429 :
機甲自転車wallet20:
箱を開けると魚肉ソーセージの小箱が出てきた。
高級な緩衝材に浮かぶ安っぽいパッケージには子供向けのキャラクター
が描かれている。
これだ、子供頃スーパーに行くたびに買ってもらっていた物だよ。間違いない。
私の目当ては同封されていた環境戦隊エコレンジャーのカンバッジだった。
毎日学校に付けていって、渾名はバッジだったっけ。
エコレンジャーごっこもよくやったもんだ。
あれは・・・飽きる事無く歌った、あのテーマ曲はどんなだったっけ。
♪僕らの・・・地球を守る為〜・・・・・・・わるーい奴等をやっつけろ〜
環境戦隊エコレンジャー
懐かしいなぁ、今年が2060年だから今から50年・・・55年前になるのかぁ。
パッケージを開封して、赤いビニールで密封された小さめのソーセージと
もっと小さいカンバッチを取り出した。大きくなってから見たのは始めてなのでことさら小さく見える。まあソーセージに大きくしてもらったようなものだが。そしてカンバッジを手に取る。赤レンジャーが勇姿を誇示している、私は青レンジャー役が多かったな。
私は古き友と再開し追懐の念に胸を噛まれていた。
カンバッチを机に戻すと少し涙ぐみながらソーセージを開封して口に運んだ。
とても懐かしい味だ。このころ魚肉ソーセージは安くて庶民の味方のような
存在だったのだ。パッケージの材料表示には表示にははっきりとスケトウダ
ラやホッケの名がある。
この頃魚が牛肉より高くなるなんて言われても信じなかっただろう。魚を餌
にする歯鯨がここまで増えるとも思わなかった。まあ実際は当時から増えて
いたのだが例の環境保護団体は絶滅機具種だと言い張っていたし、譲る気も無かった。
だから当時鯨肉は庶民が口にできない高級品。何せ鯨を食べる事は殺人行為に等しいと主張する連中が捕鯨を妨害していたのだから。
430 :
機甲自転車wallet20:03/01/09 19:07
>「魚肉ソーセージ」「ヒーロー」「カンバッジ」の続き
実は私もエコレンジャーの影響を受けて捕鯨反対派を気取っていたりしていた。
僕らのヒーローが呼びかける正義に共鳴したんだ。それは純粋で疑問すら抱か
なかった、エコレンジャーソーセージが無くなった時までは。ソーセージを製造
販売していた水産会社は鯨肉加工も手がけていた。そのためエコレンジャーの
スポンサーの環境保護団体から圧力がかかりこの商品は販売中止に追い込まる。
日本の世論は水産会社を擁護したが欧米はそうは思わなかった。私はTVや新聞で
取り上げられるのをみて正義という物が一様でない事を知ったのだ。僕らの正義、
彼らの正義、正義は人間の数だけあるんだなって。
近年危機的水準にたっした漁獲資源保護の為、歯クジラ類の捕鯨規制が大幅に
緩和され再び鯨肉が出回り始めた。あまり私は食べないが自然な事だと思う。
保護団体は資源問題を超越した精神的文化的な問題として相変わらず譲らない姿勢
をしている。これもある意味自然な姿なのかもしれない。
ある種の魚は絶滅され危ぶまれ、魚肉ソーセージをあの頃と同じ材料で作れば鯨肉
ソーセージの十倍という高級品になってしまう。
我が古き友にはあえて彼を復刻した水産会社からの強烈な皮肉が込められている。
次のお題は「テロ」「親友」「家」もしくは継続で