十人十色!3語で即興競作スレ

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スィンクという名の小さな小さな妖精が生まれたのは、丁度、木々の葉っぱがほんのり赤や黄色にお化粧をして、やがて落ち葉となって静かに散っていく秋も深い頃でした。
スィンクが生まれて一番最初に目にしたものは、紅い実のなる大きな大きな木です。
大きな木はスィンクに向かって微笑みながら、「元気な坊主になるんだよ」とささやきました。
同じ頃、スィンクの仲間たちもこの世に生を受け、落ち葉の中からぽっかりと顔を出し始めました。
スィンクは仲間たちの中でも一番のやんちゃ坊主で、いつもはしゃぎまわっていました。
遊びつかれて眠くなったときは、落ち葉の布団にもぐりこみます。
落ち葉のお布団はとっても暖かくて、スィンクは仲間たちと一緒に丸まって眠りました。
その年初めての淡い雪がちらちらと舞い始めた日、スィンクは「雪」という魅力的なものに夢中でした。
降っては消え、また降っては消える雪を追いかけるうちに、スィンクは知らないところに迷い込んでしまいました。
そこはとても怖いところでした。
道路には「ニンゲン」という得体の知れない生き物がうじゃうじゃと居り、小さなスィンクはあっという間に踏み潰されてしまいそうで、とても怯えてました。
しばらく恐怖でうずくまっていると、だれかがスィンクの体をひょいと掬い上げました。
スィンクがおずおずと顔をあげると、そこには真っ赤なほっぺたの女の子の顔がありました。
「こんにちは、妖精さん。わたし、ゆかちゃん。もう大丈夫だよ。」
にこりと微笑む女の子の笑顔が、大きな木の笑顔とそっくりだったので、スィンクはほっと息をつきました。
ゆかちゃんはとても優しい女の子だったので、すぐにスィンクとお友達になりました。
やがて楽しい冬はあっという間に過ぎてしまいました。
ぽかぽかと暖かくなって、雪が溶けはじめるとスィンクの仲間たちはお別れを始めます。
そしてとうとう、スィンクの番が廻ってきました。
「ありがとう、大きな木さん、ゆかちゃん。たのしかったよ」
スィンクは微笑みながら、消えていきました。
スィンクが消えた跡には小さな若草色の芽が芽吹いていました。

☆童話を書いたのは、実に高校入試の日以来です。
 (面接までの時間が長かったので、一本仕上がってしまった)