542 :
「造船所」「タオルケット」「丑三つ時」:
丑三つ時。
とりあえず藁人形の素材がなかったので、
夏に捨てようと思っていたタオルケットで代用することにする。
うん。OK。ちょっとカラフルだけど、形としてはこんなもの。
「えーとつぎは場所、場所ねえ……神社……近くにあったっけ?」
ふと、思いついた。
あたしが今、事務員をしている造船所。そこには船神さまのほこらがある。
あたしは出来たばっかりのタオルケット人形と五寸釘を持ってミニに乗った。
誰もいない造船所はなんだか廃工場のようで、どこか物哀しい。
と、あたしの背程もあるハンマーが立てかけられているのを見つけて、あたしは嬉しくなった。
これよこれ。あたしは持っていた100円ショップで買ったトンカチを投げ捨てた。
「うん!」
さすがに重い。本当は船神さまを祭ってある場所まで行く予定だったけれど、予定変更。もうここでいいや。
あたしはタオルケット人形を地面に置いて、釘をぶっ刺し、そしてハンマーを持ち上げた。
「この浮気もの!」
がん! と盛大な音がして、5寸釘はくにゃっと曲がった。
「浮気もの! 浮気もの!」
がん! がん! と音がする度、釘はぺしゃんこになっていく。
あたしは疲れてハンマーを置いた。
「はあ……はあ……うわ。ぐにゃぐにゃ」
釘は押し潰されてねじれたまま平べったくなっていた。
明日も朝早い。あたしは気が済んだので帰ることにした。
と、なんだか胸の少し潰れたタオルケット人形は淋しそうにあたしを見ていた。
「……置いてきぼりは可哀想だよね」
あたしはその子を連れて帰ることにした。
次は「テッシュ」「鍵」「割箸」で