この三語で書け! 即興文ものスレ 第十層

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「幹事」 「政治家」 「ドッグフード」 

とにかく頭が痛かった。記憶も定かではない。
二日酔いでふらふらする頭を支えながら、私はゆっくりとベッドから起き上がった。
今朝、私は見知らぬ部屋で目が覚めた。
昨夜のことも……覚えていない。
唯一わかるのは、隣で寝ている男のことだけ。
男は起きている時には決して見せないような安らかな顔で、小さな寝息を立てている。
私はくちゃくちゃになったシャツのボタンをゆっくり留めながら、必死に昨日のことを思い出そうとした。
そう、昨日は高校の同窓会だった。
愛犬にドッグフードやっていた時に届いた幹事である元クラス委員長からの葉書に、初めて出席に丸をつけ返信したのだ。
そして、旧友たちと酒を飲み交わし、近況報告をし、二次会でもう一軒店に入って……、その後のことはどうしても思い出せない。
なぜ、この男と一緒にこんなホテルにいるのかも。
泣き出しそうになるのを必死で堪えつつ、私は満足そうに寝入っている男を睨む。
高校の頃、大嫌いだった男。政治家の息子でいつも偉そうな奴だった。
そして、女には不自由しないと言ううわさが囁かれていた高校時代の私の彼氏……。
十年間、私はこの男のことを忘れることができなかった。
結婚して、かわいい息子ができても、昨日、会場でこの男を目にした時、どうしようもなく胸が騒いだ。
なぜ、忘れることができなかったんだろう。
なぜ、あの時のように一緒に寝てしまったのだろう。
今更後悔しても取り返しがつかない。
「武明、昨日はちゃんと眠れたかしら……」
あの男と同じ名の息子を心配しながら、気持ちよさそうに眠っている男を一人残し、私は静かにホテルを出た。

☆長ーい(泣)
 次は「チョコレート」「スキー」「カーネーション」でお願いします。
「チョコレート」「スキー」「カーネーション」

家に帰るとテーブルの上にカーネーションが置いてあった。
「ママへ」
と書かれたカードに紅いリボンがかけられている。
それを見た私は溢れる涙を抑えることができなかった。
そう、あの時も紅いリボンだった。
初めてみんなとスキーに行ったあの日。
思い切って武明にバレンタインチョコを渡したのだった。
紅いリボンをかけたチョコレート。
するとその夜、私は武明の部屋に呼ばれて・・・・・・
私はあの時の武明の冷笑を、決して忘れることはないだろう。

「ママ、おはよう」
気が付くとパジャマ姿の息子が立っていた。
「おはよう武明。よく寝られた?」
私はそっと涙を拭い、朝食の支度を始めた。


次は「ペンキ」「唐辛子」「ミニディスク」