「梨」「ロウソク」「杖」
「ていっ!」
「痛っ」
見上げるとお爺ちゃんの杖。
「こぉらっ! 仏様のお供えに手を出すとはけしからん子じゃな」
私の右手にはしっかりと一切れの梨が握られている。
「だってぇ……」涙目になりながら口篭った。
育ち盛りの子は食欲旺盛なんだから。仏壇に置いといたのが悪いんじゃん。
心の内での口答え。これがけっこう心地よい。
「ちょっとお爺ちゃん、いいかしら」
突如現れた母の形相に、お叱りの言葉は途切れた。
「本を読むのに雰囲気を大切にするのはいいけれど、大概にしてくれます?」
母の手にはロウソクの燃え止しが握られている。
「はわわっわ…」伏し目がちの目はしょぼくれていた。
……ん? 窓越しにこちらを見る、飼い犬のジョンが目についた。
ニヤニヤとこちらの様子を窺っている。私のお仕置きは今始まる。
「三割引」「薪」「しかめっ面」