この三語で書け! 即興文ものスレ 第十層

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547名無し物書き@推敲中?
「電話ボックス」「ベンチ」「洗剤」

 夕日が傾くころ、俺はいつもこの場所にくる。
 繁華街の外れにあるビジネスホテル街、といえば聞こえはよいが、有体に言えば高級ラブホテル街。
 その周辺の電話ボックス全てにピンクチラシを貼るのが、俺の仕事だ。しかし、今日は勝手が違った。
 そう、4つ目の電話ボックスで仕事をしていた時だろうか、目つきの悪い背広姿の男が、まっすぐに
こちらを見ながら歩いてくる。このあたりのシマでの話はついているはず。ということは、警察だ。
 俺は咄嗟にそう判断し、チラシを放り捨てて逃げ出した。ところが、逃げた方向にも同じように目つ
きの悪いダークスーツの男たちが、しかも2人もいる。
 あとはもう夢中だった。路地に入って2人組の男を間一髪で避け、ゴミの入っているバケツやら立て
かけられている看板やらを倒しながら、服の汚れも気にせず、警官の警告と罵倒を背に息が切れるまで
走りつづけた。
 あとはどう逃げたか覚えていない。気が付くと、川岸の公園のベンチに座っていた。
 酸素が足りない頭で周囲を見渡すと、そこいらには青いシートの塊と焚き火のオレンジ。目の前はホ
ームレスのテント村になっていた。よれた服を着た生気の無い表情の男たちが焚き火を囲んでいる。
 単に洗濯の頻度が少ないのか、服を洗濯するにも体を洗うにも洗剤を使わないためか、彼らが前の道
を通るたびに鼻を突くような異臭がする。
 そして、向こうの川辺には先ほどまでいたビジネスホテル街。そこで悦楽に耽る者たちは対岸の風景
をどう見ているのだろう。
 結局、俺は生きていくために何でもやるしかない。結局どちらの側の人間にもなれないのだから。
 タバコで一服し、気分を落ち着かせると、俺はまた繁華街へ向かった。 

 少しオーバーした。スマソ。次は「煙」「望郷」「霞」で