ?」
「のび太がのび太が私を・・・・・・」
「くそ。のび太のやつめ。殺してやる」
スネ夫は静香からノビータが静香を強姦したホテルを聞き出すと暗殺者を派遣した。
「この多忙な時期にのび太の奴め要らぬ仕事を押し付けやがって」
「のび太はあなたを羨んでいるのよ。のび太は・・・・・・」
「静香、きみはゆっくり休んでなさい。のび太の始末は俺がつけておく」
スネ夫はエレベーターで最上階にある仕事場へいくと、来年度国家予算の報告書を作成し始めた。
だが、のび太のしでかした卑劣な行為が頭をよぎって、まったく集中することが出来なかった。イライラして誤字脱字ばかりした。
「のび太めいつまで俺をわずらわせれば気が済むんだ・・・・・・」
スネ夫はベルを鳴らして部下を呼んだのだ。
「スネ夫様。お呼びで」
「来るのが遅いぞ貴様。誰のおかげで飯が食えてると思っているんだ。早くドラえもんを呼んで来い」
「それがドラえもんの行方がわからないのです。どこで何をしているのやら私にはまったくわかりません」
「言い訳は無用だ。のび太が暴れて仕方ないのだ。三日以内にドラえもんを探し出せ。出来なかったら拷問だぞ。お前の目をくり抜くぞ」
これどこがアーマード・コアなんだ・・・?
>>32
そのへんが少し面白い
34虹パパ ◆KFognntpBk :03/05/03 20:41
個人的に>>1の続きキボンなんだが、今のヤツも悪くない。
で、アーマード・コアってなあに?
googleで見たほうが早いか。
36名無し物書き@推敲中?:03/05/04 12:39
すまん、以外と面白かった>1
37名無し物書き@推敲中?:03/05/04 13:05
1ってどっちの1かわからんから、スレ立てた方は一で、
あとの偽1は1と呼ぼう。
38名無し物書き@推敲中?:03/05/04 13:30
その黒光りする拳銃を手にしたとき、冷たくずっしりした
重みのある金属的な感触とともに、あやとり紐をつまんだときのような、
ぱっと視野が突然開ける感覚を味わったのだった。
内から湧き上がってくるかすかな震え、過去と未来をたえず
揺れ動く振幅のなかに身を置きながら、のび太はドラえもんへの
依存と自尊、そして距離のとり方を考えていた。いったい、ドラえもんは
本当の意味で友人といえるだろうか? 利害関係が先立つドラえもんとの関係は、
正しいものなのであろうか? かつて感触を味わったことがないがために、
本物かどうかわからない、紛い物かもしれない拳銃を手にしながら、
ロボットとの友情を考えている。のび太は自嘲しながら、ロボットとの友情が
継続し得ないことを理解した。それは同時に、拳銃やあやとりのないときならば、
惰性であれ利便性からであれ、友情のようなものが存続し得ること、また、
そのときの自身がこれほどまでに聡明な目で物事を見られないことを
確信したのだった。そう、ぼくはノビータと名乗ろう。
すべてが見えるノビータは、のび太とは違うんだ!
39762:03/05/04 13:59

                _∧_∧_∧_∧_∧_∧_∧_∧_
     デケデケ      |                          |
        ドコドコ   <   バトルまだぁぁああああーー!!  >
   ☆      ドムドム |_  _  _ _ _ _ _ _ _ _|
        ☆   ダダダダ! ∨  ∨ ∨ ∨ ∨ ∨ ∨ ∨ ∨
  ドシャーン!  ヽ         オラオラッ!!    ♪
         =≡= ∧_∧     ☆
      ♪   / 〃(・∀・ #)    / シャンシャン
    ♪   〆  ┌\と\と.ヾ∈≡∋ゞ
         ||  γ ⌒ヽヽコ ノ  ||
         || ΣΣ  .|:::|∪〓  ||   ♪
        ./|\人 _.ノノ _||_. /|\

         ドチドチ!
40770 ◆6oWnJ4LYx2 :03/05/04 14:46
作品、向こうにアップしたよ。
41名無し物書き@推敲中?:03/05/05 15:06
ある日、ミッションを終えたのび太の元に、スネオからのメールが届いていた。
「なんだろう。久し振りに暴徒鎮圧かな?」
『さあな』
大崩壊後の日本は、一部のシティを除いてはどこへ行っても無法地帯と化していた。
その中でも比較的ましと言えるホネカワシティには大崩壊直後は
殆ど毎日のように衣食住を失い、正気も失った暴徒が侵入し、
それをのび犬達レイヴンが排除したものだった。
しかし、今回はそれとは違うようだった。
「やあ、のび汰、ドラえもん元気か?故障個所はないか?
あったら僕のいとこへ言ってくれ。そうそう…」
「なんだ?スネオの奴、やけに遠回しだな。用件があるならさっさと言えばいいのに」
『こういう時は昔から良くない知らせってのがお決まりよ』
ドラえもんに返事をしたかのように、画面の中のスネオが口を開いた。
「実は、良くない知らせがあるんだ」
「ビンゴだ」
42名無し物書き@推敲中?:03/05/05 15:07
「元裏山地区にDの部隊と思われる集団が現れた。その中に」
スネ夫は言葉を切り下を向いた。肩が小刻みに震えている。
溢れ出る感情を必死に抑えているようだった。
「その中になんだよ」
「その中に、ジャイアンがいたんだ」
「そんな馬鹿な。あの爆発で生き残れる訳が無い」
『僕でさえこうなってしまったのに』
ドラえもんは自分の変わり果てた体を見つめながら言った。
体のどこを動かしてもギシッガキッと機械の駆動音が鳴り、
機械油の焼ける臭いがたちこめる。
昔のようにドラ焼きも食べられない。もう昔のように…
「どうしたのドラえもん?」
下を見ると、心配そうなのび汰の顔があった。
『なんでもないんだ。なんでも』
43名無し物書き@推敲中?:03/05/05 15:09
「おおおおッ!!!」
のび大は、風を引き裂き襲い掛かる青色の斬撃を飛び上がって避け、
バックウェポンの小型ミサイルを発射した。
当たればK.O、かすっただけでも腕を持っていくだけの威力と
速度を持った必勝の一発はしかし、敵ACの異常とも言える
反応速度によってかわされた。
<ハッハーアタルモノカヨ>
「今の攻撃を避けるとは貴様、中々の腕だ。が」
敵ACの避けた先には、のび犬がしかけておいた空中機雷があった。
「その腕じゃ俺を倒せない」
<ガアアアー>
『のび太、今のレイヴンは』
「わかってる。あれは強化人間だ。あのカウンターを
ああも簡単にかわすなんて出来る奴はそうはいない。くそ、Dめ…」
『のび犬、3時方向から敵AC多数接近!』
「ち、次から次へと蛆虫どもが…ん」
『のび汰、まさか…』
上はオレンジに黄色い稲妻が横に一本、下は黒一色のシンプルルック。
いつものび太を殴ったが、いざのび汰が危険な目にあうと
真っ先に飛んできて助けたのも彼だった。
意地悪だが情に熱く、涙もろい。将来の夢は歌手になる事。
だがその夢は…
「二人とも驚いただろう。のび犬は特にそうだろうな。
なにせジャイアンはお前の所為で死んだはずだからな!」
「ジャイアーーン!!」
十数機のACの先頭に立っているのは、規定のサイズを遥かに超えた超重装甲ACであった。
そしてボディの中心に埋め込まれているのは、紛れも無く当時のままの…
「ジャイアーーーーーン!!!!」
44名無し物書き@推敲中?:03/05/06 00:37
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45名無し物書き@推敲中?:03/05/06 01:42
ジャイアン死んでんのかよ!
46名無し物書き@推敲中?:03/05/06 01:57
>>44 
ジサクジエーン
47名無し物書き@推敲中?:03/05/06 20:20
続きはマダー?
期待上げ!
49名無し物書き@推敲中?:03/05/06 21:16
上がってなかった。∧||∧
50名無し物書き@推敲中?:03/05/07 01:26
意外と凝った構成。「二人とも驚いただろう。のび犬は特にそうだろうな。
なにせジャイアンはお前の所為で死んだはずだからな!」
のところってスネ夫のせりふだろ?
>>41-43は全然だめ
最初のほうが面白い
52名無し物書き@推敲中?:03/05/07 04:52
>>46
馬鹿ジャン市ね
53__:03/05/07 05:03
54名無し物書き@推敲中?:03/05/07 10:41
>>51
最初のほうって1は一つしか書いてないが…偽は書いているが。
55名無し物書き@推敲中?:03/05/10 20:18
のびたは、あるロボットに拷問を受けていた…そしてのびたは力尽きようとしている状況だった
のびた:もう駄目だ…こいつめ、もう一週間近く俺の身体に恥ずかしいちんこの
    焼印を押し付けやがって…だがもう力が…
オラエモン:オラッオラッもうそろそろお前を拷問するのにも飽きた
      最後にちんぽこにちんこの焼印を死ぬまで押し付けたやる
のびた:…やまめろ…もう…だめだ
っとその時だった拷問室のドアを蹴破りどらえもんが助けに来た
どらえもん:のびた君…なんて姿なんだ…プッ…恥ずかしいよ
のびた:なんでもいいから、助けてよ…
どらえもん:そうだったね、死ねオラエモン 
どらえもんはジャンボ・ガンを取り出しオラエモンにぶちかまそうとした
瞬間オラエモンは新型のジャンボ・ガンでどらえもんの頭上半分を吹き飛ばした
オラエモン:オラッククククッヒャヒャヒャ
どらえもん:の…び…ちぇ…君…ご…め でも…うぉぉぉぉー
どらえもんは胴体だけでオラエモンの身体に飛びついた
オラエモン:離せ!旧式
ドラえもん:さよなら…のびた…く…ん
どーかーーーーんっとドラえもんは自爆した…
…ドラえもん……だが悲しみに浸っている場合ではないとりあえずここを離れたくては
オラエモンはただの道具に過ぎない…奴が…奴が来る前にここを離れたくては
のびたはまだ手錠と足枷をされていた。
のびた:どうすればいいんだ、奴…そうジャイアンが来てしまう…


つづく
>>55
凄まじい文才でつね!
57名無し物書き@推敲中?:03/05/13 17:55
19XX年 空き地
夕闇が辺りを覆い始めた黄昏時、二人の男女が空き地に佇んでいた。
「しつこいな、僕は君なんかなんとも思っていないって言ってるだろ!」
「そんなにあの人がいいの?あんなあばずれではのび太さん、
あなたを幸せにする事なんて出来やしないわ!」
「五月蝿い!ジャイ子、君はしずちゃんの事なんて何もわかってないんだ!
さっさと消えちまえ!」
「ひ、ひどいわ!のび太さんのバカーッ!」
「済まない、ジャイ子」

「ヒック、ヒック…のび、のび汰さんのバカ」
涙と鼻水を、
常人の三倍は撒き散らしながら家路へと急ぐジャイ子の前に
黒い影が浮かび上がり、ジャイ子へ声をかけた。
「こんばんは、クリスチーネ」
「出木杉さん…」
出木杉は夜の闇からするりと抜け出ると、ジャイ子の前に立った。
「おや、泣いているね…どうしたの?」
「う、ウワーン…かくかくしかじか」
ジャイ子にとって出木杉は、兄以外では自分の漫画の最も熱心な読者であり、一番の相談役でもあった。
58名無し物書き@推敲中?:03/05/13 18:03
「そうか、さぞ辛かったろう」
「うう」
「でも安心して。僕にいい考えがある」

同時刻 某所
「あっ」
ポキリとマンガのような音がしてサンバイザーをかぶった少年の
ドライバーが折れた。
「どうしたナリ?」
「いや大した事じゃない。ドライバーが折れただけだよ」
そう答えて少年は窓から空を見上げた。赤みがかった満月が
妖しく輝いている。
「こんな夜はどこかで誰かが悪さの相談をしているのさ」
「へえ、キテレツは物知りナリ」
胸のうちでバイザーの少年ーキテレツーは呟いた。
何か悪い事でも起きなければいいがな。
59名無し物書き@推敲中?:03/05/13 18:12
おもしろいから、もっと丁寧に書いてほしい。描写を増やしてちょ!
60名無し物書き@推敲中?:03/05/14 02:01
学校帰りにピアノ教室に行ったら散々しぼられた。
フィンガートレーニングが足りないですって?フンッ。
わかってるわよそんな事。
源静は頬を膨らませ、プンスカしながら家へと急いでいた。
まだ5時を少しまわった程度で空も明るいが、最近多発している
通り魔事件の事を考えると、足は自然に速くなる。
あの角を曲がれば…小田和正を歌いながら歩を進める静の少し前に、人影が現れた。静の中学の男子と同じ学生服を着ている。
知り合いかしら。それともー
一瞬頭によぎった想像を静は慌てて打ち消した。
まさか。通り魔はもっと大人だってニュースで言っていたじゃない。でも、あの子なんで動かないのかしら。
静が不思議に思うのも無理はなく、その少年は両手を後ろに
組み、まるで通せんぼをするように足を広げて道の真ん中に立っていた。
近づくにつれて、少年の顔が見えてきた。色が白く、
目鼻立ちが整っているがひどく無個性な顔だ。
やっぱり知らない人だわ。それになんか危ない人みたい。
静が軽く会釈し、少年の脇をすり抜けようとした時、
突然少年は言った。
「源静だな。ちょっと付き合ってもらおうか」
61名無し物書き@推敲中?:03/05/14 02:04
「そうだけど。あたしになにか用なの?」
「用があるのは僕じゃない。僕はただお前を連れてくるように仰せつかっただけだ。さあ」
何この人。普通じゃないー静は身の危険を感じ、後ずさり
しながら言った。
「仰せつかったって、誰に?」
「会えばわかる。痛い目に遭いたくなければさっさとくるんだな」
「い、いやッ助けてのび犬さムグ」
少年は助けを呼ぼうとした静の口を右手で押さえ、左手で静の首を絞めた。
「Dからは手荒い真似はするなと云われていたが仕方あるまい」
少年がきゅっと力を入れようとした瞬間、何かが風を切り、
少年の頭部を目掛け、うなりをあげて飛んできた。
62のび犬のアーマード・コア過去編:03/05/14 02:05
「!?」
少年は間一髪かわしたが、首筋に赤い筋が流れた。
「ク…何だ、ラジコン飛行機?」
一瞬だったのではっきりとはわからなかったが、F−5の文字が
読めた。
「たかがおもちゃ。叩き落してくれる!」
少年が次の攻撃に備え、静を放し身構えると後ろから男の野太い声がかかった。
「おい、俺の友達に何してんだお前」
「な、いつの間」
少年がせりふを言い終える前に、石のような拳がその整った
顔を襲った。
闖入者の攻撃は少年を派手にふっとばし、ゴミ箱に叩きつけた。
「大丈夫か、しずちゃん」
「危ないところだったね」
「武さん!スネ夫さん!」
静の危機に現れたのは、
ガクランの下に相変わらずのオレンジに稲妻模様のトレーナーを着た剛田武と、
身長が殆ど伸びていない骨川スネ夫だった。
63名無し物書き@推敲中?:03/05/14 02:42
「やったねジャイアン!」
中学生になっても二人の力関係にさほど変わりはないと見え、
スネ夫は甘えた声を出して武ー以下ジャイアンーに擦り寄った。
「…いや、まだだ」
「え、なんで。めり込みパンチ入ったでしょ?確かに僕見たよ?」
不思議そうに自分を見上げるスネ夫を、ジャイアンは険しい表情をして
叱った。
「バカ!スネ夫、しずちゃんを連れて逃げろ!」
「え」
「いいから早く!」
「わ、わかったよ。しずちゃん、行こう」
ジャイアンは二人がいなくなるのを確認すると、ゴミ箱に突っ込んだまま
動かない少年に向かって言った。
「狸寝入りはよしなクソ野朗。効いてねえのは分かってんだよ」
64名無し物書き@推敲中?:03/05/14 02:43
それを聞くと少年はゴミ箱からボンと弾が発射されるかのように飛び出てきた。
なんともなかったかのようにぱんぱんと制服についた汚れを払う。
なんて奴だ。俺のパンチの衝撃を後ろに飛んで逃しただと?
ジャイアンの頬を冷たい汗が流れた。
「全く効いてません、て面だな」
「いいや。結構痛かったぞ。フフフ…さすがは運命の5人の1人だけあるな」
「何」
「剛田武、通称ジャイアン。野球チームジャイアンズのキャプテン。
将来の夢は歌手になる事…ちなみに妹は天才漫画家クリスチー」
ジャイアンは途中で遮り叫んだ。
「お前、何故それを!一体何者だ!」
「僕の名前はケン・ソゴル。Dによって造られし影の5人衆の1人だ」
「D?」
「知りたいか?知りたければ、かかって来い」

65名無し物書き@推敲中?:03/05/14 12:15
一方、静とスネ夫は野比家へ急いでいた。
「ハアハア。しずちゃん、あいつは一体なんなの?」
「分からないわ。でも前にどこかで見たような気もするの。そう、あの目・・・」
「あの目?」
「ええ、昔どこかで。あの光る目は・・・」
「どこへ行くんだいお二人さん?」
静の脳裏にパッとひらめく物が浮かんだが、それはまたしても謎の少年
の出現によって阻まれた。
先程の少年と同じ様に学生服を着ている。顔も同じ様に整った面立ちを
していた。
「なんだお前は」
「Dからの使いの者でね。名はクタジマ・トシト。
そこにいる源静を渡してもらいに来た」
「断る、と言ったら?」
「力≠使う事になるだろうな・・・・・・!」

その頃、我等が主人公のび汰は・・・
「野比、Iplays tennisだと?Iなのになんで複数形なんだ!
解るまで帰さんぞ!」
「そんなぁ!ドラえも〜ん」

居残りで英語をやらされていた・・・
66名無し物書き@推敲中?:03/05/14 22:21
のび「太」が極力少ないのに笑った。
67名無し物書き@推敲中?:03/05/18 14:45
つづきをきぼんぬ
68名無し物書き@推敲中?:03/05/19 15:10
「ん、なんだかのび犬の声が聞こえた気がしたが」
「ミャアミャア」
「気のせいだよね、タマちゃん♪」

のび太の叫びも空しく、ドラえもんは新しい彼女との逢瀬を楽しんでいた。
69名無し物書き@推敲中?:03/05/19 20:40
>>65
複数形じゃなくて三人称単数現在のsだろ、それ。
藻前の英語力にも問題ありと思われ
There is a empty dream.
711:03/05/20 02:03
ちょっと待て、なんでいきなり過去編とか始まってんだ!?
まあいいですが。
72山崎渉:03/05/22 02:42
━―━―━―━―━―━―━―━―━[JR山崎駅(^^)]━―━―━―━―━―━―━―━―━―
73名無し物書き@推敲中?:03/05/22 12:00
>>1
へへへ…
74名無し物書き@推敲中?:03/05/25 02:27
matakaitemoii?
75名無し物書き@推敲中?:03/05/25 02:35
douzodouzo
76名無し物書き@推敲中?:03/05/25 04:32
ちぇ、奥ゆかしいやつらだこと!
77名無し物書き@推敲中?:03/05/25 04:36
>>74〜76
おめえら面白え。
>>69
( ゚д゚)ポカーン
79:03/05/27 12:26
「のび太の事なら何でも知ってるぞ」
「本当か? 本当か? でかしたぞ! さあ言ってくれ! ま、まずはのび太はどこにいるんだ?」
「あんたそんなことも知らなかったのかい? のび太はなジャイアンが匿ってるのさ」
「適当なことを言うなっ! 俺は本当にのび太の居場所を知りたいんだ。いくらでも金は出す。早く教えろ」
「あははははは」
「何がおかしい?」
「あはあはあはスネ夫さん、のび太はいつまでたってものび太だよ」
「お前知らないのだな。糞。殺してやる」
「黙れっ!俺をそう簡単に殺せるとでも思っているのか?甘い。甘い、甘い、甘い、甘いよスネちゃま」
「ぐわぁ……やられたぁ!」
「きゃぁー! スネ夫さぁーん!」
「スネちゃまぁ!!」
「大変だ! スネ夫さまが変質者に刺されたぞっ!」
「あの野郎竹コプターで逃げていきやがる」
「ドラえもん関連の奴に違いないぞ。こんなことをしてただですむとは思うなよ畜生」
80bloom:03/05/27 12:29
81:03/05/27 12:49
惨事のあと、スネ夫が横たわる棺の中に一片の紙切れが入れられた。その紙片には静香の詩が書かれていた。

my dear スネ夫。アイ ワズ ヨー ワイフ。フォーエバー。
地球が滅びても、あなたの愛はフォーエヴァー。ファイヤー燃え上がる二人の愛、
愛、愛、愛の日々を打ち破ったのはあいつ。そうあいつ。あいつさえいなければ。
あいつの事を思うと虫唾が走る。この気持ちとてもよくない感じ。不快に。不愉快。
女に生まれてよかった。your lovely 静香。from tokyo to kobe.

朗読が終わると、紙片はスネ夫の顔の上で焼かれた。参列者たちは人目もはばからず泣いた。
立ち上る煙に目がしみたのではない。紙片が燃え終わると大型スクリーンに交接する静香とスネ夫が映し出された。
静香をあえがせる在りし日の故人の元気な姿を今一度見て、参列者たちの涙は止まらなかった。
画面の中のスネ夫が静香の肛門にチンポを入れようとした時、ビデオは一時停止された。
在りし日の故人の勇猛心、そして好奇心を今一度皆に知ってもらいたいとの主催者側の意図があったのだった。
そして、静香が繰り出すアナルドリル舐めを受けてもいっこうに表情を変えないスネ夫の平静心、
落ち着きに、参列者は偉大なリーダーを失った思いを新たにしたのだった。
82:03/05/27 13:02
「我々のスネ夫さまがお亡くなりになってしまった以上、新しいリーダーを立てねばならないが」
「それはジャイアンがいい」
「ジャイアンは死んだはずだぞ」
「いやのび太に殺されたのはジャイアンじゃなかったんだ。ジャイアソだったんだ」
「何? 本当か? 俺はてっきりジャイアンが殺されたとばかり。ジャイアソだったか」
と、二人の精神病患者が話していた。
83:03/05/27 13:08
一人の患者はのび太で、もう一人のほうは出来杉だった。
二人は偶然再会していた。ホモダチになっていた。
のび太が主に責めた。出来杉は全身で受け止めた。
夜は出来杉はアヘアへになった。肛門が完全に弛緩して、屁がプスプス出た。
「いいかい? 出来杉君入れるよ」
「OK。わかった。じゃ、待ってるよ」
84:03/05/27 13:24
「僕らは地球人!」声を合わせてのび太と出来杉が叫んだ。
「手と手をつないで合わそうよ」
スパァーン! スパァーン! スパァーン! スパァーン!
「い、逝くよ。のび太君。ああっ! 肛門が壊れちゃうよお」
「なあに。大丈夫さ。僕らは地球人」
だらだらと精液が出来杉の肛門から垂れた。
85:03/05/27 13:37
ちゅるちゅると自分の精液を飲みながらのび太は日本の指で出来杉の肛門をほじくり回した。
「うぅん。あっは〜ん」
「うまいぞ。精液とうんこが混ざっててにがみがあってオーケストラの演奏のように見事に調和している」
「のび太くん。ちんちんも擦って」
「ちゃんとお願いしろ」
「じらさないでくれよ、のび太くん。左手があいてるじゃないか」
「わかったよ。まったく出来杉はかわいい奴だなあ」
86名無し物書き@推敲中?:03/05/27 13:40
なんでこんなに安いの???

http://ime.nu/ime.nu/www.net-de-dvd.com/
87:03/05/28 07:54
出来杉とやってると静香のこと思い出すな。まんこ日照りなら俺が今一度。
のび太、のび太と馬鹿にされて、行き着いたところが出来杉の肛門か。
現実問題出来杉を性転換させても、それが何だというんだ。出来杉は女じゃないんだ。
のび太がチンポを抜くと、
「のび太くん。どうしたんだい? 続けてくれよ」
「出来杉くん。もうこんなことはやめるべきだ」
「何をいってるんだい? どうしてやめなきゃならないのさ」
「出来杉くん。俺を罰してくれ」
「のび太くん……」
のび太は仰向けになるとカエルのように足を曲げ、手でしっかり太ももを固定し、肛門をひくひくさせた。
「のび太くん。僕はのび太くんの肛門には入れられないよ」
「そう。わかってたよ。キミを試してみたんだ」
看護婦が見回りにきた。
「あなたたち何をやってるの!」
のび太の目が光った。
88:03/05/28 08:15
「アナルセックスだよ」のび太がひややかに言った。
「アナルセックスだって……そんなことが病院内で許されると思ってるんですか!」
「そう怒るなよ、かわいい顔が台無しだぜ」
のび太はシガレットを取り出すと、火をつけた。
「肺癌の癖にタバコなんか吸って、先生に言いつけます」
「おっと、何をする気だ?」
のび太はタバコを奪おうとした看護婦の手首をつまみあげた。
「やめてよ! 何するの! 誰かっ! 誰かきてっ!」
おっぱいを揉んでいた手を休め、のび太は看護婦の口に舌をねじ入れて黙らせた。
パンティーを脱がせると、それを看護婦の口に入れ、ガムテープで口をふさいだ。やり慣れた手つきだった。
看護婦をベッドに縛り付けると、のび太はベルトで看護婦を鞭打った。夜中中鞭打った。夜明けごろ看護婦は死んだ。
「逃げるぞ、出来杉」
スペアポケットからどこでもドアを出して、のび太は病室から逃げ出した。
憂鬱のない幸せだけの楽園はどこにある? のび太は安息の地を求めて転々と移動を繰り返した。
そしてたどり着いたところは昔住んでいた野比家だった。やっとのび太は心の安らぎを覚えた。
89_:03/05/28 08:15
90:03/05/28 08:27
部屋の家具も昔と変わらない。タイムマシンもまだあった。「そうだ。過去に行ってみよう」
タイムマシンに乗り込んで、のび太は吉永小百合とやっている自分を見に行った。
「お、やってるやってる」
ドラえもんが吉永小百合の自由を奪って、無抵抗になったかつての自分が吉永小百合の服を脱がせていた。
「のび太くん。さあ入れるんだ」
『ドラえもんは昔から大胆だったな……』のび太の感慨もひとしおだった。
「まってよドラえもん。童貞は静香ちゃんに取っておくんだよ」
『俺もうぶだったもんだな……』
「だったらやれないじゃないか」
「ドラえもん、ペニスバンド出してくれよ」
「そんなものでやったってやったことにはならないんだよのび太くん」
『ドラえもんの言葉は今にして思えば正しかった。なぜあの時それがわからなかったんだろう……』
「ドラえもん僕は絶対チンポは入れないからね」
かつての自分が吉永小百合のまんこにチンポを擦りつけているのを眺めていると、のび太に生きる希望が再び湧いてきた。
『あのあと素股で昇天するんだ……』木の裏に隠れながらのび太は思った。
91bloom:03/05/28 08:28
92山崎渉:03/05/28 10:15
     ∧_∧
ピュ.ー (  ^^ ) <これからも僕を応援して下さいね(^^)。
  =〔~∪ ̄ ̄〕
  = ◎――◎                      山崎渉
93:03/05/28 11:24
静香と俺と二人で、あくまで二人で、そうさ二人で、
94名無し物書き@推敲中?:03/05/28 16:38
このスレの人間の中に、
柏原芳恵スレを立てた香具師がいる。
間違いない。
そいつは三十前後のオッサンである。
モテない。
ずっとモテたことがない。
可哀相な人間。
9594:03/05/28 17:07
木の裏にいたのび太は驚いた。かつての自分が吉永小百合のまんこに挿入しているではないか。
「ドラえもんのいない隙に入れちゃえ」
ああ。思い出した。俺の記憶違いだった。俺はあのとき我慢できずに入れていたのだ。
つまりは童貞を失っていたのだ。おいおい、中出ししてるじゃないか。あちゃー。糞おのび太のやつめ殺してやる。
「オイのび太」
「誰だ! 貴様は」
「俺は二十年後ののび太だよ」
「そののび太が僕に何の用だって言うんだ」
「てめえの肛門にチンポ入れてやる」
「助けてえドラえもん」
「助けてください」と吉永小百合が言った。
「待てえのび太さあ来るんだ」
「やめてよお」
「ああ止めてやる。その代わり吉永小百合の肛門にチンポを突き刺せ。俺はまんこに突き刺すから」
「ダブルファックだね」のび太が喜びの声をあげた。
9694:03/05/28 17:11
ダブルファックしてるとのび太が現れた。
「お、やってるな」
「誰だてめえは」
「俺は三十年後ののび太だ」
「そののび太が何しに来たんだ」
9794:03/05/28 17:30
「じゃじゃーん」
三十年後ののび太がパンツを脱ぐとチンポに真珠がたくさん入れられていた。
「どうだい?」
「いやこれはすごい。どこで手術したんですか?」
「なあにたいしたことじゃない。それより吉永小百合を放っておくな。風邪を引くぞ」
「こんな奴死んだっていいんだ」
「まあそういうな。お前らの初めての女じゃないか」
「こんな奴性処理便器さ」
「そうだ。そうだ。こんな奴チンコケースだよ」
なごやかだった。三人とドラえもんは吉永小百合を囲んで大いに親睦を深めた。
「ねえねえ。今度誰やりに行く?」
「そうだなぁ。松坂慶子にするか」
「誰だいそいつ」
「いや俺も名前と顔しか知らないんだけど」
「じゃあ体を知りに行こう。まんこの塩加減も」
983:03/05/30 13:28
今より二週間遡る。
「もうちょっと待っててね。のび犬ったら...また残されてるのよ、
ほんとにもう」
「いえお構いなく。私、今日はのび汰さんに私のかいた漫画を
読んで貰いたかっただけだから。でも折角だから少し待たせて頂きます」
「じゃあ好きなだけいらしてね」

今だわ。ジャイコはのび汰の机の引出しに手をかけ一気に引っ張った。
そこには真っ黒ななにもない空間の中にぽつんとひとつ何かが浮かんでいた。
出木杉さんはああ言ったけど本当に大丈夫かしら。
ジャイ子はのび犬の家に来ていた。漫画を渡すというのは方便で出木杉
に言われた事をしてくるのが真の目的だった。
「いいかいクリスチーネ。のび犬君はスペアポケットといってドラえもんのポケットに繋がっている
予備のポケットを持っているんだ。それを取って来て欲しい」
「これがタイムマシンね。よしッ!!」
ジャイ子は気合一発、引き出しの中に飛び込んだ。
「ええと…いつがいいかしら」
出木杉の言葉を思い出す。
「ただ、気をつけなければいけないのはスペアポケットを漁る時、
ドラえもんのポケットに通じている所為かギャハハハハハハハと大笑いされて
気付かれてしまうんだ」
「そんな、どうすればいいの」
「その時の為にコレを用意した」
「コレは…」
「ああ。コレを見せたら一発さ。ああそうそう、もしドラえもんがいなかったらタイムマシンを使って過去へ飛んでくれ。いいね?」
「それでは、いざ過去へ…往かん!!」
993:03/05/30 13:48
あれ、3になってる。
1005:03/05/30 14:12
それから二週間後。
ジャイ子の死体が多摩川河川敷で発見された。ジャイ子の膣から精子が検出されたことで、
警察は強姦殺人だと断定した。なぜだろう? ジャイ子のまんこのビラビラだけが腐乱していた。
強力な匂いがしていたと、第一発見者が証言した。
「いや、もとから臭かった」と、ジャイ子の体を良く知る人物が強く主張した。
彼によればジャイ子のまんこは糞より臭く、「あのまんこをクンニ出来るのなら何でも出来る。糞も食べれる」
1015:03/05/30 14:24
「ジャイ子って処女じゃなかったらしいよ」静香が言った。
「へーえ。そうなのかい」出来杉が答えた。
「まんこから精液垂れ流れてたって」
「本当かい? 静香くんより遊んでるじゃないか!」
「冗談はよしてよ。私のほうが遊んでるわ」
「だったら僕にもやらしてくれよ」
「駄目よ。私はキモヲタ専門なのよ。キモヲタにやられてると嫌な事なんて吹き飛ぶわ」
「静香くん。きみはSかい? Mかい?」
「もちろんMよ。決まってるでしょ。調教される快感なんて出来杉さんには一生わからないかもね」
出来杉は興味を持った。
102動画直リン:03/05/30 14:29
1035:03/05/30 14:35
「どういうことだいそれは? 静香くん。静香くんでも許さないよ」
「あら怒ったの出来杉さん? ごめんなさい」
「静香くん。僕はこう見えても毎日オナニーしているんだよ」
「それは私もよ。シャワーオナニーしてるわ」
「そんなことはどうでもいい。僕はMに見えるだろ。でも実はSなんだ」
「嘘よ! 出来杉さんはそんな人じゃないわ!」
「嘘じゃないぞ!」
出来杉の平手打ちが飛んだ。
「きゃあ何するの! やめて! 変なとこ触らないで」
「こうされたいんだろ。こうされたいんだろ」
反応を見ながら出来杉は静香のまんこを揉みしごく。
「出来杉さん。やめて。どうしてもというなら、せめて私の家で」
「わかったよ。たっぷりかわいがってやる」
104名無し物書き@推敲中?:03/05/30 14:43
またエロネタかよ・・・もう飽きたぜby ヘヴィ・D!
1055:03/05/30 14:49
「静香お帰りなさい。あら出来杉さん、こんにちわ」
「こんにちは、おばさん」
静香の部屋に入ると、すぐに出来杉は静香を押し倒した。
「待って、出来杉さん」
「どうしたんだい静香ちゃん?」
「私が先に出来杉さんの肛門に入れるわ」
「何言ってるんだい。きみには僕に入れる物なんか付いていないじゃないか。僕が入れる穴しかないじゃないか」
「あら出来杉さんペニスバンドって知らないの? 出来杉さんでも知らないことがあるのね」
出来杉は興味を持った。「なんだいそのペニスなんとかって。ちょっと面白そうだな」
「気持ちいいわよ。出来杉さんはただ肛門を拡げていればいいの。あとはわたしに任せて」
ペニスバンドを装着した静香は、静香らしくやさしく出来杉の肛門へ挿入していった。
「あぅ。静香くん。これは? これは素晴らしい」
静香の腰の動きが早まった。スパァーンッ!スパァーンッ!と出来杉の腰に激しく打ちつける。
「おぅ、ああぁ静香くん。やさしくしてくれよぉ」出来杉は半べそかきながらもマゾ快感に酔いしれていた。
そのときドアが開いた。「静香、出来杉さん。おやつを持ってきました……」
1065:03/05/30 15:04
帆掛け舟から駅弁ファックに移動していた時だった。
「母さんっ!」
「静香……何なのこれは?」
「母さんっ。違うの。出来杉さんがこの変なの持ってきて、入れてくれ入れてくれって頼むの」
静香は泣き出した。「私こんな事したくなかったのよ。信じて! ママ信じて!」
「何を言ってるんだい静香くん。キミがそのペニスバンドを、」
「何言ってるのいやらしい! 出て行ってください! 今すぐ出て行ってください!」
「僕は何も……」
「ママ。この人追い出して! この人さっきも道で私の体触ったのよ!」
「何をぐずぐずしてるんです! 早く出て行きなさい! さあ! さあ!」
「糞お覚えてろよ。手ひどい目にあわせてやる」
「もう二度と来るんじゃありませんよ!」
「ママ、信じて。ああしなければあいつがママを殺すっていうから私……」
「わかってます。静香は何も悪くないのよ。こんなことは早く忘れてしまいなさい」
と言いながら、静香の母は出来杉のゆうに20センチは越す巨根が眼に焼きついて、まんこが疼いて仕方なかった。
1075:03/05/30 15:11
その夜、出来杉が夜這いにきた。
寝ている静香の母のパンツを脱がせ、クンニしていると、静香の母親が目を覚ました。
静香の父親は出張中である。
では一体このクンニしている人物は誰であろうと静香の母は思った。夢か?
ああ、出来杉だ。出来杉が夜這いに来たのだ。これは勘違いしているふりをしてあの巨根を味わうべきだ。
「あなたぁ。いいわぁ」
ジュルジュルジュル。出来杉がまん汁を吸う。チュパチュパ。出来杉がクリトリスを吸う。
ジュポジュポジュポ。出来杉が指マンをきめる。そして、アナルを舐める。
「ああ……すごい……」
1085:03/05/30 15:25
その夜、のび太も夜這いにきた。
「ええっと静香ちゃんの部屋はどこだっけ。こんなに暗いとわからないよ。
おやっ。一階からあえぎ声がするぞ。おかしいな。静香ちゃんのお父さんは
今は家にいないはずだぞ。えーい。まあいいや。覗いてやれ」
暗い部屋で出来杉と静香の母が虫のようにシックスナインしていた。
おや? あれは出来杉じゃないか? いやいやそんなはずは無い。でも待てよ。
のび太は気づかれないように注意して出来杉の脱ぎ捨てた服を取ると玄関に行き、明かりをつけて確かめた。
「やっぱり出来杉だ。あいつめ。俺も知らない隙に静香ちゃんのママとセックスしやがって。
僕も狙ってたのにい、悔しいぃぃぃぃぃ」
あっ、やばい。静香ちゃんが降りてきたぞ。隠れろ。おや、トイレに行く見たいだぞ。覗いてやれ。
ちっ。ドアの下からじゃあ、スリッパしか見えないよ。でもおしっこのいい音が聞こえる。あっ、おならした。
やばい。出てくるぞ。逃げろ。それにしても静香ちゃんって小便近いなあ。
おっ静香ちゃんも出来杉たちを覗いてるぞ。やっぱ興味あるんだな。あっ、部屋の中に入っていった!
どうなってんだ一体? あっ、静香ちゃんのあえぎ声も聞こえてきたぞ。くそお。絶対止めさせてやる。
親子チャンポンだなんて出来杉のやつめ。殺してやる。
チャンポンよりもどんぶりじゃないかな、普通は
110名無し物書き@推敲中?:03/06/03 15:43
面白いage
どこがアーマードコアなのかと
まぁ、アーマードコアを知らないやつが勘違いして書いてるんだろうな。
バカジャン?
まあ機体シュトルヒに乗り換えて1からやり直せってこった。
どう頑張ってもシュトノレヒには乗れない罠。
兄<オレガダネナラ

 大<オレラニ
大 大<ノロウゼ

 ○<サイタマサイタマ
大 大<サイタマ〜
115山崎 渉:03/07/12 11:58

 __∧_∧_
 |(  ^^ )| <寝るぽ(^^)
 |\⌒⌒⌒\
 \ |⌒⌒⌒~|         山崎渉
   ~ ̄ ̄ ̄ ̄
116山崎 渉:03/07/15 11:54

 __∧_∧_
 |(  ^^ )| <寝るぽ(^^)
 |\⌒⌒⌒\
 \ |⌒⌒⌒~|         山崎渉
   ~ ̄ ̄ ̄ ̄
117山崎 渉:03/08/02 01:29
(^^)
118名無し物書き@推敲中?:03/08/05 01:43
    ____                             
   /∵∴∵∴\                            
  /∵∴∵∴∵∴\                            
 /∵∴∴,(・)(・)∴|                            
 |∵∵/   ○ \|                            
 |∵ /  三 | 三 |  / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄                          
 |∵ |   __|__  | < うるせー馬鹿!                         
  \|   \_/ /  \_____                          
    \____/  
119山崎 渉:03/08/15 12:28
    (⌒V⌒)
   │ ^ ^ │<これからも僕を応援して下さいね(^^)。
  ⊂|    |つ
   (_)(_)                      山崎パン
何これ?
その夜、のび太は夢を見ていた。

「アァ・・取れちゃう・・」
「てめぇ!!」

ジャイアンが伸びたのアレを引きちぎった!!
「おいおい。そんなんじゃせっかくの煮汁が漏れ・・」

出来すぎが吐き捨てるように呟いた
124熱液 ◆5edT8.HnQQ :03/10/09 08:11
俺が書いた
125熱液 ◆5edT8.HnQQ :03/10/09 08:19
俺だけじゃなかった
のび太「雨戸こわ れた」
127127:03/10/11 23:10
「くそッ!!オーバーヒートか!!安値のラジエータだからしかなねぇか!!」
ジャイアンの機体”ジャイアントマグ”の中にけたたましく響き渡る警告音の中、
スネオが通信を入れてきた。
「ジャイアン!!大丈夫!?」
通信機の向こうから聞こえるスネオの機体”ザーマス”が放つマシンガンの音。
敵に囲まれたこの状態では、弾切れも時間の問題だろう。
重装機体のジャイアントマグでさえ、左肩の中型ミサイルを打ち尽くしていた。
右腕武装のショットガンも、もう残弾が16・・・
レーダーに映る無数の敵影は未だ退却する気配すら見せない。
「ああ、大丈夫だ!そっちはどうだ!?」
「こっちも大丈夫!!」
お互い、自分の全神経を集中させ、敵を撃破してゆく。
「くそッ!きりがねぇ!!」
ジャイアンが右腕のショットガンを打ち尽くし、右肩のロケットに武器選択を合わせようとしたときだった。
128127:03/10/11 23:11
「うわぁぁぁああああああ!!」
いきなり通信機の向こうからスネオの悲鳴が聞こえてきた。
「ど、どうしたスネオ!!」
二人とも違うルートでの任務だったせいで、スネオのザーマスを確認できない。
ジャイアンがスネオの悲鳴に気をとられ、一瞬の判断が遅れた瞬間、敵MTの放った高軌道ミサイルがジャイアントマグの左腕を吹き飛ばそうとした。
その時、いきなりそのミサイルがジャイアントマグ左腕手前で爆発、消滅したのだ。
ジャイアンはいったい何が起こったのかわからずにレーダーを確認した。
しかし、レーダーにはそのミサイルを迎撃するような物体は映ってはいない。
すると、今度はジャイアンの周りにいるMTが次々に爆音と共に消し飛んでゆく。
ジャイアンは再度レーダーを確認しようと目をやった瞬間、ジャイアントマグに影がかかった。
「なッ!!」
「ジャイアン、打ち終わった武装は解除した方がいいよ。」
「の、のびた!!」
129127:03/10/11 23:27
レイヴン暦14年となるジャイアン、しかしそれは全て見たことも無いようなパーツで覆われていた。
「まぁ・・・安定性能、旋回性能、ブースト持続力、レッドゾーン容量、ジェネレータ容量、
オーバードブースト持続力、速度共にOK、それからラジエータ冷却速度、ジェネレータ加速度、
頭部生物センサもOKか・・・武器は、右腕スナイパーライフル、威力、精度、許容熱量、重量も問題無し
・・・以下略っと・・・」
「のびた・・・お前、その機体は?」
ジャイアンが目を丸くして何やらブツブツ言っているのびたに機体のことを尋ねた。
そんなジャイアンにのびたは、
「ジャイアン、今は任務中だよ。その話は後でだ。スネオも回収しなきゃならないしね。」
そう言うと、その新型らしきACの全長ほどもある長いスナイパーライフルを構え、ブーストの出力を上げた。
「お・・・おう!!」
130127:03/10/11 23:39
「う、うわぁぁああああああああぁぁああああ!!」
すぐ隣で仲間のMTが爆発する。
従来のスナイパーライフルならば十発は耐えれる重装のMTなのに、
あの見たこともないACが持つ、馬鹿長いスナイパーライフルにかかれば一撃で沈んでしまう。
「C地区全滅!敵、D地区への扉のロックを解除しました!!」
「くそお!!何故だぁ!!くそがぁ!!これだけのMTを配備したんだぞ!!
それが何故こうもたやすく破られるのだ!!まさか、奴が・・・奴が・・・奴があのイレギュラーだとでも言うのか!!」
「総監!!奴らは既にD地区を突破し、こちらへ向かっております!!早く対比命令を!!」
司令室に響き渡る警報。赤いランプが点滅する。
不安がる部下の顔を見つめながら総監と呼ばれた男はテーブルの上の銃をとる。
「そ・・・総監!?何を!おやめ下さい!!」
「ええい、館内にいる全員に告ぐ!・・・・・・お前達、銃は持っているな?」
131127:03/10/11 23:42
もう駄目だ・・・
見苦しいものをお見せしてしまい、申し訳ありませんでした・・・
132名無し物書き@推敲中?:03/10/12 17:27
いろんな話が交差しすぎて意味がわかりません
名前を人別に統一してください
133127:03/10/13 02:35
>>132
そう思うから、名前のトコロに127とかって入れてるでしょ?
それでもチミは解からないというのかな?
>>133
 お前だけに言ってるんじゃねーよ
 しかもつまんないし
135127:03/10/13 07:29
だから「申し訳ありませんでした・・・」
っていってるだろ?難しかった?
136名無し物書き@推敲中?:03/10/13 12:00
伸びたって時点でもうだめぽ。
普通に書こうよ・・・w
137名無し物書き@推敲中?:03/10/13 12:23
アーマード・コアを?w
>>137
まあ、ねw
(伸びたはありえない・・・)
でも、結構意外性あって面白いと思うんだけどなぁ・・・
俺だけ?
140名無し物書き@推敲中?:03/10/13 15:39
>>139
そのとおり
まじかぁ・・・残念
っつかみんなAC知ってる?
じゃあさ、純粋なアーマードコアの二次創作スレ立てていい?
>>141
知ってるよー、俺は全作持ってる!
(100%クリアはできなかったけど・・・)
おkぇ・・・
新スレ立て・・・と思ったけど、ACは近未来だから、こっちでもいいんじゃね?

【現代】戦記小説総合スレッド【近未来】
http://book.2ch.net/test/read.cgi/bun/1066045961/l50
146名無し物書き@推敲中?:03/10/15 01:23
OK貰ったから、まともなACを書きたい香具師はここへ逝くべし。

【現代】戦記小説総合スレッド【近未来】
http://book.2ch.net/test/read.cgi/bun/1066045961/l50
キープ
半付神輿揚
149名無し物書き@推敲中?:03/12/13 17:24
papiko
150名無し物書き@推敲中?:03/12/28 16:42
続き読みたいって言ってみる
のび太「ドラえも〜んこのAC、ロックサイトが異常に狭いよ。これじゃ当たらな〜い」

ドラえもん「占いと同じさ。当たるも八卦、当たらぬも八卦。ところで敵さんだが
武器はマシンガンだ。しめたものさ、数撃ちゃ当たると思ってる。そこでのび太君、
君の腕がためされるわけだ。君のACが右手に持つ武器。
そいつは狙った獲物は必殺、そして必中の名銃カラサワだ。
ジェネレーターだろうが脚部だろうがどこ当たっても一撃で即席棺桶のできあがり、
かすってもアウトっていうおっそろしい代物だ。
でも君の腕があればうまく使いこなせるだろう。射撃の初歩はわかってるだろう?
『ご自分』の足を打ち抜かないってことさ。
気楽にいこう。クソみたいに垂れ流すだけのマシンガンと、単発だが一撃必殺のカラサワ。
どっちにプレッシャーがある。君の方か? それとも……」

のび太「いや、相手の方がビビってる。やれるさ。やってみせるよ、ドラえもん」

ドラえもん「ようし、その意気だ。貴重な光弾を思う存分食らわしてやんな。
ただムダ撃ちはダメだぜ。仕留めるなら一発で決めるんだ。
ギリギリまで狙いをしぼって、相撃ち寸前まで見切るんだ。
間違っても遠くから豆鉄砲撃ち合うようなシケた戦闘は見せんでくれ。勝つ時負ける時も一瞬だよ。
では結果を期待しているぞ
……といっても君のテストの点数のことじゃないから安心して行ってきな」
のび太「まったくこれから命がけの戦いだってのにずっこけさせないでくれよ」

ドラえもん「わ、悪かったよ。それはそうと、君の脳みそはもう戦闘モードに
切り替わったかい?コタツでミカン食べながらやるゲームとは違うんだからね」

のび太「練習はあくまで練習。その切り替えぐらいできてるよ」

ドラえもん「おや、おいでなすった。……へんてこなACだ。ねえ、のび太くん。
あのAC、誰かの顔に似てない? つぶれアンパンみたいな鼻の突起がついてるよ」

のび太「さてはジャイアンか?! ようし、積もり積もった恨みここで晴らしてやる」

ドラえもん「感情的になるのだけは勘弁してよ。……大丈夫かな〜」

ジャイアン「へっへっへ、のび太〜。ここで会ったが3年目だな〜。
とか言いながら鼻からお前のことなんて眼中にねえけどな。
暇つぶし、手持ち無沙汰に飼い犬の相手でしてやろうかって感じで来てやったぜ。
せいぜいママ〜だのドラえも〜んだの泣き叫びながらとんずら決め込まないでくれよ。
オレは背中を撃てねえ主義なんでな、てゆーか逃がさねえけどな。ゲヘゲヘゲヘ」

のび太「ジャイアン、ぼくは君から逃げたりはしないよ。気持ちでも決して負けない
つもりだ。君の方こそいつまでもガキ大将きどりでいられると思わない方がいい。
腕っぷしでは君の方が上だけど、ようはそれだけのことだ。腕力だけで他の分野に
通用するという思い違いは今日かぎりで捨ててもらう」

ジャイアン「のびちゃ〜んたら、たくましくなっちゃって〜。
ほんとにあたしうれしいわ。でもこれで気兼ねなくいたぶれるわ。
ゲヘゲヘゲヘ覚悟しろよのび太〜。家畜に戻してやるからな〜」

ドラえもん「のび太くん、頑張れ!」
ジャイアン「のび太〜。そのバカでかいライフルは何のつもりだ? 太陽でも
撃ち落とすつもりかゲヘゲヘ。いい戦利品になりそうだぜ〜」

のび太「カラサワの味は一度しか味わえない。なぜなら味わった者はそのまま昇天しちゃう
からね。君にもぜひ味あわせてあげたいな、小細工無しの素材の味、堪能してみるかい?」

ジャイアン「ゲヘゲヘゲヘ、武器で勝ってりゃどんなカモもいい気になれるってか。
了解したぜのび太。お前にとどめを刺す時はそのカラサワを使わせてもらうゲヘゲヘゲヘ」

戦闘の合図はいらなかった。ジャイアンACがマシンガンを乱射しながら突っ込んで来たのだ。
のび太ACはとっさに平行にブーストダッシュすることでかわすと、
まるでそれが一連の動作でもあるかのように予備動作なしにカラサワを構え、
ジャイアンACに狙いを定める。照準にかかる時間わずかコンマ5秒、
トリガーを引く直前のび太はジャイアンACの撃破を確信した。
そしてこういう時のび太が狙いをはずしたときはなかった。

空間を切り裂くように荒野を光弾が走る。目では追えない速度。見えているものは
光条の先端ではなくその残像だ。エネルギー弾が射出された瞬間、すでに目標は
大破しているはずだ。しかし前方に何の反応も起こらない。光弾は目標をとらえる
ことなくすでに大気圏の外へ。

のび太「かわされたっ! まさか反応されたのか?」

ドラえもん「人間にそんな芸当は無理だよ!」

荒野に無数に横たわる岩塊のひとつからジャイアンACが姿を現した。
ジャイアン「たまんねーな、のびちゃ〜ん。普段はライフルぶらさげてるくせに、
撃つ時だけ構え出したら撃ちますよって言ってるようなもんじゃ〜ん。
かっこつけてちゃだめだよ〜。
それにしても妙なクセを身につけたまま戦場に来ちゃったもんだね〜。
クセってすぐには直んないんだよ〜。てゆーかそれが命取りなんだよボケが!」

のび太が射撃の構えをすると同時にジャイアンACはその場でジャンプした。
ロケットのようにすさまじい推力で上昇していく。そして上空でホバリングしながら
マシンガンを乱射してきた。遮蔽物のない空からの攻撃では避けようがない。
ジグザグにブースト移動してかろうじてかわすのび太AC。
だがこのままではエネルギーがもたない。反撃しようにも回避中の射撃など当てにならない。
のび太「くそ、ミサイルがあれば」

ジャイアン「ミサイルが欲しければいくらでもやるわよ、のびちゃ〜ん」

ジャイアンACの両肩ミサイルパッドから、数えてみる気になれないほど無数の
ミサイルが射出される。一気にケリをつけようというのか全弾発射も同然だった。

ドラえもん「ムダに動くな! デコイを射出させてギリギリでかわせ」

のび太「音速のミサイルをどうやってギリギリでかわすんだよ!」

とっさにデコイを射出するのび太AC。だがミサイルがデコイに導かれるかどうかはいつも神頼みだった。
ミサイル着弾までの短いようで長いこの刹那、当たらぬようただひたすら祈るしかない。
二人の会話をかき消すようにすさまじい爆発が地上で起こる。地面ごと吹き飛ばすような圧倒的な火力。
のび太ACは直撃を免れたものの爆風に大きくあおられ転倒した。
爆炎につつまれた地上はけむりにおおわれ、視界はゼロだ。
だが機体の破壊は免れた。もっとも今日はたまたま運がよかったのかもしれない。

「のび太、のび太無事か〜」
のび太「ドラえもんか? ぼ、ぼくは無事だよ。なんとか直撃は避けられた」

「のびちゃ〜ん、無事ですか〜」とぼけたようなジャイアンの呼びかけを受信した。

のび太「おかげさまでね。でも、このけむりのおかげでお互いどこにいるかわからなくなったよ。
そろそろ空から降りてきたらどうだい」

ジャイアン「バッカね、のびちゃんたら。チェックメイトよ〜。爆炎でこっちも視界がきかないと思ったら
大間違い。こっちの照準はけむりを透過する赤外線ファインダーだよ〜」

ドラえもん「やばい、けむりの中にいたらこっちが負けだ。早く出ろ!」

言われるが先にのび太ACは モニターのきかない状況下、レーダー反応のみに頼って
障害物を避けながら爆炎地獄からの脱出をはかる。ジャイアンもまた地上に複数ある熱源の
ためのび太ACを捕捉できないでいた。熱という熱にセンサーが働いてしまうからだ。

ジャイアン「なんじゃこりゃ、的がたくさんあるぞ。くそっ、のび太めどこにいやがる!」

ドラえもん「ジャイアンのやつ、ターゲットがしぼれないもんだからめくら撃ちになってるよ。
なんのための赤外線照準なんだか。のび太くん、このままジャイアンが弾切れになるまで
ここでねばってもいいんじゃない。ミサイルもないんだし」

のび太「ジャイアンはそんなにバカじゃないと思うな。マシンガンの他にまだ何か持っていそう
な気配がするよ」

ドラえもん「はっ! のび太くん、目標が急速降下している。注意しろ!」
き、キター!
のび太「補足されたのか? ここじゃ火線が見えない、飛ぶよ!」

ドラえもん「いや待て! ロックオンサインは出てない。ただ降りてきてるだけだ。
ジャイアンのやつめ、同じ土俵で勝負するつもりだな。
……目標AC同高度、距離80。近いぞ!」

ジャイアン「無視界状況でのガチンコ勝負ってのも楽しいぜ、のび太〜」

デコイに反応してばらまかれたミサイルは周囲数百メートルにわたって広大な煙幕帯を
つくっていた。当然のことながら敵ACはレーダー上に映る点としてしか認識できない。

のび太「ブレード勝負ってことかい? レーダーのみに頼っての……」

ドラえもん「誘いに乗るなのび太くん。無視界で近接戦なんて無謀だ。
間違って衝突でもすれば両方ともオシャカだぞ」

のび太「不利なのはどっちも同じさ。同じ条件で正々堂々立ち向かう。
これが男の戦いってやつじゃないか」

ジャイアン「のび太〜。そうこなくっちゃな、ぶち殺しがいがないってもんよ。
メッタメタに切り刻んでやるぜ〜」

ドラえもん「戦いに正義も卑怯もないのに……まあ、いいか。この際好きなように
やらせよう。所詮セコンドがあれこれ口出ししたって逆効果だもんね」

ジャイアンACが先に動きだした。空中での性能と同様、地上でも高速機動を発揮していた。
のび太ACの周囲を旋回しながら、徐々に間合いをつめてくる。
だが、のび太は身動きひとつせず、刻一刻と変わるレーダーの反応だけを凝視していた。

ドラえもん「のび太、どうした。どうして動かない?」
のび太「一対一のブレード勝負なんだよ。相手がブレードの間合いに入ってくる
まで警戒する必要ないじゃん」

ドラえもん「なんてのんきな……。相手はジャイアンだよ。勝つためにどんな
ことしてくるか分からないのに」

ジャイアンACの旋回が徐々に楕円の軌跡を描くように短軸を狭めていく。
のび太ACのわきを通り抜け様に攻撃する一撃離脱戦法の構えだ。

ドラえもん「どうしたんだ、動き回らないとただの的になるぞ〜」

のび太「わからないかなドラえもん。お互いの武器の攻撃範囲が同じなら
先に攻撃した方が勝ちだろ。だったら止まったままで相手が近づくのを
待った方が楽じゃん。ようはね、速くブレードを抜いた方が勝ちなんだよ」

ドラえもん「ガンマンの早撃ちとかん違いしてないか〜。どこまでバカなんだ君は」

のび太「バカじゃなかったらこんな勝負に乗らないよ」

ジャイアン「のびちゃ〜ん、駆け引きのお勉強もしたことないんでちゅか〜。
だ〜か〜ら、てめえはいつまでたっても寝ションベンたれなんだよ!」

のび太「何ごとも単純に決めたいんでね。めんどくさがりやだから、ぼくは」

旋回を続けていたジャイアンは機が熟したと見て、鋭角的にのび太ACめがけて切り込んできた。

ドラえもん「右から来た! くそっ、どうしてレーダーだけで機体の向きがわかるんだ」
ジャイアンのパッシブ赤外線ファインダーはのび太ACの機体の向きを把握することができる。
だから自機から見てACの左側から攻めるというブレード戦の定石が通用するのだ。

ジャイアン「死ね、のび太!」
だがジャイアンACの狙いすました一撃は空を切った。タイミングおよび
斬撃の収束ポイントは完璧のはずだった。なぜだ?
ジャイアンはレーダーをまじまじと見回したが敵機の表示が消えている。
ジャイアンはモニターに目をやった。正面に気流の乱れが起きている。
ジャイアンは本能でのび太ACが真上にいると即断した。「のび太め生意気な、食らえ!」
ブレードオンリーのことなどお構いなしにマシンガンを乱射するジャイアンAC。
だがその直後マシンガンごと右腕を切り落とされる。「おのれ、のび太!」
歴戦のジャイアンはひるむことなくブレードで反撃。ブレードとブレードがかち合い、
すさまじい衝撃波が起こる。瞬間的に真空になったその場でお互いのACを間近で視認する両者。
ジャイアン「とらえたぞ、のび太〜」

のび太「ジャイアン……さすがだよ。たとえ格下と思っている敵に裏をかかれても決してひるまない。
その戦う本能の優秀さはぼくは認める。……だがミサイルを撃ちつくし、マシンガンを
失った以上この勝負、ぼくの勝ちだ!」

のび太ACはジャイアンの斬撃を急速後退でかわし、カラサワを構えた。
気流の乱れで所々煙幕の切れ目が見える。ジャイアンACが急迫し、
そこに一瞬姿を見せたとき、のび太はほとんど反射的にトリガーを引いた。
光弾のすさまじいエネルギーが周囲の煙幕を吹き飛ばす。爆煙は渦のように気流を巻いて立ち上り、
辺りは数百メートルにわたって一気に晴れわたった。
しかしジャイアンACは上空へ回避していた。闘争本能の優れた者は戦局の見極めも早い。
負けるとわかった戦いにむざむざ散ったりはしないのだ。ジャイアンは戦場から逃走をはかった。

ドラえもん「またはずしたのかバカバカバカ! 逃げられるじゃないか〜!」
のび太「う、うるさいな。邪魔なけむりを吹き飛ばしただけさ。二撃目ははずさない」

ジャイアン「くそっ、今日のところは引いてやる。だが次に遭うときは覚悟しておけ!」

のび太「本物の狩人は逃げる獲物も逃さない。悪いけど次に君に会うときはたぶん
花束を持って行かなくちゃならないかな」

『花束?!』
ジャイアンはその言葉が合図であったとでもいうように、緊急脱出のレバーを引いてACを脱出した。
その直後に一条の光の矢が自機を貫くのをジャイアンは見た。ACは光を放出するように炸裂し、
蒼空に咲く小さな白い花のように空中に散っていった。
生存競争で最後の決め手になるのが本能なのだと、ジャイアンは身をもって自覚させられた。

ドラえもん「勝ったー! のび太くん、ぼくたち勝ったんだよ」

のび太「どうやらジャイアンのやつ無事に脱出したようだね。本当に悪運の強いやつだよ」

ドラえもん「そんなこと言ったって、ぼくはのび太くんがジャイアンが脱出したのを
確認してから撃ってるの知ってんだからね」

のび太「な、なに言ってんだよ。戦場では非情に徹するのが原則じゃないか。
そ、そんなことするわけが」

ドラえもん「まあ、どっちにしてもケガがなくてよかったよ。さあ、家に帰ろう」

のび太「うん」

謎の男「あのジャイアンがまさかのび太にやられるとはな……」
二人が戦場から去ってしばらくして、荒野の遠景が陽炎のようにゆらゆらとゆがみだしたかと思うと
突如黒い影が姿を現した。それはまぎれもなく実体をともなったACだった。
のび太とジャイアンが激戦をくり広げていた中、このACは迷彩ステルスによって
姿を消したまま間近で観戦していたのだ。彼はあの軍需産業大手ホネカワ・エレクトロニクスの
御曹子骨川スネ夫本人であった。

「ステルス対策すらない傭兵ACごときにぼくのACの存在を見破る策などあろうはずもない。
その気になれば瞬殺することだってできたんだよ、のび太くん。君が勝利の喜びにひたってる、
その愉悦の瞬間を文字どおり永遠のものにしてさしあげることもできたのだよ。
……所詮、寄せ集めの部品でつくられたレイブン同士の戦闘など、
ただの『ごっこ』に過ぎないということを身をもって教えてあげないとね。
まあ、その時を楽しみにしていたまえ。
それではのび太くん、よい新年を。クククク……ケケケケ……クェーケッケッヶ!ゲホッ」


つづく……かも
「ねえ、のび太くん。南極にいかない?」

ドラえもんの唐突な誘いにのび太はまんじゅうをのどに詰まらせそうになった。
「な、南極なんかに行ってどうするの? ゴホゴホ」

「ふふふ、それがね〜。君の大好きなACに関係あることなんだよ」

「ほんとに? 南極にいったい何があるっていうの。まさかACが埋まってるとか
いうんじゃないでしょうね」

「それがね〜、実は行ってみないと分からないんだけど。話によるといろんな
パーツが発掘されてるっていうんだ」

「それじゃ早く行かなきゃ、みんなにいいの取られちゃうよ」

「まあ、あわてなさんな。南極は一部の研究者や専門家しか行けないところだから、そう簡単にパーツを持ってかれることはないよ」

「でも、でも早く行こうよ南極へ。どこでもドアでさ!」

「バカだねえ君は。南極がどういうところか知ってるの? 氷点下でブリザードの
吹き荒れる酷寒の地だよ。何の用意もなく行けるわけがないだろう」

「寒さ対策か……。そうだ、ねえぼくのACってコクピットが閉鎖性でエアコン完備
だから南極でも適応できるんじゃないかな」
「ふふふ……残念だけどそれは無理で〜す。寒冷地仕様のACならまだわかるけど。
君のACはそうはなっちゃいないからね。それと同じ寒さでも南極のそれは別もの
でね。局地的には鋼鉄すらボロボロになるほど極寒の場所もあるんだ。スコットの
南極探検を知ってるかい。近代文明の最新装備が極地の過酷な環境に耐えられな
かった例だ。」

「じゃあどうするの? 何かいいひみつ道具でもある?」

ドラえもんが何かを言おうとした途端に下の階から電話が鳴り出した。ドラえもんが
降りて行って受話器を取る。

「はいはい野比ですけど〜。どなた様ですか〜」

「やあ、その声はドラえもんかい? 僕のこと覚えてるかな。小学校のとき
のび太くんの近所に住んでいた骨川スネ夫っていうんだけど」

「あらっ、覚えてるよ。スネ夫くんだろ。懐かしいな〜。いや失礼、久しぶりだね〜。
いまどこにいるの〜」

「驚くかもしれないけど宇宙にいるよ。まあ、それはきみたちには関係ないこと
なんだけどね。用件だけを手短かに言うよ。実はわけあってきみたちを招待したい
ところがあるんだ」
 氷原のただ中に南極探検用のグランドクルーザーが白い雪のしぶきをあげながら停車する。
中から防寒具を着込んだのび太とドラえもんが出てきた。二人ともどこか緊張している。外の
景色を見て二人は大いに驚く。
「うわっ、なんだこりゃ」

「……雪の原っぱが一面真っ赤だ」

「まるで血の海じゃないか。ここは本当に南極なの?」

車から大柄な男が降車してきて、のび太にトランシーバーを渡す。すると聞き覚えの
ある声がそこから流れてくる。のび太はすぐにそれがスネ夫の声であるとわかった。

「のび太くん聞こえるかい? スネ夫だよ。そこから上を見てごらん」

のび太とドラえもんは雲ひとつない南極の空を仰いだ。東京では考えられないような
澄んだ青が無限を思わせる広がりを見せる。ちょうど天頂付近に目がいったとき、
一番星かそれ以上の輝きを持つ星がひとつぽつんとあるのに二人は気づいた。
「あれのことかい」

「そうそう、その星がぼくがいまいる船なんだ。宇宙の国からこんにちは〜」

「すご〜い、本当にあそこにスネ夫くんがいるの〜? お〜いここだよ〜」

無邪気に喜ぶ二人を適当にあしらうように言葉を続けた。
「ところでね、これからぼくたちが行う実験のことなんだけど、その説明をする
のは始めてだよね」
「そ、そうだった。スネ夫いったいこれはどういうことなんだい? どうして
雪原が一面真っ赤に染まっているんだ」

「それはただのペイントさ。もしくは的と言いかえたほうがいいかな。まあ、
それはいいとして、きみたちにぼくの船に搭載されているちょっとした新型兵器
の試験運用を間近で見学してもらいたくてね」
「兵器だって。……するっていうと宇宙兵器ってわけだ。すごーい」
「半径1マイルの巨大な的めがけて大出力エネルギービームを打ち出すのさ」
「え? するとまさかこの赤い大地が的で、ぼくたちはその中にすっぽり
入っちゃってるってこと?」

「残念だけどそうなるね。発射まであと十秒、それではごきげんよう」

「ちょ、ちょ、ちょっと待って。やだー! 死にたくないドラえも〜ん」
「なーんて、ウソだよ。ごめんな、悪気はないんだ」
 怒ってギャーギャーわめき立てる二人に、スネ夫はジョークの通じない奴ら
めと内心思いながら「ごめんごめん」とくり返しなだめた。
「ともかく、二人ともすぐそこから離れてもらうよ。実験の件は本当だからね」

 そしてグランドクルーザーは二人を乗せて再び雪原を走り出した。車内はヨット
の船内のように割合広く居心地のいいものだった。
「それにしても、スネ夫のやついったい何をたくらんでるんだろう」のび太は
ホットココアをゆっくりすすりながら言った。
「お金持ちの考えることなんてわからないよ」
「あのお坊っちゃんがまさか軍閥会社の御曹子だったなんてね」
「小学校のとこは親の方針でわざと普通の子供たちが通う学校に通ってたらしいよ」
「いま何をしてるんだろう。普通の高校生やってるとは思えないし」
「それが聞いた話ではね。現在スネ夫くんは空軍少尉らしいよ」
「し、少尉って。まさかスネ夫、兵隊やってるの?」
「兵隊っていうか将校って言いなよ」
「それときみは知らないだろうけど彼はA専にも通ってるらしいんだ」

「A専? ゲーセンのことじゃないの」

「AC技能専門学校のことだよ」

「あ、あの入学金だけでン千万するっていうとこ? 金持ちボンボンしかいけない……」

「きみと同じAC乗りってことだね。それもアリーナでも常に上位ランクに入る腕前らしい」

「アリーナにも出れるんだ。うらやましいな……出場権取るにもすごくお金が
かかるからぼくらには無縁の話だ……」

「だからぼくたちは無報酬で野試合みたいな戦いを続けるしかないんだね。でも名前
が売れればスポンサーがついてくれる。のび太くん、きみの戦歴はまだ浅いがいずれは
誰かの目について一流のレイブンの仲間入りになるチャンスだってあるよ」

「スネ夫のACってどんな感じなのかな」

「ここに来る前に調べてみたけど。さすが金持ちだね、複数のACを所持してる。
いずれも高級機だ。……というか普通のACと見た感じ、臭いが違うんだよね」

「臭い? ガソリンが違うってことかな?」

「いや、これはね。ロボット同士じゃないとわからない微妙なニュアンスなんだ。
危険な臭いというか、なんか得体のしれないもののような……」

「………」
 一時間ほどたってクルーザーは雪上を徐々に減速しながら停車した。そして
二人の割り当てられた個室に先ほどの大男が入ってきた。これから行う実験に
ついて簡単な説明を行ったあと二人に特殊な分厚いサングラス手渡した。宇宙
空間から打ち出された強力なレーザーが雪原を焼き切る瞬間を見学させるため
だ。男が去った後のび太たちは実験の荒っぽいやり方に憤りを覚えた。

「なんてやつだ。南極の氷を吹っ飛ばすなんて。これって環境に多大な影響が
出るんじゃない? どうにかやめさせられないだろうか」

「ぼくたちは一応ゲストとして招かれてるからね〜。気持ちはわかるけど見守
るしかないな」

「南極の氷の下になにかあるんだろうか」

 雪原のはるか彼方を車外に出て凝視する二人。相変わらず宇宙船は二人の真上
にあり、まるでその位置から移動していないように見える。二人には自分たち
めがけてレーザーが降ってくるのではという恐怖が少なからずあった。
《外でご見学される方々はサングラスの着用をもう一度ご確認ください。発射
のカウントダウンを行います。60、59、58……》

「まるでこの世の終わりの光景を目の当たりにするような気持ちだね」のび太は言った。
「まさか南極文明でも目覚めさせようっていうのかな」
「南極文明! もしかしてピリ・レイスの地図が発端になったあれのこと?」
「まあ、あの地図の信ぴょう性は置いとくとしても、まだ南極には多くの謎が
残ってるからね」
「あのレーザーは数千メートル地下の岩盤まで届くんだろうか。地震は起きないのかな」
「まあ、ここまで来たからにはとにかく見届けなくちゃね」
 上空に見える宇宙船の輝きがひときわ大きくなる。発射まであとわずか。
低高度軌道上の宇宙船「スーネチャマ」ではクルーたちの異様な緊迫感が狭い
船内を支配していた。
 船内の発令所で二人の男が何ごとかを話していた。二人は服装の面でも他の
クルーとは別の所属であることが見て取れる。ホネカワ・エレクトロニクス社
の御曹子スネ夫でさえ、あくまでこの宇宙実験に出資したことからゲストとし
て招聘されたにすぎない。実験の起案者やその目的など全容は謎に包まれていた。
「宇宙から地上の目標を破壊する。これはまさに人類が神になったような心境
にさせてくれるね」
「はい、宇宙の創造主はこれまで無秩序な破壊をくり返してきました。ブラッ
クホール、超新星爆発、銀河同士の衝突、ビッグバン……これらにくらべれば
地上で我々の先祖がくり返してきた破壊、殺りくなどまるでとるに足らないも
ののように映ります」

「照射時間720ミリセカンド、プロセス異常なし、フォーカス、アライメン
ト異常なし、全視界オールグリーン。最終ロック解除。テンカウント開始しま
す。10、9、8……」

「いよいよだな〜。のび太のやつきっと驚くぞ〜」スネ夫は白い怪物のように
眼下に広がる南極大陸を足下のパネル窓から嬉々としてながめていた。

「?」
「なんだ」
「??」
「どうしたんだ」
「あれは……」

「目標地点の発光を確認。照準レーザーの反射ではありません」
「まだ発射してないのに? いったい何が……」
 のび太たちは地上で起こっている異変を困惑気味にながめていた。
「地平線が輝いてるよ」

「無気味だな〜」

「光が強まって……」
 その直後、地平の彼方がすさまじい閃光を発した。「うわあ」
 特殊サングラスも役に立たないほどの激しい光の照射が襲う。光輝の海に投げ
出されたように二人はなす術なく金縛りに遭い、身をかがめることすらできな
かった。 その後、光を追いかけるように衝撃波が何次にも渡ってはげしく叩き
つけてきた。
「ドラえも〜ん」

「地面にふせろ〜!」
 荒れ狂う暴風がのび太たちと同行のクルーたちを数十秒にわってなぶり続けた。
クルーザーも横転して嵐にさらされた。轟音に混じってこの世のものとは思え
ない奇妙な旋律がかすかに聞こえてくる。上空の大気が乱れ盛んに共鳴し合い
ながら無気味に鳴り響いているのだ。それらは地獄の光景さながらだった。
 やがて嵐はおさまり、今度はゆるやかな風が爆心地に向かって舞い戻るよう
に吹き始めた。地面に突っ伏したまま耐えていた二人もようやく顔を上げるこ
とができた。
 だが二人が目にしたのは、彼方の大地に突き刺さる一本の槍、いや蒼空を突
き抜けどこまでも伸びる一条の光の残像だった。
「す、すごかった」
「まるで核兵器だったね」

 二人が呆然としていると、クルーザーの乗員たちがやにわにざわめき出した。
予定と違うことでも起こったのだろうか。二人は心配になった。そのうちクルー
の一人が空を仰いで叫び出す。
「ああ、なんてこった。空を見ろ!」
 みなの視線が天頂付近に注がれる。と同時に驚愕と悲鳴の声があたりに響く。
いくつかは嘆息に変わりいくつかは号泣の声に変わる。のび太とドラえもんは
言葉もなくただその光景を見つめるしかなかった。しばらくしてつぶやくように
のび太が声に出した。
「星が……いや船が二つになってる」

「ドッキングモジュールへ急げ! 負傷者は優先しろ」
「モーメント回復しません。手動操作に切り替えます」
「スラスター制御どうなってる、このままじゃ地球に落ちるぞ」
「チャージが足りない。不要な電源はすべてカットしろ」
 目まぐるしく立ち回るクルーたち。くり返し同じことを告げる船内放送。
赤い非常灯が船内を染め上げた。先ほどとは違い、狂気寸前の張り詰めた空気が
船内を占める。
 発令所に一人のクルーが報告にきた。
「キャプテン、本船の維持は非常に困難です。おそらく国際宇宙機構の救援も
間に合いません。周囲に多数のデブリが発生したため接近不可能だそうです」
「ふふ、なんとも皮肉なものだ。神の立場を濫用しようとした人類を、神は
しっかりと監視していたのだからな。老子の言葉を思い出す」
「しかし、直撃を免れたのは不幸中の幸いです。例の地上からの光線はレーザー
照射モジュールと本船をつなぐトラスを切断しただけなので船体への衝撃が最
小限で済みました。宇宙ステーションとの連絡船がドッキング中ですからうまく
すれば全員が無事に脱出できます」
「甘いことを言うな。姿勢制御システムが正常に戻らなければ誰かがここに残る
ことになるんだ。このまま地球に落とすわけにはいかんだろう」
「でもいったい誰が残ればいいのです。キャプテン、あなたにそれを決める権限
があるとでもいうのですか」
「このようなケースは想定してあっても、実際に来るとは考えんものだ。至って
古典的だが、くじ引きで決めることになっている。ゲストを除いたクルー全員
がそれを引く義務を負う」
「あなたたちはどうなるんですか」
「我々は船内作業スペシャリストでも、パイロットでもない。この実験の一部
始終を宇宙機構に報告する義務がある。我々が緊急事態時の最優先脱出権限を
持っているのは、契約書その他で確認済みのはず。それを忘れたか」
「そんな……でも」
 キャプテンの側にひかえていた副長がクルーの肩を同情的にたたく。
「大丈夫だよ。私はここのクルーたちが最高のメンバーだと自負している。
だから安心してこの船を任すことができるんだから」
「ぼ、僕一人なの? 怖いよ。一人で行きたくない」
「カプセルはどれも一人用でね。ちょっと狭いが我慢してくれ。地球直帰コースで射出するから、ものの十分で地球だ。それでは運があったらまた会おう、スネ夫くん」
 無理やり救命カプセルに閉じ込められたスネ夫は円形の分厚い窓を叩きながら泣叫んだ。
「み、みんなは。いやだ、一人にしないで……」

 キャプテンと副長は脱出モジュールの前で何ごとかを交わしていた。
「ところで南極からの光源だが、全部で五つ確認されたようだ。眠れる獅子を
四匹も余計に起こしてしまうとはな」
「四神殿の守護神か。地上ACでどうにかなる代物ではないぞ」
「核しかないのか……」
「愚かな。南極を蒸発させたら我々の文明が滅ぶ」
「だがそれではどうすれば」
「それよりも未知存在の研究は我々にとって新たな課題だな。フフフ……」
 うすら笑みを浮かべるキャプテン。副長はけげんな顔をしてその様子をうか
がっていた。
「見ろ! のび太」

 空の恐ろしい光景に魅入っているのび太の胸を乱暴にドラえもんが突いた。

「い、痛いな。なにすんだよ」
「あれだ。地平線を見ろって」

 のび太は見渡すかぎり平らな雪原と空との境界に目をやった。雲のように
わきあがる何かがこちらに迫っているのが見えた。

「あ、あれは……なだれ?」
「わからない、津波かもしれない」 

 まわりの大人たちはパニック状態におちいっていた。逃げようにも車は転倒
して雪に埋もれ、さらに一面さえぎるもののない雪原に避難場所などあろうはず
もない。
「逃げようドラえもん!」
「で、でもどこへ?」
「どこでもドアだよ!」

「ああそうかそうか……」
 だがあわてたときドラえもんは思い通りの道具を出すことができない。あせ
ればあせるほど関係ない道具が出てきた。

「ああもう、ドラえもんの役立たず!」
「そんなこと言っても、ああ、ああ……出ない」
 のび太はドラえもんのポケットを見てはたとひらめいた。

「そうだ、ドラえもん!君のポケットの中に逃げればいいんだ」
「ええ? そうか! でも、僕は?」

「みんな、ここに飛び込め! ここしか逃げるところはない」
 そう言ってのび太は勢いよくドラえもんのポケットの中に飛び込んだ。大人たち
は半信半疑でそれを見守っていたが、のび太が吸い込まれるようにポケットの
中に姿を消したのを見て、狂喜したようにドラえもんの元に殺到する。ドラえもん
はバーゲンセールの商品ようにもみくちゃにされ、気づいたときには何もない
雪原の上にひとり仰向けに倒れていた。ポケットの中からのび太の声がする。

「ドラえもん、みんな無事避難したから君も早く入ってこい」

「うう、みんな人使いが荒いんだから。ロボットだと思って……」
「いいから早く来いってば、なだれが来ちゃうよ」

 ドラえもんは器用にポケットの中に体をねじ入れると、雪原にはクルーザーと
観測機器など雑多な装置、そしてポケットだけが残った。数分後恐ろしい勢い
でのび太たちのいた場所を雪崩がさらうようにのみ込んでゆく。
 新年の正月を遅まきながらのんびり楽しむのび太とドラえもん。居間のテレビを
二人とも寝っころがって見ていると、買い物から帰ってきた玉子が入ってくる。
「のびちゃん、いくらお正月だからって昼間からテレビばかり見てちゃだめよ」
「うん、でもすることないんだ」
 ドラえもんがムクッと起き出してテレビの画面にかじり付いた。
「のび太くん、見ろ。あれがやってる」
 昼のニュース番組では国際宇宙機構の実験モジュールがデブリの接触で破損
したという報道が流れた。幸い負傷者は出たものの死者は出なかったとのこと。
実験では無重力状態での栽培プラントの研究を行っていた。またこの事故で実験
衛星が地球に墜落する可能性はないという。
「ウソっぱちだい。南極で氷を溶かす実験してたくせに」
「氷を溶かすのが目的じゃないよ……」
「ぼくらはどうするべきだと思う? やっぱり事実は違うと報道局に訴えるべき
なのかな」
「ぼくたちは今回の出来事に関して他言無用と釘を押されてることを忘れちゃ
だめだよ。その口止め料と言っちゃなんだけど、見返りに新型ACをいただく
ことになったんだから」

「そうだった。新型のAC! でもあんな事故の後だし喜んでいいもんだか……」
「まあ、犠牲者は出なかったんだし。スネ夫くんの無事も確認できたし。いい
んじゃない素直に喜んでも」
「うん……そう考えるとなんだか胸がワクワクしてきたよ。早く送られてこない
かな」

 廊下で電話が鳴り出す。母親が出ようとしたところ、居間からドラえもんが
飛び出して、「ぼく出ますよ、ぼく出ます」と、それをとどめるように先に受
話器をつかむ。
「もしかしたらスネ夫くんかもしれない」
「おう、お前か? のび太とかいうのは」

 ぞんざいな男の声にドラえもんは度胆を抜かれてギョッとした。
「い、いえ。ぼくドラえもんです。あのう、どちらさまでしょうか……」

「どうでもいいからのび太を出せ」
「の、のび太くんにどのようなご用で」

「聞こえなかったか、のび太を出せと言ったんだ。それともお前耳ないのか?」
「み、耳ありません。ね、ねずみにかじられましてその……」

「おい……ドラえもんとやら、ぶっ殺されたいのか。オレはつまらん冗談は嫌い
だ。わかったらさっさとのび太を出せ。」
「電話ごしの脅し文句は穏やかじゃないですよ。そんな言い方じゃ誰も言うこと
聞いたりしません」

「……ほう、なかなか肝のすわった奴だな。確かにお前の言う通りだ。このやり口
は穏やかではない。それでは方法を変えよう。お前に直接用件を言う。そして
後でのび太に伝えろ、いいな?」

「いいも何もそんな居丈高な命令に誰が言うこと聞きますかい」

「オレの名はジャック・ランドルフ、AC乗りだ。オレは坊っちゃんの真意が
知りたくて今日お前のところに電話した」

『人のはなし聞いてないし……それに坊っちゃんって誰のことだ?』

「そういうお前も、いやのび太もAC乗りだな」

「そうですが何か」
「アリーナには出ているのか」
「そんなアリーナなんてとんでもない。のび太くんはまだ高校生ですよ」

「高校生だろうと子供だろうと実力があれば出れる。戦歴は浅いのか」
「ええ。まだ十戦ほどしかしてないですね」

「それでのび太は、強いのか?」
「どうしてそんなことを聞くんですか」

「お前の知ったこっちゃない。強いのかそれとも弱いか、それを聞いている」
「何とも幼稚な質問ですね。子供のケンカじゃあるまいし。聞いてるこっちが
恥ずかしくなってきますよ」

「じゃあ、言いたくないんだな。カスみたいに弱いもんだから。安AC乗った
カスが十戦そこそこか。まったくお笑いぐさだな」
「な、な、なんて失礼な! あんた何様のつもりだ?」

「もういい、弱いカスに用はない。おいドラえもんとやら、のび太にこう言っと
け。オレは雑魚のお守をするために試合に出るつもりはない。お前も身のほどを
知ったらさっさと辞退しろ。カスはカス同士つぶし合うのが似合っている、とな」

「ゆ、許せない! よくものび太くんをバカにしたな。お前なんかに……」
 ドラえもんが言いかえそうとすると、そんなのにつき合ってる暇はないと
ばかりに男は乱暴に電話を切った。ドラえもんは冷水をぶっかけられたように
その場で凍り付いた。わなわなと体が震え、ふつふつとわき起こるやり場のない
怒りと無念さが、ドラえもんの沈黙をさらに無気味なものにした。ほこ先は受
話器に向けられじっとそれをにらみ続けるドラえもん。

「おのれおのれ……」

「ドラえもん、いまの誰だったの? まさかスネ夫じゃないよね」
「なにい? あんなやつがスネ夫くんのわけないだろう」

「じ、じゃあいったい誰だったの?」
「知るか! それにしても失礼なやつだったな。思い出すと何から何まで憎た
らしい。おのれおのれ、いまいましや……」

「そいつは名前も言わなかったの? 何が目的だったんだろう」
「きみと同じAC乗りらしいよ。どこの馬の骨か知らないがジャック・ランド
ルフって偉そうに名乗ってた」

「ジャック・ランドルフって……まさかウソでしょ?」
「うん? 有名なのそいつ?」

「有名どころかアリーナ常勝のエースパイロットだよその人。AC『バーゲスト』
の乗り手で別名黒犬のジャック・ランドルフ。な、なんで世界ランカーがぼくの家
なんかに電話なんかするの?」
「な……あんなのが世界ランカーだって? 生意気な、そいついったい何位なんだ」

「最近読んだ雑誌では確か7位って出てた」
「7位だって? ふん、あれなら性格の悪さでもランカー入りできるな」

「本当にあのランドルフだったとしたら、すごいことだよ。というか信じられ
ない。ぼくが電話に出ればよかったなあ!」
「そしたらさぞかし幻滅しただろうに。かえって幸運だったと思うよ、出なか
ったのは」

 二人がその場を離れないうちに再び電話がかかってくる。ドラえもんは先ほど
の男かもしれないと思い、すぐに受話器を取って乱暴に口を開いた。
「オラァ、野比家に何の用だぁ?」

「……あれ? ド、ドラえもんだよね。その声」
「あっ、その声はスネ夫くんじゃないか。電話待ってたんだよ〜」

「や、やあドラえもん。まあともかく明けましておめでとう。ところで先日は
きみたちをひどい目に遭わせてしまって本当に済まなかったね。電話の形で申
し訳ないがあらためてお詫びするよ」
「い〜えいえ。こちらこそスネ夫くんが無事帰還できて何よりですよ〜」

「ありがとう。まあ、お互い無事でよかった。さて、挨拶はそのぐらいにして
本題に入ってもいいかな。きみたちもぐだぐだと世話ばなしを続けるよりは
そっちの方がいいだろう。君たちにACを譲渡する話になっていたと思うが、
きみたちには近日中に招待状が届く予定になっている。ぼくの会社の敷地内の
AC性能テスト場でその最新機が披露されることが決まったんだ。ここで断ら
なければならないことがある。譲渡されるACは最新のパーツを多く寄り集め
ているため、企業の機密上の問題で建て前は譲渡となっているが、機体を所有
管理する権限はあくまでぼくたちホネカワ・エレクトロニクス社にあるという
ことだ。つまり、きみたちが許可もなく勝手にアリーナや傭兵任務などに出撃
することは一切認められない。また、仮にきみたちがACの授受に応じた場合、
以後きみたちはホネカワ・エレクトロニクス社お抱えのレイブンとして、わが
社に配属してもらうことになる。そしてスケジュールをこちらがすべて管理す
るかわりに、きみの夢だったアリーナにも随時出場できるようになる。どうだい、
条件としてはこれ以上にないビッグチャンスだろう」

「うーむ、確かにすごい。でもただほど高いものはないって言うしね」
「世の中どんな金持ちも見返りのない投資はしないものだよ。ぼくが言うのも
なんだが、これはきみたちにとって一生に一度あるかどうかのチャンスだと思
うんだ。ただ幼なじみの縁だけでこんな待遇はしないだろう。まあ、考える時
間はたくさんあるはずだからじっくり二人で相談して決めてくれ。しつこいよう
だが、もう一度いうよ。この選択次第ではおそらくきみたちの未来に決定的な
違いを生むことになるだろう。今回の提示がきみたちにとってよいお年玉になる
ことを期待しているよ」
「う、うん。なんだか夢でも見ているようだ……でもこれはすごいことなんだ
ろうな」

「それでは正月早々の電話で恐縮だったが、そろそろ失礼させてもらうよ。もしきみたちの
方で何かあったらこの番号に連絡してくれ。○○○−△△△△−◇◇◇◇だ。
それではよいお正月を」
「いいえいいえ、とんでもない。そちらこそよいお正月を……」

 ドラえもんは受話器を下ろした後も、別の余韻にひたっているか考え事をして
いるのか、しばらくぼうっとしていた。

「なにポカンとしてんの。今日のドラえもんはどっか変だよ」

『あまりに出来過ぎてるって言うと言葉があれかもしれないけど、何か裏でも
あるのかと思ってしまうな。のび太くんにとってこれは幸運なのかそれとも……』
ドラえもんロボットだから強化人間以上の能力発揮しそうだな
 のび太とドラえもんは自前のAC『ザンダクロスmark2』の整備をしていた。狭い野比家の敷地
で全長10メートルを超す巨体の管理などできないので、ドラえもんのひみつ道具で地下シェルタ
ーにメンテナンスエリアを設けたのだ。とはいえ総部品数十万点におよぶACを素人が整備するの
は不可能に近い。メカマニアとして通っているドラえもんの妹ドラミが主にメンテナンスを担当し
ている。
「お兄ちゃん、ずいぶんあちこちガタが来てるわよ」
「うん? だ、誰のこと?」
「いや〜ね〜、ACのことに決まってるじゃない」
「ああ、そうか……びっくりした」
「もう廃棄処分にするしかないかも」
「そんな……ひどい!」
「だ〜か〜ら〜、変に誤解しないでったら〜」

「もとがガラクタ置き場から拾ってきたものを復元ライトで戻して使ったものだからね」
「もう修復不可能なのかな」
 のび太は感慨深げに自分と共に戦い続けてきた歴戦のザンダクロスを見上げた。ジャイアン戦
で多量の砲火を浴び、核となるエレクトロニクスが大きな被害を受け、製品の交換を強いられた。
しかしACそのものが拾い物主体であるため交換部品まで拾い物で間に合わせることはできない。
新しく購入しようにもACの高額な部品はのび太の小遣いがたとえいまの百倍あったとしても足り
るものではない。さらにザンダクロスは旧式の電装なので中古部品店にすら販売されていなかった。
「ガラクタの山の中にカラサワを見つけたときの喜びと言ったらなかったよ」
「あの頃は楽しかったね、のび太くん。ゴミの山が宝の山に見えたもん」
「でも……新しいACが手に入るなら、正直な気持ち欲しいな」
「それはわかってる。うん、わかってるさ」

 修理に没頭していたドラミが降りてくる。体は黒い油で所々汚れていた。
「ダメね……てんで部品の互換がきかないわ。あと油漏れも深刻ね。これだから旧式を
いじるは嫌なのよ」
「ドラミまだお前は〜」
「だ〜か〜ら〜お兄ちゃんのことじゃないってのに」


『光る翼だ。速い、そしてなんと美しい……』

「これは南極調査先遣隊隊長マーク・ハリー中尉最後の言葉です。残された音声から
推測するに、彼は未確認物体を前にして動揺する様子もなく、ただ目の前の光景に
恍惚としながら最期を迎えたようです」
「他に面白いデータはないの」
「西大陸から南方へ向かった分遣隊も同様に未確認物体を発見、補足したそうですが
こちらは音声データすら残さず消息を絶っています」
「他には?」
「今のところありません。あとは救援隊の到着を待って極地作戦が再開される予定です」
「国連は何やってんのさ。米軍はどうしたの。これだけの惨事が南極で起きていると
いうのに誰も積極的に動かないなんて」
「場所が場所ですからね。極地で戦闘行為を想定している国家などどこにもありませんよ」
「潜水艦はどう?」
「地上への攻撃は沿岸からの対地ミサイルのみですので、まったく意味がないと思います」
「私兵は高くつくからもう送りたくないな。というより調査名目が甘かったか。はじめから
戦闘部隊を送り込んだ方がよかったかもね」
「ACをですか? でもまだそのような部隊は編成されてませんが」
「うちのアリーナ傭兵部隊を編入させて臨めばいい。シャープマン、カリスト、セブン
ブリッジにランドルフ。それとタダ同然で調達予定の、剛田と野比の二人」

「果たして彼らが納得するでしょうか。特にランドルフはわが社の至宝です。そのような
危険な任務に……」
「あいつは粗暴だが単純な男だ。危険よりも冒険を選ぶだろうよ」

「宇宙空間から地上までは長かったよ。ひとりぼっちで怖くて。このぼくをそんな目に
遭わせたんだ。相手がどうあれ復讐してやらなくちゃならない。そうだろ?」
 『月刊AC新世紀』の熱心な読者のび太は自室に寝っころびながら、今月の
特集「AC戦記第二章 三皇帝時代を振り返る」を熱心に読んでいた。突出し
た技量をほこる三人のエースパイロットが活躍したその時期は、一ヶ月で上位
が入れかわる壮絶な群雄割拠の時代だった。安定した実力のチャンピオンが誕
生しないことから大空位時代とも呼ばれた。レイブンの技量低下を各誌は論じ、
アリーナ界でも選手の不正行為、ドーピング、八百長などの不祥事が相次いだ
ため一時アリーナの中止にまで追いこまれた。この頃アリーナ出場を果たした
若き三人のレイブンが奮闘して、人々を再び魅了しアリーナへ引き戻すことが
なければ、ACの時代は早くも終わっていただろうといわれた。低迷するアリ
ーナ界を再び活気づけた功績が、実力と共に高く評価された。いつしかこの三
人はアリーナ界で三皇帝と称されるにいたる。

『確かにランドルフなんて彼らの偉業にくらべればたいしたことないよな。ま
あ、エースパイロットっていうのは認めるけど。それにしてもドラえもんが言
ってた試合の件ってどうなってんだろう。いくらなんでもアリーナ未経験のぼ
くが上位ランカーなんかといきなり試合するなんてありえない。やっぱりあの
電話の主は偽者だったんだろうか』

 そんなことを考えながら、のび太は雑誌に目を戻した。次回の特集はこの偉
大な三皇帝を相次いで破り、AC界に新時代を切り開くべく彗星のように現れ、
そして消えていった希代の英雄グスタフ=アドルフ・カリストについてであっ
た。のび太はゆっくりと雑誌を閉じると、丁寧に本棚にそれを戻した。ほとん
どの本や漫画が床に放り出したままなのを考えると破格の扱いといえる。のび
太が次号に夢おどらせ読後の余韻にひたっていると、それをわざとぶちこわす
ようなタイミングでドラえもんが部屋の中に入りこんできた。

「何やってんだのび太くん、さっさと行くぞ」

「行くってどこへさ」 「決まってるだろ。現場だよ」
 AC部品を求めてのび太とドラえもんはしばしば郊外のAC製造工場近くに
あるスクラップ置き場を訪れた。ここはよく二人が利用するお気に入りの場所
だ。だが常時警備員に守られ立ち入り厳禁となっているので、二人は『石ころ
帽子』を使って気づかれないように侵入していた。この日は休みを利用して昼
前から部品を探していたが、思うように作業は進まなかった。
「ダメだ、まだ一個もいいのが見つかんない。ひとまず食事休憩しようか、の
び太くん」
 二人はガラクタの山から下に降りて、砂利の上にゴザを広げて弁当を取り出
した。辺り一面油や鉄くずの匂いがただよい、昼食どころの雰囲気ではなかっ
たが、二人はいつもここでかまわず食べていた。
「もうガラクタに頼るのは無理なのかな」
 のび太は弁当に箸を運びながら、ところどころACの腕や足がのぞく殺風景
なスクラップの山に目をやった。ドラえもんは弁当箱を口元にもってきてガツ
ガツやりながら答えた。
「う〜ん、さすがに難しくなってきたね。ACの進化が思った以上に早いみた
いだ」
「ここにあるのも決して古いやつじゃないんだけな。一部分だけ新しいのに取
っかえても、他のパーツを合わせて交換しないとバランスが最悪になっちゃうっ
てドラミちゃんが言ってた。ザンダクロスのパーツのほとんどは一時代前のも
のだけど、完璧に相性のいいパーツがそろってるから最新のACともなんとか
これまで渡り合ってこれたんだ」
「ザンダクロスの基本設計はすべてドラミが担当しているからね。拾い物だけ
でよくあれだけのものを作れたよ。誇らしいことは誇らしいんだけど、ぼくら
がすることといえば、ドラミに言われた部品をここに探しにいくだけなんだよ
ね。まったくいつからあんなに人をあごで使うやつになったんだか」
「でもドラミちゃんがいなかったらそもそもぼくらがACに乗って活躍するこ
とだってなかったんだし」
「な、なんですと? それじゃぼくでは役不足だと言いたいんですか、のび太
くん! ぼくが誰よりもきみのことを考えているのをきみは……」
「ああわかった、わかったよ。ぼくが悪かった。いままでやってこれたのはき
みの的確な助言とナビのおかげです。それは間違いない」
「う、うん。そうか、それならよろしい」
ザンタクロスといえばのびたと鉄人兵団か。
元ネタがしっかりしているね! ががれ
 二人はしばらく黙ったまま食事を続けた。ドラえもんが三箱目の弁当を豪快
にかき込んでるうちにのび太は食べ終わった弁当を片づけ、水筒からコップに
一杯水を注ぎそれを一気に飲みほした。辺りはまだ機械油の臭いに満ちていた
が、いったん満腹になるとなんとも気にならなくなる。ここに来たばかりの頃
は一日があっという間に過ぎてしまうほど楽しめたのに、めぼしい部品が少な
くなってきた昨今では、むしろ作業的な苦痛さえ感じるようになってきた。ス
ネ夫のいうことを聞けば、楽をして最新のACに乗ることができ、しかもアリ
ーナにも出場できる。そして大手大企業HEに雇用される。それを思うと決断
に迷いはいらない気がする。でも……。
 何かがわだかまりとなって、のび太をためらわせる。自分はまだ高校生だ。
社会のこともよくわかってない。ACのことも。……ジャック・ランドルフの
ことも。のび太はいつのまにか世界ランカーをまるでライバルでもあるかのよ
うに、自分と対置していることに気づいた。でも不思議と恥ずかしくならない。
ともかく、スネ夫の言う通りにすれば、この先自分の想像のつかない大舞台が
用意されるに違いない。でもそんな大それた決断を下すにはまだ早いんじゃな
いか。そうだ、まだ早いんだ……
「のび太くん、いまにAC戦はミサイル主流の戦いに変わると思うよ。電装が
ひと昔とけた違いに進化しているからね。大型レーダーや高性能射撃統制シス
テム。軍用装置の流用が認可されはや数年。ハイテク兵器が市場を占めている
からどこいっても高価なパーツばかり。いまじゃブレオンのガチンコ勝負なん
てほんと野試合くらいでしか見なくなったから」
 のび太の想念を打ち消すようにドラえもんの得々とした声が耳に入ってきた。
どうやらドラえもんは随分前からのび太に向かって話し続けていたようだ。の
び太は物思いにふけっていたため全然聞いていなかった。どうりでわからない
話をしているわけだ。
「ええと、それで何の話だっけ」
「ぼくらの兵装も時代遅れになってきたってことさ」

「……まあね、ミサイルって単価がバカ高いからぼくらじゃ手が届かないからね。ジャイ
アンは使ってたけど。あのときは『あんなに使ってもったいないな〜』って思いながら戦っ
てたよ」

「カラサワはレーザー兵器だから弾薬代がかからないのはいいけど。連射できないし、複
数ターゲットを補足できない。もしアリーナに出れたとしても、一対一がせい一杯で団体
戦はおろかタッグ戦も厳しいよ」

「お金がいっぱいある人はいいよねえ」

「そう、結局はお金なんだよね。ぼくが言うのもなんだけどこればかりはどうにもならな
い。だからこそ、流れてついた船に迷わず乗っかっていく図太さが必要なんだよ」

「いいのかい、ドラえもんは? ぼくがホネカワ・エレクトロニクスの人間になっても」

「ぼ、ぼくはただの助言者ですよ。ただのね。決めるのはのび太くん本人なんだ。本人の
自由ですよ」

「じゃあ、ぼくがスネ夫の申し出を断ってもいいんだね」

「えっ、いまなんと」

「だから断っちゃってもいいんでしょってこと」

「ま…………まあ、お、落ち着いてお茶でも」

 そう言いながらドラえもんはポットのお湯を注ごうとしたが誤ってこぼしてしまった。
「あああ、ううう……」
「ドラえもんこそ落ち着かなきゃ」

「いいい、ううう……」

 太陽が南中に差しかかる中、二人のあいだに気まずい沈黙が流れた。二人で将来のこと
を真剣に話し合ったことなど今までなかったことだ。のび太は思った。そういえばドラえ
もんってぼくの将来を心配して未来からやってきたんじゃなかったっけ。どうしてこうい
う話をいままでお互いしてこなかったんだろうか。のび太はしばらく考えたあと、とりあ
えずいまの話をそらすため先に口を開いた。

「でも会場には行ってみるつもりだよ。新型のACをぜひ見てみたいからね」

「う、うん。そうだね、行ってみれば気が変わるかもしれないし……。そういえばスネ夫
くんの会社、今期からスポンサーではなくチームとしてACアリーナに本格参戦するらし
い。いままでACのパーツや武器の提供にとどまってたけど、今回から大々的にブランド
戦略の一環で出場するらしい」

「考えてみればスネ夫の会社ってもともとACとは無関係の軍需産業の企業なんだよね」

「そう、ぼくがスネ夫くん所有のACを見て感じた匂いは、まさに軍用兵器のきな臭い匂
いだったんだ。」

「軍用兵器の匂い……?」

「その危険な匂いプラスアルファをこのまえ感じたのさ。他の企業がつくるACとは根本
的に違ったなにかを」

「いったいなんだろう、その違いって。ますます例の新型機を見てみたくなったよ」

「うん、最新鋭のテクノロジーをとくと拝見させてもらおうよ」
 防衛庁の政府高官を乗せた政務車がホネカワ・エレクトロニクス本社(以下HE)
の正門をくぐった。建て前は新型ACの一般公開前の展示会に参加するということ
だが、実際は政府委託の技術研究についての意見交換のためだった。高官は会場で
HEのACアリーナ初参戦に祝辞を述べた後、HEの重役らに案内されて最新鋭A
Cの展示場に向かった。
「オーバーブーストを使用すると地上で最高時速460キロ、空中で600キロま
で加速可能です」
「また空中でのモーメント安定性に優れ、照準精度を地上並に保つことができます。
これによって戦闘ヘリ各種はほぼ無力化できるでしょう」
「兵装はブレード、ライフル、肩ミサイルなど、どれも標準的な装備ですが、基本
性能を底上げした機体とそうでない機体との間には見た目は地味でも性能に雲泥の
差が出るものです」
「ふむ、よくも悪くも汎用性の高い機体ということだな」
「汎用性の高さこそACの誇るべき特色だと思っております」
「だが所詮ACは大衆娯楽物。君たちは従来通り軍需兵器の開発製造にまい進して
いればよい。企業が他の分野に手を出して火傷する例をたびたび見てきた。……と
ころで話は変わるが兵器の新機軸といわれるバイオ・インプラント研究はどこまで
進んでいるのかね」
「あれは倫理上の問題など、多くの制約のためはかばかしい成果をあげているとは
いえません。現状では自主規制せざるを得ない状況です」
「遺伝組み換えすら非難のもとだからな。クローン技術はなおのこと。だが本人の
意志によって『強く』ありたいと願うなら、それを叶えることになんの罪悪がある
というのか。遺伝子もクローンも成果が出るのに時間がかかる。バイオ・インプラ
ントはすべての兵器の限界性能を引き上げることが可能な点で、まさに革新的な技
術なのだ。無理解な大衆どもの抗議、実験に伴う多少の不祥事は揉みつぶす覚悟だ。
資金面でのバックアップもこれまで以上に行おう。各国が倫理上の規制で足踏みし
ている時に我が国は一歩前に出ねばならん。結果はあとから変えられん。先に行っ
たものが勝ちなのだ」
「承知いたしました。政府の意向に沿うよう私ども鋭意尽力いたします」
「やっと帰っていったか、政府の犬め。難題ばかりふっかけおって」

「でもよかったじゃんか、パパ。これであの実験が再開できるんだから」

「そういえばスネ夫、お前の友だちで例の実験にぜひ献体したいという者がいるそう
だな」

「うん、まぎれもなく本人の意志でね。誓約書もすでに書かせた。研究チームもすぐ
発足させる予定だし、あとは政府からの正式なゴーサインを待つだけだよ」

「彼のACパイロットとしても適性はどの程度のものだったんだ?」

「彼が前に使用していたACを調査してみたんだけど、すごい代物だったよ。並のパイ
ロットが乗ったら三分で卒倒しちゃうほどむちゃくちゃな機動力を持っていた。荒馬の
ようなそれを彼が乗りこなせたのは、生身ながら8.8Gに耐える強固な身体を持って
いたからだ。訓練次第ではそのままでも十分アリーナで通用するレイブンになれると思
うよ。でも彼にはさらに強くならなければならない理由があるんだな」

「もうひとり有望なパイロットがいると聞いているが、確か彼もお前の友だちだったそ
うだな」

「ああ、あれね。あれはまあ……半分お遊びってとこかな。彼の戦いを一度見たことが
あるけど……甘いね。一対一の戦闘ならまだしも戦争で通用するタマじゃない。甘ちゃ
んだよ、やつは。もっともゲームの世界でならトップクラスの実力を持っているかもし
れないが。今回の誘いで向こうが乗ってくるかどうかわからないが、まあどっちだって
いいさ。もし乗ってきたら格好のテストパイロットになる。例の三者と当たらせるさ。
実験で強化されたパイロットと、うちで雇っているアリーナレイブン、そして過去を捨
てた黒いレイブン。豪勢な三者面談といきそうだ」
復元ライトってw
たしかにこれがあればのびたでもACにのれるわなw
感想遅れてスマソ
192続きです:04/01/27 16:20
 正月休みが終わって数週間がたった。最新鋭ACの公開日となる朝を迎え、
のび太の家の前に一台の高級車が止まった。狭い路地のため大型車のそれはい
かにも窮屈そうにみえる。スーツ姿で紳士然の男が車から下りてきて家のベル
を鳴らした。

「は〜い、ただいま」
と言いながら玄関から出て来たのは、リュックを背負い水筒をぶら下げ、まる
でピクニックにでも行くつもりで身支度を整えた二人だった。

「おはようございます、のび太様そしてドラえもん様。私ホネカワ・エレクト
ロニクス社の人事課をつとめます皮田ヒジ助といいます。先日ご連絡したと思
います新型AC展示会の送迎にまいりました。ご用意の方は……どうやらもう
お済みのようですね」

 長い前口上もなく男は二人を車に乗せてホネカワ・エレクトロニクス本社へ
向けて出発した。混雑した都心をさけるように反時計回りにぐるっと東に向い、
途中いくつかの橋を渡り、広い平野を抜けた。乗車してから二時間ほどがたち、
郊外の片田舎のような風景に二人があきあきしていたころ、何もなかった原っ
ぱの向こうに突如白い建造物群が見えてきた。それは町のようであり城塞のよ
うでもあった。のび太とドラえもんは目を見張った。それは万博でも催されて
いるのかと疑うほど、近未来を彷佛とさせる外観だった。二人はしばし夢心地
で車窓からながめた。車は正門をくぐり、警備員のチェックも受けずにそのま
ま敷地内の広い社道を社道速度20キロに抑えて悠々と走る。

「まるで滑走路みたいな道だね」

「うん、ホネカワ・エレクトニス恐るべし」

「それをいうならホネカワ・エレクトロ……まあいいか」
「わが本社ですが広大な敷地ゆえ、直接会場となるAC性能テスト場にご案内
いたします」
 正門をくぐってから数分後、前方に白いドーム型の巨大な施設が見えてくる。
送迎係の男の話によるとそれはただのドームではなく、内部を様々な気象条件
に設定することができる全天候型のAC試験場らしい。ここで環境に適応した
数々のACが試験運用されているのだ。のび太は緊張感とそれにまさる期待感
に胸をおどらせた。やがて正面の入り口付近で車は停車し、監禁状態から解か
れたように、二人は数時間ぶりに車外の空気を吸うことができた。そこには出
迎えと見られる数人の男たちの中に、自分たちを招待したホストでもある骨川
スネ夫が引きしまったスーツ姿で待機していた。

「やあ、のび太くん。ご無沙汰してたね」

「ス、スネ夫。ひさしぶりだなあ! こうしてまた会えるなんてすごくうれし
いよ」
 二人は握手し合って心から再会を喜んだ。ドラえもんもそれに混じってしば
し時を忘れ談笑し合った。

「きみたちとは小学校までの仲だったけど、これからもまたよき友としてつき
合ってもらえるとうれしいよ」
「と、とんでもない。こちらこそ……よろしくお願いします」

「さてと、ではそろそろきみたちゲストに例の試作機を紹介するとしようか。
今回は特別に、のび太くんきみに試乗してもらうことさえ検討しているんだ」
「ほ、ほんとに? ぼくが最新ACなんかに乗っちゃっていいの」

「パイロットの負担を減らすため操作性はかなりシンプルになっている。当然
ACのイロハを知っていれば基本的に誰でも操作できるんだ」
「だ、大丈夫かな。間違ってこわしちゃったりしないかな」

「大丈夫。安全を第一に設計されてるからね」
 高さ五十メートルはあるかと思われる格納庫のような区画に二人は案内され
た。これでも周囲一キロにわたる巨大ドームの一画に過ぎない。6階建てビル
にも匹敵する高さのACがそびえ立つように林立している。整備士たちのかけ
声や乾いた機械音が場内に響く。ドラえもんとのび太は太古の森に迷いこんだ
ような神妙な面持ちでそれらをながめながら歩いた。奥にある巨人でも出入り
しそうな左右開閉式の大型シャッターの前に来ると先導するスネ夫たちが足を
止めた。スネ夫が手に持ったリモコンのスイッチを入れると金属的なきしみ音
を響かせながらさながら冥府の門のごとく重々しくシャッターが開かれてゆく。
 内部は真っ暗で照明がついていないようだった。開閉に要した時間は一分近
く。ようやく完全に解放されたにもかかわらず内部は暗く、外からのわずかな
光に照らされ内部に何か巨大な物体がそびえているのが分かる程度だった。ス
ネ夫は再びリモコンのスイッチを押した。するとガレージ内部の照明が一斉に
点灯する。そのまぶしさのためのび太は思わず手で顔を覆った。ガレージ内の
光に目が慣れるにつれのび太は徐々に顔を上げられるようになった。そして目
の前に屹立と存在する赤い物体を見上げる。
 鮮やかに赤く染め上げられた金属光沢のあるボディ。流線形を思わせるスタ
イリッシュなフォルム。最新テクノロジーの粋を集めたその巨体は見るものに
神々しさすら与えた。のび太も言葉なく口をあんぐりと開けじっとその勇姿を
見つめていた。

「どうだい。型式名HEZ-001E。ホネカワ一号機タイプE、通称ローズヘッド。
美しいだろう」

「うん、なんというか。かっこいいとかそんなんじゃなくて、神秘的というか
言葉がでないけど……美しい」

「きみの決断しだいではこれがきみのものになるんだよ……」

「ま、まさか」

 立ち並ぶACを見下ろす監視室の窓から二人の男が下の様子をうかがってい
る。
「来たなのび太……。いやあれがドラえもんか? あの青いデカ頭がのび太で
ひょろひょろのがドラえもんか。それにしてもあの青いデカ頭、なんてデザイ
ンしてやがんだ。コンセプトはなんだ、青いドラム缶か?」

「あれは聞くところによるとロボットらしい。それにあれはのび太ではなくド
ラえもんだ」

「……ってことはあのひょろガキがのび太ってわけだ。ふん、どこをどうみて
もただの高校生じゃねえか。あれが坊っちゃんの目に止まったパイロットとは
とても思えねえ。あんな奴のために俺のACは船路はるばる日本のど田舎にやっ
てきたってのか。涙が出るぜ」

「見た目など何の判断基準にもならん。子供といえども侮れない実力を持って
いるかもしれない。特に相手を弱いものと決めつけて戦いにのぞむ者にかぎっ
て手痛い逆襲を受けるものだ」

「相変わらず慎重だねえ。まあ、貴重なアドバイスとして、ぜひ胸に刻みつけ
て三分に一度は思い出すようにするか」
「そういう貴様も変わらず憎まれ口か。まったく品性と実力が反比例してやが
る」

「なら、もっと悪ガキになったっていいぜ。へへへ」

「あの強化実験に供されたのも高校生くらいの子供だったと聞くが」

「ああ、人体実験の供物にされたガキのことか? やーなこと思い出させやが
る。気狂い博士の怪物なんぞ興味ないね」

「だが仮に強化人間が実戦で通用するものと決まれば我々生身のレイブンの出
番はなくなることになる。我々にとってゆゆしき事態につながりはしないか」

「少なくとも強化人間の出るアリーナなんて人は見たがらねえよ。その点では
心配してないね。でもあんたは別だ。アリーナから離れ、あっちの傭兵の世界
に行っちまったからな。アリーナはまだスポーツの域だが、あっちはもう一線
を越えちまってる。ただの人殺しの集まりだ。名誉も富も捨ててあんたがどう
してあっちに行っちまったのか、俺はいまでもわからねえよ。もしあんたが今
でも現役でアリーナ舞台に踏み止まっていたら、こんな口の聞き方は絶対しな
かっただろうな。それこそ英雄グスタフ・カリストの前にひざまずいて許しを
こうだろう」

「子供もいつかは積み木に飽きてくるものだ。積み木の城と本物の城の違いを
理解していくのさ。私はその本物とやらが欲しくなってあの道を捨てたまで」

「そうかな? お遊びだってな、とことん突きつめると本物になるぜ」
「あくまで女性を扱うように操作してくれたまえよ。最新テクノロジーは非常
にデリケートだからね」

「じょ、女性を扱うようにって言われても……」

「ああ、ごめんごめん。きみはまだ洗練された婦人たちとの社交を経験してな
いんだね。というかきみたちの家庭環境でそれは無理か……まあ、それは置い
といて。それではきみの飼ってるペットに接するような気持ちで扱ってくれた
まえ」

「家じゃペットは飼えないんだ。ママがさ、うるさくてさ」

「それじゃ……まあこわさない程度に優しく……ね」

 コクピット内は煩雑な計器類や操作パネルもなく非常にスマートで、狭いキャ
ピンというよりは客車の優雅な個室といった雰囲気だった。スネ夫の声もノイ
ズがなく、すぐ近くで話しているように聞こえる。すべての管理はコンソール
のモニター一画面でほとんど処理することができた。それでものび太にとって
は何から何までわからないことだらけだ。ウェットスーツに似た肌にぴったり
くるインナースーツを着用し、その生地と肌のわずかな間は何かの液体で満た
されている。のび太はこれを着ている間、体中が無感覚になるのを感じた。ち
ょうど人肌の湯船につかるときの暖かくもなく寒くもない、何も感じない感覚
だ。また肩回りから何本か太いチューブが突き出していて、それがまるで自分
の身体の中につながっているような気がして気味が悪い。だがコクピットから
はほぼ全視界が見渡せ、操作性のよさはザンダクロスの比ではなかった。いか
に自分が旧式のACに乗っていたか実感させられる。

「ではそこのコンベアーに乗ってくれたまえ。実戦テスト場に移動しよう」
 ゆっくり移動するコンベアーに乗せられていると、まるで自分が商品か何か
のような気がする。しばらく揺られていると前方のゲートが開かれまぶしい光
がもれてきた。外に出れるのか、とのび太は暗い格納庫に閉じ込められていた
ため、とりわけ開放感を感じた。
 広い空間が目の前に広がる。狭い路地からいきなり海岸に出たときのような
気分だ。しかし上を見上げると、ACに乗っているにもかかわらずなお高い半
球型の天井が見える。ここはまだドーム内だったのだ。あらゆる仮想戦を想定
したためか、そのテスト場は市街地を再現したエリアと荒涼とした砂漠のよう
なエリア、さらには湖、切り立った崖まで存在していた。
「ここで春休み中を利用して訓練にいそしんでもらうよ。気に入ったかね」
「き、気に入ったなんてとんでもない。むしろ感謝したいくらいさ」

 そんな時スネ夫のいる管制室に急使があわてた様子で入ってきた。
「なんだ、不粋なやつだな。こちらは旧交を温めているときだというのに」
「行方不明だった南極調査隊から通信がありました。大陸南部で謎の腐食が進
行しているようです」
「なんだって?」
「すでに対策本部をたてているので至急そちらまでご出席お願いします」
「……まったく忘れたころに何とやらだな。仕方がない」
 
「のび太くん、申し訳ないが急な私用でここを離れなくてはいけなくなってし
まった。まあ、大したことじゃないんだがね。ともかく他のものに操作説明の
方を任せるからそちらは気にしなくていい。それでは存分に楽しんでくれたま
え」
 スネ夫はそう言うと足早に管制室を出ていった。後に残されたのび太は事態
が把握できず当惑するしかなかった。同室していたドラえもんも急使にその場
から遠ざけられたので話の内容はわからなかった。
「一体どうしたんだろう。ドラえもん、何かあったのかな」
「さあ。プライベートな問題かもね。お金持ちってのは色々と忙しいもんだか
ら」
「棚氷の酸化が急速に進んでいるというのだが、詳しいことはよくわからない。
それが棚氷の崩壊に悪影響を与えるかどうか慎重に判断を下さなければならな
い」

「だが大陸には例の光る翼が暴れまわってるというではないか。いまの調査隊
が無事なのも、幸いそれがレーダーにうつるので事前にカモフラージュできる
からだ。さらに当地はブリザード荒れ狂う極地。調査隊の安全をはかるために
も早急に撤収命令を下すのが先決だろう」

「スコット基地には調査隊本隊が待機している。彼らを救助隊として派遣しよ
う」

 本部となった会場ではOHPなどを使って関係者たちに現場の説明を行って
いた。スネ夫は事実の真相を回りくどく説明する専門家の話に退屈しきってい
た。となりにどっかと座り込んだランドルフは半分うとうとしていた。そのと
なりでまじめに聞き入っているカリストとは対照的だ。

「ちゃんと話を聞いてるのかランドルフ。いずれ現地に我々も派遣されること
になるのだ。まじめに聞いておいた方がいいぞ」
「ふふ、南極クルージングの旅か。一度は行ってみたいと思ってたさ」

「我々は本格的な戦闘部隊として当地に送られる予定なのだ。相手の正体をし
っかりと把握しておかねばつねに後手に回ることになる。だが戦場で後手に回
ることは死を意味するものだ」
「果たして勝てるのかね、あんな化け物どもに俺らのACが」

「相手はおそらく単体。こちらが複数で火力に勝っていれば勝機はある」
「そもそも火力とかいう概念が通用するやつらなのかね」

「だが、例の強化人間が意外と突破口になるのかもしれんな」
 初歩の操作トレーニングを終えて一息つこうと、のび太とドラえもんは施設
内の見なれぬ通路を休憩所に向って歩いていると、奥から大柄で無骨そうな西
洋人がのしのしと歩いてくる。

「あっ、あれは」

 西洋人の男は二人の姿を認めるなり、知り合いでもあるように親しげに話し
かけてきた。

「ようシンデレラボーイ。新型ACの乗り心地はどうだ」

「ジ、ジャック・ランドルフさん! 本物だ」

「ふん、日本人ってのは有名人に出会うと『本物だ、本物だ』って騒ぐそうだ
が本当だな。正直うっとうしいぜ。まあいい、ところでお前のことは坊っちゃ
んからよく聞いてる。なかなかのAC乗りだそうだ」

「いいえ、まさかそんな」

「そしてそこの青いのがクソドラえもんだな。この前は丁重な応対ご苦労だっ
た」

「こ、この〜。クソは余計だ」

「それにしてもけり飛ばしたくなるようなドラム缶だな。ペンキはいったい何
を使ってるんだ」
「お、おのれ〜度重なる侮辱。のび太くんの前とはいえ、許せん……」

「ま、まあまあドラえもんここは抑えて……」

「あのローズヘッドはな、俺ですらまだ乗ってない代物なんだ。おぼこなレディ
を扱うように優しく接してやってくれ。ACだってただの機械じゃない。人間
あってのACだ。それを忘れるな」

「は、はい。大切にします」

「それじゃあな。お前とはいずれ会うときがあるだろう。そのときまで『彼女』
を乗りこなせるようになってろよ」

「はい、きっと……」

 あいさつも別れも粗暴そのものだったが不思議と暖かさを感じる。ランドル
フの後ろ姿を見送りながらのび太は胸が波立つのを感じた。

「なんて素敵でいい人なんだ。AC乗りに悪人はいないっていうけど本当だね」

「な、何をいうか、あの狼藉ぶりを前にして。見ていろ、いつかギッタギタに
してやるから。もちろんのび太くんのACでね」

「強いんだろうな。何しろ世界7位だもんね」

「でもACから降りたらただの飲んべえだったり女たらしだったりするかも……
まあいいや、のび太くんにとってはスターなんだよね。黙ってよう……」

「例の極地威力偵察の件だが、わが社だけの戦力では不足ということが明らか
になった。そこで他社への協力依頼を出したところ米国アーネスト・ホーク社
がこれに応じてくれた。アリーナ界では上位30位に9人のレイブンを輩出し
ている名門チームだ。それも『ナインホーカーズ』のメンバーを割いて参加さ
せるらしい。だがホーク社もただでは慈善事業をやらん。おそらく極地で一部
発見されたH機関を狙っているに違いあるまい。協力関係にあるとはいえライ
バル社の動向には常に目を向けねばならんだろう……」

 深夜のHE本社宿舎。のび太とドラえもんは簡素だが広めのツインルームを
提供され、春休みが終わるまでここで毎晩を過すことになる。普段押し入れで
寝るぐらいだから環境が変わっても気にしないのか、ぐっすり寝込んでいるド
ラえもんを横目に、のび太はベッドから上体を起こして窓からもれる月の光に
照らされぼんやりとしていた。

「やっぱり寝つけないや。明日は早いからもう寝ないといけないのに。早く明
日にならないかな……」

 ベッドから身を起こすとのび太はトイレに向った。でもなれないユニットバ
スの便座に腰かけ、ただぼうっとするだけだった。不確かな記憶、鮮明な記憶
が断片的に頭をめぐる。自分は何をしているんだろうか。また自分はなんでこ
こにいるのだろうか。普段の生活とかけ離れた空間に自分はいるのだ。無性に
元の生活がなつかしくなった。しばらくしてトイレから出るが頭はまるでさえ
ない。
「のどが乾いたな……備え付けの冷蔵庫にもジュースはあったけど好きなのが
なかったし、確かロビーに自販機がいっぱいあったはず」

 のび太はスリッパのままそっとドアを開けて外に出た。暗くひっそりとした
廊下をひとり歩く。エレベーターで一階のフロアに出ると、昼間とはうって変
わり静まり返ったロビーが暗がりに広がる。照明といえるものは自販機からも
れる青白い光だけだった。のび太はその光だけをたよりに街灯にひかれる虫の
ようにふらふらと歩いていった。
 ふとのび太の足が止まった。自販機の手前のソファーに誰かがすわってる。
急にひんやりとした何かが頭の中をよぎった。

「だ、誰? そこにいるのは」

「……」

 人影は何も応えない。ソファーに腰かけうつむき加減に力なく手首をひざの
先に垂らしている。いぶかしく思ったのび太が引き返そうとして背を向けると
その人影はゆっくりと顔を上げうつろな視線をのび太に向けた。

「待ちたまえ、きみはのび太くんだね」

 のび太の足が凍り付くように止まった。後に続く長い沈黙が徐々にのび太の身体
を氷解させた。ぎこちなく顔だけを自販機の方へのぞかせると、人影は背筋を
伸ばしこちらを凝視するように顔を向けている。横から自販機の光をあび、そ
の陰影の深い顔だちが浮かび上がる。人目でそれが昼間に会ったランドルフと
同様に西洋人であることがわかった。

「ど、どうしてぼくのことを」

「きみがローズヘッドのテストパイロットなのを知っているのと同じだけ、き
みのことを知っている。ただそれだけだ」

「あなたは誰なんですか」

「名乗るほどのものではない。今回の新型ACテストにゲストとして招かれた
一介の市民だ」
「こんな真夜中にどうしてこんなところにいるんですか」

「どうも寝つけなくてね。異国の空気にまだなじめてないらしい」

「でもこんな暗いところで。電気つければいいのに」

「暗い方が落ち着く。明るすぎる照明は集中力を散らしてしまうからだ」

「集中力って何に集中してるんですか」

「……祈りだ。深遠を見たさに多くを失ってきた者の。誰かのためではない自
分のための祈り」

「祈り……?」

「きみには関係ないことだ。そういうきみは何しにここへきた」

「ジ、ジュースを買うために……」

「それだけか……ふむ、では買っていきたまえ。私は邪魔しない」

 のび太はおそるおそるソファーの横を通り過ぎ、自販機にコインを投入し、
適当に購入ボタンを押した。そして出てきた缶ジュースをすばやくつかむとそ
そくさとその場を離れた。フロアのエレベーター前に来てものび太は後ろを振
り返ることができなかった。後ろから強い視線と威圧感を感じたからだ。もち
ろんそれは強迫観念かもしれなかった。でもこの暗いロビーであの男はいつま
で自販機前に居坐っているのか、考えるだけでもぞっとする。男の幽霊のごと
き蒼白な顔が脳裏から離れない。これは夢なのだろうかとのび太はエレベーター
内でふと考えた。しかしすっかり目が冴えてしまったいまとなってはそんなこ
とありえない。握りしめていた缶ジュースが自分の嫌いな炭酸飲料なのに気づ
いたのは部屋に戻ってからだった。
205名無し物書き@推敲中?:04/02/02 10:57
NOBITA「ヘイ ミスタードラ、ミスタードラ!!」
DORAEMON「ホワッツ ノビタ?」
N「アイ ホープ ファッキン シズカ!!プリーズ ギブ ミー ナイス アイテム。ギブ ミー!! ギブ ミー!!」
D「ウェル・・・ オーケー ジャスト ア モーメント。ユー アー バッド ボーイ ノビタ!!・・・ウェル オー ディス ディス。
テケテケン!!
D「ピンク ローター アンド トゥー ハンドレッツ ダラー!!」
N「オー ローター!! グッド、グッド!!バット マネー!? ホワイ? プリーズ テル ミー。」
D「ハッハ、イエス イエス。ビコーズ シー イズ ソー ファッキン ガール!!」
N「イズ シー プッシー?????オー・・・トゥー ビー シュア。」
D「ユー ウィル ファッキン ハー トゥナイト。」
N「サンキュー ミスター。サンキュー。」
D「ユー アー ウェルカム。ドント フォゲット オン セーフティ スイッチ ユア トマホーク ハッハ!!」
N「イエス サー!!」
メカ描写がダメポ
「のび太くん、起きなよ。起きろったら」
「う〜ん、あと少し……」
「まったくもう、ここは家じゃないんだから」

 その朝から厳密なスケジュールにのび太は管理されるようになった。7時に
バイキング式の朝食を迎えたあと、午前中は貸し切りの会議場でACの基本操
作や理論についてみっちり講議を受け、昼食のあと(野外で弁当だった)昨日
と同様、こんどはインストラクター同乗で訓練を受けた。3時ごろに一時間ほ
ど休憩をもらい、その後再びACに乗ってマニュアルにのっとった基本操作を
くり返す。6時にようやく一通りの訓練を終え、のび太たちは個室に戻ってき
た。へとへとに疲れたのび太はふらふらとベッドに歩み寄るとその上にバタッ
と倒れこみ、しばらく死人のようにうつぶせのままじっとしていた。

「のび太くんお疲れさまでした〜」
 のび太はベッドから身を起こして今度は仰向けになって寝ころんだ。
「ああ疲れた〜。頭の中にこんなに色々つめこまれたのは生まれて始めてだよ」
「お疲れさん。でもこんな体験できるなんて幸運なんだから我慢しないと」
「わかってるよ。でも疲れたな正直。これがあと二週間続くと思うとうれしい
んだかつらいんだか」
「つらくたっていい思い出になるよ、きっと」
「それよりなんかもう眠くて。このまま寝ちゃっていいかな」
「まだだめだよ。7時から夕食が始まるし、それが終わって8時からは明日の
トレーニングについての打ち合わせがある。9時以降が自由時間で原則的に消
灯時間はなし。だからあと3時間我慢だね」
「でもテレビがないじゃんこの部屋。テレビも見れないなんて〜」
「なんでも我慢、我慢だよ」
 基本訓練は三日にわたって続いた。三日目の最後に簡単なペーパー試験と実
技試験を行い基本動作の確認をした。ペーパーの成績で若干の問題があったが、
試験官らは実技での良好な結果を考慮して次ステップである実戦訓練の受講を
認めた。その日ものび太はへとへとになって部屋に戻ってきた。

「よかったねのび太くん。次からいよいよ実戦訓練だよ」
「う〜ん、まさかテストがあるなんて思わなかったな。これじゃ学校と同じだ
よ」

 翌日から始まった実戦訓練は過密なスケジュールにしばられ消沈気味なのび
太に多少なりとも興味を持たせる内容だった。実弾発射練習、エネルギー弾、
プラズマ砲の扱いなど刺激に満ちたものばかりだ。その他にも最新のコンピュー
ター・シミュレーションによるアリーナ模擬戦、基礎体力をつけるためのジム、
重力耐性訓練など実戦に備えた訓練が続く。

「体のトレーニングは正直つらいよ。あと耐G訓練も何度も吐きそうになった」
「もうしばらくの我慢、我慢」

 このような実戦のための基礎訓練が一週間ほど行われた。筋肉痛と不眠に悩
まされながらのび太は肉体的に過酷なトレーニングにはげみつづけた。のび太
にとってここに来た動機そのものはもはやどうでもよくなっていた。慣れてく
るとどんなに異なる環境にいても学校の日課と同じで、惰性的になってくる。
目新しいことや刺激に満ちたものが多くあふれていてもそのうち飽きて無感動
になってしまうのだ。

「のび太くん筋肉ついてきたんじゃないの。なんか一週間前と肉付きがよくな
ったような気がするよ」
「そうかな? 学校でもあんなに運動しないからね」
 その翌日から実際にACを操縦して実弾使用の訓練が行われた。もちろんA
Cや建築物を破壊しないように硬質プラスチック製の弾が使用された。ミッショ
ンと呼ばれる、制限時間もしくは達成目標のある実戦訓練もこの日から始まっ
た。岩場に隠れた複数のMTを撃破したり、ビルの屋上を飛び移りながらの高
高度戦闘、サバイバル要素のあるミッションなど充実した内容がそろっていた。
いままで地味で厳しい訓練にいそしんでいただけにより楽しみがふくらんだ。

「ゲームの中のことが現実にできるなんてほんと信じられない。やっぱりここ
に来てよかったよ」
「つらいことがあればいずれ楽しいことがあるってことだね」
「今日もめちゃくちゃ疲れたけど安眠できそうな気がする」

 HE本社本部ビル最上階。社員と思われる男がスネ夫の執務室をノックする。
「どうぞ、カギは開いている」
 スネ夫は格調高いしつらえの部屋にひとりノートパソコンに向ってキーボー
ドを打っていた。書籍と書類がデスクの上に散らばり、見た目あまり片づけら
れていない印象だ。激務の合間にコーヒーを口にふくみながら高校生に似つか
わしくない無表情さをたたえ、ディスプレイに食い入るように視線を注ぐ。
「こちらが野比のび太様のこれまでの演習結果と適性判断表です」
「うん、どれ……」
 スネ夫はディスプレイに顔を向けたまま差し出された書類を手に取ると、ざっ
と見渡しただけでデスクの上にほうるように置いて再びディスプレイに目をやっ
た。
「ふふ、射撃適性でAグレードか。さすがのび太だな、たとえACに乗っても
この特技だけは変わらずか」
「スネ夫様、剛田様の回復具合から見まして、実戦参加可能とドクターも診断
いたしました」
「なんとか期日に間に合ったか。あとはのび太を説得して強化人間との試合に
のぞませるだけだな」
 のび太がHE社に招かれてから二週間。のび太たちは翌日に帰宅をひかえて
いた。軽くホームシック気味になっていた矢先なので、早々と帰り支度を終え
ていつでも出発できるようにしていた。
「まだ荷物まとめるの早いと思うけどな〜」
「いいじゃんか。それより早く明日にならないかな。ママとか心配してるかも」
「ところで話は変わるけど……のび太くんの結論ってどうなの。HE社の誘い
を受けるの? それともいつも通りの高校生活を送るの?」
「そんなのまだわかんないよ。明日になったら決めるさ」

 最後の演習に出るべくガレージからテスト場に出ると、コクピット内にいつ
もの訓練官の声ではなくスネ夫本人の声が聞こえてきた。
「やあ、のび太くん。今日は事実上、最終訓練ということで、ぼくが直接きみ
に指示させてもらうよ。二週間の間ご苦労だったね。だがきみのAC技能の高
さは証明されている。そこでAC演習のクライマックスとしてぼくが用意した
のは、対AC戦闘だ。そしてきみの対抗手としてぼくが選んだのが……そこに
いる彼だ」
 前方の建物の影から一機のACが姿を表す。全体が白塗りの特異なカラーリ
ングで白装束を連想させるACだ。
「……あのACは見覚えがある。でも色が違う」
「ゲヘヘヘヘのび太〜、会いたかったぜえ」
「そ、その声はジャイアン! どうしてきみが……」
「黙っててごめんな、のび太くん。実はきみに黙って対戦カードの相手をジャ
イアンに決めてたのさ」
「でもいったいどうして」
「ジャイアンがこの前の雪辱をはらしたいというのでね。ぼくは彼の望む機体
と肉体改造を与えたまでさ」
「肉体改造だって? それはなんのことだい」
「早い話が強化人間にしてあげたってこと」
「ジャイアンが強化人間に? そんなバカな」
「強くなったよジャイアンは。きみに負けたことが相当ショックだったんだろ
う。あんな体にしてまできみとの再戦を望んでいるんだ。きみも男なら受けて
立たなくちゃね」
 スネ夫はのび太のモニターにジャイアンの姿を写し出した。あの血色のよかっ
た顔は青ざめてやせ細り、目は真っ赤に血走っていた。またよく見るとジャイ
アンの背中に奇妙な塊のようなものが張り付いている。その造型はシート越し
のためよくわからないが、異形の生物でもあるかのように無気味にうごめいて
いる。
「ジ、ジャイアン! きみは……」
「どうだい、あれが我が社のテクノロジーの粋を集めたバイオ・インプラント
の成果だ!」
「く、狂ってる。ぼくは戦えないよ。あんなのひどすぎる!」
「ほう、逃げるのかいのび太くん。それじゃ小学校のときのきみと同じだな」
「な、なんだって」
「それとも、毎日泣きながらドラえもんに助けを請いていたみじめなきみは、
たった一度ジャイアンを負かしただけで満足なのかい?」
「何いってんだ。スネ夫にそんなこと関係ないだろ」
「それよりジャイアンの声を聞いてあげなよ」

「のび太あ、オレともう一度勝負しろ。お前ごときに負けたなどオレの人生に
とって汚点以外の何物でもない。この前は不覚にも後れをとったが今回ばかり
はオレのプライドにかけてお前を倒す」
「ジャイアン、きみは間違ってる。強化人間になってまで人に勝とうだなんて
おかしいと思わないか」
「黙れのび太。オレはお前に負けたまま引き下がってらんねえんだ。オレと勝
負しろ」
「ぼくは戦えないよ、強化人間に成り下がったきみとは。それよりその体を早
く元に戻すんだ。話はそれからだ」
「何きれいごとほざいてんだ、のび太!」
 叫んだのはジャイアンではなかった。それはスネ夫の声だった。
「ス、スネ夫?」
「わからないのか、ジャイアンはお前に勝ちたいがために自分にメスまで入れ
てまで強化人間になったんだよ。半分お前がジャイアンを強化人間にしたよう
なもんなんだぞ。それでも何とも思わないのか?」
「そんな……ぼくは関係ない」
「関係ない? そうやって逃げんのかのび太」
「だってジャイアンは……」
「だってもくそもあるか。臆病風に吹かれて、そのうえ無責任決め込むか!」
「でもぼくのせいで強化人間に……」
「男だったはっきりしろ、やるのかやらないのか」

 のび太はしばらく黙ったまま答えなかった。ドラえもんが声をかけようとし
たが、これはのび太の判断にまかせるべきだと思いとどまった。
 そして小さいがはっきりとした声でのび太が口を開く。
「よし、わかったこの勝負受けて立つよ」
「ふん、無理すんなよのび太。お前はのび犬のままがお似合いだ」
「この勝負受ける。そのかわりスネ夫、条件がある。もしこの勝負にぼくが勝っ
たらジャイアンを元通りの人間にするんだ。キズ一つない元の体にだ。断るな
らぼくは何があってもこの勝負は受けないぞ」
「上等だのび太。その条件のんでやる。勝ったらその新型ACだってくれてや
るよ」
「ACなんてどうだっていい。けどこの約束はやぶるなよスネ夫。男と男の約
束だからな」
「話は決まったな。決闘は日時を改めてからといきたいが、あいにくきみがこ
こにいるのも明日までだよね。帰りの日に決闘なんて馬鹿げてるだろうから、
今日中にしてもらうことにする。そして時間もこちらで指定させていただく。
午後3時より市街地エリアで一対一の決闘だ。異論はないな」
「承けてたつぞ。絶対に負けるものか」
 管制室に同室していたランドルフとカリストは三人のやり取りを一部始終聞
いていた。
「やれやれ演劇部並みだなこりゃ。あんまりだからこっちも加勢してやりたく
なってきたぜ」
「だがようやく二人の勝負が決まったようだな。これで強化人間の実力を間近
で見ることができる。それでこそここに来たかいがあるというもの」
「それにあののび太ってガキのほどもわかるわけだしな」
「ランドルフ。お前はあの少年に何かを感じるか」
「ん? 一度通路で会っただけだしな。なんとも言えんが」
「私の印象も平凡な少年の域を出ていない。しかし、だからこそ期待したくな
るわけだが」

 試合をひかえた二人は休憩室でやり場のない感情を持て余していた。
「いやはやこんなことになって……」
「ドラえもんが気を落とすことはないよ。これは仕組まれてたことなんだ。昔
から悪趣味なやつだと思ってたけど何も変わっちゃいないな、あいつ。くそ、
ジャイアンがあんなことになるなんて」
「ジャイアンがかわいそうだよ。助けてあげなきゃ」
「わかってる。この勝負、絶対に負けるわけにはいかないんだ」
「そうだよのび太くん、気合い入れていこう。こっちも一生懸命サポートする
から」
「うん、ドラえもん。バックは任せたよ。どんな恐い状況にあってもきみの声
がコクピットに届くと緊張がほぐれるんだ」
「こ、こんなときにやめてよ、照れるなあ。へへへ……」

『試合開始五分前です。出場者は指定のエリアまで移動してください』
「いよいよだね、のび太くん」
 AC専用のゲートが開き、外のまぶしい光が格納庫内に入ってくる。新型A
Cローズヘッドがその光の中へ一歩を踏み出すと、辺りの広漠とした光景が鮮
やかな色をともなって眼前に開けた。そして試合場へ向う通路の脇にたたずむ
ACの姿がそこにあった。それはのび太が衛星放送で目にしたことのある黒い
カラーリングの軽装四脚「バーゲスト」そのものだった。
「よう、少年また会ったな。今度はAC搭乗バージョンだ」
「そ、そのACは……黒犬のランドルフさんですか!」
「せっかくの花道をこんな小汚いACで飾っちまって悪いな」
「そ、そんなとんでもない! それより本物のバーゲストをこの目で見れて本
当にうれしいです」
「また『本物』ときた。ややこしいやつだな、この世そんなにオレらの偽者で
あふれかえってるってのか」
「そ、そんなつもりじゃないんです。あの、ただその本物に……」
「いいからいいから。それよりリラックスしなよ、そんなガチガチのまま試合
にのぞんだら結果は始めから見えてるぜ」
「ご教授ありがとうございます。リ、リラックスしないと……」
「バトルエリアまでオレが案内してやる。ついてきな」

 ランドルフのACは四脚のためスピードが速く、標準二脚のローズヘッドで
はついていくがやっとだった。ランドルフ本人もまったくそのことに気づいて
いない。とはいえ夢のスーパースターが自分を誘導してくれていることにのび
太は感慨を受けずにはいなかった。

「ランドルフさんも何かの試合に出られるんですか」
「いや決闘でいうところの介添人さ。危なくなったらオレがとめに入ってやる。
だから安心して玉砕してこいカミカゼ少年」
「ひ、ひどいなあ、こっちは真面目なんですよ」

 試合場となるのはドームの三分の一を占める市街地エリアだ。高層ビル群に
よってのみ構成され、市街地を二分するように中央に大通りがある。その他に
片道一車線の道路が格子状に市街地のビル群を分け隔てていて、大通りを離れ
ると迷路のように入り組んでいる。またここではレーダーがビル群にさえぎら
れるためほとんど意味をなさない。
 屹立と立ち並ぶ高層ビルの谷間のような大通りの入り口でバーゲストが止まっ
た。まっすぐにのびる大通りのはるか先に一機のACが立ち止まっている。
「ついたぜ少年。あの向こうに見えるのがちょっと虫の居どころが悪い強化人
間さんだ。あとは好きにおっぱじめてくれ」
「現れたなジャイアン。因縁の第二ラウンドだ」
「3ヶ月ぶりの対AC戦が同じジャイアン相手なんて、まさに因縁だね」
「ランドルフさんが見てるんだし。ここで恥かくようなことはできない」
「どうしたの、のび太くん。これは真剣勝負だよ。ランドルフのことなんか忘
れて試合に集中しなくちゃ」
「わ、わかってるってば。システム正常……と。戦闘モードに移行するよ」

 相対距離500メートルを置いて両者のACは大通りの両端に対峙した。ジャ
イアンのACの外見は標準二脚で武装は例によってマシンガン。スタッフの遊
び心だろうか、機体は白一色で染められまさに紅白合戦といった様相を呈して
いる。のび太は試合開始までのわずかな時間の間、その機体をつぶさに観察し、
弱点や脅威となる点の洗い出しに専念した。

『試合開始30秒前です。照明弾の確認と共に発砲及び戦闘を許可します。な
おフライングは一切認められません。その場で試合終了になるので注意してく
ださい』

「ドラえもん、相手はこの機体のことを熟知してるんだろうか、もしそうなら
うかつに攻め込めないと思うんだけど」
「そうだね。やはり始めは様子見がいいと思うよ。のび太くんもザンダクロス
ほどこの機体に慣れてるわけじゃないし」
そういえばそろそろネクサス発売だね。
ドラえもんAC作者さんは買いますか?

ブレード以外はバランスよさげという話なので私は買おうと思っています
アナザーエイジしかやったことないです。それも何度挫折しかけたかわかりません。
最後の可変ACだけがどうしても倒せない……
最後の可変ACは相手の機動力が馬鹿だからこっちも装甲捨てて機動力を重視の機体+両腕グレネード
光波撃っているところにグレネードを確実に当てていけば簡単らしいです。

ネクサス買って見たけれど普通に面白いです。



ブレードが当てづらいけど……
一ヶ月ぶりの連載再開です。


 試合開始を告げる照明弾がかん高い破裂音と共に高々と打ち上げられた。反
射的にのび太はライフル銃口をジャイアンACに向けながら平行にブーストダッ
シュを開始する。だがジャイアンは前方にダッシュして大通りをまっすぐに突っ
込んできた。のび太は迷わず射撃トリガーを引いた。ジャイアンACは鋭角的
にブースト角度を変えてこれを回避する。
「見える、見えるぜ弾道が。まるでハエが止りそうなヘナチョコ弾だな」

 射撃補正を加えて打ち続けるのび太だが、ジャイアンACはそれを見越した
ように大きく回避し、射線にとらえられない。のび太はミサイル照準に切り替
えた。両者の距離が300メートルまで接近すると、ジャイアンACは前進を
止め、すぐ脇のビルの影に姿を消した。共に命中弾はなく間合いだけが縮まっ
た。

「まるで弾筋を見切ったような動きだ」
「でも恐怖を感じないだけかも。感覚が麻痺してるから」

 のび太ACはビルに沿うように慎重に進撃を開始した。近距離での遭遇戦に
備えて全方位に神経をとがらせ一歩一歩進む。仮に思わぬ近距離でジャイアン
ACに遭遇してしまうと、単位時間の火力で勝るマシンガンに圧倒され一気に
決着をつけられてしまう。ライフルの理想射程である2、300メートルを維
持しなければ有利に試合を運ぶことはできない。さらに前方射出式のミサイル
はビル群の谷間では有効とはいえない。

「くそ、最新式のはずなのにどうして武装がこんなに地味なんだろう」
「でも機体性能は抜群なんだからそれを生かさなくちゃ」
「カラサワがあればすぐにケリをつけられるのに」
「でもカラサワも万能じゃないってこれまでの訓練でわかったでしょう」
 二週間にわたるAC特訓は、それまでカラサワによる単発高威力の速攻のみ
に頼っていたのび太に柔軟な戦法を身につかせるだけの時間を与えた。障害物
を利用して相手に無駄撃ちをさせたり、爆雷トラップを作ったりと多様な戦術
を吸収したのだ。またのび太は持久戦を苦手としていたが特訓の成果で残弾を
考慮しながら戦えるようになり、それも十分に克服された。

「当てて引く。当てて引くのくり返し。単調だけどこれが基本だって教わった
よ。このライフルだと3秒もバーストさせるとすぐ場所を補足されて反撃を受
けそうだ。ヒットアンドアウェイでいくしかないな」
「そうそう、勝負を一気につけるより地味でも確実に相手にダメージを与えて
いくのが理想なんだよ」

「それにしてもこのライフル、カラサワと違って単発じゃないから連射時の反
動がすごい。初弾は地面にはずして二発目以降を当てよう」
「ずいぶん武器の性能にも習熟してきたじゃない」

「ジャイアンが消えた角まで250メートルか。ジャイアンはまだあの角に潜
んでるんだろうか。それとも移動してこちらの裏を取ろうしているのか」
「読み合いだ。読み合いだよのび太くん。頭を使え、相手の行動を読め、先手
を打つんだ」
「わああ、あんまり頭使いたくないな。やっぱり単純に決めたいや」
「あのねえ、それじゃ今までの特訓がまるで……」
 そこに二人の会話を打ち消す銃撃音。ビルの壁を削り取るように銃弾が打ち
込まれる。だが命中弾はなく、まるで見当はずれな射撃だ。「来たな!」のび
太の決断も早かった。火点を確かめようと一気に通りの中央へ飛び出し、ライ
フルを構える。だが火点と思われる通りの角にもはやジャイアンACの姿はな
かった。

「……いない。角に隠れたか!」
 ジャイアンをいぶり出すために自らもビルの角に向けて射撃を開始し同時に
前進した。そこにドラえもんの無線が割って入る。

「だめだ、のび太くん! もうジャイアンはあそこにはいない。きっとこちら
が角に潜んでいるかどうか確認するための牽制だよ」
「牽制? そりゃまたどうして」
「射撃がまるで的はずれだったのは向こうがこっちの位置を把握していなかっ
たからだ。こちらの射撃を待ってその位置を特定し、有利な位置取りを狙うつ
もりだったんだ」
「するとぼくらはそれに見事に引っかかったってこと?」
「それよりそこにいるとやばい。場所を変えないと。早く、のび太くん。相手
はもう動いてるぞ。先手だ、相手より先に……」
「ああうるさいな。戻ればいいんだろう」

 のび太は機体正面を通りに向けながら後退を始めた。うかつに後ろを見せる
とそれが致命的になりかねない。ローズヘッドが元いた角に姿を消すと、それ
を見計らったようにどこからともなく銃撃が再び加えられる。今度はのび太も
冷静にじっと耐えて、銃撃をやりすごすことにした。数分間にわたって断続的
に銃撃は続いたが、やがてぴったりと銃声が鳴りやみ、がれきの落下音だけが
しばし辺りの静けさの中に響いていた。普段は何とも思わない自機のエンジン
音が妙に大きく聞こえる。
「ジャイアンのやつ、こっちが反応しないのを見てあきらめたかな。さあて、
相手の次にどう動くか。のび太くんはどう見る?」
「こっちをおびき寄せようって魂胆を見破られたからには向こうから仕掛けて
くるにちがいない。つまり、ぼくらはここで相手が出て来るのを待っていれば
いいんだね」
「またまた、……楽しようと思って」

 そうしてのび太は根気よく待つことにした。だが一向にジャイアンACの姿
はおろか近づく気配すら見せない。かといってこちらから出向くには時機が遅
すぎた。通りに出たところを火線にとらえられていたら、たちどころにして火
だるまだ。もとより気長に待つのが苦手なのび太は次第にいらいらをつのらせ
ていた。何か暇つぶしになるもの、気分転換になるものはないものか、と戦闘
以外のことを頭に浮かべる始末。

「そうだいいこと考えた。ドラえもん、一時エンジンを止めてみよう」
「なんだって? どうしてそんなこと」
「音を聞くためさ。アイドリングを切って周囲の音を拾う。レーダーが利かな
いとなるとモニター以外では音に頼るしかないからね」
「何をバカなことを、そんな時にちょうど襲撃を受けたらどうするの」
「まあまあいいじゃない。それと……コクピットもちょっと開けてみよう
「バカッ、いくらプラスチック弾でも人に当たれば即死だぞ。止めろって!」
「ちょっとの間だから平気だって」そう言ってのび太はドラえもんとの通信を
切ってしまった。
 開け放たれたコクピット内に冷たい都市の空気がコクピットに流れ込んでく
る。こげ臭い硝煙が生々しく臭う。疑似都市のためか自動車やその他の生活騒
音は全く聞こえない。のび太は外に半身を乗り出して耳をすませた。かすかに
地面を踏みしめる音が響いてくる。ジャイアンACの音だ。音だけが唯一存在
を知らせる手がかりだった。それは予兆のように無気味に響きわたる。 
「聞こえる……向いのビルのずっと奥からだ。やはり正面からではなく回りこ
んでくるつもりだな」

 通信を遮断されたドラえもんはパニックになってランドルフに連絡を取った。
「た、大変だ。のび太くんがコクピットを開けたみたいなんだ。戦いを中止し
てくれ!」
「なに? コクピットを開放しただと。あのバカ、死ぬ気かよ」
 ランドルフはあわてて止めさせようとACを急前進させる。同時に無線でジャ
イアンにも攻撃を中止するよう呼びかける。
「おい、剛田ボーイ聞いてるか。戦闘は一時中止だ。」
「なに、中止? いったいどういうことだ」
「のび太ボーイが愚かにもコクピットを開けて都市見学を始めてるもんでな」
「ほう…………ぐへへへ、そいつは有益な情報をありがとうよ」
「何を言ってる? 戦闘は中止だぞ、変なジョークはよせ」

 いくら呼びかけてもその後ジャイアンからの返答はない。ランドルフに戦慄
に近い予感が走る。かえってやつに情報提供をしてしまったのではないかと。
「やばい、野郎正気か?」
ローズヘッドにすばやく周波を切り替えのび太に大声でどなった。
「聞けっ! のび太ボーイ。今すぐコクピットを閉じるんだ。模擬戦とはいえ
戦闘中にジョークにもならん行為はこのオレが許さん」
「ラ、ランドルフさん?」
「戦闘は一時中止だ。だが、相手はそれを無視している。殺されたくなければ
早くコクピットを閉めるんだ、早くしろ」
「は、はい」
 あわてふためいたのび太は急いで閉めようと操作を始めた。その時がれきの
破片が目の前の通りに降り注ぐのを見た。まさかとは思いつつも恐る恐る外を
のぞくのび太。視線を徐々に上に向けた時、向いのビルの屋上に一つの影を認
める。

「ジャイアン! こんなに早く……」
「グヘヘヘ、ランドルフには感謝してるぜぇ。のび太よ、悪いがこれも事故と
思ってあきらめな」
「や、やめ……戦闘は中止じゃ」
「あばよう、のび太」
 コクピット目がけて無慈悲にもマシンガンを連射するジャイアン。ほぼ同時
にコクピットが半開状態で急速後退するのび太。だが避けきれず一発の銃弾が
不運にもコクピット内に飛び込んだ。それも音速の三倍の速さで。

「ああ……ぐっ!」
「のび太くん、どうした!」

 弾丸はコクピット内で十数回もはねかえりコンソールやモニターをめちゃく
ちゃに破壊して破片をまき散らした。機器類は煙をはき所々ショートしてスパー
クを起こした。幸いなことにのび太に弾や破片が当たることはなかったが、の
び太は完全に気を失いその場に突っ伏してしまった。非常灯が赤く点滅してア
ラームが盛んにがなりたてる。

『警報発令。機体内に有毒ガス発生。操縦者は即時退避してください。くり返
します……』

「のび太く〜ん! な、なんてこった」
「野郎やっちまいやがった。おい管制室、救助隊をすぐさまよこせ! 野郎が
暴走した。オレが制止に入る」

 バーゲストは最大速度で現場に急行する。ジャイアンACは屋上から接近を
阻むべく射撃を開始した。ランドルフは大通りを高速ジグザグしながら回避し
て突っ切る。
「問答無用ってわけか、ならこっちも手加減はしねえぜ」
226名無し物書き@推敲中?:04/03/25 16:42
のび太のくせに生意気だぞ!
死んだと思って気づかなかったよ
板移転してたのね。



ACらしさと相反するけれどドラえもんらしさがちょっとたりないかな
ほんのすこし困っただけでもドラえもんにすぐすがって多彩で魅力的な秘密道具を
出してなんとかしてもらうとかがドラえもんらしさと思ってますので

AC乗りになるときのAC調達でそれをやっているのは結構うまいと思いました
もっとACの殺伐さにドラえもんの物語のパターンを組み込めば
スレタイにあった内容になると思います
>>227
感想ありがとうございます。かなり行き当たりばったりで書いてるので前の設
定とか忘れまくってますが、何とかうまく完結させたいです。
内容が全然アーマードコアっぽくないと感じられるかもしれないですが、それ
は私がアナザエイジしかプレイしたことがないので詳しい世界観を知らんので
す。
また最近自分で気づいたのですが、戦闘にオーバーブーストが使われていない……
これは自分自身ゲームでこれをほとんど使わなかったので(正確には使いこな
せなかった。せいぜい谷渡りミッションくらい)出すのを忘れてました。
ドラえもんのひみつ道具もなんとかストーリーの中で重要な位置を占めるよう
にしたいのですが、のび太を高校生としたのは失敗だったか、道具に頼るとい
う状況にしにくくなってしまいました。というかドラえもんの存在意義そのも
のが危ぶまれているような……
age
230名無し物書き@推敲中?:04/05/28 18:17
>>228
早く完結しれ。
231罧原堤 ◆5edT8.HnQQ :04/06/26 16:09
age
こんな二次創作スレがあったのか。
二次創作スレは禁断のサザエさんだけだと思ってた
サザエさん
 管制室では慌ただしく人々が対応に追われていた。スネ夫は陣頭指揮をとっ
事態の収拾にあたっている。その横で眉毛ひとつ動かさず冷静に事態を見守る
カリストの姿があった。
「ミスターホネカワ、のび太くんの生死はまだ判断つかないのか」
「くそっ、ローズヘッドのコクピット内で有毒ガス警報が出されてる。コクピッ
トを内部から破壊されているってことは開放中に内部を攻撃されたってことだ」

「もしそうだとすれば絶望ではないか。一発でも銃弾が飛び込めば破片の乱反
射で地獄絵図だ」
「くそ……あのバカ。こんなにあっさり死んじまうなんて」

 それまでローズヘッドのカメラモニターを映していたスクリーンの前に、青
ざめた顔をして、いやもともと青いが、呆然と立ち尽くすドラえもんがいた。
モニターが砂嵐をむなしく映し出す。
「そうだ、取りよせバッグがあった。あれで……のび太くんを救い出そう。そ
うだその手があった……」
 スネ夫が後ろからそっとドラえもんの肩を抱き寄せる。
「やめておけドラえもん。気持ちはわかるがのび太はおそらくもう……原形も
とどめないほどズタズタになっているだろう」
「バカな! ありえない。そんなことあるはずがない」
「こうなったのもすべて僕のせいだ。安全管理をもっと徹底していればこんな
ことにはならなかったんだ。恨むなら僕を恨んでくれ。僕はたとえ君に殴られ
たって、いや殺されたって文句は言えないだろう」
 だがドラえもんは振り向きもせずスネ夫を突き飛ばした。そして何かに取り
つかれたように、狂気じみた表情を浮かべながらポケットをまさぐる。
「や、やめるんだドラえもん! 気でも狂ったか?」
「さあ、出ておいで。のび太くん。いま助け出してあげるからね……」
 ドラえもんは取りよせバッグを取り出すと、その中に手を突っ込み何かを引
き出そうとしていた。スネ夫は思わず床に伏して目をおおった。
「やめろドラえもん!」
「のび太くん……よかったこんなにきれいな、傷ひとつない体で戻ってきてく
れて」
 スネ夫がゆっくりと目を開けると目の前にパイロットスーツを身につけた少
年がドラえもんに抱かれるように静かに横たわっていた。

「のび太……のび太なんだな」
 スネ夫があっけにとられたまま四つん這いで寄ってきた。
「よ、よかった。もしぐちゃぐちゃのままだったら……僕はのび太の両親に立
つ瀬がなかったよ」

 カリストは何かに思い当たったように三人の側に近づいてきた。
「どいてくれ、死んでいるとは限らん」
 ドラえもんとスネ夫が固唾を飲んで見守る中、カリストはまるで本物の医師
のような振るまいで、ぴくりとも動かないのび太の上体を抱き起こし瞳孔や気
道、呼吸の有無を確かめ始めた。
「まだ脈がある……おそらく気を失っていたのだろう」カリストが抑制された
声で言った。「ということはガスもあまり吸わなかったということだ。外傷も
特にない、これは……奇跡だ。至急医療班をこちらへ呼んでくれ。現場にでは
ない、ここへだ!」

 管制室から数百メートルも離れた戦場エリアから瞬時にのび太が運ばれて来
たという事実にも動じることなくカリストは続いてのび太に人工呼吸を施した。
人々が見守る中でやがて咳き込む声と共にのび太の荒い息づかいが聞こえてく
る。
「ガハッ、ハア……ハア」
「生きてる! のび太くん、ぼくだよ、ぼくドラえもんだよ」
 ドラえもんが思わずのび太を揺り動かそうとしたがカリストがそれを制止し
た。
「もう息は吹き返した。いまは余計な刺激を与えず、安静にしてあげなさい」
「う、うん」
「ミスタースネ夫。ランドルフに通信を回してくれ」
「こちらランドルフ、見ての通り戦闘中だ。話なら早くしろ」
 ランドルフは大通りをはさんでジャイアンと対峙していた。お互いビルの背
後や屋上に隠れ、戦闘は一時小康状態となっていた。
「私だ、グスタフ・カリストだ。ローズヘッドののび太くんだが、無事こちら
が確保した。容態も問題ない。最悪の事態は回避された」

「こんな時に何を寝言言ってる、のび太はまだローズヘッドの中だ。それより
早く助けに来い」
「もう一度言う、のび太くんはこちらで無事確保した。いまローズヘッドの中
は無人だ。ランドルフは剛田少年の制止に専念してくれ」
 ランドルフからしばらく返事はなかった。予期せぬ展開を前にしてわき出て
くる困惑と驚きの感情がいつもは多弁なランドルフを沈黙させたのだ。
「聞いているのか、ランドルフ」

「……あんたが冗談を言うようなやつじゃないのは知ってる」ランドルフがい
つになく静かに口を開く。「かといってそれを確かめる余裕はこっちにない。
信じていいんだな、あんたの言うことを」
「私に二言はない。ありのままの事実、ただそれだけだ。後の処置はお前に任
せる。通信は以上だ」

 ランドルフは通信のスイッチを乱暴に切った。
「くそっ、何が何だかわからんが、要するにのび太ボーイは無事で、ここには
もういないということだな。ぜんぜん納得いかねえ話だが、あのカリストの言
うことだ。信じるしかねえ。それにしても鬱憤たまるぜ。少々大人気ねえがこ
の憂さはあの剛田ボーイのACではらさせてもらうか。そのくらい坊ちゃんは
見のがしてくれるだろう」
 無数の瓦礫の散乱した大通りにゆっくりとランドルフのACが姿を現す。ジャ
イアンACはそれをビルの屋上から悠然と見下ろしていた。
「逃げても無駄だとわかって出てきたか。もっと鬼ごっこを続けてたかったん
だがな」
「鬼さんの交代の時間だぜ、剛田ボーイ。『戦闘許可』が下りたんでね」
「ああ? なんのことだ」
 笑いを浮かべながらジャイアンはマシンガンをいきなり乱射した。バーゲス
トは急速後退で回避する。
「そんな豆打ちマシンガンでオレを倒せると思うな」
 ランドルフはAC右腕の主兵装インパルス砲を発射した。そのすさまじい衝
撃波はプラスチック製の弾丸を紙クズのように吹き飛し、さらに前面のビルの
窓ガラスすべてを一斉に粉砕した。この武器はショットガン以上に広範囲攻撃
が可能で、ECM対策のないACであれば瞬時に行動不能にすることができた。

「剛田ボーイ、これからお前に本当の戦いってのを教えてやる。復習は病院の
ベッドできっちりやるんだな」
「へっ、世界ランカーだか何だか知らねえがいい気になんじゃねえ。てめえに
ゃとっておきの武器で片を付けてやるぜ」
 ジャイアンはマシンガンを投棄したかと思うと、肩部バズーカに換装し、照
準なしでバーゲストの真後ろのビルに向け砲弾を発射した。背後のビル上層階
で爆発が起きる。同時に轟音と地響きがドームを揺らした。
「なに…………?」
 無数の破片と瓦礫が雨のように地上のバーゲストの上に降り注ぐ。
「あれは実弾か! 一体どういうことだ」
「こっから先は殺し合いってことだ。ヒーローきどりがあだになったな」
 落下する破片にまぎれて真上からジャイアンACが急降下してきた。すぐさ
まランドルフは主砲を発射、破片を吹き飛ばす。だが、上空に敵影はすでにな
い。ランドルフは直感でACを急発進させる。その直後元いた場所に砲弾が着
弾、爆裂しビル街を大きく振動させた。
 ランドルフは煙幕にわざとまぎれこみ、距離をとるためひとまず後退する。
ジャイアンはACをジャンプさせ上空からバーゲストの補足に乗り出した。

「管制室、剛田ボーイは実弾装備だぞ。話が違うぜ」
 ランドルフの荒らげた声が管制室に飛び込んでくる。
「そんなバカな。誰かジャイアンのACに実装したっていうのか?」

 スタッフのひとりがあわてながら報告する。
「ス、スネ夫様、いま調べましたところ実弾倉庫でロックが解除された形跡が
ありました。内部者によるハッキングの可能性もあります」
「バカな。一匹狼のはずのジャイアンに仲間などいるはずがない。もう一度倉
庫の出入りの記録を確かめ直せ」
「は、はい」

 スネ夫は苛立たしげに黒い煙以外何も映さないモニター群をにらんでいた。
「くそっ、爆煙のせいで二人のACが全く確認できない。それにランドルフの
ACには機外カメラがついていないんだ」
 カリストはのび太がタンカで医務室に運ばれてゆくのを見届けた上で、管制
室に戻ってきた。室内はいくらか静けさを取り戻していたが、相変わらず係員
たちがあわただしげに行き来して落ち着かない雰囲気だ。モニターを目にした
カリストの顔に当惑の色が浮かぶ。
「この煙幕はなんだ……まさか実弾を使用しているのか?」
「見ての通りさ、バズーカ砲弾が倉庫から盗まれた。」
「ランドルフの無事は?」
「さっきから応答を求めてはいるが、うまくつながらないんだ」
「だとすればミスターホネカワ、のび太くんの安全が確保された以上もはやこ
の戦闘は無意味だ。相手が実弾を使用しているのならなおさらのこと。暴走し
た剛田少年のACを強制的に停止させることはできないのか」
「できるにはできるさ。でもそれが有効な手段ならとっくにしている。でもこ
いつはちょっと火薬を使うんでね」
「火薬……? まさかあれには自爆装置でも付いているのか」
「そんな物騒なものはないよ。あれに内蔵されているのは、電力回線を切断す
るための爆破装置だ。けれどこいつはあくまで無人の状態でACが暴走を起こ
した場合を想定しての緊急手段なんだ」
「つまり搭乗者がいる場合、必ずしもその安全を保証できないということか」
「そう。ただコクピットや燃料タンクと起爆装置とはかなり離れているから直
接の危険は少ないと思うんだけど」
保守保守
 その頃市街エリアではガレキに埋めつくされた大通りをジャイアンACが悠
然と闊歩していた。だが硝煙が立ちこめ所々火の手の上がる道路上にバーゲス
トの姿はなかった。
「どうした、本当の戦いを見せてくれるんじゃなかったのか? ランドルフさ
んよぉ。それとも実弾と知った途端怖じ気づいちまったのかい?」
「……ランドルフの犬め。通信を切りやがったな。さすがに生死を賭けた戦い
の最中に悠長に話なんぞしてらんねえってか」

「お〜い、ランドルフちゃ〜ん聞いてる〜? 出てこないってんならここの施
設を破壊つくしちゃうわよ〜」
 ジャイアンは鼻歌を歌いながらビル群にバズーカ砲を次々に打ち込んでいっ
た。中には倒壊するビルも出て、ドミノ倒しのように周りのビルを巻き込んで
崩れ落ちた。
「やばい、ジャイアンが市街地エリアを破壊し始めた。もし市街地から出てき
たら一般人にも被害が出るぞ」
 スネ夫の表情にあせりの色が見えてくる。
「ランドルフのやつ何をしてるんだ。ACで制圧できないならもう強制停止す
る以外ないぞ」
 その時バーゲストの無線から、断続的な激しい爆発音に混じって気弱な男の
声がもれてきた。
「も、もうダメだ。スネ夫坊ちゃん、実弾装備が相手じゃどうにもならねえ」
「な、なに弱音吐いてんだよ、お前。本当にランドルフなのか?」
「あんな化け物相手に勝てると思ったオレがバカだったぜ。マジ帰りてえ」
「あわてるな! いまこっちでもジャイアンのACを制圧するための部隊を編
成中だから、それまでのあいだ時間かせぎをしていろ。戦えとは言ってない。
やつを市街地エリアから出さないように引き付けておいてくれればそれでいい
んだ」
「いや! 実はオレ自身がいま市街地エリアから脱出中なんで。そんなことオ
レには関係ないんで」
「ラ、ランドルフ! そんな体でおめおめと帰ってきたら、どうなるかわかっ
てんだろうな?」
 困惑と失望の思いが怒りと混じり合いスネ夫の表情を無気味に引きつらせた。
「契約反古にしようと勝手にすればいいさ。命まで張った戦いなどご免だぜ」
「ランドルフ……貴様」
 スネ夫はモニター前のコンソールに両手を叩き付けた。

「ゲヘヘヘヘ、聞いちまったぜ。ランドルフよ〜、そうだよな〜、男だって弱
音吐くときぐらいあるよな〜。うんうん。でもな、そうは言ってもこれは戦争
なんだぜ、殺し合いなんだぜ。そんな臆病風吹かすやつがどこでも先に死ぬん
だよ」

「ちっ、剛田ボーイ聞いてやがんのか? てめえだけ実弾装備のくせによく言
うぜ。オレはこれでも一般市民なんだよ。どっかの傭兵さんたちと違ってオレ
たちのやるAC戦はスポーツの域を出ねえんだ。殺し合いならてめえの仲間内
で好きなだけやってろ、バ〜カ」
「逃げるのかランドルフ! 見かけ通り犬みてえに臆病な野郎だな」
「犬で結構だぜ、てめえのグロい姿を見ればそりゃ犬も食わねえわな」
「なに……」ジャイアンはその一言に沈黙した。表情が一瞬こわばる。内から
ふつふつとある感情が沸き上がってきて、生体手術のため青ざめていたジャイ
アンの顔を次第に紅色に染めていった。それは憎悪の色だった。
「ランドルフ……必ず殺す! 必ずてめえを見つけて殺してやる」
 ジャイアンの胸に激しい殺意が燃え上がった。だが誰も通信でそれを制止し
ようとはしなかった。もはや誰も話で解決できないと分かっていたからだ。

「おい、収納庫を明けといてくれ! そこに退避する」
 スネ夫が諸手を上げて絵に描いたような仕草で仰天した。
「バカ言うなよ! ガレージがバズーカの威力に耐えられると思ってるのか?
 それにそこは管制室にも近い。まだ誰も避難すらしていないのに」
「オレにとってもそこしか逃げ場はねえんだ、頼むぜ!」
 そう言ってランドルフは通信を一方的に遮断した。

「お、お願いだランドルフ。市街地から出ないでくれ、でないと本当にヤバい
ことになる……みんなを巻き込まないでくれ」
 スネ夫が懇願するように頼み込むが応答はない。

「街から出る気か! ランドルフ、逃がさん!」
 ジャイアンの荒っぽいどなり声が鼻息と共に回線を通じて聞こえてくる。

「カリスト! 僕はいったいどうすればいいんだ」
 枯木のような長身痩躯の男カリストは眉ひとつ動かさずその場にたたずんで
いた。だがその口もとに歪んだ笑みが浮かんでいる。スネ夫は思わず後ずさり
した。

「スネ夫様、たったいま剛田少年のACが市街地エリアを出ました」
 スタッフからの報告を受けスネ夫はとうとう決意する。
「くそっ、ドーム内の部外職員とゲスト全員に対して避難警告を出せ!」
「はいっ!」

 ジャイアンACコクピット内では、真っ赤に充血したジャイアンの目がモニ
ター画面とレーダー表示を交互にねめつけていた。
「どこだ〜、ランドルフの犬め。ガレージに向うならここを必ず通るはずだが。
先を行かれたか?」
 獲物を狩る本能か、はたまた生体手術の影響かジャイアンの狂暴性にいっそう
拍車がかかかっている。
「どこにいようとも必ず見つけ出して殺す。殺してやるぜえ」


「ドラえもん……」
 医務室のベッドで目を開けたのび太の目に最初に飛び込んだのは大きなドラ
えもんの顔とそのうるんだ瞳だった。
「ぼくだよ、ドラえもんだよ」
「ここは……」
「ぼくらはいま医務室にいるんだ。動かないでいいよ、君は安静にしてなくちゃ
いけないから」
「そうか、ぼくは助かったんだね。自分でも死んだかと思ったよ」
「ぼくもだよ。本当に生きていてくれてよかった」
 ドラえもんはのび太をそっと抱きしめた。のび太も心からそれを喜んだ。二
人はしばらくとりとめのない話などをして時間を過した。

「あ」のび太が天井を見つめながらかすかに声を上げる。「そうか、僕は負け
たんだね……」
「何言ってんだよ。あんなのは戦いじゃないよ!」ドラえもんは思わず叫んで
しまった。「お、大きな声を出してごめん。でもあれはただの殺し合いだよ。
あんな戦いに勝ったからって何だっていうんだ」


「それで、ジャイアンはいま何をしているの?」
「もうめちゃくちゃだよ。ジャイアンったらこっちの制止を振り切って暴れま
わってるんだ。ランドルフのやつが何とか食い止めようとしてるんだけど」
「そ、そんな! いったい何が起こったの?」
「何言っても聞かないんだ。きっとあいつは始めから暴れたかっただけなんだ。
あの気味悪いインプラントとかいうやつが、ジャイアン本来の狂暴性に火を付
けたに違いないよ」
「ランドルフさんが危ない! ぼくも行かなくちゃ」
「だ、だめだよ。そんな身体で行っちゃ! 後のことはスネ夫くんたちに任せ
て、いまはじっと安静にしてようよ」

 のび太がベッドから身を起こしたその刹那、部屋全体に軽い地響きが立った。
棚や照明がわずかに揺れ動く。
「地震……?」のび太がつぶやいた。
「うん、実はさっきから何度か揺れるのを感じてたよ。今度のはちょっと大き
めのだね」

『緊急連絡です。ただいまアリーナドームにて避難警告が発令されました』
「何だ?」
 室内のスピーカーから突然館内アナウンスが流れ込んできた。
『ドーム内にいるB級およびC級の関係者は至急、指定の避難場所へ移動して
ください。くり返します……』

『来賓の方およびA級以外の職員は至急ドーム外に避難してください。なお通
路は混雑が予想されますが、あわてずに係員の誘導に従い通路では駆け出した
り、無理に列を乱したりしないでください』

「何かやばいことが起きてるぞ……」
 ドラえもんが不安げにつぶやいた。
 一方バトルエリアではジャイアンがガレージ方面に向けてACを発進させる
ところだった。殺意の塊のような白いACがとうとう管制室向けて動きだした。
室内は恐慌状態に陥った。
「だめだ、非常装置の準備!」スネ夫が叫んだ。この時点ではどのようなささ
いな命令にも大声を出していた。「A級職員は逃げるなよ! 何があっても絶
対逃げるなよ。管制室を開けたら終わりだ。会社の命運がかかってんだぞ」

「もはやパイロットの安全うんぬんなど言っていられないな」
 カリストも動き始めた。セキュリティ部隊が万一壊滅したときに彼が出撃す
ることになっていた。傭兵として生きてきた彼のACは当然実弾装備であり、
つねに出撃可能な状態に整備されている。彼は非常事態を解決するためのフィ
クサーでもあった。彼が部屋を退室しようと扉の前まで来ると、ふとランドル
フの交信が流れてきた。

『てめえの獲物はここにいるぜ』

「ランドルフ? お前なのかその声は」スネ夫がインカムを急いで取り付ける。
「いまどこにいるんだ?」

「ぬっ、ランドルフか。どこにいやがる! 出てこい!」
 ジャイアンACのヘッドが左右に向きを変え、周囲を警戒し始めた。
「引っかかったな剛田ボーイ。このオレがあんなみじめな様をさらしたまま逃
げ出すと思ったのかよ」
「ゲヘへ。だからどうした?」
 平然と答えるジャイアン。その声に焦りの調子はみじんも感じられない。
「すべてはてめえを障害物のない平原エリアに誘い込むための演技だったのさ。
そしたらまんまと引っかかりやがったな。これなら俳優志望にしておけばよかっ
たぜ」
「ほう……そうかそうか。ブラフだったってわけか。それで……てめえはいま
どこにいるんだ?」
「てめえが無防備をさらしてる真後ろだよ」

「だからどうした、クソが!」
 ジャイアンはACを急反転させ、炎にくすぶるビル街に砲口を向けた。だが
機影はそこにない。直後に警告音がコックピット内に鳴り響く。敵機の異常接
近を知らせるものだ。ジャイアンは三次元レーダーに目を移した。そして自機
上空にターゲットを確認する。
「しまった上か!」
 常人のそれをはるかにこえる反応速度でジャイアンは回避を開始する。しか
し、機体のスピードが操作に追いつかない。バーゲストも着地位置を修正しな
がら降下。だがインパルス砲はまだ発射されない。
「距離三十、頂いた!」

 煙によって深い霧の降りたように見える市街地に閃光が走る。それに続いて
と何かが押しつぶされたような鈍い音の混じった金属音。間髪を入れずに再び
射撃音が響く。それはフラッシュを二度連続で焚いた時のように、一瞬で起き
た出来事であった。
 霧がわずかに晴れ、地上に両者のACが徐々に影を現した。一方は直立し数
十メートル先のACをにらみ付けるように見下ろしている。もう一方は煙をパー
ツのところどころから吐き出し、地面にひざまずいたまま動かない。
 決着はついた。上空から近接射撃しかけたACバーゲストは、そのままジャ
イアンACの上にのしかかるように着地、再度容赦なくゼロ距離で射撃、そし
てそこを踏み台にして上空へジャンプして離脱したのだ。

「やったのか!」
 騒然としていた管制室内にどよめきがもれる。誰もが足を止めて無数のモニ
ター画面に見入っていた。無気味なほどの沈黙が室内に充満した。だが、こと
のてん末が明らかにされるまで声を出すまいと人々のあいだに暗黙の了解のよ
うなものがなされた。

「状況報告」
 管制室に抑揚のない落ち着いた男の声が流れてきた。それがランドルフのも
のであるものと誰もが分かっていた。
「プラチナヘッド大破。こちらは異常なしだ」
 プラチナヘッドはジャイアンのACの名称だった。報告が静まり返った室内
にこだますると、同時にスタッフたちの歓声が一斉にわき起こった。そしてま
るで何かの大会に優勝したかのように一様にスタッフたちが騒ぎ立てた。

「何やらガヤガヤ騒いでるようだが、まだ報告は終わってねえぞ。救護班をこ
こにもよこしてくれ」
「ゆ、夢じゃないよな。本当にやっつけてくれたんだよな」
 スネ夫が胸中の驚きを押さえ込みながらゆっくり話した。

「……ああ。まったくえらい目にあったぜ」
「くそっ、ランドルフにしてやられたよ。まさかブラフだったなんて」
 そこにカリストが戻ってきた。
「フフフ、まさかお前が演技をするとは、このわたしにも予想できなかったよ」

「へへ、この後は俳優に転向しようかと本気で思ってるぜ」
「相変わらずの軽口だな。それはともかくご苦労だった。わたしとしては一連
の戦闘の経緯の方が気になっている。プラチナヘッドを撃破したてん末を事細
かに話してくれないか」
「あ、ああ。あんたに頼まれちゃしょうがねえな……」

 ランドルフの話と復旧した画像データを元にカリストとスネ夫は先の戦闘の
分析を進めた。しばらくしてカリストが一応の結論を下す。
「これは単純なだまし討ちのようにも見えるが、一方で巧みな心理戦を展開し
ていたともいえる」
「心理戦だって? あのランドルフが?」

「そうだ。彼はうまく索敵の盲点をついたのだ。彼はいったんモニター画面に
相手の注意を向けておいてレーダーでしか確認できない上空から攻撃を仕掛け
たわけだが、もしこちらの存在を知らせずに飛び込んでいれば、レーダーの目
にかかって反撃を受けていたことだろう。またランドルフの言った『真後ろだ』
というウソの情報は、方法として考えるとあまりに稚拙なので、レベルの高い
相手にはまず引っかかるまい。だが相手を一時でもレーダーから目を離させて、
モニター画面に釘付けにされるという点では成功している。そしてそれが結局
のところ勝因になった。レーダーが電子の目といわれていても結局データを確
認するのは人間の目だ。レーダーを見ているときはモニター画面に目が行かな
い。訓練次第では両方確認することもできるが、彼ミスターゴウダはまだその
段階にはなかった……」

「とはいえ、これでようやく一件落着だよ。これでドーム外に出られたりなん
かしたらもう……その先は考えたくもないね。ところで誰か〜、冷たい水を持っ
てきてよ」
 すっかりくたくたになったスネ夫は近くのイスにどっと腰を下ろしてインカ
ムを乱雑に床に投げ出した。水が運ばれてくると、奪い取るようにコップをつ
かみ多少こぼれるのもいとわず一気に口元に持っていった。
「はあ、うっめ〜。やっぱ大仕事の後はただの冷水に限るわ〜」

『悪者は退治されました。めでたしめでたし……ちゃんちゃんってか』
「へぶしゅっ!」
 スネ夫はのみ込んだ水を勢いよく鼻と口から吹き出した。


「そうさ、悪者は退治されたよ」即座に応答したのはランドルフだった。「と
ころで剛田ボーイ。意識が戻ったからといってむやみに動くな。じっとしてい
ろ。お前のケガがどの程度かしらないが、いずれ救護班が来る。出血はしてい
ないか?」

『オレはまだ生きているぜ。なぜ殺さない。オレはお前を殺そうとしたんだぜ』
「本当に話を聞かないやつだな。なぜ殺さないかだって。それは決まっている。
オレが正義の味方だからだ」

 管制室の中は一転して爆笑で割れんばかりになった。スネ夫やカリストも失
笑を隠せなかった。だがその笑い声が戦いの敗者の心に憎悪の渦を引き起こし
たことなど誰も知らない。
「お前には長い長い入院生活が待っている。戦いの前に約束した通りその薄気
味悪い背中のパーツはすっきり取り払ってもらうぜ。のび太には勝ったじゃね
えかと言いたいだろうが、あれは実力によるものじゃない。まあ、実力でもオ
レに負けてるんだが」

『そうかよ、オレは悪者かよ』
「剛田ボーイ?」

『いつからオレは悪者になったんだ? てめえらで勝手にすり替えやがって。
オレの負けをみんなで喜んだな。オレの負けをみんなで笑ったな。オレの負け
をみんなで……』

「聞いてるのか剛田ボーイ。いい加減見苦しいぞ、戦いは終わった。そしてお
前は負けたんだ。まずはそれを認めろ。幸いなことに死人が出なかった。お前
が殺したと思っているのび太ボーイは生きている。まあ、オレも実際にそれを
確認したわけじゃないからここで断言するのも何だが。とにかくお前の野望は
市街地まるごと一個ぶちこわしてあえなく潰えたってわけだ。入院中も始末書
と反省レポートで半年は遊ぶ時間がなくなると思え。それとも年少へぶちこま
れたいか?」

『……こたえたぜ。特に二発目のはしびれた。身体がしばらく動かなかったく
らいだ』

「だからしゃべるなって。オレもちょっとピリピリしてたから加減が利かなか
ったかもしれない。それでもコアへの狙い撃ちはしなかった。オレは正義漢で
あるだけでなく、スポーツマンでもあるからな。以後はオレを見習ってお前も
正々堂々と戦うことだ」

『だがようやく動けてきた。腕も動く、指も動く。オレはまだやれる……』

「無茶するなって。医療班がくるまで待ってろ。まったく落ち着きのないやつ
だな」
「医療班だって? 笑わせるな。それに無茶してるのはてめえだよ、ランドル
フ。気づかねえのか、オレの身体はな……」

 突然プラチナヘッドが起動を始め上体を起こした。頭部カメラレンズがレッ
ドランプに染まる。ランドルフが呆然とする中、プラチナヘッドは重い腰を上
げるように立ち上がる。右腕にバズーカ砲を構えながら。
「もう人間じゃねえんだよ」

 バズーカ砲がACバーゲストに向けて発射される。だがそれを予期していた
ランドルフはとっさに平行ブーストダッシュでかわす。前方で爆炎が舞った。ジャイアンの狙いはACではなかった。着弾点はバーゲストの前方の地面だった。爆発で両者の視界がさえぎられる。プラチナヘッドは猛然とその炎の中に飛び込んだ。
「な、なぜ動ける。あれは本当にACか?!」

 危機を察知したランドルフは急速後退を開始、しかし背後はビルの瓦礫でほ
とんどふさがれている。バーゲストが一瞬立ち止まったところに、前方から炎
に包まれたプラチナヘッドが爆炎の中から出現した。

「やめろ! 撃てば熱でお前が吹っ飛ぶぞ」
「こんなときに老婆心か、バカが」

 高熱の元でバズーカを発射すれば当然、砲弾が砲身内で暴発して大惨事を引
き起こす。だがプラチナヘッドは炎に飛び込む前にすでにバズーカを投棄して
いた。そして反対の左腕から煌々と赤い光を放つブレードが炎を背景としなが
らもはっきりと映っていた。
「くそっ、ブレードか!」

 ランドルフはとっさにACをブーストジャンプさせようと試みた。だがジャ
ンプ前にACが腰を低くかがめる動作の時すでに、プラチナヘッドはバーゲス
トをブレード攻撃の範囲内にとらえていた。プラチナヘッドのブレードが赤熱
によってさらに輝きを増し膨張を始める。
「なんだこの出力は!」


 ランドルフが叫んだ途端、従来の二倍以上に長大化したブレードがバーゲス
トをとらえる。ACの腰の部分にヒットしたブレードは、閃光のようなプラズ
マジェットの火花を散らせながら胴を一気に切断する。バーゲストの腰から上
のパーツは鉄の塊となって宙を舞い、回転しながら地面にずしんと音を立てて
落下した。だがジャイアンはまだ手を止めなかった。頭部パーツめがけてとど
めの刺突をくり出した。リンゴを杵で砕くようにヘッドは跡形もなく破裂する。

「非常装置起動!!」

 管制室でスネ夫が叫んだ、というよりは絶叫に近かった。非常装置のことを
忘れていた事実そのものに驚いてそのような叫び声を上げたのだ。だがそれは
あまりに遅すぎた。
 プラチナヘッドのバックユニットが小さな爆発を起こしたとき、すでにラン
ドルフの乗るバーゲストは跡形もなく叩きつぶされていた。コアひとつを残し
て。

255名無し物書き@推敲中?:04/09/01 15:52
おもろい
ライブドア・堀江社長断言「女は金についてくる!」
http://www.zakzak.co.jp/top/2004_09/t2004090121.html

      /∵∴∵∴∵\    あんな娘といいな できたらいいな
     /∴∵∴∵∴∵∴ i    あんな夢 こんな夢 いっぱいあるけど〜
     |∵∴∵ ⌒' '⌒ ∴.|    みんな みんな みんな 叶えてくれる
     |∴ ./-・=-, 、-・=-ヽ|    ふしぎなポッケで叶えてくれる〜
     l∵/   ノ( 、_, )ヽ  |     ナマで自由にヤりたいな〜
     |∴|三ノ、__!!_,.、三|         (は〜い、札束〜)
     ∧ ヽ.   ヽニニソ   l     あン? あン? あン? とっても上手いわ
   /∵\ヽ        /            ホリえもん〜 ♪
 /∵∴∵\ `ー--一'ノ/ヽ    ノ7_,,, 、
/∴ (⌒、"⌒ソ⌒ヽ_( 〒 )ノ- 、`、 ( ィ⌒ -'"",う
∵∴ ~''(_)(_)(_)(_)ソ  __   ヽノー-,イ^
∴∵ ヽ/`、_, ィ/ ┌|| 壱 ._|__ヽ∴/
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257名無し物書き@推敲中?:04/09/17 18:28:23
H
258名無し物書き@推敲中?:04/09/25 12:34:18
楽しみにしてるのでとりあえず保守
259罧原堤 ◆mm/T2n8mWo :04/09/28 13:51:39
「ジャイアン、やってくれたな……」
「スネ夫か? ゲヘヘヘ、見ろ。この世界ランカーのぶざまな姿を。原形をと
どめてねえぜ。これがオレの実力だ。オレ様が本気になればこんなものだ」
「ジャイアン、どうやら自分が何をしたか分かっていないんだね」
「ああ? オレが何をしたって? 見て分からねえのか。」
 スネ夫は深いため息をついた。怒りを通り越してあきれ果てたとでもいうよ
うに。
「残念だよジャイアン、君に復活のチャンスを与えたぼくがバカだった。ぼく
にはわからないよ、再三の制止を振り切ってまで君が暴れる理由がね。君とは
小学校のころからのつき合いになるけど、君の狂暴性がこれほどのものとは正
直思わなかった。でもね、ジャイアン。もうゲームは終わりさ。君のACはも
はや動かない。電力回路を切断した以上行動不能になっているはずだ。ぼくは
君がビル街を破壊したことをとがめたりしない。君が勝手に実弾兵器を装備し
たこともとがめないでおこう。だが、君が本気でのび太やランドルフを殺そう
としたことだけはゆるがせにできない。AC乗りとしてのモラルを問う以前に、
君は越えてはいけない線を越えてしまった。追って公的なしかるべき処罰を受
けるものと思いたまえ」
 だが返答の代わりに退屈そうにあくびする声が聞こえてくる。
「長(なげ)え口上だな、ああ? そんな長えのは校長先生の演説だけで十分
だぜ。それより待ってろや。次はお前たちの番だぜ。このオレをバカにしやがっ
た奴は全員この犬と同じ運命をたどらせてやる。もはやこのオレを止めること
なんて誰にもできねえ」
「だから見苦しいって言ってんだよ。ジャイアン、そのACはもう動かないん
だ。いい加減観念したらどうなんだ」

「何が動かないって?」
261名無し物書き@推敲中?:04/09/30 13:36:15
「……え?」
 スネ夫は目をこらしてモニター画面を見つめる。何かが動いている。濃霧の
ようなけむりが辺り一帯おおう中、もぞっと動く巨大な影がそこにある。しか
し、カメラの方向は確かにプラチナヘッドを向いていた。
「ウ、ウソだろ……なんだよあのAC。エ○ァンゲリオンじゃあるまいし。電
力がなきゃ動くわけが……」
 スネ夫の手足がわなわなと震え出した。
「し、至急プラチナヘッドのエンジニアチーフを呼べ! もしかしたらマニュ
アルや仕様に手違いがあるのかもしれん」
 すぐ側のスタッフがうろたえた様子で答える。
「そ、それがスネ夫さま! いないのです。こちらでも万一のことに備えて管
制室に彼らを待機させておこうと先ほどから考えていたのですが、館内および
場外どこを探しても見当たらないのです」
 あぜんとした表情でスタッフを見やるスネ夫。だがそれはすぐに疑いのこもっ
た面持ちに取って変わる。
「はあっ? こんな時に職場放棄かよ? なんなんだ……もう誰でもいい、プ
ラチナヘッドの整備に関わった者なら誰でもいいから全員ここへ呼び出せ」
「そ、それがいま調べましたところエンジニアチーフだけではなく、プラチナ
ヘッドの整備管理にたずさわった関係者全員が姿を消しているんです!」
「な、なにい? いったい何が起きているんだ……集団ボイコットか?」
 半ば放心したような顔でスネ夫はとなりのカリストの方を見やった。
「もう、なにがなんだか……」
262名無し物書き@推敲中?:04/09/30 13:40:27
「ミスターホネカワ」視線をモニター画面に向けたままカリストがゆっくりと
口を開く。「私に考えられることはただひとつ。あなたは重要なことを忘れて
いた。あのプラチナヘッド、ミスターゴウダの乗るACはこの会社のものでは
ないということを」

「え?」スネ夫は始めきょとんとしていたが、突然思い出したように大声を上
げる。「あ、あー!!」
「そうだ、ジャイアンの搭乗しているACはうちのじゃない。あれは……アー
ネスト・ホーク社製だ。あれはうちとの技術提携で借り受けていたものなんだ」
「さよう。そしてACの整備、管理は機密情報を守るためすべてホーク社の人
間が行っていた。しかもガレージごと貸し出されていたから、アセンブルの工
程すらこちらには秘密になっていた。彼らがACにちょっとした細工をするこ
となどたやすいことだったのだ」
「じゃあ、実弾兵装の件もホーク社の人間が……ジャイアンも、向こうの側の
人間だったのか!」
「我々の気づくのが少し遅すぎたようだな」
「これは陰謀か……」デスクに思いきりこぶしを打ち付けるスネ夫。「おのれ
ホーク社め。このままで済むと思うなよ」
 スネ夫は動揺するスタッフの方へきっと振り向き、これまでにないほど声を
張り上げた。
「ただちに場外のゲート、通用門のすべてを閉鎖しろ。人っ子ひとり中にも外
にも通すな。たとえ代議士、首相でもかまわん、通すな。全面封鎖だ!」
「オーバーではないか、ミスターホネカワ。ホーク社の者がいまだここに残っ
ているとは考えにくい」
「いや、必ず誰かが残っているはず。ドーム内のいまの状況を本社へ伝える間
者がね」
「なるほど」
 再び室内があわただしくなる。スネ夫は怒気をはらませながら叱りつけるよ
うに次々とスタッフに指示を出す。
『パパがここにいない以上、ぼくが何とかしなくちゃいけないんだ。』
263名無し物書き@推敲中?:04/09/30 13:44:28
「ガードが足りなければ館内のを使っても構わん」スネ夫は館内外に向けてア
ナウンスを流す。「動けるスタッフは全施設内を巡回、捜索に回れ。ホーク社
のエンジニアおよび関係者は見つけ次第ただちに拘束! 疑わしきもだ」
 側にいたスタッフがおそるおそる話しかける。
「し、しかし避難警報の出された後では外へ向う人の流れを断ち切るのは困難
です。最悪、封鎖に抗議して出口付近で人々が暴徒化する恐れも……」
「避難誘導先をA4地区の地下シェルターに変更しろ。そこ以外安全なところ
はないと周知させるんだ。外にはなんぴとたりとも出すな。そんな権限がない
のは承知している。だが、これには我が社の社運がかかっている。わかったら
急げ」
「は、はいっ!」
 少年のものとは思えない厳しい表情を前に、スタッフたちはおびえるように
その場から立ち去っていった。

『グヘヘ、大分混乱してるような。そっちの様子が手に取るようにわかるぜ』

「ジャイアン、よくもぼくをだましてくれたな……。子供のころからその性格
は変わらず仕舞だね。最低なやつだ」
「言葉に気をつけろよ。いずれはこのオレ様に命乞いすることになるんだから
な。ゲヘヘヘ」
「君に警告しておこう。これ以後わが社は君をふくめ、ホーク社による陰謀に
対し組織を上げて全力で追及することになる。事故に気をつけるがいい。我々
は組織の存続のためなら時として手段を選ばない」
「大きく出ちゃいましたねえ、スネちゃま〜。それじゃお言葉に甘えて、てめ
えの会社創設以来の大惨事をこれから引き起こしてやるか」
264名無し物書き@推敲中?:04/09/30 13:48:01
「ジャイアンとの回線を断ち切れ。もう二度とやつの声は聞きたくない」
「はっ」
「セキュリティ部隊の方はどうなった」
 横目でスタッフを見やりながらうかがうスネ夫。汗の水滴がしきりにスネ夫
の顔を伝う。
「準備は万全です。いつでも出撃可能となっています」
「よし、出動させ……」
 その言葉が出るのを待っていたかのように、カリストがさえぎるように長い
手を差し出す。
「ダメだ。彼らを出撃させてはならない」
 スネ夫、およびスタッフ一同に動揺が走る。

「な、何を言うんだカリスト。まさかお前もホーク社の手先じゃ……」
「冷静に考えてみたまえ。彼らを出撃させてたとえ剛田少年を制圧できたとし
ても、あの荒れ狂うACを前に犠牲なくして制圧など不可能だ。確実に死人が
出る」
「あ……」
 その発言はスネ夫が心の意識下で恐れていたことを浮かび上がらせた。
「さらに彼ら、セキュリティ部隊は実戦経験者ではない。実戦経験がないとい
うことは、戦闘においては素人同然に等しいことだ。下手をすれば全滅の危険
もある」
「それを考えなかった。こっちは立場上、死者だけは何があっても出すわけに
いかないんだ。マスコミに騒がれたら、AC分野はおろか会社のイメージその
ものが致命的ダメージを受ける」
265名無し物書き@推敲中?:04/09/30 13:53:06
「そこでだ。この件の解決は私ひとりに任せてもらいたい。そうすれば犠牲者
は最小限ですむだろう。そう、ただのひとりの犠牲で」
「そのひとりとは……ジ、ジャイアンのことか」
「さよう、彼は少しやりすぎたようだ。この件については試験テスト中に起き
た不慮の事故として処理できるよういまの内から取りはからっておいてくれた
まえ」
「で、でもできれば誰も死なずに済ませたいんだが……」
「戦いにきれいごとは言ってられん。ただの試合を戦場に変えたのは彼の責任
だ。ランドルフの生死すらいまだ不明のいま、最善の方策がなんであるかおの
ずとわかるはず」
 スネ夫は首をうつむけ気味にして考えこんだ。だが長く考えるには事態はあ
まりに切迫している。そのためスネ夫は自分でも十分に納得が出来ないままう
やむやに従う道を選びとった。
「……わ、わかった。この件の処理はカリスト、お前に任すことにするよ。た
だ極力パイロットの生死に気を配ってあげてくれ」
 だが男は返答することなく静かに部屋を後にした。
266名無し物書き@推敲中?:04/09/30 13:56:47
 のび太とドラえもんは係員の誘導に従って地下シェルターに避難していた。
シェルター内部は広大で、打ちっぱなしのコンクリートの壁と列柱が薄暗い照
明の中、無限回廊を形成するように続いている。数百人もの避難者がこの冷た
い無機質の床に座らされていた。みな不安を隠せないでいる。

「ダメだよ。絶対にここから出さないからね!」
 出入り口の鉄扉の前にドラえもんが立ちはだかるように突っ立っている。外
に出ようとするのび太を押しとどめているのだ。
「わかんないかな。ぼくはジャイアンやランドルフさんを助けなくちゃいけな
いんだよ」
「君はケガしてるんだからダメ! ここで大人しくしてなさい」
「どいてっていうのに。どいてったら!」

 しばらく二人がもみ合っていると、ドラえもんの背後の鉄扉に重なるように
して、見覚えのあるピンク色の扉がニュッと出現した。
「あっ、ドラえもん後ろ……」
「そんなこと言ってぼくの気をそらそうとしても無駄だよ」
 ドラえもんが言い終わるかしないうちにピンク色の扉が勢いよく開かれ、ち
ょうど目の前に立っていたドラえもんの背中に激突した。はじかれるように押
し出されるドラえもん。そして扉の向こうからはドラミがさっそうと飛び出し
てくる。
「ド、ドラミちゃん!」
「遅くなってご免なさい、のび太さんがピンチだったというのに。こんなとき
に限って虫の知らせアラームが故障してたの」
「いや、よく来てくれたよ。こっちはドラえもんがさ……」
「あら、そういえばお兄ちゃんはどこへ……」
 開け放たれた扉の反対側から頭を抱えながらドラえもんが出てくる。
「出てくる場所ぐらい選んでくれよな、もう。イテテテ……」
267名無し物書き@推敲中?:04/09/30 13:59:35
「お兄ちゃん、遅れてご免なさい。あたし……」
「それよりよく来てくれたドラミ! お前ものび太くんがここから出ないよう
説得してくれ。のび太くんったらこの身体でバトルエリアに戻るって言うんだ
から」
「ダメよ、お兄ちゃん。のび太さんの気持ちも考えてあげなくちゃ」
「な、何を言ってるんだ、ドラミ。こんな危険な戦いにこれ以上のび太くんを
巻き込むわけにいかないだろう」
「あたしもいまの状況がまだよくつかめていないの。ひとまずスネ夫さんのい
る管制室へ向ってみましょう。判断するのはそれからでも遅くないと思うわ」
「そうだよドラえもん。ぼくも向こうで何が起こっているか確かめたいんだ。
行ってもいいでしょ、ねえ」
「し、仕様がないなあ……」

「プラチナヘッドは現在平原エリアを時速十キロでこちらに向っています」
「まるで台風だな。脅威は歩いて接近してくるってわけか」先ほどとは打って
変わり落ち着き払っているスネ夫。それはカリストへの信頼の揺るぎなさから
くるものだった。「カリスト、準備はどうだ」
「現在ハンガーを出庫中。三十秒以内に出撃可能だ」
「よし、何とか間に合いそうだな」

「スネ夫様、依然としてランドルフとの交信は途絶えたままです。生命反応に
ついても回路が寸断され判断不能です」
『そう、残る気がかりはランドルフの生死のみ。やつを失うことはわが社にと
ってどれだけの損失となることか。あまつさえACもオジャンになっちまった。
あのACもレンタルなんだよなあ。頭痛え……』
268名無し物書き@推敲中?:04/09/30 14:06:17
 スネ夫が天井をうつろにながめながら物思いに沈んでいると、その背後に見
なれたピンク色の扉が脈絡もなく出現する。それにスネ夫は気づかない。そし
て例によって扉が勢いよく開かれ、スネ夫の後頭部を直撃する。
「どべっ?!」
 そのまま前のめりに倒れ込むスネ夫。しかしその尻がつかえとなって扉は半
分も開かない。
「あれ? なんかドアにつっかえてたみたいだ……」
 ドアの向うからのび太の声がする。ドアのつっかえをどけようと、のび太た
ち三人は息をそろえて強引にドアを押し込もうと試みた。「せーの……」
「や、やめ……うぺえっ!」
 逃げる間もなくスネ夫は扉にはね飛ばされ床を転げまわった。

「あっ、スネ夫そこにいたのか。なんだってそんな邪魔になるところに突っ立
ってんだよ」
「て、てめえら。ドアを開けるときは奥に人がいるかぐらい確認しろよな!」
 スネ夫はだだをこねる子供のようにわめき立てた。
「悪かったってば。それよりいまの状況ってどうなってるんだい。ぼくらはそ
れを聞きに来たんだ」
「状況もクソもあるか、出てくる場所を選べ! クソだって場所を選ぶだろう
が! このクソったれ!」
「かわいそうなスネ夫くん……」
 ドラえもんだけが内心深く同情した。
269名無し物書き@推敲中?:04/09/30 14:31:57
 やがて双方が落ち着きを取り戻し、改まったような雰囲気になるとスネ夫は
厳かに口を開いた。
「率直に言うとだな、残念ながら君たちの出番はもうなさそうだ。ぼくらの切
り札であるグスタフ・カリストを制圧に向わせたからね。問題は時間が解決し
てくれる段階に来ている」
「えっ」ひとりのび太が過剰に反応して声を上げる。「グスタフ・カリストっ
て昔のチャンピオンのことじゃないの」
「さすがにのび太は知っていたか。彼はあの早すぎる現役引退の後、十数年の
紆余曲折を経てぼくの会社のフィクサーとして落ち着くことになったんだ」
「知らなかった……そんな身近なところにアリーナチャンピオンがいたなんて。
スネ夫も薄情だなあ。それならもっと早く教えてくれればよかったのに」
「わるいわるい。一応わが社でその存在は『極秘』扱いだったんでね」

「さすがのジャイアンもチャンピオン相手じゃひとたまりもないよね」
 ドラえもんが深い考えもなしに口をきいた。
「ああ、ジャイアンが彼にかなわないのは目に見えている。しかし……」
 スネ夫は先ほどから周囲をきょろきょろと見回しているのび太が気になって
話を中断する。
「何を探してるんだ、のび太は?」
「ランドルフさんの姿が見えないけど……どこにいるの? 始めにジャイアン
を止めに入ったはずのランドルフさんが戻ってないのはどうして?」
 都合の悪いことを聞かれたときに起こす反応――視線をそらしたり、かゆく
もない頭をかいたり――をこのときスネ夫は忠実に行った。
「あ、ランドルフね。あいつはその……あのなんて言うか、ほら。その……」
「なんだよ、そのぼかし方は。まさかランドルフさんに何かあったんじゃない
だろうね」
「だからね、それは……ほら」
「もっと具体的に言ってくれよ。はっきりしろったら。どうしてそう……」
270名無し物書き@推敲中?:04/09/30 14:37:11
 それまで積もりに積もった責任の重圧感がついにスネ夫の緊張の糸を切った
のか、スネ夫の性格に劇的な変化をおよぼした。スネ夫は急に開き直ったよう
にあっけらかんと切り出した。
「実のところこちらにもわからん。生きているのか、それとも死んでいるのか。
だって確かめようがないんだもーん。たぶん死んだ――というのがこちらの見
解。で、もしかしたら生きてるかも――というのがこちらの期待」
「ふざけてんのかい! 頭打ってどうかしちゃったんじゃない? ランドルフ
さんはいまいったいどこにいるんだよ」
「半壊したコアの中さ。恐くて誰も回収にいけないんだ。わかるだろう?」
「取り寄せバッグがあるじゃないか!」

「へっ?」スネ夫は思わずすっ頓狂な声をもらした。「ああ、忘れてた! ド
ラえも〜ん」
「ドラえもん! 取り寄せバッグだ!」
「う、うん!」
 すぐさまポケットからバッグを取り上げるドラえもん。ところがそこでドラ
えもんの動きが急に止まる。
「どうしたんだよドラえもん」
「いや……もしランドルフのやつがさ、そのもし……仏さんとかだったらどう
しようかと思って。ぼく、死体なんてつかみたくないし。その……」
「のび太の時は平気でつかんでたくせに……くけけけ」
 スネ夫が陽気にせせら笑う。
「それとこれとは話が別なわけで……」
271名無し物書き@推敲中?:04/09/30 14:53:05
『はいはい、生きてますって報告すりゃいいんだろ』

「その声はランドルフ!」スネ夫の声に生気が戻った。そばのスタッフに小声
で話しかける。「(ジャイアンには回線つながってないだろうな)」「(はい、
完全にシャットアウトしています)」

『正確にはやっとこ生きてるって状態だ。あと数分以内に助けが来なけりゃ死
ぬだろう。スーツ内蔵の生命維持装置のタイムリミットが迫ってるんだ』

「ドラえもん、ランドルフさんは生きてるみたいだ。早くバッグから引き出し
てあげて!」
「ふふふふ〜」しかしドラえもんの顔には小悪魔的な笑みが浮かんでいた。「
さんざんぼくを小バカにしたやつを助けていいもんかな〜。だってこいつはぼ
くにひどい暴言を吐きまくった男だしね」
『お、おい。まさかオレを助けねえつもりじゃねえよな。この豚ドラ。オレを
見殺しになんてしたら化けて出てやるからな。毎日がホラー映画になるぞ、い
いのか』
「ごめんね〜。ぼく気分でしか人助けしない主義なので。これも運が悪いと思
ってあきらめて」
『あ、わかった。改心しますわ。だから助けてください。神様、仏様、ドラえ
もん様。二度とあんたのことを青い気球だとかドラム缶だとか抜かしません』
「そうかな〜。人間そう簡単に改心できるもんじゃないからね〜」
『そう言わずに助けてくださいよ、後生ですから。のび太ボーイを救ったよう
にここからオレを引っぱり出してくださいよ』
「でもね〜。どうせご恩なんてすぐ忘れちゃうんだろうし、今度会ったらまた
……」
「いいからさっさと助けろ!」
「いぴっ」
 業を煮やしたのび太とスネ夫、ドラミによってどつき倒されるドラえもん。
272名無し物書き@推敲中?:04/10/11 17:35:39
ウヒョー
ホシュホシュ
273名無し物書き@推敲中?:04/10/25 17:11:44
楽しみだから保守
274名無し物書き@推敲中?:04/10/26 13:06:59


  ☆ チン

        ☆ チン  〃  ∧_∧   / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
          ヽ ___\(\・∀・)<  まだー?
             \_/⊂ ⊂_)_ \_______
           / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄/|
        |  ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄:| :|
        |           .|/
275名無し物書き@推敲中?:04/10/30 16:50:38
保守保守
 こうしてドラえもんのひみつ道具によって、ランドルフは無事にACから救
い出された。のび太に続く奇跡の生還に室内のスタッフたちから歓声と拍手が
まき起こる。だがランドルフのパイロットスーツはひどく汚れ、顔もずいぶん
とやつれて見える。生命の限界とぎりぎりまで戦っていた男の姿だった。
「ランドルフさん。よかった……」
 のび太がゆっくりと歩み寄る。
「……のび太ボーイ。お前も無事だったんだな」
 その言葉に力はなかったが、ランドルフはのび太の肩を抱き寄せると頭を乱
雑になでつけた。
「ミイラ取りが本当にミイラになるところだったぜ。もうこんなのはこりごり
だな……」
 スネ夫が労をねぎらうように穏やかな口調で語りかける。
「ランドルフ。お前が無事で本当によかったよ。こんなことになるとは自分で
も思ってもいなかったんだ。とにかくお前はもうゆっくり休んでくれ。あとの
ことはこちらに任せてくれればいい」
「……そういや坊っちゃん、聞いてたぜ。あんた、とうとうカリストを差し向
けたな。あいつはレイブン……つまり殺し屋だ。自分のしたこと分かってんだ
ろうな」
「もうそれしか選択肢が残ってないんだ。ジャイアンにしたって殺されても文
句いえないようなことを続けてきただろ? 仕方ないんだよ」

「殺すなんてとんでもない!」のび太が勢いよくスネ夫に詰め寄る。「スネ夫、
お願いだ。ぼくにもう一度行かせてくれ! ぼくがジャイアンを、今度こそ無
事に連れ戻してみせるから」
「行くもなにも、君には乗るべきACがないんだし……」
「ローズヘッドの他にないの?」
「いいえ、あるわよ。のび太さん」ドラミがひょっこりと前に出てきた。「ザ
ンダクロス・マーク2のことを忘れてない?」
277名無し物書き@推敲中?:04/11/02 03:56:11
「そうだ! ぼくにはザンダクロスがあったんだ!」
 そこにさっきから難しい顔をしていたドラえもんが口をはさむ。
「ドラミ。そんなこと言ったって、のび太くんはこれまではるかに性能のいい
ACに乗ってたんだよ。いまさらそんな旧式に乗ったところでいままで以上の
働きが出せるわけないじゃないか」
「いや、待って。……ぼくにはむしろザンダクロスの操作系の方が合ってるか
もしれない。なにしろ何年ものつき合いだもの。確かにザンダクロスは旧式か
もしれない。でも、ぼくはこれに乗ってそれより高性能のACに幾度も勝って
きたんだ」

「もしかしたらのび太さんが乗るかもしれないと思ったから、いつでも出せる
ように整備しておいたの。ただ問題が……」
「問題って?」
「メイン武器のカラサワがバッテリーパックの寿命や耐久性の問題で、いま使
えない状態なの」
 その言葉にドラえもんが絶句した。
「それじゃ話になんないじゃないか! カラサワなくしていったい何で戦えと
いうの?」
「そこでスネ夫さんに頼んで武器だけでも何か貸してもらえないかと思って」
 のび太たちは一斉に横に振り向いた。三人の視線がスネ夫に集中する。思わ
ずたじろぐスネ夫。
「ざ、残念だけどこちらとしても実弾を貸すわけにはいかないな。そ、それと
どのみち君たちに言うつもりだったけど、カラサワはここでは使えないよ。だ
ってここはドームでしょ? カラサワなんてぶっとんだ武器をここで使う想定
なんか全くないわけ。むろん、攻撃力のない練習用のでよかったらいくらでも
貸し出すつもりだけど」
「それじゃ意味がないんだよ」
 ドラえもんはため息をついた。
278名無し物書き@推敲中?:04/11/02 04:00:21
「いいよ、メイン武器なしで戦ってみせる。ブレードひとつで十分さ。前の戦
いもブレードで勝ったようなもんだしね」
「またまたそんな無茶を言い出す。いいかい、これは命のかかった戦いなんだ
よ。確かに向うも武装はブレードだけだけど相手は……」
「お兄ちゃん、たまにはのび太さんの意見を何も言わずに通して上げたらどう
なの。とやかく言ったところでのび太さんの意志は変わらないんだから」
「お前が責任取るわけじゃないだろう!」
 二人のあいだに険悪な空気が流れる。いまにも言い争いが始まりそうなその
とき、のび太が二人のあいだに割って入った。
「やめてよふたりとも。これはぼくとジャイアンの因縁の戦いなんだ。ドラえ
もん、ぼくは何がなんでもジャイアンを止めなければならない。ドラえもんの
気持ちも分かるけど、誰かが危険を冒さなくちゃ問題は解決しないんだ」

「のび太くん……」
「あとね、最近知ったんだけど。冒険って危険を冒すから冒険っていうんだよ」
「そんなこと誰でも知ってるよ……」
 知らないうちにドラえもんは涙目になっていた。
「止めても無駄みたいだな。のび太ボーイ」
「ランドルフさん。ぼくは……」
「分かってる。だがオレもいまはこんなだ。もしお前に万一のことがあったと
き、オレはお前を助けにいけない。それでもいいのか」
「大丈夫です、必ずジャイアンを救ってみせます」
「のび太ボーイ、生きて帰れよ。そしたらお前をオレの一番弟子にしてやる」
「いま言ったこと本当ですか!」
「ああ。だがくれぐれも無理だけはするなよ……」
「ドラえもん、行こう!」
「よ、よーし。覚悟はいいね、のび太くん」
「だからとっくにできてるって」
「どこでもドアー!」
 ポケットから突如取り出された大きなドアを見てランドルフは目を丸くする。
「また二十二世紀の手品かよ……」
「二十二世紀の科学です!」
279名無し物書き@推敲中?:04/11/02 04:02:36
「のび太、待つんだ」
 呼び止めたのはスネ夫だった。
「止めるのか、スネ夫!」
「違う。ジャイアンのACのことだが、もうすぐそこまで来ている。もしこの
付近で戦闘が始まれば、こちらまで巻き添えを食う可能性がある。そこでだ、
君たちはジャイアンを反対方向、できれば市街地エリアまで誘い出してくれ。
君の姿を認めれば驚いて引き返すに違いない」
「よし、聞いたかドラえもん。市街地エリアへ急行だ」
「了解、行くよ!」

 すでに日没を迎え、市街地エリアは薄暗がりに包み込まれていた。街灯のほ
とんどが戦闘によって破壊され、ドーム天井の青白い照明だけが頼りなく地面
を照らしている。
「こりゃひどいな……予想以上だ」
 瓦礫におおわれた大通りを見てドラえもんがため息をつく。
「ジャイアンが実弾を使ったって本当なんだね」
「のび太さん、時間はあまりないわ。ACに乗りましょう」
「思ったんだけど、いまガレージにあるザンダクロスをどうやって……」
「待ってて、いま出すから」
 ドラミはポケットに両手をつっこむと何やらもぞもぞとやり始めた。それを
見てドラえもんがあわてふためく。
「まさかそこから?! 無茶だー!」
「出てきてザンダクロース!」
 かけ声とともにドラミはポケットの中から高さ十メートルをこえるACを一
気に引き出す。ズシンという音が市街地に響き渡り、薄暗闇の中に胎児のよう
に丸くうずくまるうつろで巨大な影が現れた。

『なんだ? いまの地響きは……』
 ジャイアンはふとACを停止させ後ろを振り返る。
『まさか、まだ誰か残っているのか』
280名無し物書き@推敲中?:04/11/02 04:05:50
 のび太はザンダクロスを前にして、それが初めて見るACでもあるかのよう
に見上げていた。どこかいつもと雰囲気が違う、とのび太は思った。ドーム内
の暗さのせいで錯覚を起こしているのだろうか。ACが妙に無愛想に見えるの
だ。機械は本来無機質であるから、そう見えるのは当たり前なのだが、今日に
限って突っぱねるような表情をしているように思えた。ACのメタリックな光
沢が冷たい光を放ち、ふとACのアイカメラが一瞬明滅する。気のせいだろう
か、のび太は目をこすった。
『ぼくがローズヘッドに乗り換えたもんから嫉妬でもしてるのかな。まさか機
械がね……』
「どうしたの、のび太くん。早く乗り込むんだ」
 ドラえもんが横から声をかけてきた。
「あ、ああ。わかってる」
 
「さて……」ドラえもんはのび太がコクピットに入っていくのを見送るとドラ
ミに言った。「ぼくらはもうここにいても仕様がない。スネ夫くんの元に戻っ
てのび太くんをサポートすることにしよう」
「そうね、あとはのび太さん次第だから」
「のび太くんがんばって……」
 ドラえもんはどこでもドアの中へ入る前に一度だけ後ろを振り向いた。する
とそれまでうずくまっていたザンダクロスが金属の摩擦音を響かせながらちょ
うど立ち上がるところだった。暗がりの中で青白い光沢がその巨体の輪郭をか
たどっている。ドラえもんはそれになぜか薄気味悪さを覚えた。

「ガガ……のび太、聞こえるか。いま君のスタンパイ状況を教えてくれ……ガガ」
 スネ夫の声が雑音に混じってコクピット内に響く。ハイテクから一気にロー
テクの環境に移ったことを如実に実感させる。のび太はOSの起動に手間取っ
ていた。操作性の複雑さがそれを手伝う。
「もう少し待ってもらえるかな、動作確認が終わるまでもうちょっとかかるみ
たいだ」
「え? ガガ……なに? よく聞こえなかった。もう一度頼む……ガガ」
「もう少し待ってくれよ!」のび太はありったけの声で叫んでやった。
281名無し物書き@推敲中?:04/11/02 04:09:53
 一通り確認を終え、最後にのび太はブレードの出力を確かめるためひと振り
素振りをすることにした。腹に響くような重低音を発しながらブレードが半月
状に一閃し、青白い軌跡を描く。頼りとなる武装はこれしかない。のび太はそ
れが十分機能することを確認しほっと胸をなで下ろした。

「よし、最終チェック完了だ!」

「それではのび太。ジャイアンをそっちにおびき出してくれ。何でもいいから
挑発的な言葉を吐くんだ。そうすれば単純なジャイアンのことだ。すぐに挑発
に乗るに違いない」
「分かった。じゃ、じゃあ、やるよ!」
 のび太は無線を全周波数に合わせてジャイアンに呼びかけた。
『やい、ジャイアン聞こえるか!』
 少しの間をおいて驚きに満ちた声でジャイアンが応じる。
『やや、その声はのび太! 生きてやがったのか?』
『ベロベロバー。ぼくならここにピンピンしてるよ。バーカ、ジャイアン。お
前のかあちゃん出べそ。寝ションベン垂れのすっとこどっこい。ここまでおい
で、あっぷっぷー』

「な、なんて低次元な挑発なんだ……」
 やり取りを聞いていたスネ夫が、がく然として膝をつく。ドラえもんとドラ
ミも恥ずかしそうに顔を真っ赤にしている。
「聞いてるこっちも恥ずかしくなってきたよ。そんな幼稚な挑発にジャイアン
が乗るわけないじゃない……」

『てめえのび太! よくもオレの母ちゃんをバカにしやがったな。ギッタギタ
のメッタ刺しにしてやる。そこを動くな!』

「……ジャイアンもジャイアンだね」
 ドラえもんとスネ夫は顔を見合わせた。
「まあ、単純な点では二人とも同じか……」
282名無し物書き@推敲中?:04/11/02 11:06:45
「プラチナヘッド、進路を百八十度変えて現在市街地エリアへ向っています」
 オペレーターの報告を聞くと管制室にいるスタッフたちはそれぞれ安堵の息
をもらした。これで管制室に当面の危機は去ったことになる。
「ザンダクロス、接敵まであと約一分です」
「のび太くん、来るよ……」

 のび太はモニターを高感度カメラに切り替えた。暗闇の中でもカラーのまま
対象をくっきりと映り出すことができる。一方のジャイアンはナイトビジョン、
つまり赤外線暗視装置を使用した。軍事用だけあって感度は他のカメラの比で
はない。しかも熱量の塊であるACならどんな暗闇の中でも一目瞭然である。

「来た、ジャイアンだ」
 スクリーンに映し出された一機のAC。最初に見たときの白銀に輝く姿はそ
こになく、表面は煤けたように黒ずみ塗装もところどころはげかかっている。
 ジャイアンに疲れはないのだろうか、とのび太は思った。連戦に次ぐ連戦で
ジャイアンは精神的に消耗しきっているのではないかと。この場所はくしくも
ふたりが数時間前に対峙した市街地エリアの大通りであった。

「のび太〜、それはてめえの中古ACじゃねえか。あの赤いのがオシャカにな
ったんでわざわざオンボロに乗り換えたってわけか。もっともオレのACを撃
墜したのもそいつなわけだし、この屈辱を晴らすにゃ持ってこいだがな」
「この前と同じブレード勝負になるなんて、どういう因縁だろうね」
「ゲヘへ、今度は最後まで手を抜かねえからな。覚悟しろや」
「勝負だ、ジャイアン」
「来いや! のび太」
283名無し物書き@推敲中?:04/11/02 11:10:23
『キュオオオオオ………』
「この音は……」それはのび太の自機から発せられる音だった。「オーバード
ブーストか? 勝手に……なぜ!」
 操作の覚えのないオーバードブーストが突如うなりを上げた。
「くそっ、こうなったらどうにでもなれ!」
 のび太はそのままオーバードブーストを発動。ザンダクロスは前方に猛烈な
ブーストダッシュを始める。両者の間合いが一気に縮まる。

「のび太〜! 速攻でやる気か、なめんな!」
 そのとき前方のプラチナヘッドからフラッシュと共に光弾が射出された。
「あれはグレネード? やられ……!」
 あわや命中と思われたとき、激しい横Gがコクピット内ののび太を襲う。直
撃か? のび太がそう思うのもつかの間、機体が地面と高速度で接触し摩擦を
起こした。のび太はわけの分からぬまま機体の体勢を必死で立て直す。脚部を
アスファルトに押し当て滑走させる。摩擦による白煙と火花が舞う中、ザンダ
クロスは数十メートルを滑走したのちようやく停止した。のび太が現在地を確
認すると、大通りから横に入った道であることがわかった。とりあえずジャイ
アンにすぐ攻撃されることはなさそうだ。

「ブースト中に機体の急転回が行われたみたいだ……。グレネードをかわすた
めに?」

『ザンダクロス……お前が勝手にやったのか?』
 のび太は説教口調で誰へともなく語りかけた。
『おかげで死にかけたじゃないか。ぼくがちょっとのあいだ他の機体に乗って
たからって、こんなことをするのか』

 そのやり取りはすべて管制室に筒抜けになっていた。スネ夫もドラえもんも
のび太がいったい誰と話しているのかさっぱりわからない。
「のび太のやつなに独り言いってるんだ?」
284名無し物書き@推敲中?:04/11/02 11:13:51
『とにかく、もうこんなことするなよ!』

 ドラえもんがスネ夫の耳に小声でささやく。
「いや……ぼくも時々のび太くんのしてることが分からなくなるときがあるん
だよ」
 ふたりの前にランドルフが割って入る。この戦いを見届けるまでは医務室へ
は行かないと言いはっていた。
「それよりお二人さん、あの悪童がグレネードを隠し持っていたことについて
はどうでもいいのか」
「ああっ! そうだ」スネ夫は叫んだ。自分は今日になっていったい何度叫ん
だんだと自問しながら。「なぜジャイアンがグレネードを?!」

「たぶん、ありゃ格納携帯グレネードだ。悪童のコアは格納機能があったみた
いだな」
「ということはハンドグレネードか……二つ格納していれば弾数は十二発ある」
「このままじゃのび太くんが殺される! 止めさせよう」
 ランドルフはドラえもんの言葉に耳も貸さずに話を続けた。
「いや、無傷の状態で相手の武装が判明したのはまだよかったかもな。おそら
くやつはグレネードを、ブレード戦と承知して近づいてきたのび太のACに、
回避不能な近距離でお見舞いしようって腹だったに違いない。だが、のび太が
開始からいきなりオーバードブーストを使ってきたので、やっこさん驚いて思
わずぶっぱなしちまったのさ」
「ダメだ。戦いを止めさせなきゃ」
 ひとりうろたえるドラえもんの頭の上にランドルフが肘をのっけてきた。
「ドラボーイ。なにひとりで意気消沈してんだ? のび太ボーイのコクピット
を映すモニターを見てみろ」
 ドラえもんがおそるおそるモニター画面に目を移すと、そこにはわき立つ闘
志を秘め、目を爛々と輝かせたのび太の姿があった。
「ドラボーイ見たか。やつめ、ハイになってやがる。やる気満々さ。戦いはま
だ始まったばかりなんだ」
「で、でも危険なことには……」
285名無し物書き@推敲中?:04/11/02 11:17:28
 しばらく沈黙していたザンダクロスから交信が管制室に届く。
「ジャイアン。やっぱり武器を持ってたんだね。いや、別に君を責めたりはし
ないよ、むしろその方が君らしくていい。さあ、これからもどんどん卑怯な手
を使って攻めてきなさい。ほらどんどん来なさい。ぼくを破滅させてみろ。そ
ういうのは大歓迎だ」
「てめえ、のび太〜どこまでもバカにしやがって絶対に殺してやる!」

 ザンダクロスの逃げ込んだ通りへ急行するプラチナヘッド。だが角を曲った
ところですれ違い様に突如現れたザンダクロスと交差する。数メートルの間隔
で一瞬、二機がすれ違う。グレネードを恐がって距離を離してくるだろうと考
えたジャイアンの裏をかいて、ザンダクロスは角のすぐ手前で待機していたの
だ。

「なにぃ?!」
「もらったジャイアン」
 ザンダクロスの方が振り向きざまにブレードを抜刀、まだ背中を見せていた
プラチナヘッドに切りかかる。だが、ジャイアンは振り向くのを止め、そのま
ま背を見せたまま前方へブーストダッシュ。のび太はブレードで捕そくしきれ
ず両者の距離は離れた。その機を逃さずジャイアンはACを急反転させる。こ
の狭い通りでは当然相手は射撃をかわせない。
「のび太くん、やばい。深追いはやめろ!」
 のび太は急速後退を開始、しかし大通りに出る前にジャイアンの振り向きが
先に完了する。「のび太死ね!!」ハンドグレネードのダブルトリガーが炸裂
した。
 だがのび太はブレードの突進力を使ってすぐ横のビルの中に突入、間一髪の
ところでグレネードの猛射を避けた。ザンダクロスが飛び込んだのは吹き抜け
のロビーだった。のび太が左右を確認する間もなくあとからプラチナヘッドが
追ってくる。のび太は吹き抜けを利用して階上へ逃げた。
286名無し物書き@推敲中?:04/11/02 11:21:16
「ほらほら鬼さんにつかまっちゃうよ〜」
 ジャイアンは吹き抜けの真下にたどり着くと、上に向けて再びダブルトリガー
を引く。のび太はブレードで再びガラス張りの外壁をやぶって脱出、ブースト
飛行を続けて大通りの反対側のビル屋上へ向った。ジャイアンはビルの外壁を
蹴やぶって通りに出ると、執拗に空中のザンダクロス向けてグレネードを乱射
した。

「ジャイアンのやつ、ほとんどめくら撃ちになってる。弾が切れるのも時間の
問題だな」
 管制室ではスネ夫たちが冷静に状況をうかがっている。
「いや、本当に弾が切れたみたいだぜ……」

 見るとジャイアンは両手の武器をパージして捨て去っていた。これで双方と
も完全にブレードのみになった。地上のプラチナヘッドと屋上のザンダクロス
のあいだでしばらくにらみ合いが続く。ふたりが突入した背後のビルからは黒
煙が立ちこめていた。先に口火を切ったのはジャイアンだった。
「相変わらず、すばしっこいやつだ。一発も当たりゃしねえ。まったくたいし
たもんだぜ」
「おや? ジャイアンにほめられた……」
 のび太はジャイアンの意外な言葉に目を丸くした。
「ただ怒りに任せていてもてめえには勝てねえってことが分かったよ」
「ジャイアン……?」
「でもな……」ジャイアンのACに動きが出た。身構えるのび太。「考えてみ
るとよ。やっぱてめえをぶっつぶすときは怒りに任せてた方が気持ちいいよな!」

『ヴォオオン』
 プラチナヘッドの大出力ブレードが抜刀される。パイロットの気合いに感応
するのか、ブレードの長さは機体のそれをはるかにしのいだ。
287名無し物書き@推敲中?:04/11/02 11:23:49
「おらああ!」
 かけ声と共に振られた一刀はビルを一文字に切り払う。のび太は直後に機体
の足下がぐらつくのを感じた。その後階下で何かが爆発したような音が数度か
くりかえされ、わずかずつだが自分のいる足場が徐々に前へ移動し始めている
のに気づく。ビルがブレードによって刻まれた切り口を境にスライドを始めた
のだ。屋上の揺れはさらに大きくなり、それが崩壊に向けて加速度的に増して
いるのをのび太は感じ取った。迷わずブーストジャンプを開始するのび太。そ
の眼下では箱型のビルが大通りをふさぐように横倒しに崩れ落ちてゆく。
「な、なんて力だ……」

 管制室では誰もが驚きから声を出せないでいた。
「(……ジャ、ジャイアンのやつビルをぶった切りやがった。○鉄剣かよ!)」

「降りてきな、のび太。それとも逃げ場となるビルすべてを切り倒してやろう
か」
 その言葉に応えるようにゆっくりとザンダクロスは大通りに下りてきた。両
者は数十メートルの距離をおいて、それはブレードが届くか届かないかくらい
の距離で、対峙した。
「てめえはいま見たブレードによって切り裂かれて死んでいくんだ。グレネー
ドで死にきれなかったことをせいぜい恨むんだな」
「く……」のび太の表情にいつもの余裕が失われていた。
「このブレードはオレの怒りに感応して大きくなる。最新の生体機構が組み込
まれているだけあって使い勝手がいい」

「生体機構? やはりあのACはただの機械じゃなかったのか」
「坊っちゃん、どういうことだ」
「おそらくジェネレーターそのものが従来のとは違うんだ。でなければあんな
巨大なブレードが使えるわけがない。あんな巨大MTクラスの」
288名無し物書き@推敲中?:04/11/02 11:26:23
「もうひとつ教えてやろう。こいつはまだ本当の力を隠し持っている。こいつ
にはリミッターがあるのさ。そいつは常人の扱いこなせる能力を超えているた
めオレのような改造人間でしか扱えないようになっている。それを、たったい
ま解禁してやるぜ」
 するとプラチナヘッドが突如立ち昇る蒸気のようなオーラを身にまとい始め
た。秘められた力が真の姿を現そうとしている。
「このままでは負ける、いや死ぬぞ。ぼくは……」

「お、おい」スネ夫が不安げにランドルフにたずねた。「やばくないか、これ
って。これからが本番だって言うんだぜ」
「オレと戦っていたときでさえ使わなかったのを、いまになって使うのか? 
……のび太ボーイ」

「ド、ドラえもん。ぼくどうすれば……」
「のび太くん! 大丈夫。いま取り寄せバッグで助けて上げるから」
 ドラえもんがポケットに手を突っ込んだのを見て、スネ夫たちはが一斉に飛
びかかって取り押さえる。ドラえもんは必死にもがえてわめき出す。
「のび太くんを見殺しにする気か! この人殺し」
 スネ夫はうつろに天井を見つめた。
「もうダメか……カリストにすべてを託すしかない」

『このまま待っていてもリミッター解除したジャイアンに勝てるのだろうか』
『ダメだ! 待っていたら、あのリミッターを解除されたら……絶対に負ける!』

 そのときのび太の脳裏に、追い詰められた獣の直感、残されたわずかな生存
のための真理が浮かんだ。直感を通じての真理、勝利ではなく生存へ結びつく
たったひとつの方策。
「そうだ、攻撃しかない!」

 のび太はザンダクロスを低姿勢で前方にブーストダッシュさせる。攻撃をく
らう前に攻撃する。現段階での最善の方策にのび太は踏み切った。
289名無し物書き@推敲中?:04/11/02 11:34:54
「のび太くんが先にしかけた? 無茶だ!」
「万策尽きて玉砕しにきたか!」
 ジャイアンはザンダクロスの飛び込みに合わせてロングブレードを構える、
そして射程内に捕らえた。「終わったな。あばよ、のび太……」

 ブレードが一文字に一閃される。ブレードの射程が違う以上、射程の長い方
が先に命中するはずだ。だが、ジャイアンはブレードに手ごたえを感じなかっ
た。ブレードは的確に目標をとらえたはず。だがブレードは衝撃による反動も
なく空を切った。ザンダクロスはブレードの軌道の手前で脚部を地面にめり込
ませるほどの勢いで急停止していたのだ。刃先はコアの前面をかすっただけだった。
「フェイントだとお?!」

 ジャイアンが気づいたときにはザンダクロスは空中へ飛び出していた。空か
らさらに間合いをつめる。だが、ジャイアンは返しのブレードをすばやく対応
させた。上から叩き付けるように振り下ろす。ザンダクロスは体操競技でもす
るように空中で身をひねらせて剣筋をかわす。
「バカな、ACにそんな機動ができるわけが……」
 空中で抜刀するザンダクロス、そのままプラチナヘッドの肩先へ切りかかる。
着地したときにはプラチナヘッドの片腕が宙に飛んでいた。
「あれは前のジャイアン戦でマシンガンを切り落としたのと同じ機動……」

「もし切り落としたのが左腕なら勝負は決まりだ! ブレードを封じたのだか
ら」スネ夫が叫ぶ。「どっちだ!」

『残念だったな、てめえが切り落としたのは右腕だ』
 プラチナヘッドが残った左腕でザンダクロスを取り押さえる。ザンダクロス
は両手を使って引きはがそうとするが上から強力に押さえ付けられている。
「のびちゃ〜ん。つかまえた〜」
「パワーが段違いだ……このままでは何も出来ない」
290名無し物書き@推敲中?:04/11/02 11:47:09
「旧式のくせによくやったよ。のび太」
 強大な圧力によってザンダクロスは機体の接合部や関節がきしみ始めた。圧
倒的なパワー。のび太はふと小学生のころの自分が脳裏に浮かんだ。そのとき
のジャイアンと自分の力関係といまの状況が似ていないかと。それほどに状況
は絶望的だった。
「ACでは……ACでは負けるわけにいかない」

「さて、このまま押しつぶしてもいいが、それではACらしくねえ」
 そう言ってジャイアンはザンダクロスを前に突き飛ばす。そして相手に体勢
を立て直す間も与えず、至近距離から一文字切りをくり出した。ジャンプでこ
れを避けるザンダクロス。しかしかわしきれずブレードが脚部をかすり、バラ
ンスを崩す。ついでプラチナヘッドのタックルを受け、地面に転倒。さらにブ
レードの連撃が追い打ちをかける。ザンダクロスは地面を滑走しながら後退。
しかし長大なリーチを誇るブレードに肩先から左腕をもぎ取られる。
「ブレードがやられた……」

「さあさあ、切り刻みのショータイムだぜええ!」
 追い打ちをするように急迫するプラチナヘッド。のび太は必死に後退して活
路を見い出す。
『どうする、どうすれば勝てる。カラサワもブレードもないいま、何をすれば
勝てる?』

 リミッター解除したプラチナヘッドの突進力を前に追いつかれるのは時間の
問題だった。のび太はとっさの判断でデコイを大量にばらまいた。しかしジャ
イアンはそれらを腕部で振り払いながらなおも突進してくる。
「この場におよんで往生際が悪いぜええ!」
「もう、これまでかな……」のび太は暗闇の虚空を見上げた。
291名無し物書き@推敲中?:04/11/02 11:51:16
『ズオン!』
 その瞬間ビル街を揺さぶるほどの大爆音がこだました。ドームの天井の一部
が爆風で吹き飛ばされ、半壊したビルのいくつかが振動を受けて自壊する。水
道管が破裂して爆煙に降りかかり暗闇に灰神楽が立つ。しかしそれ以後、戦闘
にともなう音がぴたりと止み、ドーム内は静けさを取り戻していった。

 モニターのすべてから映像が消え失せ、砂嵐一色に染まった。音声もまた途
絶えた。管制室では混乱が起きていた。
「な、何が起きたのかわからな〜い」スネ夫がコンソールを叩きながらわめき
ちらす。「のび太〜! 生きてるのか、死んでるのか? 生きてたら返事して
くれ〜。死んでてもいいから返事しろ〜!」
「のび太く〜ん! だから言ったのに〜」
「待って、誰か話してるわ……。そこのふたりの声が大きすぎて聞こえないだ
け! ちょっと黙ってて」
 スネ夫とドラえもんが黙り込むと、小さいか細い声がスピーカーを通じて何
ものかの声が聞こえてきた。

『ガガ……のび太だけど……みんな聞いてくれ』

「おお、のび太! 生きてるんだよな。お前、生きてるのか?」
 スネ夫が小躍りしながらたずねた。

『自分でもそれを確かめたくて、だってもしかしたらあの世にいるかもしれな
いと思って……』
292名無し物書き@推敲中?:04/11/02 11:55:18
「いや、お前は生きてるよ。だってここはこの世だもん。誰がなんといったっ
てこの世ですよ。もしここがあの世なんかだったら、この会社そっくりお前に
やるよ。だってあの世に会社なんていらないじゃない。だから、ここはこの世
なんだ!」

『そうか……。よかった〜、ぼく生き残れたんだ……』
「そんなことより現状を報告してくれ。いったいどうなっちまったんだ」
『ジャイアンのことなんだけどね。なんかぼく……』
「うん、ジャイアンのやつはどうなったの。パワーアップジャイアンのやつは……」

『ぼくが倒しちゃったみたい……』

「え…………マジ?」スネ夫は一瞬信じられないというような表情をして身体
を硬直させた。が、すぐにその場で飛び上がると大声で騒ぎ出した。「ワー!!」
 管制室のスタッフからもどっと歓声が上がる。ドラミもドラえもんも飛び上
がって大喜びした。一度喜んではすぐに恐怖のどん底に落とされるのをくり返
してきただけにその反動はものすごいものだった。ひとまずは決着がついたの
である。

「待て待て待て!」
 みなの異様な熱狂をいさめたのはランドルフだった。
「そのくらいにしてやれ。もういいだろう……そのくらいにしてやれよ」

「どうしたんだランドルフ、お前だってうれしいだろ」
「ゴウダボーイのことを考えるとよ。ただでさえ、あいつは……負け犬なのに。
だからよ、そんぐらいで勘弁してやってくれ」
「あれ、ランドルフ……お前ってそんなに敗者に寛容だったっけ」
 スネ夫が不思議そうにたずねる。
「ふん、オレだってアリーナで負けが続くと凹むときがあるさ。オレはやつほ
ど徹底した負け犬じゃねえが、まあその気持ちはわからないでもないってことさ」
293名無し物書き@推敲中?:04/11/02 11:58:32
 勝敗は決した。のび太がどさくさに紛れて巻いたデコイが結局勝因に結びつ
いた。のちにのび太が語るには、あのとき一瞬の機転でデコイの中に爆雷を紛
れ込ませることを考えたという。戦術的にも効果の薄い爆雷の集中利用によっ
て活路を見い出したのだ。リミッター解除後のジャイアンは勝利への確信から
判断力が鈍り、デコイと爆雷の違いに気づかなかった。

『とは言ったものの、本当は爆雷なんて投下した覚えないんだ。きっとザンダ
クロスのやつがぼくを守ってくれたんだ。さっきはあんなこと言ってご免よ……』




『身体がもう動かねえ……オレの負けだ』
 いまやプラチナヘッドは白煙を上げて地に伏していた。ザンダクロスはその
前に静かに立ちつくしている。
「ジャイアン……何はともあれ、いい勝負だったよ」
『……いい勝負だ? バカを言うな。勝てなくて何がいい勝負だ。寝言をいい
やがって』
「そのうちに救護班がくる。いまは動かずにじっとしているんだ」
『けっ、どっかの誰かと同じようなことを言いやがる。のび太……それよりさ
っさとオレに止めをさせ。それが終わるまで勝負が終わったとはいえん』
「止めだって? ジャイアンは何を勘違いしてるんだい。ぼくは殺し合いをし
ているわけじゃない」
『黙ってさっさと止めをさせ。さもなくばオレには……自爆装置がある』
「なんだって?!」
『お前がオレに止めをさせないんなら、こいつを起動させなけりゃならねえ。
こいつはドームを吹き飛ばすだけの力がある。さあ、分かったら止めをさせ。
そうすればすべてが終わる』
294名無し物書き@推敲中?:04/11/02 12:01:50
「ジャイアン、それは本当なの……?」
『こんな状況でウソが言えるか』
「ぼくにそんなことができるわけないじゃない」
『お前のことなんてどうでもいい。オレが起爆させればドーム内の人間すべて
が死ぬかもしれねえんだぞ。』
「ちょ、ちょっと横からいいかな」スネ夫がおそるおそる語りかける。「ジャ、
ジャイアンここはひとつ話し合いをしないか? あまりにも突飛すぎるよ。自
爆なんて……」
『スネ夫は引っ込んでろ。オレが自爆するかどうかはのび太次第だ。のび太が
潔くオレに止めをさせばすべてがハッピーエンドになるんだ。あとは踊るなり
騒ぐなり好きにすればいい』

「ジャイアン、君はお母さんのことを考えたかい」
『ああ? 母ちゃんのことなど関係ねえだろ。何年も前から家に戻ってねえよ』
「自爆なんて君のお母さんが望むことじゃない。そんなことをしたらきっとお
母さんは悲しむよ。だからさ、ちゃんと病院にいってその変な器官も取り除い
てもらうんだ。それでまた一から始めよう。君ならまたやりなおせるよ」
『本当にそう思うか』
「うん、ぼくはそう信じる」
「ジャイアン、早まるな。自爆なんてしたらのび太が言っているように、君の
母親に多大な迷惑をかけることになるぞ。自分の息子がテロリストみたいなこ
とをしたと知ったら、どう思う? 一生君の母親は世間に顔向けできなくなる
ぞ。君は母親やその他の親族さえ不幸にしようとしているんだ」
『のび太、最後にひとつだけ聞くぞ。本当に止めをさす気はないんだな』
「ないよ。ぼくは君を信じている……」
『バカだな。お前は……よりによってオレみたいなやつを信じるなんて』
295名無し物書き@推敲中?:04/11/02 12:04:12
 ドームの暗がりに一条の閃光が走る。それは光の矢のような残像を残し、音
もなく対象を貫きそれを破壊した。プラチナヘッドはその機能のすべてを停止
した。
『こちらカリスト。対象の破壊を確認……』

「間に合ったか……」スネ夫が落ち着いた声で言った。「カリストご苦労だっ
た。今度こそこれですべてが終わった」

 一瞬にして黒焦げになったACの残骸を前にのび太は呆然とする。
「ジャイアンを殺したのか……誰が?」
 のび太は感情を押し殺すようにしてつぶやいた。目の前で突然行われた死刑
執行にのび太は怒りをたぎらせる。
「なぜ、なぜ殺したんだ!!」

 ザンダクロスが動きだそうとしたところをスネ夫が制止する。
「待て、のび太。ジャイアンは死んでいない!」
「え……?」

「とにかく話を聞け。この一連の戦いにはホーク社の陰謀が少なからずからん
でいたんだ。そして先ほど社内の懸命な捜索によって隠れていたホーク社のス
パイを発見し、これを拘束することができた。その際、プラチナヘッドの強制
停止の方法の他に自爆装置の場所を尋問によって吐かすことができた。だがそ
の装置は外部からのオペでは解除できないとわかったので、外から破壊するこ
とに決めた。狙撃によってね。いまの光はレーザースナイパーライフルによる
ものだ。正確に起爆装置のみを狙い、それを破壊したのだ」

「何のことやらさっぱりわからない!」
296名無し物書き@推敲中?:04/11/02 12:08:04
 暗闇の向うから一機のACが姿を現した。死神の鎌のように長いライフルを
持ち、青に光る機影は冥界からの使者のように映る。誰もそのACを知るもの
はない。それを見たものは最期を迎えると言われる、かつてナイトメアと呼ば
れたACだった。
「のび太くん。戦闘は終わった。君の力量だが、見せてもらったよ。もしかし
たら君とは再び会うことがあるかもしれぬ。もしくは二度とないかもしれぬ。
どのみち君の名は心にとどめ置くことにしよう」

 それだけを言うと青いACは再び闇の中に消えていった。のび太は幽霊でも
見たかのようなおぞ気に襲われた。スネ夫の通信が再び入ってくるまでその機
影が目から離れなかった。

「パイロットは衝撃で気を失っているかもしれないが、死んではいない。ぼく
らは勝ったのだ。これは我々ホネカワ・エレクトロニクス全体の勝利だ!」

 管制室では再び歓呼の声が響きわたる。『ホネカワ万歳、ホネカワ万歳』が
連呼された。だがひとりのび太は困惑と動揺の中に身をおいていた。喜ぶべき
かそれとも……どうするべきなのか。少なくとも喜んでいいことではない、と
のび太は思った。ドーム天井にぽっかりと空いた穴から夜空の星が見える。今
宵も静かに夜が更けてゆくようだ。すべてが終わりを遂げたいま、のび太の心
に残ったのはそこはかとない空虚さだった。
297第一部(?)完です。:04/11/05 21:23:52
「おはよう、のび太くん。もう十時だよ」
 例によってその朝ものび太はドラえもんに揺り動かされて目覚めた。
「ええ、十時? 遅刻だ! どうして起こしてくれなかった……のってまだ春
休みか。ひどいなあ、もう少し寝かせてくれればいいのに」
「さっき連絡があって、出発の時間が迫ってるらしいんだ。それで」
 のび太は寝ぼけ眼まま起きだしベッドに腰をかけ直した。
「のび太くん、今日でここともお別れだね。何か思い残したことはない?」
「ん……案外あっという間だったような気がする。それなりに楽しかったけど」
「出発の準備はぼくがしておいたよ。あとはここを出るだけさ」
「このベッドの寝心地最高だったな〜。ベッドだけでもいいからお土産にもら
えたらいいのに……」
 のび太はルームサービスに出されたサンドイッチを口に詰め込むと、荷物を
持って部屋を後にした。
「のび太くん、そんなに急がなくてもいいのに」
「考えてみればぼくたちただで泊まってたんだよ。出発日くらいさっさと出て
ってあげないと。ところで、ドラミちゃんはどうしたの」
「昨日のうちに帰っちゃったよ。未来じゃやりくりが大変なんだ。まあ、君が
がんばって未来を変えてくれれば別に問題はないんだけど」
「分かりましたよ、勉強に励めばいいんでしょ」
 ドラえもんの言葉を軽く流しながらのび太はロビーに降りていった。玄関前
には送迎の社員や何人かの関係者の中にスネ夫の姿もあった。
298名無し物書き@推敲中?:04/11/05 21:26:39
「おはよう、のび太くん。昨夜はよく眠れたかい」
 今日も式典か何かあるのか、スネ夫はしゃれたモーニングを着込んでいた。
「やあ、それなりにね。でも遅くまで考え事とかしてたから寝坊しちゃったけど」
「まあ、それはそれとして。君とは実に楽しい二週間を送れたよ。昨日の問題
も君のおかげで最低限の損害ですんだことだし」
「いやあ、こんないいところに泊めてもらった上、いたせり尽くせりでほんと
お礼のいいようがないよ」
「ところで君には……この研修を終えてから我が社で働くかどうか決めてもら
うと言っていたと思うが、率直のところどう? いま心境は」
「うん、それなんだけど。いまのところ全くその気はないんだ。いろいろお世
話になったのにこういうのも何だけど」
 それはドラえもんが思わずうなってしまうほどそっけない返答だった。
「そうか。まあ、君がそう言うなら仕方ない。実はぼくらの方もね、ホーク社
とのあいだでちょっとしたいざこざがあってね。そのことで現在係争中だから
悪いけどそれどころじゃないんだ。君のその申し出にはむしろ感謝するよ」
「こちとらお互いさまさ」
「それじゃ、君にはさっそくここから出ていってもらうことにしようか。我が
社に長いこと無用なものを置いておくわけにはいかないからね。早々の退出を
願おう」
「ちぇっ、相手の出方でころころ態度を変えるとこは変わってないな。ドラえ
もん、行こうぜ」
「う、うん。それじゃスネ夫くん。この度はすばらしいもてなしと格別の取り
はからいに深く感謝いたします。今後とも長くよき友人関係でありたく存じ上
げます。ゴニョゴニョ(スネ夫の耳もとで『アリーナのこともぜひご配慮お願
いします。のび太くんたら、いまはこんなこと言ってけど、気変わりしやすい
人ですから……』)」
「ふふふ、相変わらずドラえもんは現実的だなあ。ほんと、のび太なんかより
ぼくのところに来てくれたらって思うよ。あっ、これ独り言ね」
「あばよう、スネ夫」
 ぞんざいに手を振るとのび太は外へ出ていった。
299名無し物書き@推敲中?:04/11/05 21:28:47
 外には例の高級車とその側にうやうやしい態度で人事課の皮田が待っていた。
「あれはこの前、家に来た人だ。同じ人が送迎してくれるんだね」
 のび太たちが近づいてくると皮田は丁寧にお辞儀をしてあいさつをした。
「おはようございます。野比さま、昨日の件は本当にお疲れさまでした。話に
よると社運がかかっていたとかなんとか……。本日であなたさまとお別れです
が、いやはやお名残りおしいですね」
「いえいえ、こちらこそ家まで届けてくださるんですから。ありがたいです」
「おや、野比さま。見ないうちにずいぶんとたくましくなられましたねえ」
「えっ、そう見える」
「なんか一回り大きくなってるような気がしますよ。男らしくなったというか」
「へえ……(静香ちゃんに会っても同じようなこと言われるんだろうか)」
「あれ、どういたしました?」
「あっ、いえ。こっちのことなんで……さあ、ドラえもん乗り込むよ!」
「へいへい」

 二人は後部座席から次第に遠ざかってゆく白亜の城、ホネカワ・エレクトロ
ニクス社を見送っていた。昨夜の激闘が行われたドームの天井はまだ穴がぽっ
かりと空いたままだった。
「ホネカワ・エレクトスが段々小さくなっていくね」
「だからホネカワ・エレクトロスだって……。あれ? ぼくまで分からなくなっ
ちゃったじゃないか」
「家まで二、三時間か……漫画でも持ってりゃよかったな」
「のび太くん、やだなあ。忘れたの? 家には直接戻らないよ。病院寄ってく
んだから」
「ああっ、そうだ。ランドルフさんの見舞いに行かないといけないんだ。それ
と……」
「うん……ジャイアンだ」
300名無し物書き@推敲中?:04/11/05 21:31:02
 病院は会社から二十分ほど車で行った場所にあった。そこは大きな総合病院
だった。車は入り口前の通りに停車した。
「それじゃ、できるだけ早く戻ってきますから」
「どうぞ、こちらのことはお気になさらずいってらっしゃい。帰りの際は連絡
していただければ同じ場所にまいりますので」
 二人は入り口に入ると、受付でランドルフとジャイアンの病室を聞いた。そ
のまま足早に階段を昇っていく。
「まずはランドルフさんからだ。5の15、5の15と」
「エレベーターがあるのになんで階段なの〜」
 後ろから大儀そうにドラえもんがついてくる。

 五階まで上がるとのび太はその階の見取り図を丹念にながめた。
「迷路みたいだな。15号室は……あっちだ!」
 二人が廊下を歩いているとどこからともなく音楽が聞こえてくる。病院のB
GMとも違うようだ。
「何か大きな音楽が聞こえる……15号室の方からだね」
「なんか嫌な予感がするな」
 看護士たちとすれ違い様に彼女らが奇妙なことを話しているのを耳にした。
「あの外人どうにかなんないのかしらね。朝からガンガン音楽鳴らしっぱなし
よ」
「それだけでなく態度もでかいのよ。病院食もほとんど箸つけないしさ。とい
うか箸使えないみたいだけど」
301名無し物書き@推敲中?:04/11/05 21:34:10
 ランドルフの割り当てられたのは個室だった。始めから個室だったのか、わ
けあって移されたのかはさだかでないが、ともかくドアがしまっているにもか
かわらずロックの音楽が大音量で外にもれ出している。のび太とドラえもんは
ドアの前までくるとすっかり怖じ気付いてしまっていた。
「あ、開けようか。ドラえもん、お先にどうぞ」
「そんな遠慮せずに。のび太くんこそどうぞ」
 二人が譲り合っているうちに、ドアの向こう側にヌッと人影が現れた。二人
がそれに気づかないでいると、勢いよくドアが開け放たれる。
「うわあああ」
 ドラえもんが仰天して床に尻をついた。
「ん、なんだお前たしか……なんだっけ。ドラボーイか?」
「ランドルフさん。お見舞いに来ました!」
「お、おおのび太ボーイか。よく来たな」
「昨日は大変お世話になりました!」
「部屋ん中で待っててくれ。ちょっくら小用に行ってくる」

 のび太とドラえもんが部屋に入ると、ラジカセの大音量がまず目についた。
ドラえもんが飛んでいっていまいましそうにスイッチを切る。辺りを見渡すと
化粧品や雑誌類などの生活用品がいたるところに雑然とちらばっている。
「ランドルフのやつ、病室をまるで自分の部屋みたいにして……これじゃ看護
士さんの評判が悪いのも無理もないか」
「それよりランドルフさん、早く戻ってこないかな〜」
「あれ? のび太くん。ずいぶんと意気込んでない? なにかあったの」
「べ、別になにも……」
302名無し物書き@推敲中?:04/11/05 21:37:30
「おう、待たせたな」
 しばらくしてランドルフが戻ってくる。がたいの大きさに不似合いなパジャ
マ姿をしているのがどこか微笑ましく見える。ランドルフがベッドにどかっと
腰を下ろすとのび太がうかがうように言った。
「……ケガの方は大丈夫ですか」
「はは、あまり大丈夫ともいえん。なにせろっ骨が折れてたからな」
「骨折してたんですか?!」
「この程度なんてことない。医者には全治二週間と言われたけどな。そんなこ
とよりのび太ボーイ……何か面白いものでも持ってきたかな?」
「あっ、もしかして見舞い品のことですか?」
「当然だろ、ここはただでさえ退屈なんだ。暇つぶしになりそうなものや、ま
あ食べ物でもいいんだが。持ってきてないのか?」
「ごめんなさい、帰りに最初に寄ったところなんで買うのを忘れちゃって……」
「そうか。まあ、いいさ。来てくれただけでもありがたい」

 三人のあいだでしばらくとりとめのない世話話が続いた。のび太としては昨
日ランドルフが言った件が気になっていて、なんとかそのことをランドルフか
ら聞き出したいと考えていた。
「ランドルフさん、ところで昨日の話、覚えてますか?」
「昨日の話? なんだっけ」
「ぼくがジャイアンに勝ったらどうのこうのっていう話なんですけど……」
「ん、そんな話したっけか?」
「しましたよ! ジャイアンに勝ったらぼくを弟子にしてくれるって……」
「あ、あれね。……すまん、忘れてくれ。あれはウソだ」
「えー! そんな〜」
 のび太はがっくりと肩を落としてうなだれた。 
「だいたい現役選手のオレが弟子なんかとるわけないだろが、バカたれ」
「ひどいな。ランドルフさん、ぼく本気にしてたのに……」
「悪かったよ。あれは何と言うか、場の勢いってやつで。オレも反省している。
で……おわびと言ってはなんだが、これをお前にやる」
 ランドルフはポケットから封筒を一枚取り出すとのび太に手渡した。
303名無し物書き@推敲中?:04/11/05 21:40:08
「これは……」
「とにかく中を開けてみな」
 のび太が封筒の中身を開けたところ、何かのチケットが二枚だけ入っていた。
「こ、これは年末に開催されるACグランプリファイナルの入場券!」
「どうだね、のび太ボーイ。その程度じゃまだご不満かな」
「まさかとんでもない! アリーナ観戦なんてぼくらじゃとても手が届かない
シロものです。あ、ありがとうございます!」
「だから今度見舞いに来るときはちゃんと粗品を持ってこいよ」
「ところで、ランドルフさんもこれに出場するんですよね!」
「たりめーだろ。なんのための世界ランカーよ。その日に合わせてすでに調整
中さ」
「わ〜、年末が楽しみだなあ〜」
 ドラえもんがチケットをさっきからじろじろとながめている。
「えーと、二枚あるということはのび太くんとあとひとり、つまり……」
 親し気にランドルフがドラえもんの頭にひじを乗せてきた。
「ドラボーイのに決まってるだろう。それとものび太ボーイには彼女でもいた
のか」
「いえいえ、いませんよ! のび太くんに彼女がいるわけないじゃないですか。
このもう一枚はぼくがありがたく頂戴します!」
 のび太が不機嫌そうに横から口を出した。
「ドラえもん! そんな言い方はないだろ!」
「ごめんごめん、ぼくもうれしくてさ」
 ランドルフはふと窓に目をやった。五階からは遠くまで町が見渡せ、それな
りにいいながめだった。でも、同じ風景ばかりを見ていてはいずれ飽きてしま
うだろう。

「さて……と。渡すもの渡したところで、お前らも用がないならさっさと帰ん
な。退屈な入院生活とはいえ、部屋の中をあんまりガキどもにうろちょろされ
るとうっとうしくてかなわん」
304名無し物書き@推敲中?:04/11/05 21:43:06
 それまでうやうやしい態度だったドラえもんの表情が一転する。
「な……いきなり帰れとは」
「ランドルフさん……ぼくたちがいるとお邪魔ですか?」
「というかよ、お前らにゃ、まだ行くところがあるだろう?」
「ランドルフさん……」それを聞いたのび太は即座にその意味を理解した。「
は、はい。それじゃぼくたち行きます、お体をお大事に。チケットありがとう
ございました!」
 のび太はペコリと頭を下げるとぐずつくドラえもんを引っぱるようにして部
屋を出ていった。ドアがパタンと閉められると、ランドルフは身体をゆっくり
と伸ばして大きなあくびをひとつした。
『やれやれ、帰ったか。……次に会うとしたらアリーナになるな。坊っちゃん
に新しいACを用意してもらわんと。ん……まてよ、もしかしてあのローズヘッ
ドがオレの?』
 しばらくして515号室から再び大音量の音楽が響きわたってきた。

「なんか納得いかないな。まるで追い出されたようだ」
 廊下を歩きながらドラえもんが不満を口にした。
「ランドルフさんもジャイアンがここに入院していることを知ってたんだね」
「次は……ジャイアンか。なにも起こらなければいいけど」
 ドラえもんがつぶやくように言った。

 二人はジャイアンの入院している個室の前にやってきた。ドラえもんが軽く
ドアをノックする。だが返答がない。そこでドアを静かに開けてみた。ドアの
すき間からベッドが半分だけ見えた。そして反対側に顔を向けて横になるジャ
イアンの上半身が見える。

「……誰だ」
 声の主はジャイアンだった。それは元気のない、しおれたような声だったが
それでも重く凄みが利いていた。二人の気配に気づいて向うから声をかけてき
たのだ。
「ぼくだよ、ドラえもんだよ。お見舞いに来たんだ。のび太くんもきてるよ」
305名無し物書き@推敲中?:04/11/05 21:48:22
「帰れ。話すことはなにもない」
 ジャイアンは肩をわずかにゆするとか細く小さな声で言った。
「まあ、そう言わずに……」
 ずうずうしくドラえもんが中に入ってゆく。のび太も仕方ないとばかりにあ
とに続いた。
「ごめんね、見舞いの品もないんだけど……」
「何もいらん。とっとと帰れ」
「ジャイアン。背中の手術したんだね。きれいさっぱり取れてるよ。これで一
件落着だ」

「帰れったら。お前たちがいるとムカムカするんだ」
 背中を向けたままジャイアンが抑揚のない声で言った。のび太が横合いから
ささやくようにドラえもんに言った。
「ドラえもん、あまりジャイアンを刺激させちゃダメだ」
「のび太。わかってるなら帰れ。いまオレは誰とも口を聞きたくはない」

 それを聞くと、のび太はジャイアンのベッドのすぐ前にあえて歩み出た。
「でもジャイアン。ぼくがここへ来たのには、君にどうしても聞きたいことが
ひとつあるからなんだ。君は昨日、自爆装置を押そうとしてたけど、もしあの
狙撃がなかったらいったいどうしてたの? もう終わってしまったことだから、
君がどう答えようとかまわない。でもこれだけはちゃんと答えてほしい」

「…………」

 ジャイアンはそれきり一言も話さなかった。のび太はイスに腰かけて長いこ
とその場に居合わせた。だがいつまでたってもジャイアンからの返答はない。
でも決して眠っているわけではないとのび太は知っていた。
306名無し物書き@推敲中?:04/11/05 21:50:44
 ジャイアンはそれきり一言も話さなかった。のび太はイスに腰かけて長いこ
とその場に居合わせた。だがいつまでたってもジャイアンからの返答はない。
でも決して眠っているわけではないとのび太は知っていた。
「のび太くん、もうそろそろ戻った方がいいんじゃない。運転手の人に悪いよ」
 外の休憩所にいたドラえもんが戻ってきた。あれから一時間はたったかもし
れない。のび太は時計を見て、ゆっくりと立ち上がる。
「うん、分かった。……ジャイアン、ぼくらは帰ることにするよ。いまのこと
だけど忘れてしまっても構わない。君にとって大切なのは、昨日までの悪夢を
いち早く忘れてしまうことなんだから」

 病室を出ようとドアノブに手をかけたとき、呼び止めるようにジャイアンの
重々しい声が聞こえた。
「のび太、待て」

 のび太が黙ったまま振り向く。ジャイアンは相変わらず窓側を向いたままだ
った。
「さっきの問いのことだが……答えてやる。オレは押していたよ。起爆のスイッ
チをな。ただそれだけだ」

「……答えてくれてありがとう、ジャイアン。ぼくは、君が早く回復すること
を願ってる」
 ドアを静かに閉めて外にでるのび太。そこでため息をひとつもらす。なにか、
自分を拘束していた義務から開放されたような気分がした。

「結局、心の闇は閉ざされたままか」
 帰りの廊下でドラえもんがつぶやいた。
「ぼくらの力じゃどうにかならないんだろうか……」
「ダメだろうね。奇跡でも待つしかないよ」
307名無し物書き@推敲中?:04/11/05 21:53:03


 ふと廊下の先のナースステーションの方からなにか聞こえてくる。数人の医
師や看護士が誰かを必死に制止しようとしているようだった。
「いったい何があったんだろう」
「ランドルフのやつが暴れてるのかな……」
「まさか」

「そんなものを病院内に持ち込まないでください!」
 看護士のひとりが声を上げる。
「警察を呼びますよ!」

 数人がかりで取り押さえようとしているのか人だかりが向う側に見えてきた。
しかし、ものすごい腕力によって医師たちは弾き飛ばされてしまう。彼らの制
止も意に介さず問題の人物はこちらに肩を怒らせながら突進してきた。ドラえ
もんは身の危険を感じた。
「ちょ、ちょっと。あの危ない人こっちに来るよ。のび太くんとりあえずここ
から避難しよう」
「待って、あの人は……」
 ノシノシと床を踏みしめてその人物は向ってきた。かっぽう着の姿そのまま
に、お使いカゴを片手に持ち、しかも中身は大根の代わりに金属バットが入っ
ていた。
「あれは……ジャイアンの……ママだ!」
「そういえば何年も家に帰ってないっていってたね。とうとう居場所を突き止
めたんだ」

 ジャイアンの母親はのび太たちが目に入らないのか、まっすぐにジャイアン
の病室へ向って歩いていった。のび太には直感的に分かっていた。この先、恐
ろしい修羅場が待っていることを。
308名無し物書き@推敲中?:04/11/05 21:55:18
 母親がドアを勢いよく開け放って中へ入っていく様は、導火線の火花がダイ
ナマイトに到達する瞬間に似ていた。のび太たちは思わず耳をふさぐ。
『タケシー!! あんた何やってんの!』
『そ、その声は母ちゃん!』
「あんた、あたしや他の人様にどんなに迷惑をかけたと思ってるの! 何年も
家を出たまま連絡もしないで!』
『ひいぃ! 母ちゃん勘弁!』

 その後のてん末はよく知られる通りである。ひたすら泣きわめいて許しを請
うジャイアンとバットを振り回し荒れ狂う母親。誰も二人のあいだに入って止
めようという者はなかった。母親の怒りが完全におさまるまで、それは自然の
猛威よろしくなすすべがないのだ。


 しばらくして嵐のようだったその病室がしんと静まり返った。のび太とドラ
えもんはうずくまったまま耳を覆って耐えていたが、そのうち病室が静かになっ
ているのに気づいた。おそるおそるドアの方に近づく二人。顔を半分だけドア
から出して中の様子をうかがうことにした。

「腹を痛めて産んだ身体をこんなにして……」
 母親のつぶやく声が聞こえる。
「ごめんよ、ごめんよ母ちゃん。もうしないから、絶対にもうしないから」
 ジャイアンは母親のお腹に顔を投げ出して泣きべそをかいていた。
「もうこんなことすんじゃないよ。あたしゃ、あんたを許さないからね」
「しねえよ。母ちゃんもう二度と……だから」
 母親はそっと息子の頭をさするようになでた。
「本当はあんたがいなくてさびしかったんだよ。ひと月に一度でもいいから連
絡ぐらいよこしなよ」
「ごめんよ母ちゃん、ごめんよ……」
309名無し物書き@推敲中?:04/11/05 21:58:28
「そうさ、ジャイアンだってひとりじゃないんだ。ひとりじゃないんだよ」
 ドラえもんの目は涙でうるんでいた。
「うん、どうやら……ぼくらの助けは必要なかったみたいだね。二人をそっと
しておいてあげよう。行こう、ドラえもん」
 二人は病室をあとにして歩き始めた。ドラえもんが一度だけ病室を振り返る。
「これを機に立ち直ってくれるよいいね」
「大丈夫さ、きっと。だってジャイアンは、本当はいいやつだもん」


「なんか、あの二人を見てたら早く家に帰りたくなっちゃったよ。ホームシッ
クかな?」
 エレベーターの中で、のび太は窓ガラスの外の風景に目をやりながら言った。
「そうだろうね、なにしろ二週間ぶりだもの。ママもきっとぼくらの帰りを待
ちわびてるよ」
「そういわれるとママの料理が恋しくなってきたな〜。……あ、そうだ。ドラえもん」
「ん? なに、のび太くん」
「ザンダクロスの整備なんだけど、家に帰ったらぼくが自分でしようと思うんだ」
「え? いつもドラミに任せっぱなしなのに。珍しい」
「ぼくのせいでずいぶんダメージを受けちゃったからね。労をねぎらってあげないと」
「のび太くん……」
 やがてエレベーターは静かに停止した。一階に到着したのだ。
「じゃあ、のび太くん。帰ろう、わが家へ」
「よーし、行くぞ!」
 エレベータが開くと同時に一斉に駆け出すのび太とドラえもん。二人の前に
はまだ多くの困難が待ち受けているだろう。でも夢を持ち続けていれば、いつ
かはかなうに違いない。のび太はそう信じていた。
 二度にわたるジャイアンとの命をかけた戦いを通じて、のび太はACへの思
いをさらに強くした。夢のアリーナチャンピオンへの道筋はまだ始まったばか
りである。
310名無し物書き@推敲中?:04/11/08 11:08:11
乙〜
おもしろいね続きが気になるし

どうでもいいが漏れはランバージャックが好きだな
まぁ出してくれって要望でもなきゃ本当に関係ないことなんだけどな
311名無し物書き@推敲中?:04/11/09 00:51:46
感想ありがとうございます。続編はまだ未定ですが、いままでのが何ぶんレイ
ブン色ゼロなので、傭兵や裏切りといった要素を取り入れた、本来のアーマー
ドコアっぽいのにしたいです。
ゲーム中の人物もできれば出していきたいですね。適当にオリキャラ作りまく
るとあとになって収拾つかなくなりそうなんで・・・
312名無し物書き@推敲中?:04/11/09 00:56:07
↑は151の作者です。
313名無し物書き@推敲中?:04/11/09 14:15:11
出来すぎマダー
314名無し物書き@推敲中?:04/11/19 02:14:44
アン
315名無し物書き@推敲中?:04/12/08 14:41:36
「のび太君、わかっていると思うけど、今回の仕事はお世辞にもきれい
とはいえない仕事だ。
今までこなしてきた、製品テスト系の依頼とか、アリーナでの試合とか
とは比べ物にならないくらい危険なんだ。
その手を汚すことを怖れて躊躇していたら自分が死ぬんだぞ。
少しでもおかしなことがあったり、危険を感じたりしたら、無理しない
ですぐ依頼を放棄してくれよ。」

「わかってるよ、ドラえもん」

のび太と呼ばれた少年はアーマード・コア‐ACと呼ばれる‐のコックピ
ットの中で自分のACをチェックしながら適当に答えた。
ディスプレイに表示された相手、ドラえもんは心底心配そうな表情をし
ている。
316ageてしまった:04/12/08 14:48:49
一通りシステムの最終チェックを終わらせたあと、のび太はドラえもん
にむかって言った。
「大丈夫だよドラえもん。
僕もいい加減ACの操作にも慣れてきたし、そろそろこのぐらいの依頼こ
なさないと、お金もたまらないよ」
ドラえもんは大きくため息をつくと、とにかく自分の命を一番大切にし
てくれよ、とだけ言った。
「レイヴン、そろそろ作戦開始時間です」
唐突に通信が入り、無感情なオペレーターの声がコックピットに響いた。
「了解」
同様に無機質に答えるのび太の声は、レイヴンと呼ばれる傭兵たちの、
まさにそれであった。
317名無し物書き@推敲中?:04/12/08 15:04:08
無機質な砂漠地帯、クレスト社領D1地区。そこにある巨大なクレスト社
兵器開発施設。
今回の依頼の目的は、その施設の周りに仕掛けられた対空高射砲全ての
破壊である。
レイヴンへの依頼としては一番わかりやすい仕事だ。
あらかじめ入手した資料のおかげで、高射砲の具体的な位置まではわか
らないにしろ、大体の数はわかっていた。
その数15。
のび太の駆るAC、通称ブルーキャットは右腕に長距離戦用スナイパーラ
イフルが装備されている。
その弾数60。
一つの高射砲に3発の弾丸を使ってもお釣りが来る。
318名無し物書き@推敲中?:04/12/08 15:06:23
当然、ブルーキャットにはそれ以外の兵装も装備されている。
スナイパーライフルの弾切れ時の補助兵器として、小型マシンガンがコ
ア右ハンガーに、予想外の接近戦対策として左腕には軽量ながらも、十
分な攻撃力を持ったレーザーブレードが、そしてコア左肩部には中距離
用マルチミサイルが装備されていた。
それらに加え、右肩には長距離レーダー、コアにはオーバーブースト、
のび太のブルーキャットは、ありとあらゆる状況に対応できるオール
マイティータイプであった。

「作戦領域に到着。ACを所定の位置に投下します。
投下後は、速やかに作戦行動に移ってください」
オペレーターの声の直後に、ブルーキャットが投下されたのがわかる。
輸送機から地表に到達するまでの間に、のび太はメインシステムを起動
させた。
319315:04/12/08 20:15:23
先人が今まで書いてきたのとまったく違う方向で書き始めてしまった
不評だったらここでやめます
320名無し物書き@推敲中?:04/12/08 20:18:24
別に自由に書いていい気がする

まぁこれは希望だが名前とか変えて見やすくしてくれるとうれしい
321315:04/12/09 07:19:47
「メインシステム、戦闘モード起動します」
無機質なその音声が鳴るのと、ブルーキャットが着地するのはほぼ同時であった。
着地の瞬間、砂塵が舞い上がり、ディスプレイに僅かながらノイズが入る。
着地による異常が無いことを確認すると、のび太はすぐにレーダーの表示をに
らんだ。最も近い高射砲は…。
「のび太君!3時の方向だ。その距離2000!」
のび太が見つける前に、耳元からおせっかいな声が聞こえた。
「わかってるよドラえもん!」
叫ぶと同時に、ブルーキャットのブーストを吹かし、フル加速させる。
ぐんぐん高射砲との距離が縮まり、メインディスプレイのせまいガンサイトの
中にロックオンを示す赤い丸が表示される。
条件付けされた一連の動作でトリガーを引く。
ライフルのリロード時間も考慮に入れ、テンポよく二回。
通常のライフルでは考えられない距離をものともせず飛んでいく弾丸は、唸る
ような轟音を響かせながら目標に向かっていった。
その直後、メインディスプレイに「Hit」続いて「Destroy」の表示。
322315:04/12/09 07:22:55
しかし、喜んでもいられない。今回の作戦には、制限時間がある。
与えられた時間は決して十分とは言えず、すぐに次の目標を探さなければなら
なかった。依頼を受けた時点で、のび太は「プロ」でなければならないのだ。
「今度は4時の方向!距離は1500だ!」
ドラえもんの怒鳴り声が聞こえる。うっとうしいとも思うが、こういうときは
頼りになる。もう、後戻りはできないのだ。レイヴンとして生きていくと決め
たあの日から。
「サンキュー、ドラえもん」、そうつぶやいてのび太はさらにブルーキャット
を加速させていく。

「これで7つ目だ!見たかいドラえもん!」
「気を抜くなのび太君!ついにクレスト社の防衛部隊が出てきたぞ!」
見るとレーダーに新たな熱源が7つほど新しく表示されていた。
「敵部隊の増援を確認。
時間がありません、目標の破壊を最優先させてください」
323315:04/12/09 21:28:12
オペレーターの指示は、いつだって冷徹で残酷だ。
敵部隊は戦闘用ヘリコプターによる編隊で、すでに何発かミサイルを発射して
きていた。一応ブルーキャットのコアには対ミサイル用装備が備わっているの
で今のところ何とかなってはいるが、いつまでももつものではない。
「邪魔ばっかりするんだから!」
軽く舌打ちをして、それでものび太は高射砲にむかって行かなければならない。
フルブースト状態から、オーバーブーストを発動。
今までそこにあった風景が、一瞬で後方に吹き飛んでいく。のび太は暴力的な
加速に耐えながらも、ブルーキャットを軽く旋回させつつ、目標との距離を一
気につめた。目標が完全に視認できる距離までつめてオーバーブーストオフ。
ブルーキャットはすぐには失速せず、慣性に従って飛んでいく。そして速度が
ある程度落ちてきたところで、のび太は左腕武器のレーザーブレードを発動。
プログラムにしたがってブルーキャットは攻撃目標を自動で設定。完全オート
でブーストを吹かし最適な距離まで加速していく。
324315:04/12/09 21:31:09
ブーストが砂塵を巻き上げ、その砂塵を巻き込みながらブルーキャットは目標
と接触する。その直後ブルーキャットはプログラムどおりの動作で左腕を振り
上げた。収束されたレーザーブレードが深々と袈裟懸けに打ち込まれ鋼鉄の高
射砲を焼ききっていく。けれど目標は完全には沈黙せず、のび太はもう一度レ
ーザーブレードを叩き込む。
「Destroy」
のび太はすぐに、バックステップで後退し、武器モードをライフルからミサイ
ルに変更。ガンサイト内に上空のヘリコプター部隊をとらえ、ロックオン。同
時にトリガーを引いてマルチミサイル発射。急に発射されたミサイルにヘリコ
プター部隊は反応できず、難なく全弾命中。
けれど、所詮は威嚇のつもりで撃ったミサイルだ。のび太はミサイル発射と同
時に次の高射砲に向かって加速していた。
「ドラえもん、次の目標はどこ!?」
325315:04/12/10 07:02:06
「目標はあと1つだ!頑張れのび太君!」
制限時間にもなんとか余裕がある、ドラえもんは、「さすがだ」と思いながら
も、何故だか沸き起こるいやな予感に、不安を感じていた。
のび太は最後の高射砲をレーダーで確認すると、ブルーキャットを飛翔させ、
砂丘の頂に着地させた。高射砲はスナイパーライフルの射程圏内ぎりぎり。落
ち着いた動作でガンサイト内にとらえ、ロックオンを待つ。ロックオンまで一
秒とかからない。その一瞬に一呼吸をおき、いつもどおりの動作でトリガーを
引く、はずだった。
トリガーにかけた指に力を入れようとしたその瞬間、けたたましい警告音とと
もに、ディスプレイ上にミサイル接近の表示が現れた。
「いつのまに!?」
護衛部隊は全滅させたはずだ。のび太はもう一度レーダーの表示を確認した。
そこには急速に接近してくる多数のミサイルの表示と、その先には
「まさか、AC!?」
「のび太君!そいつはランカーACだ!逃げるんだよ!」
326315:04/12/10 07:05:29
ドラえもんの怒鳴り声が響いた。けれど、それに返事をしている余裕はなく、
のび太は接近するミサイルに対してとっさに回避行動をとった。バックステッ
プで砂丘を下り、更にブーストを吹かしてジグザグに後退して距離をとる。ミ
サイルのうちの数発は先の砂丘に突っ込み無効化されたが、残りの数発のほう
は垂直打ち上げ方ミサイルだったらしく、いまだにブルーキャットにむかって
突き進んでくる。
「やばい!」
何発かはくらってしまう覚悟で今度は左方向に平行移動をさせる。ジェネレー
ターの発熱量を気にしながらも、ブーストでフル加速。急速な進行方向の変化
に、のび太をシートに固定しているベルトが食い込むがそんなことにかまって
もいられない。必死で歯を食いしばりながら更にブーストの出力を上げていく
と、さっきまでブルーキャットがいた地点に次々とミサイルが降ってきた。地
面に着弾し、猛烈な爆風を巻き上げる。吹き飛ばされた砂や小石が機体に当た
った音がコックピットにまで響いてきた。
「冗談じゃないよ」
あんなものを食らってしまったらと思うとぞっとする。
327名無し物書き@推敲中?:04/12/10 16:47:29
おおお
すごいがんばってるね
続きが気になるけど焦らないで好きなときに投下してください
328315:04/12/10 20:14:59
>>320
どうもです。とりあえず名前を変えてみました。

>>327
そういってもらえると、励みになります。
ぼちぼち自分のペースで投下していこうと思います。
329315:04/12/10 20:20:45
「ランカーACブレインジャックを確認。時間がありません、かまわず目標の破
壊を最優先してください」
「相変わらず簡単に言うんだから。ちょっとはこっちの身にもなってよ」
さすがにちょっとむっとしたので、軽口をたたいてはみたが、反応はなかった。
けれど、とにかく目標だけを破壊すればいいらしい。残りはどうせ後一つだ。何とかなるかもしれない。そう思ってふと目の前に視線を戻したその時、そこに黒と紫でペイントされた重量二脚型ACが降り立ってきていた。
「今のミサイルを全てかわすとは…。やるな」
強引に回線が開かれ、サブディスプレイにいかにも戦場で多くの仕事をこなし
てきた傭兵の見本とでも言うような、髭面の男の顔が表示された。
「お前はミューラー・ザイン!!何でこんな所に!?」
レイヴン、特にアリーナに名を連ねる者で彼の顔を知らないものはいない。ア
リーナランクの上位クラスの名物ランカーで、数々の挑戦者を打ち砕いてきた
男。年齢的にはもはやベテランの域に達しているとはいえ、いまだにその実力
は衰えず、彼を超えることなくしてアリーナ上位クラスで生きていく事はでき
ないと言われている。
「のび太君か、あまり野暮な詮索は無しにしよう…。楽しませてくれることを
期待している」
男はニヤリと不敵に笑うと、一方的に回線を切った。
330名無し物書き@推敲中?:04/12/10 20:21:02
名前をアルファベットにしては?
のび太→NOBIとか
331315:04/12/10 20:38:45
「何だ、あの傲慢な髭ダルマ。NOBI、あんな奴はこてんぱにしてしまえ!」
自分は何を言われたわけでもないのに、今度は顔を真っ赤にして怒って
いるDORAEMONの顔が表示される。さっきまでは逃げろとか何とか言って
いたくせに、まったくにぎやかなものだ。やれやれと思いながら、NOBI
は冷静に答えた。
「いや、今は目標の破壊が先だよ。DORAEMON、最後の目標はどこにある
の?」
そう答えておきながら、自分でもレーダーを確認する。
「よしっ、見つけたぞ」
視線をメインディスプレイに戻すとブレインジャックがその右腕に装備
したハンドグレネードを構えて急速に接近していた。
「あんなものに当たったら、ただじゃすまない」
NOBIはとっさにサイドステップでブレインジャックの火線から外れるよ
うに行動する。その直後、ブレインジャックのグレネードが火を噴き、
火の玉のような弾丸がさっきまでNOBIがいた地点に着弾した。
332315:04/12/10 20:46:24
>>330
早速そうしてみました。
なんだかマニアックな雰囲気がいっそうかもし出された気がします。

ドラえもん→DORAEMON
のび太→NOBI
出来杉→DEKISUGI
すね夫→SUNE
ジャイアン→GIAIAN
しずか→SIZUKA

こんな感じですか?
333315:04/12/10 21:20:19
グレネードの膨大な熱量が一瞬で膨れ上がり、莫大なエネルギーとなって爆風
を巻き起こす。直撃は避けられたとはいえ、ブルーキャットもその風圧の波に
のまれ、一瞬コントロール不能に陥る。けれどその間にNOBIはオーバーブース
トを発動させていた。コントロールが戻り、機体が安定した次の瞬間、ブルー
キャットは後背部のオーバーブーストバーニアに蓄えられたエネルギーを一気
に放出し、恐ろしいほどの加速度で飛び出していった。
強烈なGに耐えながらも、NOBIは高射砲とブレインジャックの位置を見失って
はいない。急に加速してきたブルーキャットにあわてて照準を合わせなおそう
とするブレインジャックの横をすり抜けて、ただ目標だけを目指す。
砂丘を越えるために、オーバーブースとはオンのまま機体を上昇させ、砂丘を
越えきったところでオーバーブーストを切る。重力に従い自由落下しながらも、
NOBIは高射砲をスナイパーライフルの狭いガンサイトにきっちりと捉えていた。
着地した瞬間にはすでにロックオンも完了している。そのまま間髪いれず、ト
リガーを引く。いつも通り、二回。
『目標、撃破』
334315:04/12/11 14:42:37
「どうだい、あざやかなもんだろ?」
「さすがだねぇ、NOBI君。でもやっこさんまだ納得していないみたいだよ。」
「えぇっ!?」
レーダーを見ると後方からミサイルが接近していた。
「任務完了と言いたいところですが、敵ACが攻撃を続けている限り機体を回収
できません。敵ACを撃破するか、安全な距離まで退避してください」
オペレーターの通信が残酷に響いた。
後方から来るミサイルにはコアの対ミサイルシステムも有効に作動しない。か
といって今から機体を反転させる余裕もない。いくらなんでもレーダーだけを
頼りにミサイル全弾を回避するのは無理がある。
「これはあんまり使いたくなかったんだけどな」
NOBIは両肩インサイドに搭載した対ミサイル用デコイを射出しながら平行移動
をしていった。デコイの撹乱効果によってミサイルは次々と無効化され、デコ
イに突っ込んでいく。けれど、デコイが無効化できるのは所詮ミサイルだけだ。
335315:04/12/11 15:18:22
いやな予感がしてとっさに進行方向を反転させる。その直後、グレネードの火
球が飛んできていた。ほんの紙一重のところをすり抜け、ブルーキャットのま
さに真横に着弾する。
今度の着弾地点は先ほどよりも近かったため、ブルーキャットは爆風に吹き飛
ばされた。
「NOBI君、大丈夫か!?」
爆風による干渉効果のおかげで、DORAEMONからの通信にもノイズが混ざってい
る。NOBIはブルーキャットの姿勢を安定させながら、反転させてブレインジャ
ックを正面に捕らえるのに必死で答えるどころではない。
「おい、返事をしろ!大丈夫なのか?」
ようやく姿勢を安定させて一息をついたところで、かなり切迫した口調の
DORAEMONがまた通信を入れてきた。
「僕のほうは大丈夫。何とか、ね…。でも、こいつは…」
サンドストームがようやくなおったディスプレイの表示をにらむと、かなりの
箇所に軽度の損傷を知らせるイエローランプが点灯していた。
一応作戦行動に支障は無いものの、これ以上の損傷は避けたいところだ。
一方ブレインジャックのほうはブーストを吹かし、NOBIとの距離をつめてきて
いた。
「NOBI!あいつはあの火力を活かせる近距離でやり合うつもりみたいだぞ。
君の火力ではとてもまともなうち合いができるわけがない!
自分の間合いを保つんだ!」
「わかってる!」
336315:04/12/11 15:40:08
すぐに機体を後退させる。さらにブレインジャックを中心に円を描くように移
動し、距離を広げていく。当然、その間も目標をガンサイト内に捕らえている。
そして、相手の僅かな隙をついてトリガーを引く。
弾速ではスナイパーライフルが勝る。そして、このような間合いの取り合いに
おいては機動力がものを言う。巧みな操作とブルーキャットの機動力を活かし
て、NOBIはブレインジャックを翻弄し、着実に損傷を与えていた。
しかし、このまま勝てるかもしれないと思ったまさにその時、ふいにブレイン
ジャックのコア後方に小型の分離式自律攻撃兵器、イクシード・オービットが
射出された。とっさの判断でNOBIはバックステップとサイドステップを交互に
使い、ジグザグに後退させる。その直後、イクシード・オービットが火を吹き
始めた。
マシンガン以上の連射効率で間断なく発射され続ける弾丸。ジグザグに回避行
動をとっても全てをかわしきる事はできず、どうしても直撃を食らってしまう。
モニターには「Damaged」の表示。ライフルで反撃をしてはいるものの、自律
兵器であるイクシード・オービットの攻撃は止まらない。
さらに、ブレインジャックはその合間にグレネードも発射してくる。嵐のよう
に発射される弾丸に、時たま混ざるグレネード。それを回避しても、着弾した
グレネードの爆風に煽られ、ブルーキャットの操作は更に困難になる。
337315:04/12/12 22:55:07
この圧倒的な火力で押し切る戦い方こそ、MULLERが時として「鬼神」とまで呼
ばれ、怖れられる所以なのだ。並のレイヴンではその火力の前に、ろくな抵抗
もできずに蜂の巣にされてしまう。
「このままじゃ、スクラップにされちゃうよ」
ライフルでは正面から撃ち合う事はできないと判断したNOBIはとっさに武器モ
ードをミサイルに変更した。両肩エクステンションの、追加ミサイルのスイッ
チも入れ、ロックオンが完了するのを待つ。グレネードの爆風も避けつつ、ガ
ンサイト内にブレインジャックを捕らえ続ける。
ロックオンを伝える電子音と同時にトリガーを引く。
同時に四発のミサイルを発射するマルチミサイルに、追加ミサイルが四発。
計八発のミサイルがそれぞれ独自の軌道を描いてブレインジャックに向かって
いく。相手がデコイを射出する隙も与えない。
NOBIの放ったミサイルはそれぞれ独自にブレインジャックを認識。オートホー
ミングシステムが作動し、自律して航路を微調整しつつ目標を追い詰めていく。
いくら「鬼神」と呼ばれるレイヴンでも、一度に八方向から迫り来るミサイル
を無傷でかわしきる事は難しいはずだ。
回避しようとするその僅かな瞬間に攻撃に隙ができる。
338315:04/12/12 22:58:39
その隙を狙ってNOBIはブーストダッシュで後退。ディスプレイにミサイルの回
避に専念しているブレインジャックが見える。細かく左右にサイドステップを
繰り返し、重量級のACとは思えない器用さでことごとくミサイルを回避してい
く。
NOBIは距離をとりつつ二射目を発射した。先に放っていたミサイルが爆発し、
爆炎を上げる。爆風は砂と煙を巻き上げ、視界を悪くする。
NOBIにとってはこれが狙いだった。
視界が悪くなっていては、さすがのMULLERでも二射目のミサイルを全て回避す
る事はできないだろう。さらに
「僕にとっては、こっちのほうが使い慣れた得物だからね」
武器モードをライフルに変更。ブルーキャットは下ろしていたスナイパーライ
フルを再度構える。FCSがミサイルモードからライフルモードに変更される僅
かな間にも、のび太はガンサイト内にブレインジャックを捕らえている。
変更が完了した時には、ロックオンも終了していた。
第二波のミサイルがブレインジャックに食らいつこうとしているのが見える。
先の砂煙の中をミサイルが飛び交い、視界は更に悪くなっていく。
こうなると、ディスプレイの情報だけで敵を視認する事は不可能に近い。
けれど、ブルーキャットの認識システムは目標の状況を認識している。
そして、当然FCSも。
339315:04/12/13 01:11:14
ディスプレイに「Hit」の表示が現れたのを見計らって、NOMIはトリガーを引
いた。視認はできないがそこにいる目標に向かって、弾丸は舞い上がった砂塵
と爆炎の中に飛び込んでいく。直接見ることができる状況ならまだしも、この
ような視界が悪くなっている状況で、どこから飛んでくるかわからない弾丸を
かわすことなど不可能だ。
ディスプレイに表示され続ける「Hit」の文字。
NOBIは攻撃の手を休めず、さらに弾丸を撃ち込んでいった。当然、MULLER
もグレネードで反撃してきている。しかし、グレネード程度の弾速であれば、
視認できる距離からでも十分回避することが可能だ。
サイドステップで巧みにグレネードを回避し、更にライフルを撃ち込んでいく。

ミサイルの巻き上げた砂と煙が治まってきたときには、ブレインジャックは黒
煙を上げていた。距離も完全にNOBIの間合い。NOBIが止めと、もう一度ライフ
ルのトリガーを引こうとしたその時
「なんだ、急に後退していくぞ」
ブレインジャックは武器を下ろし、ブーストダッシュで後退をし始め、すぐに
スナイパーライフルの有効射程圏から外れてしまった。
340315:04/12/13 22:15:22
「NOBI君か…。生きていればまたどこか出会うだろう。覚えておくぞ」
それだけ言うと通信を切り、ブレインジャックは戦闘領域から離脱して行って
しまった。
「なんだあいつ。とりあえず、NOBIが無事で良かった」
DORAEMONと回線が繋がり、ようやくいつものDORAEMONの顔が表示された。
「いや、そんなに無事ってわけでもないよ。かなり危なかったし」
緊張が急に解けたせいか、NOBIはコックピットの中でぐったりしていた。
『作戦目標クリア。システム、通常モードに移行します』
作戦モードを終了させ、オペレーターの指示を待つ。
「お疲れ様でした。依頼は無事終了です。これから機体を回収しますので、そ
のまま待機していてください」


「お疲れ様。今回の任務はかなり大変だったみたいだね」
レイヴンズアーク本社に戻り、専用のブリーフィングルームに入ると、
DEKISUGI君が待っていた。彼は、いまや一流のシステムエンジニアになってお
り、レイヴンズアークのシステム管理部門に所属していた。
レイヴンズアークにおける情報全てを管理するシステムの担当である彼にとっ
て、今回の依頼で何が起こったのかを調べる事は造作も無いことだ。
341315:04/12/14 13:46:45
「正直、ランカーACが出てきたときはもうダメかと思ったよ」
「そう、そのランカーACなんだけど、ちょっと厄介なことになっているらしい」
DEKISUGIは持ってきていたノート型端末のディスプレイをNOBIに見せた。
「このメール、君の端末にもオペレーターのほうから送られるとは思うけど、
あのMULLERってレイヴン、クレスト社と専属契約をしていたらしいんだ」
レイヴンと依頼をする者とを仲介する企業、レイヴンズアークでは表向き完全
中立を保つために、その「構成員」であるレイヴンが特定の企業と仲介なしに
契約をすることを禁止している。その「仲介なしの契約」のことを専属契約と
呼んでいるのだが、その専属契約をしていたことがレイヴンズアークに知られ
た場合、レイヴンズアークからの追放、最悪の場合処刑もありうる。
中立であるはずのレイヴンズアークが、自社のレイヴンを差し向けて、専属契
約をしたレイヴンを撃破、抹殺させてしまうのだ。この場合、処刑をしたレイ
ヴンには特別な報酬が支払われる。
「惜しいことをしたな、NOBI君。あと少しで止めをさせたのに」
DORAEMONがひょっこり現れ、コーヒーメーカーでカップにコーヒーを注ぎつつ
言った。
「でも、あの時は必死でそんな余裕無かったよ」
342315:04/12/14 13:52:03
今思い出しただけでもぞっとする、とでも言いたげな様子でNOBIは答えた。
「まぁまぁ、逃がした魚は何とやら、だよ。そんなことより…」
ここでDEKISUGIが急に身を乗り出して、声をひそめた。
「最近のクレスト社の動向はどうも怪しい。今月に入ってクレスト社と専属契
約をしていたレイヴンは今回で三人目だ。ミラージュ社領への侵略作戦も目立
ってきているし、何か裏があるに違いない」
DEKISUGIの深刻そうな顔に、NOBIもDORAEMONもごくりとつばを飲み込んだ。
「まだ詳しい事はわかっていないのだけれど、とにかくクレスト社が何かをた
くらんでいるのは間違いないだろう。もしかすると、NOBI君のほうにも変わっ
た依頼が来る可能性もある。クレスト社からの依頼があったら気をつけてくれ」
「う、うん。わかった」

レイヴンズアークから支給された宿舎の自室に戻り、端末でメールをチェック
すると、専属のオペレーターから、今回の依頼が成功した事、振り込まれる報
酬の金額、MULLERの専属契約の件についてのメールが届いていた。
一通り目を通し、データを消去すると、つかれきっていたNOBIはすぐにベッド
に倒れこみ、眠りに落ちていった。DORAEMONはNOBIが眠ってしまったので特に
することもなく、昔のように押入れに入った。
343315:04/12/14 13:55:37
暗い押入れの中でぼんやりとしていると、NOBIがレイヴンズアークに入社した
ばかりのころを思い出す。
「大破壊」と呼ばれる全世界を巻き込んだ大戦争。その結果「国家」は滅び、
代わって「企業」が世界を支配した。そして、今は己の利潤を求める企業同士
の絶え間ない抗争が続く時代となってしまった。
「大破壊」そして企業間の抗争によって多くの人命が奪われた。NOBI達の周り
でも多くの人が死んだし、行方不明になってしまった人もいる。事実、小学生
時代から仲が良かったSIZUKAちゃんは、いまだに生死も不明だ。
そんな荒廃しきった廃墟で、NOBIとDORAEMONはDEKISUGIに再会した。
DEKISUGIはレイヴンズアークに就職していて新しいレイヴンのリクルートをし
ていたし、NOBIはNOBIで働き口を探していた。そして、NOBIはそれが危険だと
知ったうえで、レイヴンとして生きていくことを決意したのだ。
残された大切な者達を守るため、そしてまだ生きているかもしれないSIZUKAち
ゃんを探すために。そのためなら僕は悪魔にだって命を売り渡す、強い意志を
秘めた目で、NOBIはあのころそう言っていたのだ。
当時はDORAEMONも、NOBIが道を踏み外すのではないかと心配した。けれど、今
では経験も積んで、それなりに腕の立つレイヴンに成長している。確かに危険
な仕事ではあるが、これはこれでよかったのだと、DORAEMONは思っていた。
344315:04/12/14 13:58:26
「今回の依頼についてもう一度確認します」
事務的な口調のオペレーターの通信が入った。NOBIは手元のモニターから顔を
上げてディスプレイに表示されたオペレーターを見る。
「今回の依頼主はミラージュ社。依頼内容はミラージュ社航空基地の防衛。主
に発射された大型ミサイルの撃破です。レイヴンには航空基地で待機してもら
い、ミサイルが接近し次第作戦行動に入ってもらいます。ミサイルを撃破しそ
こない、基地に損害が出た場合は報酬から差し引かれることになっています。
くれぐれも撃破しそこなわないよう気をつけてください。また、ミサイル以外
にも航空機などの戦力が投入される可能性もあります。その場合でも基地の防
衛に徹してください」
「了解」
「では、機体を作戦領域に投下します」
ブルーキャットが輸送機から投下されていく。NOBIはいつも通り、投下中にシ
ステムを起動させた。
『メインシステム、戦闘モード起動します』
着地による異常は無かった。
「NOBI君、ミサイルは全方向から飛来してくる。僕のほうからも指示を出すけ
れど、君もレーダーを確認しておいてくれ」
DORAEMONは相変わらずおせっかいだ。普通のレイヴンならば作戦をサポートし
てくれるのはオペレーターだけで、そこまで指示を出してくれる人はいない。
いつまで子ども扱いなんだとも思うが、やはりDORAEMONはNOBIにとってありが
たい存在だ。
「分かった。頼んだよ」
345315:04/12/14 14:01:35
「大破壊」以降の騒動で、大切な秘密道具のほとんどを失ってはいたが、それ
でもDORAEMONは信頼できる親友であった。
「ミサイル接近中。あと30秒で作戦領域に突入します」
オペレーターの通信に緊張が走る。NOBIはディスプレイ左端のデジタル時計を
睨みつけた。
「ミサイルの進入ルートが大体分かったぞ。まずは7時の方向からだ」
ブルーキャットをそちらの方向に向けておく。FCSは長距離射撃モード。装備
しているスナイパーライフルなら、ミサイルが作戦領域に入った瞬間打ち落と
せる。
「のこり5秒…、大型ミサイル進入します」
次の瞬間レーダーにミサイルを示すマークが点灯。7時の方向より一直線にむ
かってくる。コンマ3秒後にFCSの射程圏内に入り、ロックオン。電子音が鳴
り、NOBIはトリガーを引く。条件付けされたいつもの動作。弾丸はFCSが算出
した接触座標にむかって飛んでいく。吸い込まれるようにミサイルにむかって
直進し、二発の弾丸は猛獣の牙のように目標に突き刺さる。
「Destroy」
レーダーには二つ目のミサイルが表示されている。NOBIはそのミサイルの方向
にブルーキャットを向け、ガンサイト内におさめる。ロックオン。スナイパー
ライフルが火を噴き、また一つ面白みも無い花火が散る。
「NOBI!今度は後からだ!」
とっさにブルーキャットを反転させる。レーダーも確認しつつ、正面に捉える。
裏側に回って飛来してきたミサイルはすでにかなりの距離まで近付いてきてい
た。一直線にブルーキャットにむかってくる。ロックオンまでの時間も待たず
に、NOBIは目測でトリガーを引く。FCSの指令なしに飛んでいった弾丸であっ
たが、確実に目標を捕らえていた。弾丸はまっすぐ目標に食い込み目標破壊。
「どんなもんだい!」
「まだまだくるぞ!今度は右からだ!」
射撃を終えたそのままの姿勢から、機械兵器とは思えない滑らかな動きでター
ン。ターンが決まれば目標はガンサイト内。今回のNOBIは絶好調であった。
346315:04/12/14 15:26:21
「第二波、来ます」
オペレーターの通信にはっとしてレーダーを見ると、一気に三発ものミサイル
が同時に接近していた。まずは一つ目のミサイルを捉えると、ロックオンを待
たずに目測射撃。トリガーを引いたときには撃破を確信していた。すぐさま次
のミサイルが正面に来るように微調整。今度もロックオンまでは待たない。大
体の距離を自分で予測し、ミサイルの通るラインを打ち抜く弾道で弾丸を発射
する。そして最後の三発目、これだけはしっかりとロックオンをする。FCSは
目標までの距離、目標の進行方向と速度、全て計算に入れて理想の火線を決定。
その弾道ラインに乗るように右腕モーターに直接指示。右腕が微調整を行い、
トリガーを引いたときには計算されつくしたラインで弾丸は発射される。
一瞬で目の前に三つの火球が膨れ上がった。
「NOBI油断はするな!第三波も来ているぞ!」
射撃の天才、NOBI。こうなったNOBIは、もう誰にも止められない。最大効率で
ミサイルを打ち落としていく。気がついたときには、飛来してきたミサイルは
ほぼ全滅であった。モニター越しに見ていたDORAEMONとオペレーターは、その
恐ろしいまでの活躍にあっけに取られていた。
「レイヴン、次のミサイルが最後です。最後まで気を抜かないで」
最後の目標が航空基地に向かってまっすぐに突っ込んでくる。NOBIは非常に落
ち着いた動作でミサイルを捉える。認識システムが飛来している熱源を感知し
、FCSにターゲッティングを指示。FCSは認識システムからの情報を演算経路に
入れる。完全自動で目標へのロックオンが完了。狙撃。
一瞬で最後の花火が上がる。
『目標撃破』
NOBIはそのままシステムを通常モードに移行させようとした。しかしその時
「敵部隊増援確認」のアラームがなった。
347315:04/12/14 15:30:11
「所属不明の輸送機を確認。ACです」
オペレーターが淡々と状況を伝える。輸送機は作戦領域付近でACを投下。深紅
にカラーリングされた軽量二脚型ACが大地に降り立ち、頭部メインカメラが不
穏に輝く。
「不明機は基地に向かって攻撃を仕掛けてくる可能性があります。
撃破してください」
そういわれたときにはNOBIは不明ACをロックオンしていた。着地したばかりの
ACに、早速弾丸を撃ち込む。弾丸は一直線に飛び込んでいき、目標にくらい付
く、はずであった。しかし、弾丸が命中する直前で深紅のACが人間業とは思え
ない反射速度でサイドステップ。弾丸は紙一重のところで回避される。
「なんだ!?」
回避したACはそのままオーバーブーストを発動。一気に接近してきた。
「くっ!」
最初の一撃を回避され、NOBIは少し焦っていた。落ち着きを取り戻すためにも
、ブーストダッシュで後退しながら、二発目、三発目の弾丸を撃ち込んでいく。
オーバーブーストで直線的に突っ込んできたACであったが、これもやはり直前
で微妙に旋回し、かわしてしまう。
距離がつまり、深紅のACが右腕に装備したマシンガンが構えられるのが見える。
「!」
危険を感じ、とっさにサイドダッシュに切り替えた刹那、敵のマシンガンが火
を噴き始めた。ACパーツ中最多弾数と連射効率を誇るそのマシンガンの火線は
次第にNOBIを追い詰めていく。しかし、NOBIは取り乱さずオーバーブーストを
発動させていた。
マシンガンの弾丸がブルーキャットを捉えようとした時には、オーバーブース
トでのサイドダッシュでその場を脱出。敵のガンサイトから外れるように一気
に離脱する。
348315:04/12/15 21:55:48
十分離脱した時点で、オーバーブーストをオフ。すぐに旋回してロックオン。
しかし回避された前回の事もある。ブーストダッシュで猛然と接近してくる敵
ACを十分ひきつけてからトリガーを引く。ほとんど近距離で発射した弾丸は、
今度は確かに命中した。しかし、敵ACは怯まない。
「なんて奴だ!」
NOBIはまた緊急回避。コックピット内で激しく揺さぶられるが、歯を食いしば
って耐える。敵ACの弾丸がブルーキャットの真横を通過していく。
「敵ACは機動力を活かして、近距離での戦闘を得意とするタイプだぞ!こちら
も応戦しなければ一瞬で火だるまだ!」
DORAEMONが敵ACを分析してくれるが、何の解決策にもなっていない。とにかく
今は回避に専念するしかないのだ。左右に機体を振り、マシンガンの連射を必
死でかわす。ロックオンが出来れば反撃もするが、こうも激しく動いていては
さすがのNOBIでもガンサイト内に敵を捉え続ける事は難しい。敵ACの猛攻は次
第にNOBIを追い詰めていく。
「しまった!」
焦りがミスを呼び、NOBIは機体反転時にブースト出力の調整を誤ってしまう。
安定を失ったブルーキャットは一瞬失速。操作不能に陥る。その隙を敵は見逃
さず、これでもかと弾丸を撃ち込んできた。
349315:04/12/15 21:59:08
「うわぁ!」
暴風雨のように撃ちつけられた弾丸のショックでメインディスプレイは一瞬ブ
ラックアウト。姿勢制御システムがとっさに弾丸のショックを吸収するように
作動。かろうじて吹き飛ばされるのは避けられたが、更に弾丸は撃ち込まれ続
ける。着弾時の発熱で機体温度が上がり、ラジエーターは緊急冷却モードに移
行。異常な機体温度にジェネレーターの出力がダウン。機体の様々な箇所で
「被弾、損傷増加」のサイン点灯。緊急事態にアラームが鳴り響く。
「NOBI!何やってるんだ!本当に殺されるぞ!」
このままではまずい。とにかくNOBIはもう一度バーニアを点火。全出力を投入
して脱出を図る。必死の抵抗で、かろうじてブルーキャットは敵の火線から退
避することが出来た。しかし、まだ終わりではない。敵は執拗にブルーキャッ
トを捉えようとする。
「これじゃあきりが無い!」
NOBIは状況を打開すべく、武器モードをミサイルに変更。同時にブースト出力
ペダルを一気にMaxまで押し倒す。ブルーキャットは最大加速で後退。一瞬間
合いが開き、そのタイミングを逃さずにマルチミサイル、追加ミサイルを撃ち
込む。
ブレインジャックをも翻弄したミサイルだ。この距離ではろくな回避運動もと
れないだろう。八発のミサイルは一直線に深紅のACめざし飛んでいく。
NOBIが全弾の命中を確信した瞬間、敵のカメラアイが不気味に輝きを増した。
そして、ブルーキャットに向けていたマシンガンを飛来するミサイルに向ける。
そして、射撃。なんと、ロックオン出来ていないはずのマシンガンでミサイル
を撃ち抜いた。一つのミサイルを撃墜したら更に次のミサイルに火線をあわせ
、人間業とは思えないほどの精密射撃で、至近距離まで飛来したミサイルを撃
破していく。NOBIには一瞬何が起こっているのかわからない。敵ACに命中する
ことなく、次々と撃墜されるミサイル。気がついたときには全てのミサイルが
、たった一丁のマシンガンで無効化されていた。
350315:04/12/18 15:13:53
「な、なんて奴だ!」
さらに、敵は撃破したミサイルの爆煙を切り裂くように猛然とブーストダッシュ。
NOBIがまずいと思った瞬間にはブルーキャットの目の前まで接近していた。爛
々と輝くメインカメラに、背筋が凍る。NOBIはとっさにサイドステップ。急激
な加速にコアのフレームが悲鳴を上げる。
接近していたACはかまわず左腕を振り上げる。敵ACの高出力レーザーブレード
が一閃。コアへの直撃は何とか避けたものの、ブレードは右肩エクステンショ
ンを捉えていた。一発でエクステンションが焼き切られ、破壊される。ブルー
キャットは自動で破損部を投棄。同時に左エクステンションもパージさせた。
351315:04/12/18 15:47:51
DORAEMONはモニターで、その名の通り蒼いACと深紅のACとの戦いを見ていた。
明らかに、NOBIが劣勢だ。今回のような近距離戦、それも接近戦では機動力の
高い軽量二脚型ACが有利だ。ブルーキャットのような中量二脚型が無理にその
ペースに合わせようとすると、出力過多でオーバーヒート、最悪自滅という事
もありうる。かといって、間合いを取ろうにも、ここでも機動性がものを言う
のだ。完全な袋小路。NOBIは絶体絶命といえる。
DORAEMONは、必死に戦っている友の姿を見ているだけで、何も出来ない自分の
無力さを呪った。
「NOBI、死なないでくれよ」
その時、NOBIから通信が入った。
「DORAEMON、これじゃきりが無い。仕方が無いからアレをやろう」
「な、何だって?アレをやるのか?アレは君が危険だから封印しようって言っ
た技じゃないか」
「けど、そんな事言ってる場合じゃないだろう?手順はまだ覚えているよね?」
「と、当然だよ。ちょっと待ってろ」
DORAEMONは焦った。まさか、またアレを使うときが来るとは。しかし、NOBIが
やるといっているのだ。やるしかない。DORAEMONは敵ACの行動パターンを目の
前のコンピューターにインプット。独自の統計確率計算ソフトを使って、行動
パターンを統計的に分析したデータを作成させる。
DORAEMON自体がロボットなので、ここまでの手順にそれほど時間はかからない。
352315:04/12/18 15:51:10
「出来たぞ!いまそっちのメインCPUに転送する!」
データを受け取ったNOBIはそこから敵の行動パターンを予測。
「いけぇ!」
一気にブーストペダルを踏み込む。当然、敵ACは急速に接近してきたブルーキ
ャットから回避するようにサイドステップ。しかし、それもNOBIは予想済みだ。
多少機体の向きを補正して、先ほどDORAEMONから転送されたデータを基に、最
適ラインでブルーキャットを突進させる。
衝撃。深紅と蒼の、二機のACが激突する。体当たりをされるなどと思ってもい
なかった敵は一瞬バランスを崩す。安定を失った状態ではブーストも操作でき
ず、深紅のACはブルーキャットの目前で膠着する。
これこそ、NOBIとDORAEMONが新米時代に編み出した独自の作戦なのだ。NOBIの
ブルーキャットなら中量級以上のACとは機動力戦で優位に立てるが、もしそれ
が出来なかった場合、今回のように体当たりを食らわせ、一瞬相手の動きを封
じ込め、そして…
NOBIは間髪いれずブレードを発動。収束されたレーザーの刃が根元から深々と
敵に突き刺さる。もちろんそれで敵が沈黙するわけは無いが、NOBIはブレード
発動と同時にライフルによる零距離射撃を行なっている。もちろんFCSは作動
していないため、実質目測射撃。しかしこの距離ではずすはずも無く、本来な
ら遠距離の敵を捉える弾丸が敵ACの頭部に、コアに、脚部にと食い込んでいく。
353315:04/12/18 18:46:50
敵ACはすぐに姿勢を安定させたが、その時には致命的な損害を与えていた。ブ
ースとダッシュで後退した敵の左脚部の挙動が怪しい。左脚部に食い込んだ弾
丸が、関節の動力パイプを破壊したのだろう。こうなればしめたものだ。相手
の機動力は低下した。
AC同士で肉弾戦をさせる、というこの突拍子も無い作戦、しかし高度な情報分
析技術の必要な作戦は、DORAEMONのような強力なパートナーがいて始めて可能
になる。というのも、相手の行動パターンを分析するという作業は、ACを操作
しながら出来る業ではないし、そもそもそれだけの情報処理ができる人材とい
うのも稀有なのだ。
したがって、NOBI達がこの作戦で高機動型軽量ACを翻弄していた時代、この作
戦を実行できたのはNOBI達だけであった。ただし、コアのフレームがゆがんで
しまう可能性があるので、ブルーキャットのメカニック達からは評判が悪かっ
たが。
「よしっ!うまくやったぞ!」
NOBIは一応自機のフレームに異常が無いかチェックをしたが、これといった
異常は無かった。そして、機動力の落ちた敵ACにさらに追い討ちをかけるべく
ライフルを構えたその時、敵ACから通信が入る。
354315:04/12/18 18:51:06
「その戦い方…もしかしてNOBIさん?」
回線が開かれ、ディスプレイに敵レイヴンが表示される。そこに表示されたの
は、紛れも無くNOBI達がよく知っている顔であった。小学生時代からクラスの
人気者。容姿も良くて、頭もいい、みんなの憧れ的な存在。しかし「大破壊」
以降の騒動で行方が分からなくなっていたはずの…
「SIZUKAちゃん!?」
そこにいるのは紛れもなくSIZUKAちゃんであった。
「どうして、そんなものに!?」
ディスプレイで見ると、SIZUKAにはなにやらヘッドギアのような怪しい機械が
つけられている。そこからのびているコードの類は複雑に絡まって、後のほう
のボードに繋がっているらしい。NOBIはいやな予感がした。
「NOBIさん…、NOBIさんなのね?」
SIZUKAの声には妙に生気がなく、機械がしゃべっているようだ。
「そうだよ、NOBIだよ!でも、SIZUKAちゃんがどうしてそんなものに乗ってい
るんだ?」
「わからない…。ここは気分が悪いわ。助けて、NOBIさん…」
「今助けるからね!…DORAEMON!」
ディスプレイに映っているSIZUKAはかなり気分が悪そうだ。助けるといったも
のの、どうすればいいのかわからないNOBIはDORAEMONに助けを求めた。
355315:04/12/18 18:54:38
「わかってる!もうやってるよ!」
DORAEMONはジャミングシステムを駆使して、深紅のACにハッキングをかけよう
としていた。ACのメインシステムに直接介入し、操作不能の状態にしたうえで
、コックピットを開放しようというのだ。しかし、これはなかなかはかどらな
かった。当然のことだが、AC自体にも対ジャミングシステムが組み込まれてい
る。しかし、ここで手間取っては敵側も現在DORAEMONがハッキングをかけよう
としているのを察知し、妨害される可能性もある。
「せめて、直接システムに接続できれば…」
自身の持てる知識を総動員しながら、DORAEMONはうめいた。
「あとちょっとなのに…」
「DORAEMON…」
ディスプレイに表示されたSIZUKAを見つめる。いつから彼女はこんなものに乗
せられているのだろう。そもそも、ACの操作というのは想像以上に体力を消耗
させる。激しく動き回るたびに発生するGに耐えられるだけの筋力。長時間の
操作を続ける持久力。張り詰めた状況で更に神経を研ぎ澄ませる集中力。NOBI
もまともにレイヴンとしてやっていくための基礎訓練だけで半年以上費やした。
だとすれば、ごく普通の女の子でしかなかったSIZUKAちゃんはいったいどれだ
けのことをさせられたのだろうと思う。妙にやつれた彼女の顔が、そのつらさ
を物語っていた。
356315:04/12/18 18:56:59
「出来たぞ!今からあのACのコックピットを開放する!」
DORAEMONから通信が入る。待っていましたとばかりにNOBIも身構える。しかし、
様子がおかしい。SIZUKAは前以上に苦しそうだ。
「…頭が痛い…、NOBIさん…こないで」
頭を抱えて、狭いコックピットの中でうずくまっている。
そのとき、DORAEMONが操作していたディスプレイに「Error」の文字が表示さ
れ、けたたましくアラームがなった。
「なんだ?何が起こっているんだ?」
完全に機能を停止させたはずの敵ACの機能がどんどん回復していく。DORAEMON
は焦った。そして、ろくな対応も出来ないまま…
「接続が切断された!失敗だ!NOBI君下がれ!」
「なんだって!?」
メインモニターに目を戻すと、機能を回復したACが立ち上がる様が見える。
「SIZUKAちゃん!」
もう一度回線にむかって大声で呼びかける。しかし、反応は無く、強制的に回
線は切断された。
357315:04/12/18 18:58:57
「…作戦は終了です。お疲れ様…」
オペレーターからの通信が入っても、NOBIは放心状態のままであった。
あのあと、SIZUKAを乗せたACは急に後退。NOBIが追いかけるまもなく作戦領域
を離脱してしまったのだった。一応作戦中であったNOBIが作戦領域外まで追跡
できたはずも無く、SIZUKAがどこに行ってしまったのかもわからない。
「…NOBI君、作戦終了だ。機体を回収するから、システムを通常モードに移行
させておくんだ」
DORAEMONからの通信が入っても、NOBIはぼんやりとしたままで、SIZUKAのACが
消えていった方向を見つめていた。
358名無し物書き@推敲中?:04/12/18 19:30:32
おぉ静香ちゃんまで登場だ
なんか続きが気になるな
359名無し物書き@推敲中?:05/01/05 19:10:05
hosyuhosyu
360名無し物書き@推敲中?:05/01/11 22:50:46
保守あげ
361315:05/01/15 15:14:15
ようやく再開できそうです。
>>358,359,360
続きを気にしてくれたり、保守してくれてありがとう
362315:05/01/15 15:18:21
自室にもどったあとも、NOBIは放心状態のままであった。そんなNOBIに
DORAEMONはかける言葉も見つからなかった。それもそうだろう、あれだけ探し
ていたSIZUKAに意外な形であったとはいえ再会できたというのに、結局助ける
事も出来ず、またすぐ行方が分からなくなってしまったのだから。
せめてあのACがどこのもので、どこに行けばいいのかだけでもわかれば…。
いや、どこのACかは大体予想がついている。出撃前にDEKISUGIが言っていたよ
うに、きっとクレスト社のものだろう。しかし、それがわかったところで、結
局どうするのだ。DORAEMONは一人押入れの中で悶々と考えていた。所詮レイヴ
ンであるNOBIでは、依頼が無ければ好き勝手に動き回る事は出来ないのだ。
363315:05/01/15 15:20:24
そのとき、急に押入れのふすまが開いた。そこにいたのはNOBIだった。
「どうした!?」
「DORAEMON、DEKISUGI君からメールが来ていたんだ。ちょっと見てくれ」
差し出されたディスプレイを見てみると、確かにDEKISUGIからのメールだった。
「なになに?『先ほどの作戦お疲れ様。今回もACに襲われて、大変だったみた
いだね。ところでNOBI君が接触したACについていくつかわかったことがある。
メールで説明するのは少し大変だから、ぜひ後でブリーフィングルームに来て
くれ』か…」
「ね?もう何かわかったらしい。僕は早速行ってみようと思うんだけど、
DORAEMONも行くかい?」
そう言ったNOBIの顔はしっかりしていた。もうあのショックからは立ち直った
らしい。
「当然行くよ。じゃあ、早速行こうか」
ナイスタイミングだなDEKISUGI君、と内心ほっとしながらDORAEMONは答えた。
364315:05/01/15 15:24:06
「やあ、君なら必ずすぐ来ると思っていたよ」
ブリーフィングルームに入るともうDEKISUGIが待っていて、深刻そうな面持ち
で入ってきた二人にコーヒーを渡してくれた。
「あまり良い知らせではないんだが…」
と切り出したDEKISUGIがいった事は、要約すれば次のようになる。

・今回接触したACはクレスト社所属のACであること
・そのパイロットは、何らかの強化手術を受けた強化人間であること
・しかもその強化人間が行方不明であったSIZUKAちゃんであること
・最近のクレスト社の動向から、強化人間部隊が結成されているらしいこと
・その研究施設は先日NOBIが派遣されたD1地区らしいこと
365315:05/01/15 15:34:59
「D1地区だって!?」
DORAEMONが叫んだ。
「あそこには例の兵器開発基地しかない。でもあれはミラージュ社の攻撃を受
けて破壊されたはずだ。そのための高射砲破壊だったんじゃなかったのか?」
「確かに地上施設は破壊されたけど地下施設は無事だったみたいなんだ。ミラ
ージュ社も何度か地上部隊を投入して地下施設も制圧しようとしたらしいんだ
けど、全て謎のACに撃退されている…」
「もしかして、強化人間!?」
「その可能性は十分考えられる。しかも、一機だけでなく、複数機いるらしい」
事態はかなり悪い。
NOBIはSIZUKAがD1地区にいると聞いたとき、すぐにでも救出に向かうつもりで
いた。しかし、ミラージュ社の部隊でも失敗した侵入作戦を、NOBI一人で遂行
するのは不可能だった。そもそも、レイヴンである自分が依頼も無いのに勝手
に動き回る事は出来なかった。
一同の間にいやな沈黙が流れる。その時だった
「おうおう、なんか俺の事忘れてないか?NOBI」
366315:05/01/15 15:39:37
ブリーフィングルームの扉が急に開いて、聞き覚えのある声がした。
「GIAIAN!」
小学校時代よりスマートになってはいたが、相変わらず筋肉質でがっちりとし
た体型の巨漢が入ってきた。
「待っていたよ、GIAIAN」
「悪かったな、DEKISUGI。ちょっとACのアセンブリに手間取っちまってな」
彼もまた、「大破壊」以後レイヴンになっていた。彼の駆るタンク型AC「グラ
ンディオース」はアリーナでもかなり有名だ。その圧倒的火力でどんな相手と
も真向勝負を挑み撃ち勝つというスタイルは人気があったし、その戦法で彼は
かなりのランクまで上がっていた。
依頼方面でも殲滅、制圧、破壊系ミッションでは100%の達成率を持ってい
る。
「今回の件ではGIAIANも他人事ってわけじゃないだろ。で、メールで相談して
みたんだ」
「おうよ、話は聞いているぜ。オレとNOBIが組めばどんな強化人間も怖くない
な」
相変わらず、強気だ。しかし彼にそういわれると何とかなるような気がするか
ら不思議だ。
「でもさ、NOBI君とGIAIANが組んで強化人間と渡り合えるとしても、依頼がな
ければ二人とも動けないじゃないか」
DORAEMONがいい感じになったところで水をさす。しかし、それは事実だ。どう
したものかとNOBIがまた頭を抱えそうになったとき、またブリーフィングルー
ムに見覚えのある男が入ってきた。
「その点なら、我が骨川グループに任せてくれ」
367315:05/01/15 15:43:06
「SUNEO!」
骨川グループ、今はSUNEOが代表取締役となっているその企業は、先の「大破
壊」以降着実に勢力を伸ばしていた。もちろんクレスト社、ミラージュ社、
キサラギ社クラスの大企業ではないとはいえ、NOBI達がいる地域ではそれなり
に勢力のある企業である。
NOBIが直接依頼を受けた事はないが、何度かレイヴンズアークに依頼をしたこ
ともあるらしい。
「今回の件は、手続き上骨川グループが依頼したということにしておけばいい」
たしかに、彼の財力ならそのくらいの依頼をすることなどどうということない
だろう。
「でも、大丈夫なの?骨川グループ名義で依頼をするって事は、下手をすると
クレスト社から報復を受ける可能性もあるんだよ?」
またDORAEMONが茶々を入れる。心配性すぎないか、と思う。
「その点は抜かりない。僕のほうで操作して公式記録には一切骨川グループの
名前が残らないようにしておく。架空のテロリスト団体の名前でも載せておけ
ば上の連中もクレスト社も納得するだろう」
DEKISUGIがさらりと恐ろしいことを言う。
「じゃあ決まりだね」
役者は全てそろった。SIZUKAちゃんを救出するため、小学校時代からの仲間が
また集ったのである。
368315:05/01/15 15:46:31
NOBIが高射砲を全て破壊してからミラージュ社の空爆があったD1地区。その爆
撃の傷跡がまだいえないクレスト社兵器開発基地に二機のACが投下された。
夜の闇にまぎれて、一気に地下施設入り口まで接近する。
「よし、そこが入り口だ。これから扉をこっちで操作して開けるから、開き次
第二人とも進入してくれ」
DEKISUGIから通信が入る。今回の依頼では事態が事態なので、専属のオペレー
ターではなくDEKISUGIがサポートに来ることになっていたのだ。作戦領域外で
待機するレイヴンズアーク輸送機のオペレータールームにいるのはDEKISUGI、
DORAEMON、そして依頼主であるSUNEOの三人。
「じゃあ突入するぜ!NOBI、ついて来い!」
両肩には大型リニアキャノンとグレネード、両腕にはショットガンとビームシ
ールドという重装備ACであるグランディオースが先行する。やはりこういうと
きGIAIANがいると心強い。
二機のACは狭い通路を突き進んでいく。レーダーに敵影は無い。
「こんなにもしずかだと、なんか怪しくないかな」
輸送機でモニターを見ながらSUNEOがつぶやいた。確かに、この基地にはまっ
たくガードMTというものが配備されていない。普通ならセキュリティーシステ
ムが起動して、猛烈な歓迎を受けるはずだ。明らかに怪しい。同じくモニター
を眺めているDORAEMONは心配で仕方が無かった。
369315:05/01/24 21:55:08
そんな時、基地内に進入した二機のACが厳重に閉ざされた扉の前に到着した。
扉は電子ロックされており、たとえACでこじ開けようとしたとしてもびくとも
しないだろう。二人はACを扉の前に待機させ、DEKISUGI達に回線をつないだ。
「この扉開かないよ」
「ちょっと待ってて。今からこちらでパスを入力するから」
モニターを睨んでいたDEKISUGIが手元のキーボードをたたき始めた。厳重なセ
キュリティーシステムをかいくぐり、施設管理コンピューターに介入する。断
続的に規則正しく打ち込まれていくDEKISUGIの指を横目で見ながら、SUNEOも
モニターを眺めていた。
「さすがDEKISUGI君…」
DORAEMONはただただ感嘆のため息を漏らすばかりであった。
370315:05/01/24 21:57:55
「よし、開いた。二人とも、扉のロックは解除したよ。もう入れるんだけど、
そこから先の施設内情報は残念ながら僕も持っていないんだ。本当に何が出る
かわからないから十分注意してくれよ」
「おう!わかってる!」
DEKISUGIからの通信が入ると同時に、GIAIANが扉を開け、先に侵入していった。
「ま、待ってよGIAIAN!」
NOBIがやや情けない声を上げてそれに続いた。
しかし、威勢良く突入した二人も、すぐに凍りついた。不気味なほど広く開け
た区画。数本しかない支柱を除いてはろくな遮蔽物も無い不自然なスペース。
そして、その空間の奥の扉の前、そこに彼らを待っていたかのように仁王立ち
をしている漆黒の機体、多少機体のアセンブリが変わっているとはいえ、それ
は紛れも無く…
「お、お前はっ!!」
鬼神とまで怖れられ、アリーナでもその名をとどろかせた男。そして以前の依
頼では敵としてNOBIを苦しめた…
「所属不明機を確認。ブレインジャックと思われます」
ブルーキャットの認識システムが過去のデータと照合させて機体を同定し、無
機的なアナウンスで報告。しかし、そんな報告をされなくてもNOBIにはわかっ
ている。
「MULLER!何でお前が!?」
371315:05/01/24 21:59:52
ブレインジャックは右肩に装備された大型グレネードを射撃モードに設定。折
りたたまれていたグレネードの砲身が繋がり、巨大なグレネード砲のシルエッ
トが確認できる。そして、キャノン発射姿勢をとらずに、射撃。
「何だって!?」
恐るべきことに、ブレインジャックは構えの姿勢をとらずにグレネードを発射
してきたのだ。
本来、タンク型や四脚型ACで無い限り、構え姿勢なしにキャノンを発射する事
は出来ない。キャノン発射時の反動を吸収しきれず、転倒してしまうからだ。
しかし、そのACは二脚型ACであるというのに、構え動作なしに発射してきた。
しかも、転倒する様子も無い。
虚を突かれたNOBIはとっさに回避運動ができない。弾丸が飛んでいく映像が、
まるでスローモーションのビデオを見ているかのように見える。弾丸は、回避
運動が間に合わず、立ちすくんでいるブルーキャットの脇を掠め、まっすぐ
GIAIANのグランディオースに向かっていく。回避できるはずも無い。
「GIAIAN!」
372315:05/01/24 22:01:22
しかし、GIAIANは冷静だった。射撃された瞬間、とっさに機体の向きを変更。
やや左腕を前面に押し出すようにして、左腕ビームシールドを展開。一瞬でビ
ーム粒子がシールド状に展開され、あらゆる衝撃を緩衝する大型シールドが完
成する。シールドを展開したのは、グレネード着弾予測点。まっすぐ吸い込ま
れるように弾丸はシールドに着弾。信管が作動し爆発。一見派手に見えるが、
その衝撃のほとんどはシールドに吸収されている。
「俺は大丈夫だ。そんなことより二射目が来るぞ!」
NOBIを安心させるために通信をいれ、自分も二射目に備え、移動を開始。機動
力がほとんど無いとはいえ、一つの地点にとどまっているよりはましだ。同時
にリニアキャノンを射撃モードに。折りたたまれていた砲身が展開して、ディ
スプレイに「射撃可能」の表示が点灯。FCSがロックオンのための演算を開始
する。
373315:05/01/28 21:54:00
GIAIANからの通信で、彼の無事を知ったNOBIはすぐにサイドステップを開始。
更に右腕スナイパーライフルを構えさせ、ロックオンサイトに漆黒の敵ACを捉
える。敵はすでに武器モードを変更して、こちらに猛然とブーストダッシュで
近付いてきていた。リニアキャノンを装備したGIAIANの火線と重ならないよう
に慎重に回り込みながら、ブレインジャックと距離をとる。
本来AC1対1の戦闘、それも中距離以上での戦闘では、二機とも正面に敵を捉
えて打ち合う、というスタイルになることが多い。ディスプレイに表示された
敵を視認し、パイロットは視認した敵にたいして、自機を回避運動させたり射
撃したりする。ゆえに中距離以上での戦闘で敵のサイドやバックを取るという
事は、戦闘におけるイニシアティブをとることに等しい。そして、今回のよう
な2対1という変則的な戦闘スタイルでは、二機が効率よく動いている限り、
二機を同時に正面に捕らえることなど不可能だ。
NOBIが今回狙ったのも、まさにそれであった。わざとGIAIANと離れていくよう
に動くことで、自分とGIAIANが同時に捕捉されないようにする。ブレインジャ
ックが正面を向けたのはグランディオース。機動力の低いタンク型ACを先にグ
レネードの火力で沈黙させてしまおうという寸法らしい。
「そんなことっ!」
ガンサイトに捉えた敵影をロックオン。重量級ACとは思えない俊敏さで動き回
る敵。それでもNOBIは落ち着いた動作でタイミングを合わせる。いくら牽制弾
であるとはいえ、無駄弾は使いたくない。
敵はグランディオースとの距離をつめ、再度グレネードキャノンを射撃モード
に変更。しかし、その僅かな隙をNOBIも見逃さない。間髪いれずトリガーを二
回。敵が攻撃に移ろうとした瞬間を狙った弾丸だ。それも敵には捕捉されてい
ない。回避されるはずが無い。
374名無し物書き@推敲中?:05/01/28 23:46:57
おおお、カッコいいな特にジャイアンが
がんばってるなぁ・・・続き期待してます
375315:05/02/12 09:04:01
>>374
感想どうもありがとう
最近なかなかうpできてなくて申し訳ない

しかし、スネ夫の出番が少なすぎ…
376315:05/02/12 09:06:50
「こいつ!」
GIAIANは狭いコックピットのなかでうめいていた。小刻みに方向転換するジグ
ザグ走法で距離をとっているが、機動力では圧倒的に敵が有利だ。二機の距離
はすぐに詰まっていく。
GIAIANは焦った。ここまで近付かれると、発射後にシールドを展開しても間に
合わない。
こちらから仕掛けるか?
トリガーに指をかけた瞬間、敵がグレネードキャノンの砲身を展開。
「まずい!」
とっさにビームシールドのスイッチをオン。ジェネレーターが高速回転し、シ
ールド粒子を加速。ここで十分加速した粒子がシールド状に展開されるわけだ
が、今回のような事態で間に合うかどうかは疑わしい。直撃をある程度覚悟し
た瞬間、急に敵がバックステップ。
「!?」
予想外の事態にGIAIANが驚くまもなく、轟音とともに二発の弾丸が飛来してき
た。しかし二発とも、紙一重で回避される。
377315:05/02/12 09:10:10
これが、ごく普通の状況であるなら単に攻撃が回避されただけに過ぎないのだ
が今回は違っている。敵は、見えていないはずの弾丸を、明らかに「意図的」
に回避したのだ。
とはいえ、せっかくNOBIが作ってくれたチャンスだ。とっさにトリガーを引く
。リニアキャノンへのエネルギー供給開始。火薬を爆破させて弾丸を飛ばす通
常の実弾兵器とは異なり、リニアキャノンは供給されたエネルギーで電場を作
り、その強力な電場から運動エネルギーを弾丸に与え、射撃する。
当然十分な運動エネルギーが得られるまでにはある程度のタイムラグが生じる
わけだが、この間も砲身自体はFCSの情報から目標を捕捉し続けている火線に
修正を加え続ける。激しく金属同士がこすれあうような音が響き、エネルギー
充填完了。同時に、弾丸発射。その初速度は通常の実弾兵器のそれをゆうに上
回る。
火線は完全に敵影を捉えていた。解き放たれた肉食獣のごとく敵に向かってい
く弾丸。
しかし、敵は急にサイドステップ。また紙一重のところで弾丸はブレインジャ
ックをかすめ、その後方の壁にめり込んだ。壁に突き刺さった弾丸はブスブス
と煙を上げる。あれだけのエネルギーが付加された弾丸が命中していれば、敵
は一撃で沈黙していたはずなのだ。
「なぜ…」
見えないはずの弾丸。認識する暇も無いはずの弾丸。どちらも「よけられるは
ずが無い」にもかかわらずよけられた。GIAIANを含め、その状況を見ていた全
員が「とんでもないものに手を出してしまったのではないか」と一瞬後悔した。
378315:05/02/12 09:29:26
NOBIも、GIAIANの渾身の一撃が回避される瞬間を捉えていた。
「あいつ…ばけものか?」
呆然としてしまう。あれだけの反射速度…もはや反射速度がどうこうという問
題どころではなく、人間の認識能力を超えた能力をまえに、NOBIは戦慄した。
「久しぶりだな、NOBI君」
急に回線が開かれ、見覚えのある顔が表示される。
「MULLER、なんで?」
確かにそこにいるのは見覚えのあるその男であったが、様子はかなり変わって
いた。全身に強引に埋め込まれたたくさんのプラグ。いたるところに接続され
たチューブ。もはやそれは人ではなく、ほとんど機械だ。
「これがクレストの力だよ。これで私は誰にも負けない力を手に入れた」
回線から響いてくる声も、どこか無機的だ。抑揚の無いしゃべり方からは感情
というものがまったく感じられない。
「何で、そんな身体に?それじゃ…まるで機械じゃないか!」
「人間ではどうあっても超えられない壁があるのだよ、NOBI君。こんな技術を
完成させた人類を呪うがいい…。何のつもりでこんな所に進入してきたのかは
知らないが、消えてもらおう…戦闘プログラム…最終レベル…第三種戦闘モー
ドに移行…ターゲット…確認…排除、開始」
379315:05/02/12 09:31:28
無機的に、冷酷に宣告されたと同時に、回線は切断された。同時にブレインジ
ャックはブーストダッシュ。一瞬でブルーキャットの視界から消えた。
NOBIはすぐにバックステップ。更に機体を旋回させブレインジャックを捕捉。
ブレインジャックはすでにグランディオースへの攻撃を開始していた。非情に
撃ちこまれていくハンドグレネード。
「NOBI君!GIAIANが危ないぞ!援護するんだ!」
DORAEMONの怒声。NOBIは武器モードをミサイルモードに変更。激しく動き回る
敵をロックオンし、トリガーを引く。轟音とともに八発のミサイル発射。
その瞬間、グランディオースのショットガンも火を噴いていた。銃口から発射
された散弾は確実に目標を捕らえている。ばら撒かれた散弾に、八発のミサイ
ル。普通なら全弾の命中を確信できるはずの状況でも、敵が敵なだけに確信な
どできない。
ブレインジャックは急にバックステップ、距離を置くことでショットガンから
の被害を最小限に抑え、更に小刻みにサイドステップでミサイルを紙一重でか
わしていく。しかし、その時にはNOBIも武器モードをライフルモードに戻し、
スナイパーライフルを撃ち込んでいる。サイドステップの僅かな隙を狙って撃
ち込まれた弾丸はかろうじて命中。決定打にはならないが牽制にはなる。
380名無し物書き@推敲中?:2005/05/11(水) 22:03:20
 
381名無し物書き@推敲中?:2005/05/25(水) 07:09:44
382名無し物書き@推敲中?:2005/05/28(土) 08:29:22
あんあんちゃん
383名無し物書き@推敲中?:2005/05/29(日) 13:41:27
丸山弁護士
384名無し物書き@推敲中?:2005/05/31(火) 14:38:15
横山弁護士
385名無し物書き@推敲中?:2005/05/31(火) 17:45:32
ま〜だ〜〜〜〜〜
386名無し物書き@推敲中?:2005/06/08(水) 06:14:24
387名無し物書き@推敲中?:2005/06/09(木) 23:23:24
のび太ならぬのび“犬”
388名無し物書き@推敲中?:2005/07/15(金) 16:14:01
続きまだ?
389名無し物書き@推敲中?:2005/07/17(日) 05:06:30
390名無し物書き@推敲中?:2005/08/27(土) 17:44:28
age
391名無し物書き@推敲中?:2005/12/17(土) 10:05:59
あげますね
392名無し物書き@推敲中?:2005/12/17(土) 14:16:57

:::::::::::/           ヽ::::::::::::
:::::::::::|  な  あ  現  i::::::::::::
:::::::::::.ゝ い  ま   実  ノ:::::::::::
:::::::::::/  よ  く  は イ:::::::::::::
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   \_         ,,-'
――--、..,ヽ__  _,,-''        
:::::::,-‐、,‐、ヽ. )ノ           
:::::_|/ 。|。ヽ|-i、        / ̄ ̄ ̄\
/. ` ' ● ' ニ 、     / \      |
ニ __l___ノ     | ・       |
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393まき子 ◆pk6sAb2XOg :2006/02/14(火) 23:06:59
”インテリジェント・ゴリラスーツ”を常に身に着けることが、この未来社会での第一のルールだった。
それを着用しない外出は、まさしく死を意味した。ゴリラスーツに装備された高価な機械が発見次第
すぐ反応し、パワーアームで、即撲殺。辺り一面が肉片や汚物で汚れても、パワーアームできれいに
掃除するから手は汚れずに済む。未来社会では水は人の命よりも高価だから、それは環境にも
やさしい。指先すべてに仕込まれた、肉食の昆虫が全ての肉片や汚物を食べてしまうのだ。その後、
今度は虫が排泄した糞がゴリラスーツの動力となるのである。何と合理的であろうか。
このゴリラスーツを開発した、J・チャリティ博士はその為に大いに苦労した。
394名無し物書き@推敲中?:2006/02/19(日) 16:44:56
続きマダー?
結構楽しみにしてたんだけどな・・・・・
395名無し物書き@推敲中?:2006/02/22(水) 01:21:35
オペレーター「敵勢力は予想以上です、注意してくだ・・・・」
ノビタ「分かってる。」
そういうとノビタはオペレーターとの通信を切った。今回受けたミッション内容は極めて簡単なものだった。
ベイロードシティでのテロリストの排除。だが今回は少しばかり今までのテロと違うらしい。
ドラエモン「ノビタ君、暗視モード、起動するよ」
あたりは闇に包まれていた。ノビタはふと昔を思い出す。初めての夜間戦闘。慣れない暗闇での戦闘に、あたふたして
ドラエモンを困らせていたっけ―――。
ノビタ「システムに異常は?」
ドラエモン「問題ない。さぁ、思いっきり暴れていこう!」
昔とかわらないドラエモン見て、ノビタは苦笑した。もう思いっきり暴れるなんて歳でもないんだけどな。
そう思いながら、ノビタはオーバードブーストを起動させた。


396名無し物書き@推敲中?:2006/02/22(水) 07:28:54
それにしても、無名草子さんたちとは、さぞやすごい作家先生の匿名書き込みなんでしょうね。
作家なんて才能が全てだから、津井ついみたいに、いくら努力したって駄目なものは駄目ですよ。
私なんか、早々に見切りをつけて趣味の世界で細々ですから。
          小説現代ショートショート・コンテスト優秀賞受賞 阿部敦良
397名無し物書き@推敲中?:2006/02/23(木) 01:02:10
ドラエモン「ベイロードシティ、防衛ライン到達。あと約2分ほどで敵部隊が到着するよ」

敵部隊が到着するまでのわずかな間、ノビタは目を閉じ、オペレーターからのメールを思い出していた。
最近テロが多発しているが、その中に所属不明のACがいる――。そのACの機体構成はシンプルで、
総火力を重視した重量二脚。グレネード主体のその機体は、ランカーACをすでに2体破壊しているらしい。
ノビタ「グレネード主体の重二・・・・・ジャイアンを思い出すね。」
ドラエモン「本当だね。でもその機体にジャイアンが乗ってるわけないよ。
だってジャイアンは・・・・・・・複数の敵を、レーダーに感知! ノビタ君、戦闘モード、起動するよ!」

待機モードとは比べ物にならないぐらいの情報がモニタに表示される。
レーダーを確認したノビタは、一瞬で戦闘時の作戦を組み立てる。
青い点が4。赤い点は8。その熱源の大きさと、スピードの差から判断するに、おそらく先頭の4機は戦闘ヘリである可能性が高い。
そしてその後ろから迫る5つの赤い点は高機動MTか。最後尾にいる3つの赤い点は後方支援型の重装型のMTなのだろう。
テロにしては少し火力不足だな――。ノビタは最初そう思ったが、気にしないことにした。
ドラエモン「敵勢力までの距離、1000、850、700、500・・・・来たよ!」
ノビタ「了解。ミッションを開始する」
FCSは、すでにロックを完了していた。

398名無し物書き@推敲中?:2006/02/23(木) 18:09:48
『パターン青…使徒です!!』
399名無し物書き@推敲中?:2006/02/23(木) 20:40:33
モニタに「ロック完了」の文字が表示されるのと、敵戦闘ヘリからミサイルが発射されたのは同時だった。
大量のミサイルがノビタのACに吸い込まれていく。
だがノビタは回避行動を取ることなくミサイル群の中にACを直進させた。
ノビタ「ドラエモン、迎撃装置を最大出力で起動してくれ。」
ドラエモン「分かった!」
コアの迎撃装置が起動した瞬間、敵が発射した初弾のミサイルが空中で爆発する。
次々とミサイルが迎撃されていく中、迎撃失敗に終わったミサイルの間を、ノビタはACを上昇させていく。
爆煙の中からAC飛び出してきた瞬間、ヘリのパイロットは絶望した。
ミサイルを全てかわされたことが、まず想定外だったのだ。
しかしそんなパイロットの心中を知るよしもなく、ノビタはロックが外れていないことを確認し、トリガーを引く。
ミサイルポッドから高機動ミサイルが連射される。ヘリにそのミサイルがかわせるはずもなく、ヘリは次々と爆散していった。
ノビタは、着地の衝撃を和らげるため、ブースタを吹かしながら、ACをゆっくりと着地させる。
ACに傷がないことを確認すると、ノビタはレーダーを確認した。
400名無し物書き@推敲中?:2006/02/23(木) 20:41:05
レーダーを見ると、5つの青い点は消滅していた。どうやらミサイルは全てのヘリに当たったようだ。
ドラエモン「相変わらず無茶な戦い方だね。敵部隊の隊長から通信が着てるよ」
ノビタ「つないでくれ」
ドラエモンが通信を許可した数秒後、レーダーで赤い点の直進が止まる。敵部隊の隊長が進行の中断命令を下したのだろう。
「レイヴン・・・・・なかなか腕がたつようだな・・・・・だが、邪魔をするなら消えてもらう。」
「なぜベイロードシティにテロなんてしかけるんだ? 今からでも間に合う、撤退するんだ。」
だが通信の相手はその質問に感情を表さず、平然と答えた。
「こちらも依頼を受けて行動している。依頼内容はベイロードシティにテロを仕掛けること。我々はその依頼を遂行するだけだ」
この言葉を聞いた直後、ノビタは通信を切った。今までの経験上、初めの会話でこちらに恐れを抱いていない場合、
敵のほうから撤退する可能性はゼロ。なら戦うしかない。
だが最後の言葉が引っかかる。「依頼を受けて行動している」とテロリストの隊長は言っていた。
通常、テロリストがレイヴンにテロの支援を頼むことはあっても、テロリストが依頼を受けて行動するなどありえない。

ノビタは何か、嫌な予感がした―――。
401名無し物書き@推敲中?:2006/02/25(土) 03:15:23
だがミッションはミッション。依頼を受けた以上、遂行しなければならない。
ドラエモン「敵部隊が動き始めた。迎撃しよう」
ノビタ「分かってるよ。」
胸に不安を残しながらも、ノビタはACを発進させた。左右に緩急をつけながら、武装を右手武器に切り替える。
敵の攻撃はそれから約3秒後だった。敵の装備している携行ライフルのマズルフラッシュが暗闇を切り裂く。
その弾道から見て、こちらをまだ完全に補足していない。そう判断したノビタは、なおも距離をつめる。
高機動MTが目視できるまでに接近した瞬間、ついに敵の攻撃が正確にノビタのACに発射された。しかしその弾丸が
ノビタに当たることはない。敵をFCSに捕捉した瞬間、ノビタはオーバードブーストを起動していた。
スーパーチャージャーの音が響き渡り、MT部隊の視界からACの姿が消える。

刹那、上空から連射音と共にマシンガンの弾がMT部隊に降りかかった。高機動MT1機が爆発、1機が脚部の
関節部分に弾が当たり、沈み込む。だがノビタの追撃は終わらない。オーバードブーストの余勢を生かし、
支援型MTの背後に回りこみブレードを展開、一機の脚部と一機のミサイルポッドの接合部分を正確に切り裂く。
ドラエモン「敵勢力残り60%! 反撃が来るよ!」
402名無し物書き@推敲中?:2006/02/25(土) 03:16:03
ノビタがその言葉を聞いたのと、MT部隊が波状攻撃が開始したのは同時だった。
体制を立て直した高機動MTのうち1機が上空に、2機が左右に回りこみ、ACにライフルを乱射する。
しかしノビタは冷静に機体を跳躍させ、地上のMTの攻撃を回避、
空中からのライフル弾を左へのブーストで回避し、マシンガンを掃射する。MTは空中で爆発した。
爆散したMTの残骸が飛び散るなか、ノビタはACを自由落下させながら地上で動き回る高機動MTに照準を合わせる。
だがロックが完了するよりも先に、ミサイル接近のアラームが鳴り出した。どうやら支援型MTが発射したらしい。
しかし、すぐさまノビタは肩部に積んだグレネードランチャーを展開、
ミサイルが着弾する前に、支援型MTに目測で発射した。空中でのキャノン発射による、強烈な
反動がノビタを襲う。だがその反動でミサイルをかわし、ノビタは滞空しながら
再度ミサイルに切りかえ、地上の高機動MTに向かってロックを開始した。1.5秒後、ロック完了の文字が
モニタに表示される。ノビタは何の迷いもなくトリガーを引いた。

403名無し物書き@推敲中?:2006/02/26(日) 00:21:26
ブースタを最大限に吹かしてミサイルを回避しようとした最後のMTが爆発したのを見届け、
ノビタはオペレーターに通信を入れた。
ノビタ「任務完了、輸送用ヘリを飛ばしてくれ」
オペレーター「分かりました・・・・・待ってください、大きな熱源を探知! これは・・・・AC!?」
ノビタがACを旋回させると、こちらに向かってくる輸送用ヘリが視界に入った。
そのヘリのハンガーには一機のACが確認できる。
オペレーター「ACを確認、アーク未登録のレイヴンです。おそらく最近出没している未確認ACと同一のものと思われます、注意して下さい」
ノビタは頭部の光学カメラのズーム機能を使用し、そのACを凝視する。何のデザインもない漆黒の機体は、
夜の闇によく溶け込んでいた。と、ふいにACが投下された。着地時の衝撃音の大きさから、かなりの重装備であることが分かる。

404名無し物書き@推敲中?
そのACがこちらに向かってこないのを確認し、ノビタは
こちらに敵意があるのか確認するため、通信を入れることにした。
ノビタ「ドラエモン、あのACのパイロットと話がしたい。できるかい?」
ドラエモン「OK、任せて・・・・・ダメだ、ロックされてる・・・・・」
ノビタ「ってことは・・・敵意があるってことか。ドラエモン、残弾数を確認してくれ・・・」
ノビタはその言葉を最後まで言い終わることができなかった。敵ACがいる辺りから閃光が見えた瞬間、ノビタのACの
コアを弾が掠めていったからだ。装甲が何枚かはがれるが、ダメージは少なかった。
ノビタ「速い・・・!」
そのあまりの速さに、ノビタは驚きの声を上げる。
ドラエモン「今のはわざと外したんだ、2発目が来る前に接近しろ!」
だがノビタはすでに行動を開始していた。使い切っていたミサイルポッドを強制解除、
頭部レーダーを広域化して敵ACの正確な位置を把握、オーバードブーストを起動させる。
MT部隊とのの戦いでジェネレータのコンデンサ容量は心もとなかったが、この状況を打破するには仕方ない。
ノビタのACは、未確認ACへの接近を開始した。