この三語で書け! 即興文ものスレ 第十壱層

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 響く笛の音、太鼓の響き。これは鎮守の祭りの囃子。
 久々に帰省した俺を待っていたのは従兄弟の恵理と、鎮守の祭りだった。
「ね〜、行こ〜よぉ、お祭り〜」
 浴衣の裾をひらめかせ、ぴょんぴょん跳ね回る恵理に、俺は疲れたとも言えず、こうして祭りに繰り出していた。
「へっへ〜。ね、健兄。キレイ?キレイ?」
「あ〜あ〜。綺麗綺麗」
 俺の投げやりな答えにも、恵理は文字通り躍り上がって喜び、藍色地に薄紅の朝顔の裾を風になびかせた。
「お〜い、あんまり暴れると……」
 言った端から、
 どん。ばしゃあ。
 恵理は祭りの人並みに突き飛ばされ、金魚すくいの堀に、頭から落っこちた。

「えうぅ〜」
 鳴き声は止まない。そしてぽたぽた滴る雫の音、ぺったらぺったら響く、足跡がつく音。
「もう泣くな。おんぶしてやっから」
 俺は恵理の前で膝を折り、両腕を後ろ手に開いた。
「……ん」
 のし、と重みがかかる。
「あったかい…ね」
 俺は何も答えず、恵理を背負って帰った。囃子の音が、ずっと俺の背中を追いかけていた。

 次のお題は「スクラムジェット」「人工心臓」「鱧(はも)」で。