俺の同僚M。ポルトガルと日本のハーフで、彫りの深い端整な顔立ちをしている。
スポーツマンで体格がよく、よく日に焼けた肌とあいまって女性社員への受けは極上だ。
「エステサロン行って焼いてるんですよー」などとおちゃらけるように言うが、それはこの際問題にならない。
俺に分かるのは、こいつはいい奴だということだ。明るくて気風もいい。2時ごろについつい居眠りをしてしまうのはラテンの血の
なせる業かもしれないが、普段のバリバリ仕事振りから、上司も見て見ぬ振りをしてしまう。
俺は、いや俺たち社員皆が、Mと同じ職場で働いていること、友人であることを嬉しく、誇らしく思っていた。
そんなある日、俺は見てしまった。
出勤してロッカーで着替えている時、Mの背にファスナーがついているのを。
この筋肉と小麦色の肌は、どうやらフェイクだったらしい。
そんなことを明るみに出したところで、Mという人間の価値が下がるとは毛頭思っていない。しかしそれを
指摘してしまうことで、Mとの友情を壊すのではないか。俺はそれが怖かった。
M自身のために指摘してやるべきか、それともまたM自身のために黙っていてやるべきか。
俺は今でも悩んでいる。
次のお題は「脊髄」「灰皿」「箪笥」で。