「星」「ネクタイ」「ハロゲンヒーター」
目覚めた時から、ずっと黒い雪が降り続けている。今日の朝も、昨日の朝も。
セラミックの装甲服で外界を遮断し、さらにハロゲンヒーターで身体は充分に
暖められているはずだ。しかし放射線はそのような遮蔽物をものともせず、君の
神経を狂わせた。今もまた、断続的な悪寒が襲ってきている。
道路には、癌に侵され、なお生命活動を止める事のない人々があふれている。
あの日の前にはネクタイをしめ、サラリーマンとして生活を送っていただろうに。
彼らは今、住居らしい住居を持っていない。放射性物質の雲が切れる度に降り
そそぐ紫外線が、建物を劣化させ人々を外へ追いやったのだ。
落ち葉で焚き火をするくらいしか、彼らに暖をとる手段がない。その落ち葉も
すぐになくなるだろう。樹木が葉をつける事は二度とないのだから。
核ミサイル発射をよく観察するため、君は崩壊しかかった建物を昇った。
灰色の空を突きやぶって、残り少ないミサイルが飛んでいく。
そのうちどれだけが地球と太陽の重力をふりきり、遺伝子情報や歴史を誰かに
伝える事ができるだろうか。
君は祈る。地に平和を。星に未来を。そして、全ての幸福を。
次は「島」「宇宙」「鉛筆」でお願いします。