この三語で書け! 即興文ものスレ 第十二単

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「王」「女王」「王女」

漆黒の闇と瞑府のような冷気の中で、幾百の夜と昼を過ごして来ただろうか。
この寂しい断崖の城に幽閉されてから、我が王家の絢爛たる時代は終わりを告げた。
王と女王はそれぞれの台座の上に辛うじて縋り付いてはいるが、もう命運が尽きた事を
この暗黒を劈く不意の光の放出が、冷酷に浮かび上がらせていた。

王の白磁の衣は無惨に霜に取り付かれ、女王の薄紅色の柔らかな単衣の纏ものは
遠にその艶やかな色彩を失い、過ぎ去った華やかな思い出だけが身を保つ手段なのだ。
私は細緻な波形が刻まれた、黄金の衣をしっかりと身体に巻き付け、玉座は無くとも
王家の一員として、また王女としての矜持を失わないように我が心に言い聞かせた。

獰猛に城を探り回る、悪魔ような鈎爪に王と女王は台座に乗ったまま
恐ろしい力で引き出されて行き、すぐに、私も容赦なく掴み取られ
蛮境の光の彼方にそのまま投げ出された。


「げっ!忘れてた。お正月の紅白かまぼこ、まだ冷蔵庫に入ってたんだ」

「ひー、伊達巻まであるじゃん。うげえ。捨て、捨て」


次は「秘密」「告発」「メス」でお願い致します。
 パイプオルガンが街中に響く。おれが働いている時計台のてっぺんで、こいつは長い間嘘
の時間を教え続けてきたんだ。どこかの爺いの古時計とはちがって、百年二百年じゃきかな
い寿命の高級品。歳月を感じさせない、手入れの行き届いた銀色の羽飾りがちょっとした自
慢。そのくせ肝心のお仕事はみそっかす。おれはいつしか、程度はげしくこの時計に愛着を
もつにいたったらしい。そしてこんな薄汚い街じゃお目にかかれないよな、長い銀髪が美しく、
気のつよい深窓令嬢をこいつにイメージした。歳? フフフ、そんなもん夢の世界に何らいり
ようのあることかね?
 そう、イメージの世界の中で、おれは病弱でもあるご令嬢の担当医だ。毎日毎日、その小憎
らしくも愛らしい佳人のもとへこまめに駆けつけては、彼女の姿をいちいち余すことなく目に焼
きつけるのだ――こんな変態でも医者ができれば、の話だがな。
 彼女は六時の時報と十二時の時報を、オルガンの音色といっしょにお届けするお役目があ
るんだが、寝坊すけのために、はたして四分遅れで椅子に腰かけている。
「お父様には秘密にしてね」
 平時倨気をはなち、おれの事など小間使いか救急箱にしか思っていない、瑠璃色のひとみ
がゆれ、その視線が地面をはいずる。彼女は造物主にひどく弱い。
「さあどうでしょう、だんな様にはお目付けも託っておりますからね?」
 そのことを知っているおれは自分の有利をさとると、やおらメス代わりであるドライバー
で彼女の首元をペシペシとはたく。意地悪をしないでと言いたそうに、震えるうなじがもがいた。
(……イエス! こういう展開を望んでいたさ!)
 もちろん、おれがそんな無情な告発をするはずない。お楽しみはこれからだし、愛しい女御
が簡単に打ち壊されるのをもっとも厭うのは、いっさい詮議の余地なく、このおれだからだ。
 ……そんな愛着も、今日でおしまいになる。おれはぽっきりと折れた金色の長針をレンガ畳
の路地から見上げて、まるで髪を切りそろえようとして失敗したみたいだな、お前らしいわ、と
胸のうちで苦笑した。小脇には大きな銀色の羽飾りが大事そうにかかえられている。
あ、忘れてた。
>>608氏の擬人化(・∀・)ワロタ!!です(触発されますた)
お次は「街の宵」「権現」「提灯」で
611「街の宵」「権現」「提灯」:03/07/14 17:43
「想像してごらん。街の宵、ぼくらは歩いている」
 夕日に照らされた高校の教室で、女の子と二人きり。文化祭準備の喧騒が遠い。
 偶然居合わせただけの彼女と、間を繋ぐために会話をしていたぼくは、妙に興奮していた。
 そして、嬉しさと恥ずかしさが一緒になったような心持ちで、正直な自分を話しだす。
「君は提灯を持っている。対するぼくは夜の権現。ようやく起きだし、街を歩く。
ぼくらは歩いている。宵、西の景色には不安げな紫色が残る。
ぼくは夜で、徐々に世界を覆うのだけれど、君は提灯で立ち向かってくる。
だが、もうすぐ宵も終わる。空は黒く、暗く、人は家へと帰ってゆく……」
「こわいね」
 女の子の言葉に、ぼくは緩やかに頷いた。
「けれど、ぼくは夜。夜は君に恋をする。提灯は君を淡く照らす。それはとても綺麗だよ。
闇を纏った君は夜の女王。ぼくは君の下僕に堕ちる。夜は君の足元にはべる影か、
君に付き従う従者か、もしくは君を祭り上げる道化に過ぎない。哀れに甘えて君にすがる」
 ほぅ……と彼女の吐息が漏れる。ぼくはそこに甘い何かを想像し、腕が震えるほどに興奮した。
 彼女との間に特別な感情が生まれたわけでもないし、肉体的な何かがあったわけでもない。
 だがこれが、ぼくの童貞喪失の瞬間。


 次は「纏わりつく」「恥」「愛」でおながいしまつ
612???:03/07/14 17:44
「街の宵」「権現」「提灯」

はいはい、ええ東京からお越しの記者さんで?まあまあ、こんなむさ苦しいあばら屋へ
ようこそおいで下さいました。留守にいたしまして、まあどうぞお上がりくださいませな。

え?これでございますか?今夜は権現さまの宵宮なんですよ。ええ、ですからつい、ね。ふふふ。
年寄りがラムネなんておかしな話しですけれど。よろしければどうぞ、まだひんやりと美味しそうですよ。

そうですねえ……。忘れられないお方はいらっしゃいます。海軍のお若い将校さんでした。
やさしいお方でねえ。珍しかったラムネをよく買ってきて下さって、娘ごころにうれしくて。
将校さんがお見えになると廓のつらさも、忘れられました。どうしたものか私はラムネを飲むと
鼻の奥の方がつんか、つんかして、涙が出るんでございますよ。その姿がおかしいとおっしゃって
よく楽しそうにお笑いになりました。

廓の提灯に灯りがともると、将校さんがお帰りになってしまうのが寂しくて私が泣くと
二階の窓の敷き居に腰かけて、静かにハーモニカを吹いて下さるんですよ。
花街の宵の風にのって、赤とんぼの曲が流れだすと、いつもは怖かった先輩の姐さんたちも
廓の入り口にある、べんがら格子の中でみんな泣いていました……。

どうも、長い話になりました。こんな、むかし遊女の話でよかったらまた、お越しくださいませよ。
あら、お宮のほうでは、お囃子が始まったようですねえ。……夕暮れのいい風ですこと。


*お題かぶりすみません。
次は611氏の「纏わりつく」「恥」「愛」で。
614名無し物書き@推敲中?:03/07/14 19:46
「纏わりつく」「恥」「愛」

 ドラゴンは倒した、魔王は死んだ。
 しかし、勇者の表情は暗かった。
 宿屋に名を明かす事を恥じ、血のついた身体でじっと天井を眺めている。
 彼は思い起こしていたのだ、国王に誓ったあの言葉を。
 「必ずや魔王を倒し、捕らえられた王女を、無事連れ帰って参ります」

 たしかに、魔王は倒した。想像を超えた厳しい戦いだった。
 敵を倒す事に精一杯だったの自分は、その後の事を考えていなかったのだ。
 自分だけを信じ、背中に必死で纏わりつく王女を。

 夜も明けてきた。窓の外に白々と陽の光がさしてくる。
 悔やんでも仕方がない。王に全てを報告しよう、気が重いことだが。
 不意にドアが開き、宿屋の主人が朝飯も運んできた。
 「おはようございます。昨夜はおたのしみでしたね」

 隣で体を起こした王女は、胸を隠しながらも愛らしく,
「はいっ」と答えた。
 勇者は、うつむくばかりだった。

※「纏わりつく」が書けない。FEP抜きで書けない(^^;
次のお題は:「空」「集合」「納豆」でお願いしまふ。
615山崎 渉:03/07/15 11:39

 __∧_∧_
 |(  ^^ )| <寝るぽ(^^)
 |\⌒⌒⌒\
 \ |⌒⌒⌒~|         山崎渉
   ~ ̄ ̄ ̄ ̄
くっ。山崎め・・・あげ
617純 ◆OPb3r6Vs1g :03/07/15 17:37
「空」「集合」「納豆」

「空はイヤだ」と息子が泣く。「空は怖い」
「大丈夫だよ」とおれは抱きしめながら声をかける。
数年前、息子を診断した医者の淡々とした声が蘇る。
「特殊な症例です。網膜には約700万個の錐体という
組織の集合体があります。息子さんは、ここに異常が
ある。何かを見るごとに、彼は強烈な刺激を受けてい
るんです。原因も治療法も残念ですが分かりません」
息子は空を怖がる。だから学校にも行かせられない。
外出できるのは、空の見えない夜だけだ。刺激の予測
はできない。薔薇の花を見て引き付けを起こした。
ぬいぐるみを見て怒り出した。食事にも気を遣う。
ご飯は駄目。パンはOK。ステーキは逆に笑い転げて
食べられない。一番のお気に入りは納豆だ。だから、
今日も朝食は納豆サンドだ。「お前が納豆好きとは
なあ」とおれはため息をつく。「お父さんは、納豆
が食べられないのに」息子がケケと笑った。

納豆のお題が難しかったでつ。
次は「にわか雨」「ロケット」「相撲取り」でお願いします。
618「にわか雨」「ロケット」「相撲取り」:03/07/15 19:12
その日は、朝からにわか雨が降ったりやんだりして、イヤーな天気だった。
仕事が早く終わった僕は、こんな日はミキちゃんに会いたいと思い、ミキちゃんの携帯に電話した。
「あっ、ミキちゃん」
「こんな時に電話しないで」あれ、切られた! それもひどく怒っている様子だった。もう1度掛けても、今度は電話にさえ出てくれなかった。
 こんな時?  
今は夕方で、深夜でも早朝でも無い、普通に生活している時間だ。わけが分からなかった。
まっいいかと思い、その日の夜に又電話した、彼女はカワイイいつもの彼女に戻っていた。しかし、週末のデートは即座に断られた。
そういえば、彼女は数ヶ月ごとに2週間くらい、全く会ってくれない日があった。
 - 浮気している - 俺はピンと来た。
そう確信した俺は、会ってくれない日曜日に、ミキのマンションに向かった。
ミキは中にいるようだ。出て行く気配も無い、”さては中に男がいるな”俺はそう思い、マンションの呼び鈴を押した。
程なくして彼女が出てきた、その姿はジャージでスッピンだった。どう考えても男がいるとは想像しにくい。
驚いている彼女に向かって、
「どーして会ってくれないんだ」俺は問い詰めた。
「こんな大事な時に来ないで!」彼女はひどく怒って、ドアを強い調子で、閉めようとした。それを振り切り、俺は中に入った。
中には、誰もいなかった。
TVの画面は相撲中継を映していた。「優勝おめでとう」今まさに、優勝した相撲取りが賜杯を受け取る瞬間だった。
ミキはそれを食い入るように見ていた。その目には、涙さえ浮かんでいた。

6時が過ぎて、TVがサザエさんを映し出した頃、おもむろにミキがしゃべりかけてきた。
「ごめんなさい。私、好きな人がいるの」突然の告白だった。
そう言うとミキは、ロケット型のペンダントを開けた。由来は聞けなかったが、大切なものと言っていたペンダントだ。
そこには1枚の太った男の写真がはめこんであった。

笑っている朝青龍だった。

次のお題は、「足跡」「携帯電話」「地下鉄」でお願いします。
誰も馬鹿らしいから注意してねえから、せめて俺だけでも文句つけてやるよ。
お前だ、お前。>>616
山崎の足跡をたどるようにいちいち無駄ageしやがって。
お前のやってることは、東京に長年住んでるくせに
地下鉄に乗ったことがないホームレスと同じくらいトンチキなことだって気づけよ。
しかも何が「くっ。」だ、いちいち芝居ぶりやがって。
いちいちくだらん荒らしに反応しやがって、お前は脳が子猫ちゃんか?
ギャース! 感想スレにまで書きこみやがったかこの原人。
「やばあげ」
「やばあげ」ってお前。
携帯電話から書き込んだような駄レスぶちあげて悦にいってるんじゃ
ねえってンだくそぼけ。じゃあな

お題は継続
地下じゃ携帯電話は繋がらない。
そんな事は解っていたけれど。
「……くそ」
こんなもの今は無意味だ。携帯電話を投げ捨てようとして……
留まった。その行為も無意味だと思った。

      *

中村雅人が地下鉄のホームに生き埋めになってから、既に5時間がたっていた。
出口は完全に塞がれていた―――かどうかはわからない。
しかし、これほど時間がたっておきながら、
捜索隊の一つも現れないのだ。
雅人自身、出口は探した。だが、それが見つかっているのならば。
(こんなところにはいない)
雅人は嘆息した。冷静になろうと呼吸をし……故に気づいた。
明かりの灯らぬ通路の奥、闇の中から足音が聞こえる。


なかなか思いつかないね。
次のお題は「魔法」「物理学」「硝子」で。
621クロウバー:03/07/16 06:05
「魔法」「物理学」「硝子」

 麻子ははらりとページを繰った。
 麗らかな光が、ポプラの隙間から黄ばんだページの上へと、こぼれ落ちる。図書室の、グラウンドに面した窓際が麻子の指定席だった。
 周りには誰もいない。授業開始まで、あと一時間もあるのだ、それもそのはずである。
 早朝自習用に開け放たれたこの図書室であるが、麻子は自分以外の人間を見たことはなかった――図書室の中では。
 古びた活字から視線を外す。硝子一枚隔てたグラウンドでは、1人の少年が壁相手にキャッチボールをしている。同じクラスの佐久間圭だ。
 クラスでは非常におとなしい存在である彼が、実は野球部員であると知ったのは半年も前の事だ。
 たまたま、早朝自習しにきた麻子が偶然にも、早朝個人練習している圭を見かけて以来、何となく気になってしまって、ここに通い続けているのである。
 世界には、私達だけ。私達だけの世界――
 ふと、そんなことを思い付いて、麻子は軽く嘲笑(わら)った。
 ばかばかしい。仮に、今世界がこの視界だけだとしても、自分達の間には透明な壁というものが横たわっているというのに。 
 圭が放つ白い玉は、綺麗な弧を描いて校舎に当たる。あれが放物線だと、この間、物理学の授業で習ったばかりだ。
 物理は嫌いだ。どうせなら魔法を学びたい。
 ――この硝子窓を、魔法で破れたら。
 麻子は小さく溜息を吐(つ)き、再び古書に目を落とした。
622書き忘れた:03/07/16 06:10
次のお題。
 
ビニール、水晶、ロリ   

でおながいします。(621ノカンソウモネ!)
『ビニール』 『水晶』 『ロリ』

彼の名は「ロリポップ」、本当の名は誰も知らない。

彼はその名の通り、いつも棒付きキャンディを口にくわえている。
その飴ひとつで、相手の目を突き刺し、あっという間に仕留めてしまう殺し屋だからだ。

「あのおじちゃんに、キャンディをねだってごらん」靴磨きの少年に誰かが耳もとでささやく。

少年が「ロリポップ」に飴をねだると、彼は笑って、ポケットから棒つきキャンディをとりだした。
「靴も磨いてもらおうか」小さなイスに腰をかけて、片足を少年にあずけた途端
背後から黒いビニール袋が「ロリポップ」の頭にかぶせられた。
首には、皮ヒモが巻きつけられ締め上げられる。

靴磨きの少年は言葉もなく、目をみはっている。
凍りつく少年の、水晶のような瞳には、さびしい殺し屋の最期が映っていた。

彼の名は「ロリポップ」、こころ優しい殺し屋は、飴ひとつで命を奪われた。


次は「ひつじ」「時」「迷路」でお願い致します。

624ひつじ・時・迷路:03/07/16 13:42
 眠れない夜にひつじを数える。この方法は日本人には不向きじゃないか。だって北海道の
牧場ならともかく、羊なんか身近にいやしない。羊は角が生えてるのか、顔の形は三角で
あっているのか。自分の描く羊が本当に正しいかどうかさえ分かってない。

 もともと、「羊がいて、緑そよぐ牧場がある」その穏やかな光景に心がリラックスし、
だんだん眠くなる……という眠り方をするためのものらしいが、それなら俺は眠れそうに
ない。俺の脳裏には、毛糸玉に角付きの黒い三角顔が張り付いた変な物体が、ふわふわと
ひしめき合っていて、リラックスするどころではない。

――時間の無駄だな――
 いや、まさに時は金なり。どうせ眠れないのなら本でも読もうと、俺は眼を開けようと
した。ところが目が開かない。羊たちが目玉の内側から、まぶたを抑えているのだ。
「アケさせないよ」「あけたら消えちゃうモン」「責任もって数えてッテ」
 羊達の三白眼の恐いこと。断ったら食われちまう。俺は顔を引き攣らせながら数え始めた。
ところがこれが一苦労。数え終わった羊を横に避けていても、何となく動いて混ざってくる。
――赤い毛糸玉でもあればなあ――
 ミノタウロスの迷路に潜った勇者のように、赤い糸でマーキングできればいいのだが。

 そういうわけで、現在 5692匹。半分くらいは数えたんじゃなかろうか。願わくば、
俺は今寝ていて、これが俺の見ているどうしようもない悪夢であってほしいものだ。そう
じゃないと、もう一度寝なきゃだめってことだろう? 俺は明日、テストなんだけどなあ。

 次は「チーズケーキ」「コントラスト」「金」でお願いします。
「チーズケーキ」「金」「コントラスト」

売れない女優がいた。水着のピンナップガールをしながらオーディションに通う日々。
ある時、そのピンナップが、映画監督の目にとまり、彼女は肉体派女優として売り出された。
ブロンドの髪と青い瞳。ミロのヴィ−ナスと同じボディ。彼女は時代の寵児となった。
だが、彼女は、苦しんだ。演技力だけで勝負がしたい。寝る間を惜しんで努力を続ける。

そんな時、素晴らしい脚本に出会う。彼女は狂喜し、血を吐くほどに、役に魂を売り渡した。
この作品は、権威ある映画祭で「金賞」をとった。彼女は脚本家と電撃的に結婚する。
脚本家は彼女に仕事を減らすよう願った。彼女の力量と限界を、暗に見抜いていたから。

しかし、時代は彼女を手放さない。撮影に忙殺され、彼女は家には戻れない。
脚本家はとうとう家を出た。悲しみを強い酒で薄めながら、彼女は独り、仕事にのめり込む。
ドラマに映画に、コマーシャルに引きずり回され、粗雑な作品を多数こなした。

いつのまにか、マスコミは「頭のカラッポなセクシー女優」「チーズケーキと同じだ!」
「白い身体と甘い声。安っぽいお味」と汚いスラングで彼女を罵り始めた。
もう時代は、彼女のことなど忘れていた。銀幕から彼女の姿は消えていった。

どうか、この写真を見てほしい。白い水着と青い海の美しいコントラスト。
この素朴な笑顔の少女はもうどこにもいないのだ。
彼女の墓標には「訪ねてきてくれたのね?」とだけ彫られている。
だれかにむけてか、それとも時代という、きまぐれな風に対してか。


次は「薬草」「朝日」「氷」でお願いいたします。

626625:03/07/16 17:52
すみません。お題の順番間違えました。
×「チーズケーキ」「金」「コントラスト」
○「チーズケーキ」「コントラスト」「金」

いいお題を頂きながら、大変失礼しました。
「それって薬草みたいなものです。煎じて飮めば効くんですよ」
自信満々に彼女は笑う。
随分と不明瞭な比喩を使うものだ、とつい、笑みがこぼれる。
薬草。薬草とは言いえて妙だ。
確かに自分は捉え方を誤っていたかも知れない。
混ぜ方次第で千変し、飮み方次第で万化する。
どんな事だって同じだ。
常に変化し、先が見えない。薬は毒にもなる。
だから面白いんだとは、誰が言った言葉だったろうか。
でも、そんな事はどうでもいいのだ。
今、目の前にある朝日のような笑顔だけが
氷みたいに確実に、染み渡るその笑顔だけが
言って見れば、そう。
自分にとっての薬草みたいなものなのだと。
熱で浮かされている自分は、そんな柄にもないことを思った。

お題は
「風」「時間軸」「シンメトリー」で。
 夜半をこえ、いよいよ東天が射しかかろうとしている頃だった。ぱちりと目の覚めた慧は安物
のバッグへ手をつっこむと、そこから取り出した携帯電話のディスプレイを寝惚けまなこでぽぉぉっとみつめた。
デジタル時計の表示が、4時21分をしめしている。合点のいった彼女は、自分のいた河内八幡
へ向けて――どの方角を向けばよいのかまではちっとも判らないが、これはもう習慣の産んだ
くせで、たとえ間違っているとしても彼女はそうせずにはいられないのである――ちょこんと遥
拝した。まわりでぐうすうと眠っている客たちを起こさないよう、意をかくしながら体勢をもどす。
やることは終えたとばかりに慧は備品の毛布をかき擁くようにして、わずかに残ったぬくもりの中へ沈んでいった。

「――え、皆さんおはようございます……。午前6時24分、足柄SAに到着いたしました。目的
地の新宿駅到着までの予定は、8時20分となっております。これよりしばらく当バスは、現SA
におきまして10分ほどの休憩をとります。なお外へお出でになるお客様は――」

 ガイドの言をとれば、うたた寝をはじめてからもう2時間強が経過していたらしい。ふた度目
覚めた慧はとくに行動するつもりもないが、そぞろにふらふら、まろぶようにバスの外へ出て
いく。出ると唐突に、寒風が彼女の身を小さくさせた。さっきの毛布のように、彼女は身につけ
たはなだ色のマフラーと白いダッフルコートを抱きしめて、外出したことをひたすら後悔した。
しかも、この時間では息のある商店など自動販売機の他になく、これでは"あったか〜い"
午後ティー(ミルク)を購うほかない。結局、彼女はミルクティーを飲みながら、あらためて外に
でた由について思索しつつ空をながめた。
 すると、彼女の目にこい灰色の叢雲が朝もやの空の下でおよいでいる、そんな静かだが忙
しそうな情景が映る。ふと彼女の脳裏に、幼いころ早朝のラジオ体操の深呼吸のポーズで母
とともに仰いだ空のかたちが浮かぶ。そしてそれは、あまり意識をしなかった4年半という長い
年月によってできた埋めたてるべき渠の存在を彼女にはっきりと伝えたのであった。
 そ知らぬ顔でふわふわと漂いつづけるシンメトリックな空と雲のありように、彼女はあの朝み
せてくれた母の笑顔を思いかえして、眉をたゆませる。夏休みは、もう近い。
いい加減長文にしすぎでした
(これをもってしばらく投稿を自制します、
今まで読んでくださった感想人の方々、本当に申し訳ありませんでした。
投稿者の方々も、駄文と題追加で2レスも汚してしまい、本当にすみません)
お次は「映」「指」「牛丼」でお願いします……それでは。
>>628訂正。ラストの一行で全部ぶち壊しですな・・・何考えてたんだかw
忘れるかエラーとして扱って無視していただいて結構です・・・
君は僕を見てる。多分僕の出方をうかがっている。

満開の桜を映した川には、遊覧船。
きっと船の客も、この桜と同じ色に顔を染めている。そして僕も。
何度も何度も声かけて、やっとこぎつけた2人きりの花見。
会うまでは、話そうと思ってたことはたくさんあったのに、何もいえないでいる。

「何か食べる?」
君はそういって、そばのベンチに腰掛け、でっかい目で僕を見てる、ようだ。
僕の目は、触れ合っている君と僕の膝を捕らえていて、
恐れ多くて、その、でっかい目を確認することが出来ない。
か、顔をあげることが出来ないんだ。こんなんではだめだ。
せっかく二人で会えたんだ。何か話さないと。食べに行くんだ。どこに?
頭が働かない。声が出ない。顔を精一杯あげても、彼女の肩越しに船がとおるだけ。
顔をみたら抱きしめてしまいそうだ。
ふと僕らの膝の上に、桃色が一枚降ってきた。僕は今、春なんだろうか?
君はそれを摘み上げ、ぼくに渡した。花弁と同じ色の爪が、僕に、触れた。
更に、僕は固くなる。君はあきらめたように笑った。
「君となら、牛丼でも」
いいよ、という。これは?

サクラサク?サクラチル?


お題は「口紅」「紙袋」「屋根」で
632631:03/07/17 19:18
今気付いたんですが、恥ずかしながら、お題の「指」消化してないです。

×君はそれを摘み上げ、ぼくに渡した。花弁と同じ色の爪が、僕に、触れた。
○君はそれを指先にのせ、僕に渡した。花弁と同じ色の爪が、僕に、触れた。

修行しなおして出直します。


 深夜、まげ子はふらつきながら帰り道を急いでいた。
「早く帰らなくっちゃ…マサオに餌をあげないと…。」
マサオはまげ子が飼っているオスのゴールデンレトリバーの事だ。
この犬は飼い始めた頃は小さくて可愛かったが、今では抱えきれない程大きい。
マサオは幼い頃から、時間通りに餌をやらないとイライラして屋根の上をうろつくのだ。
「マサオ…いつもいつもいつも毎度のように餌をあげ忘れてゴメンね…。」
まげ子はマサオを想って、自宅まで走り出そうとした。
 突然、まげ子は後ろから羽交い絞めにされた。
「だ、誰!何するの離しなさい!」
まげ子の後頭部にガサガサと紙のような感触が伝わってきた。
とうやらまげ子を抑えている人間は紙袋を被って変装しているらしい。
「まさか!最近この辺りに出没するという…」
まげ子は死にもの狂いで暴れまわったが疲れて息苦しくなるだけだった。
すると、くぐもった声が聞こえてきた。
「口紅…」
呟くと、まげ子の口の中に甘ったるい匂いを放つスティックが押し込まれた。
「もが…が…まずっ!油っこいって!ぶっ!おげっ!」
まげ子は必死に抵抗するが、背後から伸びる手は容赦なく異物を食べさせる。
 そしてスティックが完全にまげ子の口に消えると、拘束が解けた。
咳き込むまげ子から足音が遠ざかっていく。
「お前は何がやりたいんだぁぁぁ!」
まげ子の叫びに答えるものはない。
辺りに闇が広がっていた。→お題は「箱」「海」「木」で。
ひどい文章だ…段落は気にしないでね…
635初心者 ◆z37rqcOjlQ :03/07/17 22:01
「箱」「海」「木」

「そうだ海に行こう」
波の音でも聞きに行くか。
なんだか自分でもわざとらしいような気恥ずかしさがあったが、そう思った。
汚い海だけど、海は近かった。
歩いていこうじゃないか。30分くらいでつくか?いや一時間かかるかもしれない。
いやいや、ゆっくり行けばいい。1日かかるわけじゃない。
自分を追い立てるように家を出た。道すがら塀の向こうにのぞく人の家の庭木なんかを見て、いいものじゃないか、と思ってみるけども、実際、じりじりしてた。
けっこう、遠いな。
イメージしていたのは暇を楽しめる男だった。でも無理みたいだ。段々早足になって、目を細めて遠くを見つめる。目的地を見据えているのだ。
しまいには速読のイメージトレーニングをはじめる始末。右目で右の風景を見る。左目で左の風景を見る。真ん中に仕切りを立てるのだ。不意に右目がまばらに車が通る道路を挟んで、原色の看板を捕らえた。
禁断の箱。コンビニだ。
自己抑止はもう効かなかった。
俄然、軽やかに道路を横断する。今週の漫画チェックを済ませて帰ることにした。

初心者なんでダメだしお願いしたいです。改善例つきで。
酔狂な方いらっしゃったら、ぜひ。
裏3語スレもチェックするので。

「綿」「虫」「信号」
それは綿貝殻虫の侵略です。あなたの花園は危険信号を発しています。
手遅れになる前に対策を講じましょう。
まず、目に見える部分は丁寧に時間をかけてふき取ってください。
乱暴にすると花園が傷みますので、むきになってはいけません。やさしく擦ってあげましょう。
鉢の奥の奥など手の届かない場所やデリケートなところは薬品を使います。
オルトランなどのアルコールが有効ですが、花園にとってもそれは害を為します。
濃度には十分に注意して、反応を窺いながら注入しましょう。
これで効果がなければ、また違った手を打たなければなりませんが、まず、大丈夫でしょう。
大事なのは何より愛情です。しっかりケアしてあげてください。応援してます。
いけねえ、お題だったね。それじゃ

「ホーム」「サイン」「送る」

で。
駅のホームについた。適当なベンチを探して、そこに二人で腰掛ける。
電車が来るまでには数分あった、でも特に話すことなんてなかった。
十年来の親友が、私の知らない遠くにいくのだという事を知った時は
随分吃驚したものだ。けどそれだけ。
実感なんてなくって、その時が来るまで、今みたいに
二人してぼーっとしていたのだ。なんとまぁ、情緒のない。彼女がいつもの調子だったからだ、と思った。
別れというものを意識してみれば、
「私たちは心で繋がっている」なんてどこかで聞いたような言葉も浮かんだが、
私はそんな柄じゃないし、隣にいる友人にそんなことを話そうものなら
大口開けて笑い転げるに決まっている。
私たちは、それでいい。それが自然だった。
幾許かの時間をそうして過ごし、ホームに風が吹いた。
電車が来た、といつもの調子で彼女は言う。本当にいつもの調子で。だっていうのに
私ときたら、今更ながらに動悸がする―――なんて事。それでいいんじゃなかったのか。
別れの言葉は要らないって。
また会えるなんて、思っていたのは私だけなのかって、気にしてしまうじゃないか。
それが顔に出てしまったのかも知れない。振り向いた彼女は笑う。
何も言わずに、彼女は電車に乗った。いつもの調子で。
それは、再会のサイン。私たちが、数え切れないほどしてきた約束。
そっけないなんて思わない。思う必要すらない。だって、どうせ。
(私たちは心で繋がっている)
だから私も何も言わずに振り向いた。
送る言葉はない。それでもいい。私と彼女はいつかまた会う。
多分いつものように。
639638:03/07/18 00:14
お題ですが、「風見鶏」「遊歩道」「銀細工」で。
>>638
おおう!はやっ!
でも、お題は?
641640:03/07/18 00:16
ごめん、ちょうどかぶっちゃたね
彼の休暇は昨日までで、今日は一人。
初めて来る町で、彼に聞いた植物園に向かったものの、
月に一度の休園日だった。やっぱり、と思ってしまうほど、運は悪い方だ。
まぁ、昨日紅葉狩りいったし、いっか。
紅い山で、私の視界の半分は、彼の黄色いジャンバー。たまに木々と同化していた。
青と銀のバイクに乗せられて、赤いヘルメットをかぶらされ、
虫除けだから、とはめさせられた指輪には、トルコ石。その色、にあわんなぁ、と呟きやがった。

ぴっちりと、閉じられた門の上から注ぐ、陽射しが指輪を金色に染める。
傾いてきた黄金色に目を細め、植物園に背を向けた。帰ろう。私の町に。
足元には風見鶏が、連なる銀杏の間に細長く引き伸ばされている。
テレビドラマにもよく使われるんだよ、と言っていた遊歩道が、目の前上り坂。
きれいに染まった銀杏が目の前に広がる。彼の色、銀杏色の中に道がある。私の道だ。

左手の銀細工が黒ずむ前に、またこの町に来る。
師走。忙しくなる。そして、年を越す前に、1つ年をとる。
そして、新年。挨拶に来る。この町に帰って、来る。


次、「水着」「いか」「携帯」お願いします
643パピヨン:03/07/18 06:22
  「水着」「いか」「携帯」
深夜、まげ子はふらつきながら帰り道を急いでいた。
「早く帰らなくっちゃ…マサオに餌をあげないと…。」
マサオはまげ子が飼っているオスのゴールデンレトリバーの事だ。
この犬は飼い始めた頃は小さくて可愛かったが、今では抱えきれない程大きい。
マサオは幼い頃から、時間通りに餌をやらないとイライラして携帯電話を壊すのだ。
「マサオ…いつもいつもいつも毎度のように餌をあげ忘れてゴメンね…。」
まげ子はマサオを想って、自宅まで走り出そうとした。
 突然、まげ子は後ろから羽交い絞めにされた。
「だ、誰!何するの離しなさい!」
まげ子の背中に素肌と布のような感触が伝わってきた。
とうやらまげ子を抑えている人間は水着を着ているらしい。
「まさか!最近この辺りに出没するという…」
まげ子は死にもの狂いで暴れまわったが疲れて息苦しくなるだけだった。
すると、くぐもった声が聞こえてきた。
「いか……」
呟くと、まげ子の口の中に甘ったるい匂いを放つスティックが押し込まれた。
「もが……が……まずっ!生じゃ食べれないって!ぶっ!おげっ!」
まげ子は必死に抵抗するが、背後から伸びる手は容赦なく異物を食べさせる。
 いかが完全にまげ子の口に消えると、拘束が解けた。
咳き込むまげ子から足音が遠ざかっていく。
「お前は何がやりたいんだぁぁぁ!」
まげ子の叫びに答えるものはない。
 
   恥知らずのコピペでスマソ。>>633さん、すみません。
 次は「鰯」「辞典」「オリンピック」でお願いします。
644パピヨン:03/07/18 06:25
  間違えた・・・17行目のスティック→いか 
 あーあ。やりなれないコピペなんかするから。鬱氏。
――いわし、という漢字はどう書くんだっけ。
 家庭教師先の生徒の教材を予習していて、俺はふと手を止めた。文系の勉強、
特に国語だの英語だのは得意じゃない。こんな漢字も書けないとは情けない
が、仕方なく俺は漢和辞典を引いた。

――鰯。なるほど、魚へんに弱いか。
 何となく今朝見たニュースを思い出した。昨日からスペインで開かれている
水泳大会で、日本人選手が世界新記録を出したのだ。次はオリンピックで
金メダルだ、と騒がれているその選手を見て驚いた。中学の時、水泳部で
一緒だった川崎じゃないか。
 俺も川崎も皆、真っ黒になるまで夏を泳いだ。パンツとゴーグルの後が白く
残るのを、お互いはやしたて笑いあったっけ。テレビの中でインタビューに
答えていた川崎は堂々としていて、俺と比べるとまるで鰯と飛び魚だ。

――でもな、俺たちは小せえ鰯の群れかも知んないけど、それなりに頑張ってくよ。
テレビの向こうの川崎にも、今までいろいろあっただろうな。俺は何だか
清々しかった。明日、家教先の中学生に「やりたいことやっとけよ」とか、くだんない
説教してみるかな――そんなことを考えながら、俺は予習の続きに取り掛かった。

 次は「テレビ」「あんみつ」「三毛猫」でお願いします。
「思いも寄らないことって、案外近くにあるんだね」
 美弥があんみつをつつきながら、不意に言った。
「どうした?」
「致死遺伝子って知ってる?発動すると、個体を殺すって遺伝子。テレビでやっ
てたんだけど、『三毛猫』って条件と、『雄』っていう条件が揃うと、発動するん
だって。だから三毛猫はみんなメスなんだよ」
「そうか。そういやこいつも雌だったな」
 俺は膝に抱えていた猫を抱えあげた。だらしなく伸びたおなかには、おっぱいが
縦に八つ並んでいる。
「思いも寄らないって言えば、そのあんみつ」
 俺は猫を伸ばしたまま、顎で美弥のあんみつを指した。
「その中にはいってる色付き寒天、実は海藻のところてんだって知ってた?」
「うそっ!?」
「思いも寄らなかっただろ」
 俺が笑うと、伸びた猫が賛同するように、にぃと鳴いた。

 次のお題は「幼稚園」「コンセント」「単行本」で。
647名無し物書き@推敲中?:03/07/18 18:23
たまには空気の入れ換えを
648名無し物書き@推敲中?:03/07/18 18:24
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更年期障害、ストレス、慢性疲労、癌予防、免疫力の低下
そんな貴方に朗報です。ここではヤマブシ茸、アガリスク、粉末緑茶などの
健康食品を取り扱っております。
忙しく働いている貴方

たまには自分の体を労わってね・・・
 園児の協調性を重んじるサイバー幼稚園では園内の秩序を守るため、
園児のうなじにコンセントを埋め込む事を原則としている。
理由は…子供たちのヤンチャが原因である。
入園当初の三歳児は物静かだが、五歳児になると反抗期が始まる。
毎年のように各地で園児たちによる流血抗争が勃発、始業式と終業式には必ず機動隊が出動する。
『子供は自由に育てるべき』との保護者の主張に賛同していた文部科学省だったが、
前年度の全国幼稚園児抗争に置いて死者246名、重軽傷者千人以上、との報告を受け、
今年度、幼稚園法改正を議会に申請し可決させた。
 その内容とは『幼稚園の秩序を守るため、秩序を乱す園児たちは如何なる手段を用いてでも鎮圧せよ』という非情なものであった。
この法律は通称『EKC法(園児強制鎮圧法)』と呼ばれ園児たちに恐れられた。
優しい微笑みの保母たちは姿を消し、代わりに厳つい顔をした男たちが園内を歩き回り、
お漏らし一つで怒声を浴びせられる。
その点、サイバー幼稚園はプラグ一つで園児は思いのままである。
冷酷な大人によって情報の鎖につながれた子供たち…真なる自由を求めて園児たちは立ち上がる。

『エンジックス』単行本六巻、絶賛発売中!!
→お題は「線」「骨」「鏡」
651線・骨・鏡 ◆QkRJTXcpFI :03/07/18 23:36
 「自然界に直線は存在しない。存在するのは人間の脳が抱く意識の中だけなのだ」
早い話、直線というものは人工物だけに現れるということらしい。
 そんなものなんだろうか。

 たとえ人工物であっても、真っ直ぐに見えるものも、拡大鏡で見れば真っ直ぐではない。
どんどん拡大すれば、でこぼこが見えてくるだろう。少なくとも分子レベルまで拡大すれば、
つぶつぶになってるはずだ。

 ここに一枚のレントゲン写真がある。
 頭蓋骨が写り込んでいる。されこうべの輪郭、眼窩の窪み、顎の骨。
確かに複雑かつ特徴のある線が組合わさり、一つの骨になっている。
 ただ、この写真が普通のレントゲンと違うのは、
その絶妙なるアナログの線のハーモーニーをぶち壊すように、突如
横位置の強烈な線が写り込んでいるのだ。

 ビートたけしは鏡をのぞき込みながら神妙な顔をしている。
 バイク事故を起こし、救急車で運ばれ一命を取り留めたモノの
頭蓋骨が砕けてしまい、顔面崩壊を起こしていた。
 ベテランの形成外科医が、つぶれたほお骨に整復を施し膨らんだ元の形を作ってくれて
いる。骨が固まるまで、頭蓋骨を横に串差しする形で、金属の棒が差し込まれているのだった。

 「ようやく直ってさ、骨も固まったってんで金属抜くことになったんだよ。
その時だけどさ、俺は『おでんの気持ち』がよぉ〜くわかったよ。ハハハ」

 最近のビートたけしを見ていると、あの時の顔面崩壊がウソみたいに普通だ。


――以上、所要時間20分。
お題は?
653線・骨・鏡 ◆QkRJTXcpFI :03/07/18 23:55
あ、次のお題出すの忘れてた。

「涙」「花びら(花弁でも可)」「水晶」で。
654うはう ◆8eErA24CiY :03/07/18 23:58
「線」「骨」「鏡」

 乱射事件は、戦時中に前線と呼ばれた場所でおこった。
 「またか」「今度は広場らしいぞ」「うちの息子は無事か!?」
 現地の人間に混じって、五郎という一人の日本人がいた。
 世界を旅するうち、知らず知らず共に暮らしていたらしい。

 「!」彼は目を疑った。
 多くの者に混じり、まだ10歳の少年が、担架で病院に運ばれている。
 外国人である彼を、「友達」と呼んでくれた、ただ一人の少年だった。
 「よーしぃ」熱い血が五郎の体を駆け巡る。「爆発だぁー!」
 背後の部族長は、その言葉をはっきりと聞いていた・・・

 一週間後、五郎は検問所近くのバス停にいた。
 「ゴロー。最後のおさらいだ」部族長は息をひそめる。
 「鏡の前で何度も練習したな。敵にかじりつき、腰のワイヤーを・・・む?」

 あまりといえば、あまりの恐怖に五郎は立てなかった。
 「イヤ、イヤ、自爆なんてイヤ。帰して、お願い、うえぇぇぇ」

 長は彼を抱えて、帰りのバスに乗る。「骨の折れる奴だ」
 彼のズボンは、失禁でびしょ濡れだった。
 五郎の「爆発」も、両国の自爆攻撃には当然及ばぬものだった。

※書くだけで怖いー
次のお題は:「為替」「買わせ」「架空」でお願いします。
655654:03/07/19 00:05
 ・・・あわわ、ごめんなさい。
 次のお題は、653さんの
 「涙」「花びら(花弁でも可)」「水晶」でお願いします m(_ _)m
656線・骨・鏡 ◆QkRJTXcpFI :03/07/19 00:55
>>655
ごめんなさい。だぶってしまいましたね。
ルールとか把握してなかったもので・・・。
ちょくちょく覗くので、これからもよろしくです。
657涙・花びら・水晶
 男が泣くなんて、みっともないんだろうが……涙が止まらないんだ。
きれいだろう? 水晶とサファイアで作らせた花だ。サファイアは妻の誕生石だから。

 ん、妻の誕生日? 9月だよ。4月にお祝いを? ああ、そうだったなあ。
君がまだ小さかった頃だ。ケーキとサイダーのパーティーで、君は狭い家を走り回って
いたね。あれは前の女房だよ……いや、別に謝ることは無い。

 あの頃は貧乏だった。こんなに豪勢な食事も、広い宴会場もなかった。
散りかけのチューリップを飾るのが関の山で、君と女房は花びらを拾い集めていた。
 もし女房が生きていたら、と思うことはあるよ。今の妻は私のことを大事にして
くれる。それでもあの時、君たちが手から飛ばした花びらを思い出すと、
幸せとは何だろう、全ての幸せがどうして手に入らないのだろう、と。
 ……年をとると涙もろくていけないな。水晶の花は年寄りには寂しすぎる。

 次は、654さんの「為替」「買わせ」「架空」でお願いします。