この三語で書け! 即興文ものスレ 第十壱層

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 私は仕事で、週に一度は関西に出向く。今日もまた、東海道新幹線に乗り込んだ。
 日本が技術超大国であることを見せ付ける新幹線。そのお陰で関西は近くなったが、
同時にそこにいたる路も短く、狭くなったのはやや寂しい心持がする。
 江戸から大阪なら、やはり新幹線の名の通り、東海道を行くのだろうか。
東海道五十三次など、私は浮世絵をお茶漬けの付録で見た事があるだけだが、
かつては宿場町として賑わっていたのだろう。だが、今ではそれも全て
新幹線の窓の外を音も無く流れるだけとなっている。
 近代的な旅情も無いとは言えぬ車内から目を逸らし、窓の外を向く。そして
窓ガラスと景色との間に、空想を弄んでみる。
 旅人の私は、賑わいある宿場町で宿を取る。旅すがら、旅慣れぬ乙女の世話を焼いて
みたり。下心も無く……。ふと思い当たったのは伊豆の踊り子の世界である。旅は道連れ、
世は情け。いい言葉だ。何度も関西……上方と行き来している私は、道中の船渡しとも
顔見知りだから、あれやこれやと世間話に花が咲く。そうして人の情に触れる。
「あの」話しかけられて、私の空想は景色と一緒に流れて去った。
 話しかけてきたのは、隣の座席に座る見知らぬ女性だった。いや、なんだか見覚えが。
思い出せずにいる私に、女性のほうから言葉を続ける。
「よく、この新幹線で一緒になりますね。お暇なら、少し話し相手になって貰えませんか?」
 ……旅は道連れ、世は情け。やはり、いい言葉である。

 次は「善」「悪」「罪」で。字が入ってれば読みは何でも可ということで。