ひたすら描写するスレ。

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300菊池 ◆fNqo5vRsCQ
『空き地のペットボトル』
腹の底に鈍痛のような焦りを感じながら自宅のある新興住宅地の空き地に
車を乗り入れたおれは、エンジンをかけたまま携帯を取り出し由宇子のメ
モリを消去した。
喉がカラカラに乾いていた。
会社をクビになり女にも振られカードの残高も溜まる一方だ。
夕闇にシルエットになった安っぽい建て売り住宅を眺めながら、以前なら
明るく光って迎えてくれていたはずの自宅の暗い窓辺に目をやった。
不倫のあげく家族を失いけっきょくその女もおれから去っていった。
抜け殻のようなあの家ももう今のおれには必要のない代物だった。
すべてが安っぽく感じられ、いま運転してきたこの白い国産中古ワンボッ
クスもひっくるめてハリボテのようなこの世界全体がおれをあざ笑ってい
るように感じる。
おまえだ、安っぽいのはおまえだよ。
そもそも世間並みにまっとうに生きられるだけの器じゃなかったんだ。
そう思うとフッと楽になり、ドアを開け外に踏み出したおれの足がバリバ
リと空のペットボトルを踏み潰した。

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次、「水玉模様」なんてどうでしょうか。