この三語で書け! 即興文ものスレ 第十壱層

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 やはり、小説家たる者、娼婦の一人や二人妊娠させるぐらいのことは、
しておかなければなるまい。
 ふと、そう考えるに至り、私は早速、宵の花街に繰り出したのである。
いささか不純な動機ではあるが、ここまで来たら、もう後戻りは許されぬ。
騎虎の勢いで事を成し遂げ、速やかに退散するのが得策であろう。
 さて、第一に為すべきは、獲物の選抜である。辺りを見回すと、あるわ
あるわ、何処も彼処も悪趣味な売春宿の軒並みと、派手な遊女が色目を使い
こちらを見ては、手招きをしている。私は、その遊女の中の一人、色白小柄
の大人しそうな女に目を付けた。妊娠させてやろう、と思った。私は、財布
から万円札を数枚取り出すと、それを女に見せびらかすようにしながら、声を掛けた。
「ククッ……姉さん、これで足りるかい?」
「あら……いいわ。じゃあ、入って」
 簡単なものである。私は門口をくぐり、奥の部屋に通された。それから後の
ことは、ここでは書かないでおく。とにかく、私は手早く済ませたのである。
目的は行為ではない。あくまで、妊娠させることなのである。私は中で出して、
女が何か、私に罵声を浴びせるのを背中に聞きながら、颯爽と戸外に飛び出し、
よし、よし、などと呟いては、通りがかったタクシーに乗り込んで、そのまま
帰宅したのである。
 その後、あの娼婦が妊娠したかどうか、私は知らない。後で友人に聞いた話によると
娼婦は普通、自分で避妊をしているらしく、殆ど妊娠しないようなのである。
しかし、今考えてみると、妊娠させたからといって、それがどうだと言うのであろう。
私は自分のやったことを鑑みては、首を捻り、部屋の明かりを消して、寝た。

次は「城」「帝王」「すごい科学」で。