この三語で書け! 即興文ものスレ 第十壱層

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22小夜 ◆Sayo.Erk/c

「紫水晶」「粗野」「離宮」

屋敷には、閉ざされたままの離宮がございます。
その昔、前の帝に縁の方が非業の死を遂げられたのだそうで
その御方がお隠れになったその日から、何人たりとも立ち入ることを許されないのでございます。
口さがない噂では、前の帝が募る想いのあまり、離宮へ閉じ込めてしまった
紫水晶という名の美しい姫が、夜毎啜り泣いていらっしゃるのだとか……。

ある日、ふとしたことからその噂が近衛大将殿のお耳に入ってしまったのでございます。
彼の方は、自らを剛の者だと公言して憚らない、血の気の逸る粗野な方でございました。
それほど美しい姫ならば、たとえこの身が獲って喰われようとも本望だなどとおっしゃられ、
周りの者が制止するのも聞かず、離宮へ入ってしまったのです。

わたくしどもは近衛大将殿の御身が心配なれど、離宮へ入ることはできず、
ただ遠巻きに中の様子を窺っておりました。
嫌な予感は当たるもので、一時も置かず、御簾の間から
近衛大将殿の骸が耳障りな音を立て、崩れ落ちて出たのでございます。
悲鳴を上げる間もなく目に飛び込んだ近衛大将殿の御顔には、
この上もないほどの恍惚の表情が浮かんでおりました。
そしてその衣の裾には、妖しくも眩い光を放つ、大きな紫水晶が横たわっていたのでございます。


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