「お兄様!」
ひょこっと几帳から顔を出した女の子はにっこり笑った。
『これが詮子だよ』
道隆が紹介する。
「昨日はお熱があったんですってね。大丈夫なの?」
枯色のうちき単衣姿で振分髪もすっかり伸びている詮子は少し心配げに由紀の顔を覗き込んだ。
「大丈夫みたいね。明日は出仕なさるんでしょう? わたくし明日は物忌みですの」
「そう。あのさ詮子ちゃんは……」
入内するの……? 思わず聞いてしまいそうになって辛うじて思い止まった。
こんな幼い子供に入内するなどと聞いても解るはずもない。遙か遠い将来のことだ。
何てバカなことを聞こうしたんだろう。
「どうなさいましたの? お兄様? 笛を聞かせてくださるって約束しましたでしょう?」
詮子は無邪気に懐いてくる。
それが由紀には何かとても不愉快だった。
遠い将来道隆の政敵になるかも知れないというだけだ。しかも今の詮子には何の罪もない。
だけど……。
「ごめん悪いけど今日は下がらせてもらうね」
詮子は急に寂しげな表情になった。
「わかりました。お兄様がそうおっしゃるなら。でも近いうちいらして下さいね」
「うん、またいつかね」
逃げるように東の対を走り去った。
『いったいどうしたのさ。嫌な子に見えるかな? 』
「そうじゃないよ。でもあんまり好きじゃない。好きじゃ……」
まぁ好き嫌いはあるだろうけど、と心の中の声は言った。
葵はイライラしながら言った。
「私は苦労してやってる問題集なんだから!」
エロスから問題集と参考書をひったくった。
「なにするんだよぅ」
むっとした様子で上を向いて言ってきた。
葵は自分が情緒不安定になっているんだと決め付けた。
エロスはブツブツ文句をつけてあぐらをかいた足を伸ばして、立ち上がった。
「あーあ!つーまんないよっ」
葵はプライドの高い人間だった。
人より完璧でありたい、テニスも勉強も全て…。
誰かに面白くない人間だと言われるのを許すような心を持ち合わせていなかった。
「さっきから黙っていると思って失礼な事ばっかり。私を甘く見るのは百年早い
わよ!」
エロスは窓に足をかけていたのを止めて怒っている葵を凝視した。
何なのよ…葵は心の中でそういい返した。
エロスはかけていた足をはずしながら笑いだした。
「君って面白いね!僕にそんな事言う子ははじめてだよ」
そう言ってまたケラケラと笑いだした。
「で?君の名前は何なの?」
まだ笑っている。
葵は躊躇した。
こんな変な男、それも羽の生えた天使さん…。
でもコレもきっと夢の一部か疲れているだけだわ。
夢…。躊躇したが、夢なら誰に弱みを見せても構わないだろうと考えた。
プライドが高いといっても人間にはその弱みを曝け出さないと生きていく事が
できなくなってしまう。
葵はその点では弱い人間だった。
本当は誰かに頼り切りたい……。
でもその願望をかなえる事はその高慢を捨てなければ一生、得られない。
それは葵にも解っていた。解りきっていた。だから辛かった。
「葵…」
そう呟いた。
「Λουλούδι mallow(葵の花)……か。なんか可愛い名前だね」
葵は少し笑った。
帰って欲しいというようにため息をついてみたり、腕を組んだりしてみた。
エロスはそんなことも気付かないで考え込んでた。
英単語と後、四字熟語を覚えなきゃ…。
葵は「早く帰って」と言おうと口を開こうとした。
でもそう言う前にエロスは窓辺からふわりと舞い戻ってきた。
「あのね。天上に連れて行ってあげるよ」
葵は首を横に何度も振ったのだがエロスは耳にも入らなかった様だった。
はらはらと雪が降り始めていることにもちっとも気付かなかった。
エロスは右手を斜めに掲げてクイクイっと人差し指を人を呼ぶかのように動かした。
葵は虚ろな様子でそれを見ていた。
真っ白の雲がひゅるひゅるとこちらに向かって降りてきた。
「さぁ、どうぞお嬢さん?」
エロスは茶目っ気たっぷりに笑いながら手を葵に差し出した。
葵は雲にのるのが少し怖くて躊躇したが好奇心もあって、恐る恐る足を雲の上に
のせた。
「怖がらなくても平気だよ!」
あまりに遅いのでエロスは少し怒鳴った。
思い切って雲の上に乗ると心が晴れるような気分になった。
葵が雲の上に乗るとエロスもピョンと飛び乗った。
「気を付けてね。飛ばされないようにして……そう肩にしがみついといて。
落ちたら…?そりゃあ命の保証はないよ。でも僕は死なないから関係無いや」
エロスはそうさらっと言った。
葵はむっとした。
「その言い方はないんじゃない?」
エロスは後ろにしがみついている葵を見た。
葵は目をそらさずにじっと見つめ返した。
「第一なんで私の家に勝手に上がりこんだの?」
葵はなじるようにして言った。
「しょうがないなぁ……。内緒だけどねー……。アポロンにいっちゃだめだよ!」
エロスは頭を掻きながら言った。
「アポロン?アポロ21号の事?あー本当は地球に行ってなかったんだってね」
エロスはまたクスクス笑いながら言った。
「いやおかしいとは思わないよ。最近じゃあキリスト教が主流みたいだし」
葵は幼い様子だったのに対して宗教関係の事を言われて驚いた。
「雲の上じゃなんだしー……あそこにアイアイエ島があるからあそこで話そうか」
エロスは方向転換してその島に向かった。
アイアイエ島は小さくて人も多くないようだ。
二人は木の側に降り立った。
「ここはあんまり来たくなかったんだ。キルケーって知ってる?」
葵は知らないと、答えた。
「オデュッセウスって知ってる?まぁ英雄扱いされてるヤツだよ。トロイア戦争
のあとキルケーといろいろあったんだよ。ポセイドンっていう海の神がいて
怒りをかったんだよオデュッセウスは。まぁそれも大昔の事だよ。彼はもう死んだし
あの戦争も馬鹿げた話だけどー」
エロスは面白そうに話したが葵には面白くなかった。
「論旨がズレてるわよ」
少し怒った様子でそう言った。
「ああ……アポロンがさぁ。僕の事チビって言ったんだよ!そりゃあ僕アポロンに
比べれば凄くも無いし容姿も権力も劣っているよ。でも馬鹿にされるなんて許せない!」
エロスは拳を握り締めながら叫んだ。
アイアイエ島から潮風が吹いている。
夕方のはずなのにカラッとしていて修学旅行の沖縄の時のようだった。
木の幹にもたれるようにしてエロスの話を聞いていた。
「だからアポロンを出し抜こうと思ったのさ!」
エロスは木の根元に置いていた矢入れを取り出した。
「この矢は人をどうしようもないってほど好きにさせる恋の矢だよ。
で、こっちの矢は人を大大大大大嫌いにさせる矢だよ」
晒せ!age
242 :
出会いNO1:03/02/23 09:04
葵はその矢を受け取ってまじまじと見た。
その矢は普通の矢だったが、尾の部分の装飾が少し違っていて好きにさせる矢は
白い色の羽で、嫌いにさせる矢は黒いくすんだ色だった。
「それでその矢をどうしたの?」
葵は口早に言った。
聞こえるのは波が浜辺を打ち付ける音と微かに漂う妖気も漂っていた。
「僕に出来るのはこれしかないもんね」
悪戯っぽく前髪を掻き上げて矢を握る手を強めて言った。
「あんた論旨ズレてるわよ」
葵はイライラしていた。
小さい子というのはこんなふうに大人を焦らす。
言うべき事も言わないし、やるべき事もすぐにしないか、失敗するだけ。
葵はそう思いながら自分も世間一般ではまだまだ子供と称されている事に気付き
なんともいえない気分になった。
こんな自分は嫌いだった。
何かに対してどうしようもない位に客観的で冷めている。
物事に対して解りきったフリをする。
いつからか自分はこうなってしまった。
昔は純真な心を持っていたという気もするがそれも確かではないと感じられ
確信は泡のようにすぐに消えてしまう。
何かに対して自分が何を出来るっていうのだろうか…。
「でね、アポロンにこの好きにさせる矢を撃ったんだ。ダフネっていう子とね。
でも僕はすぐにその子に嫌いにさせる矢を撃ったんだ。アポロンは捕まえたくなって
追いかけるけどダフネは嫌いだもん。まぁ失恋だよね。まぁ昔の事だけどね」
葵はエロスの言う事を遠くで聞いていた。
「ふーん。神様でもそんな風になるんだ。でもダフネって子もかわいそうね」
非難するように言ったのでエロスは慌てて弁論した。
「いやでもさぁ。侮辱されたんだもん!腹立つよ」
外はすっかり暗くなっていた。
波音は微かに聞き取れるくらいになってしまいまわりの景色もおぼろだった。
「あたしもう帰るね。もう親も帰ってるだろうし」
はっと気付いて葵は立ち上がった。
ふいに帰ったら学校のことを言わねばならないことを思い出しひどく拒まれた。
行きたかったな……。豊郷高校……。
周りからは鳥か何かの泣き声がした。
辺りは真っ暗で葵はエロスがいないので慌てた。
こんなところでエロスとはぐれたらどうやって帰ったらいいのだろう。
でもパスポートは使ってないから外国ではないよね、国内だよねと、言い聞かせる
事しかできなかった。
「ほらおいでよ」
エロスの声がした。
良かった!
いるなら側にいてくれないと困るわ。
文句をいうのをこらえて声のする方へ向かった。
それと同時にいい匂いがしてきた。
4「キルケーの魔法」
二人でその匂いのする方へ行くとこじんまりとした建物があった。
神殿のようにも見えるがどこか違った感じだった。
「僕、おなか減ったし食べさしてもらうよ」
そう何とでもないとでもいう風にエロスはドアに手をかけた。
「馬鹿ね!キルケーって魔女なんでしょ?だったら触らぬ神にたたりなし、
っていうもん。帰ろう」
しかしエロスはうるさそうにして手を払って言った。
「うるさいなぁ。帰りたいなら帰ったらいいじゃん。でもお腹すいたから僕は
絶対動かないよ。雲も呼び出さないもん。入りたくないなら入らなくてもいいよ。
でもこの辺危ないと思うよ。獣とかね。こっちの世界ではごくごく普通の事だよ。
そんなに震えなくっても大丈夫だって。てゆうかさ、君たちの世界が狭いだけだよ」
エロスは鬱陶しそうに言った。
「元々は神話の世界と君たちの世界は同じ空間を共有していたんだ。でも時が経つに
つれて人間は色んな物を捨てたんだ。僕達の世界は君たちの世界を厭うようになった
のさ。そうして今ではこんなふうにして全くの別の物になったんだよ」
葵は少したじろいた。
そんなことがあるのだろうか?
「じゃあ、なんで私を連れて来たの?」
「アポロンがまたちびちび言うんだもん」
248 :
名無し物書き@推敲中?:03/03/01 14:36
ageたろー!ww
ageで書くなと詰ったバカが、今度はただのage荒らしか。
そんなんだから駄目って言われんのよ。
たくさんの人に読んでもらえますように。w
唖然として葵は物言えぬ状態になってしまった。
エロスはもういい?と言いた気に首を斜めに少しかしげた。
「じゃ、私に矢うとうとしたのね?」
「うん…あ、でも痛くないんだよ。死なないしね。アポロンはキレイな子しか
恋しないから、まぁ名誉かもね」
そういって面白そうに笑うのですっかり葵は気を悪くした。
なんだか嫌な言い方…。
「ダフネはどうなったの?アポロンに愛されすぎて殺されたの?」
葵はぶっきらぼうに聞いた。
ドアの中からいい匂いがこぼれんばかりに漂う。
「ううん。ダフネは嫌で堪らなかったんだね。お父さんにお願いして月桂樹にした
んだ。あ、知ってる?ダフネは河の神ぺーネイオスの娘なんだよ」
そう言って思い出したように笑いだした。
ほんと、たくさんの人に読んでもらえますように。くすっ。
253 :
名無し物書き@推敲中?:03/03/07 22:23
age
agaっとけ。
255 :
名無し物書き@推敲中?:03/03/10 22:17
age
256 :
名無し物書き@推敲中?:03/03/10 22:32
描写って腹立つよな
小説の醍醐味かしらんけど
一般人にはつまらん筈だよな
本当はプロ狙う人間でも描写不要にしたいよな
それが理想だよな
俺も頑張るから
お前らもちょっと頑張れ
保守してみたり
258 :
名無し物書き@推敲中?:03/04/14 22:08
保守。
(^^)
∧_∧
( ^^ )< ぬるぽ(^^)
261 :
名無し物書き@推敲中?:03/05/11 00:59
保守(´3`)
>1さんもう来ないのかなあ
━―━―━―━―━―━―━―━―━[JR山崎駅(^^)]━―━―━―━―━―━―━―━―━―
∧_∧
ピュ.ー ( ^^ ) <これからも僕を応援して下さいね(^^)。
=〔~∪ ̄ ̄〕
= ◎――◎ 山崎渉
__∧_∧_
|( ^^ )| <寝るぽ(^^)
|\⌒⌒⌒\
\ |⌒⌒⌒~| 山崎渉
~ ̄ ̄ ̄ ̄
__∧_∧_
|( ^^ )| <寝るぽ(^^)
|\⌒⌒⌒\
\ |⌒⌒⌒~| 山崎渉
~ ̄ ̄ ̄ ̄
(^^)
「ねぇ、エロス。キルケーの料理食べたら、動物になるんじゃないの?」
キルケーとその侍女達は二人に気付かず料理を作ったりしている。
島の周りに霧が現れた。
鳥の気味の悪い鳴き声が島中に響き渡っている。
砂浜には座礁した船の残骸があり、その乗組員が動物になったのかと思うと
恐ろしかった。
「帰ろう!そういう好奇心が、ちびって言われる所以なのよ」
エロスは聞こえない振りをしていた。
霧はより深くなりつつあった。
だんだん空模様は暗くなり、やがて雨が降り出した。
「あー。雨よ。帰ろうってば!」
「だめだよ。僕の羽を御覧よ。濡れると上手く飛べない。ましてや重い君を抱いて
飛べないよ」
エロスはびしょびしょに濡れてしまった羽を残念そうな振りをして言った。
「そんなぁ!風邪引くわよ」
「僕一人なら帰れるんだけどなぁ」
その言い方がいかにも本当にしそうなので葵はエロスの服の裾を掴んだ。
「な、な、な、何、言ってんのよ!」
エロスは本格的に降りだした雨を恨めしそうに見た。
海が荒れているのが霧の中でもよく解った。
渦を描くように波が踊りだし、まるで台風でもきたようだ。
「あーあ、随分、荒れてるなポセイドン(海と泉の神)も」
「ポセイドン?」
葵は今晩は帰れないことを悟ると、自棄になって聞いた。
「海と泉の神様さ。まぁ気分屋で短気だよねぇ。アポロンもそうだけどさ。
ゼウス(全知全能の神)の弟。ま、実際は兄だけど」
「兄なの?だってゼウスの方が偉いんでしょ」
「しーっ!そんな事、大きな声で言わないの!」
エロスは思わず大きな声で言ってしまった。
「ポセイドンを怒らせちゃ!巨神族クロノスはゼウスのお父さんだけどさ。
まぁ子供を食べたんだよ。子供に殺されるって言われててね。で、その通り
末の息子、ゼウスが兄や姉を助けたわけさ。だからゼウスが偉いの!」
エロスは必死でそう言った。
そんなこといったって、試験には出ないわそんな問題。
葵は無関心だった…。
エロスが力説している間、キルケーが物音に気付いたのだろうか、
近くへ寄って来ていたのだ。
「エロス!キルケーが…」
キルケーは確かに美人だった。
艶めかしそうな体つきで、こちらを見下ろしていた。
「まぁ、誰かと思ったら!エロスじゃない」
キルケーはふふと、笑って扉の側に立っていた。
270 :
1 ◆RynMFnj/O2 :03/08/07 19:03
えっと、本当に書いてなくて御免なさい。
頑張ります。
とりあえずコレだけは上げさせてもらいます。
271 :
名無し物書き@推敲中?:03/08/07 19:12
272 :
名無し物書き@推敲中?:03/08/07 20:16
>1さんキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!!!!age
>>272 ありがとうございます。
頑張ります。
あと、IP(?)も忘れてしまったので1 ◆RynMFnj/O2 で
使いますのでよろしくお願いします。
「ん…なんかポセイドン怒らせた?」
エロスは潮の香りをかんじていた。
「そうねぇ。神殿の娘をくれって言われたのを断ったからかしらね」
キルケーは気にせずにそう言ってのけた。
「あら、可愛い子ね。彼女なの?」
「違うよぉ!葵だよ。まぁ野暮用でね」
エロスは少し照れながら言った。
まさか、アポロンをからかう為とは、あまりにも稚拙すぎる気がした。
「お入りなさいよ。二人とも。…料理食べる?」
「いいです!私たちは」
葵は焦って、そう叫んだ。
「ま、嫌ね。私、もうそんなことしないわよ」
「だって、私、動物なんかに変身するの嫌だもの!」
「葵ちゃんったら。ふ…ふ…、少なくとも女の子にそんなことしないから
安心なさいよ。エロスも怒らすと恐いから何もしてない料理よ」
そう言うとキルケーは葵を優しく抱いた。
「濡れてるのね。エロスも羽が…」
そう言いながら二人を神殿続きの部屋―ここがキルケーの生活場というわけだが―
に案内された。
こじんまりとした室内だが見晴らしを良くしたり、嗜好を凝らしたもので、
かなり広く見えた。
「外から見たら小さかったのに…中は広いんですね」
エロスとキルケーはくすくす笑い出した。
「ふふ、葵ちゃんったら。もう騙されてるのね。これは一種の魔法よ」
「そう、僕とかは解るんだけど。人間には解らないのさ」
二人の会話は担任に似ていた。
馬鹿にした言い方。
自分を疎外する疎外される感じ。
「さぁ、食事なさい。ご馳走だから」
キルケーは妖しい笑みでそう答えた。
食堂へと連れられた。
丸い机に麻でできたような敷物。
側には見た事の無い植物が生けられていた。
葵はお腹がすいていたが、どうしても食べる気にはなれなかった。
「私、やっぱりいいです。食べません!」
突然、不安になることは、何もこれが初めてなわけではない。
模試の時、ライバルの模試の点数を覗き見した時…将来に対するこの気持ち。
時々、全てを投げ出したくなる…誰もが、そう思っているのではないのだろうか。
「何、言ってるんだよ!おいしーよ」
エロスは苦悩に満ちている人間にそう言うとスープを飲み干した。
「あらあら、エロス。泣いてるわよ」
瞳からこぼれる涙は、何故流れるのだろう。
淡い青春だと、だといって笑える日が来るのなら、耐えることができるのだろうか。
それとも、生命を断ち切るのが一番、良好なことなのだろうか。
一応突っ込んでおく
×嗜好を凝らす
○趣向を凝らす
嗜好は凝らさないよん
(⌒V⌒)
│ ^ ^ │<これからも僕を応援して下さいね(^^)。
⊂| |つ
(_)(_) 山崎パン
279 :
名無し物書き@推敲中?:03/09/12 18:28
キルケーはあらあらと言って木綿のハンカチを渡した。
木綿の様なのだがゴワゴワしているまるで麻のようなハンカチだった。
「エロス。どうするのよ。葵ちゃん、泣いてるわよ」
キルケーはおろおろしながら言ったが、エロスは全く気にせず食べつづけていた。
「動物にされたいのかしら?エロス」
そう言ったとたんにエロスの手はピタっと止まった。
「解ったよ。葵、泣いても改善はしないんだからさ。今は野となれ…ってとこじゃない?」
エロスはイライラしながら早口に言った。
「私、不安だよ。何を最初にすればいいのかわからないよぉ」
「涙ってものはねぇ、葵ちゃん。誰でも流せられるってもんじゃないのよ」
キルケーは頭を掻きながら言った。
波はいつの間にか穏やかになっていて、潮の音も聞こえない。
「涙を流す分だけヒトは成長するのよ。誰よりも強くなりたいという人間の欲望からね」
キルケーは窓を閉めながらそう言った。
冷気が辺りに立ち込めていたのだ。
「つまりさ。僕らは涙は流さないわけさ、欲望のためにはね。
僕らはもう成長する必要なんてないからね」
「どういうこと?」
葵は見下された様でむっとして言った。
「だからぁ。人間が涙を流すのって成長するためじゃないか。僕らはしないって言っただけさ。
僕らは相手のために流すのさ」
280 :
名無し物書き@推敲中?:03/09/12 19:31
「それって責任転嫁じゃない?」
「相手がした事に対しての涙さ」
葵はため息を深くついた。
まるで、夢のようだ。
時分のために涙を流す事は確かに事実かもしれない。
けれど、相手の行為の改善の余地あることに対しての涙をだなんて正直、がっかりだ。
「で、どうするのよ?泊まってくの?雨はもう止んだし。オリンポスへ帰る?」
キルケーは侍女に食器やらを片付けさせながら言った。
「う…ん。帰るよ」
エロスはお腹を抑えながら言った。
「美味しかったよ。葵も食べりゃいいのにな」
「私、家に帰ります!」
「何でさぁ。アポロンに…。んー。もういいかなあ」
エロスはそう言いながらあくびをした。
「眠いから早く帰ろうっと。じゃあね、葵」
「じゃあって!私どうやって帰ったらいいのよ?」
キルケーは首を振った。
「私は何もしないからね。もう寝ないと。体を壊すわ」
281 :
名無し物書き@推敲中?:03/09/23 13:29
キルケーは鏡に顔を写して、頬を触った。
「じゃあ、オリンポスへ……」
エロスは羽を整えながらため息混じりに答えた。
「どうして!私は家に帰りたいのにー」
葵はくたくたになっていた。
家に帰れるのは何時なんだろう。
エロスと葵は手をとって空へと舞い上がった。
下にはキルケーの宮殿が綺麗に見える。
モスクとかの教会とは違うのだが、とても神々しい。
「落ちないで。つかまっててよ」
キルケーは地上で二人を見ながら言った。
「全く、料理を食べてくれりゃ良かったのに。あたしは女に興味はないんだからね」
エロスは急カーヴして飛んでいく。
「きゃあ、落ちる!」
葵が叫んでもエロスには聞こえないようだった。
「やあ、キミはどっから来たの?あっちはキルケーの宮殿だよ」
鳥の親子に語りかけているように見えた。
ただ、何かしら彼らは言語を話せるのだ。
282 :
名無し物書き@推敲中?:03/09/24 21:32
こ の 文 章 を 見 た 人 に は 、 身 の 回 り で 、
3 日 後 に 何 か と て も 悪 い 事 が お き ま す 。
悪 い 事 を 起 き な く さ せ る た め に は
こ れ と 同 じ 文 を 2 日 以 内 に 、
違 う 所 に 5 回 書 き 込 ん で く だ さ い 。
5 回 書 き 込 ま な か っ た 女 子 中 学 生 が 、
書 き 込 み を 見 た 後 、 3 日 後 に 死 に ま し た 。
蒼く澄みわたった空をかう翼は美しかった。
ひらひらと時おり抜ける羽がこそばかった。
「さっ、ついたよ」