最近本校は、盗難事件に悩まされている。最初のうちは便所のトイレットペーパーが異常に減りやすいというだけだったのだが、
用務員室から来客用のティーカップとソーサー、ティースプーンが根こそぎ消え失せ、女生徒の体操服が消え失せるという事態に及んだため、
本職員会議はこれを犯罪と断定し、警戒態勢に入ることとなった。
私はこのくだらない決定を導き出すだけの会議に費やした時間を考え、暗澹とした気分になった。
警戒態勢?馬鹿馬鹿しい!やるだけ無駄だ。
私の考えでは内部の犯行、しかもマスターキーにアクセス出来る人間−すなわち教職員−が犯人であると睨んでいた。
どの件を見ても証拠が一切ない。鍵をこじ開けようとした形跡すらない。これは正規の方法で鍵を開けられる人間がやったとしか思えまい。
七時半から三十分もかけて警戒強化を謳ったところで、絶対に見つからない間隙を犯人に教えてやる以外に効能なんかない。
会議の間、私は一言も発言しなかった。お偉いセンセイ方は教職二年生の若造に意見具申されるのがお好きでないことは、骨身に沁みて分かっていた。
私は出席簿を持ち、職員室を出た。少なくとも生徒に被害が出ないようにする、その方策だけを頭の中で練りながら。
次のお題は「夜行バス」「屋台」「自転車」で。