なっちがメルヘン世界に飛ばされたら

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75なっちの戯曲
気がついたら、
僕は体を縛られ、口に猿ぐつわを噛まされて
体育座り姿勢になっていた。
目を開けてみると、まず目に入ったのは一面の青……
果てしなく続く碧い水面と水平線を隔てて上に広がる蒼い空だった。
首を回してみても陸地は見えない。
背中を腕ごと柱状の丸太に結びつけられていて、
どうしても真後ろが見えないのだが、
どうやら僕は丸太を数本結びつけて作られた
6畳ほどの筏に1人で乗せられているらしかった。
「ここは……海?」
僕は目の前に広がる水面と空の色のあまりにも深く鮮やかな色に
暫く呆然としていた。
その海にしてはあまりにも穏やかな視界に、
次第に体の自由を奪われていることすら
気にならない安らいだ気持ちになってきた。
「そういえば、なっちは?」
彼女がいないことだけでなく、
その心配を暫く忘れていたことにも気づき、
僕は2重に当惑した。
――そういえば、「人丼屋」って書いてあったけど、
人の肉を食わせる店だったのか? 
そんなところに彼女を置いてきてしまった。
彼女が肉にされて食べられてしまう。助けなきゃ。でも、どうやって? 
大体、僕は今どうなっているんだ?――