1999。七月。私は家族で海に出かけていた。その日は地平線から入道雲が覗く外には、
青空が広がっていたが田舎ということもあってか私たち親子だけだった。青空を横切る
飛行機が細く筋を残しているのが、手に掴めそうな程深い白色をしていた。息子は浮き輪
を回して浅瀬で波に揺られて、時々しょっぱそうな顔をして笑っている。私はパラソルの下、
そんな景色を眺めていた。
椅子にもたれていると、パラソルの端から伸びている飛行機雲の初めの方がぼんやりして
見えてきた。息子はふやけ疲れたのか、波の途切れる数歩手前で砂の山を作っていた。
唯のんびりした時間が流れていた。その時、息子の作っていた砂山の上にざくりと何かが落ちてきた。
「お父さん。猫が降ってきた」
息子の声が聞こえたので起きあがって行くと、柔らかい砂山に埋もれる子猫がいた。
「なんだ空から降ってきたのか」
抱きかかえてみるとまだ目の開かない、親の元から離れてそんなに経っていないであろう
子猫だった。
「かわいそうに」
と見上げたが在るのはさっきの飛行機雲のみ。
「この猫が大王だね」
息子の結論はこうだった。
お題継続