いつも繋がることだけを求めていた、哀れな小猫の首を絞めた時に、
ふと、とある情景が頭を過ぎった。昔見た風景かどうかは判らない。
古ぼけた農村の、名も無い寂れた畦道。目の前には、純和風の古い茶屋があった。
その中には、割烹着を着た店主がいた。
「私はね、時々、キツネになりたいと思うのよ。」
突然彼女は、妄想の中にいる俺に、意味深げな言葉を発した。
「何故?」
「キツネはね、人を化かすでしょ?あなたのようなカッコいい男なら、
きっと経験あると思うけど、恋愛は、化かしあいじゃない。」
「そうですね。おばさん、結構、経験豊富なんすか?」
「私はね、今も純潔を守っているわ。私は猫なのよ。恋に甘え過ぎていて、
愛を育てることを知らなかったの。」
えっ、と言おうと思った時、また、別の景色になった。
偶像は、灼熱の業火の中でもだえ苦しんでいた。私は、客観的に私自身を眺めていた。
目の前には、殺害したばかりの猫がいた。
彼女はクーラーの効いた耐火パネルの中にいて、涼しげな顔で私を見ていた。
あなたが私を殺した理由が判ったわ
「、、、何故?」
あなたはキツネなの。独断的で、賢くて、私を論理的に扱っていたわ
私は猫。盲目に、情熱的に恋をしていたかった。あなたと繋がることで、愛へと昇華したかった。
「だからどうした!早くここから出してくれ!熱い!」
私は今、キツネなのよ。論理的に、あなたを罪に処しているだけ
ふと我に返った時に、私は自らの罪を実感した。
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