十人十色!3語で即興競作スレ

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29「雪」「道路」「落ち葉」8/10
 椰子とバナナに、うららかな陽の光。そこは常夏の島だった。
 陽炎に揺らぐ道路の向こうから、巡回ショーのトラックがやってくる。
 「いよいよこの島にも<ウインター・ショー>がやって参りました。
  お代はオウム一羽でOK。これを逃すと、一生冬は拝めませんよー!」

 常夏の島。この島で生まれ、この島で死ぬ人生。ショーは連日満員だった。
 ショーといっても、それは情けないものだった。
 落ち葉を敷いただけの「冬ワールド」。
 冷蔵庫に保存しておいた雪に顔をうずめる「冬エクスペリメント」。
 そんなショボいものでも、皆は感涙にむせび、何度もやってくる。
 「今日ね、僕ね、雪を!なめちゃったんだよ。テレビじゃないよ、本物だよ。」
 「本当に葉っぱが赤いなんて!黄色や赤が混ざって…」

 翌日。珍しくショーの団長と団員達は、浜辺で疲れた体を休めていた。 
 ここの島でも好評だった。金は順調にたまってる。
 がんばろう。
 息も凍る地獄。シベリアに置き去りの妻子を、ここに呼び寄せるその日まで。