この三語で書け! 即興文ものスレ 第十層

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604名無し物書き@推敲中?
「ホタル」「母」「トラック」
R県Y村にあるという謎の建造物の噂を聞いたのは、一週間ほど前のことだった。
興味を持った私は、何とか忙しいスケジュールの中都合をつけ、取材を行うことにした。
当日、愛車アコードワゴンに機材とカメラマンの山口君を乗せて出発したのが午前5時。「Y村まであと50km」の標識を確認した頃には、日は暮れかかっていた。
街灯もない道をひたすら進むと、いつしかアスファルトから林道の砂利道に変わっていた。
砂利を踏む不規則な騒音にうんざりしてきたころ、「まだ日本にこんなところがあったのか…」 思わず口に出してしまった。
「失礼ですよ」と山口君に咎められるも、彼も薄ら笑いを浮かべている。
しばらくして、道が二手に分かれているところに辿り着いた。
標識や看板は何処にも無い。路肩に車を停め、暗がりの中手がかりを捜していると、一台の白い軽トラックがやってきた。
「おめえらさ何やってんだ?」
訳を話すと、軽トラックの男は村まで用事があるのでついでだから案内してやろうと言う。助かりますぅ、とわざとらしく返事をしてその後を付いて行った。
10分ほど走ると、林道を抜け田園地帯が広がっていた。辺りで優雅に舞うホタルの揺らめきをカメラマンの山口君がシャッターに納める。
既に集落に入っていたはずだが、夜の農村は穏やかな眠りについていたためか、気づくまで時間がかかった。
やがて、一軒の西洋風の邸宅の前に辿り着くと、軽トラックの男はドアに向かって先生、先生と呼びかけた。
中から現れたのは中年の女性だった。男は小包を手渡し、話を始めた。
しばらくして男は我々を呼び、中にはいるように勧めた。居間のソファに腰掛け、女性に謎の建造物の取材に来た事を説明すると、女性は意外な事を口にした。
つくったのは甥の少年ひとりで、その建造物はこの家の敷地内にあるという。敷地内とは言っても裏の山の頂上付近の広場で、今から行くのは危険なのだとか。
「取材は明日にして今日は泊まっていって下さい。部屋も空いてますし。」
ありがとうございます、とお礼を言うと、彼女は階段の上の方からこちらを覗く顔に気づいた。