この三語で書け! 即興文ものスレ 第十層

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私はプラットフォームにある待合室で煙草をふかしていた。
冬空のしかつめらしい陰鬱な表情と、この国特有の寒さによって
自然と列車を待つ者はその場所に集まってきていた。
そこにいるある者は私のように煙草をふかし、ある者は本を読みふけり
ある者は目を瞑って考え事をしたり、あるものは冷たくなった手のひらを
息で暖め、ある者は時間を持て余して靴で地面をこつこつとならしたりして、
めいめいが列車がくるのを待っていた。寒さのせいか、
だれも口をきこうとはしなかった。そこは沈黙が支配していた。
ただ靴の音が響き渡っていただけだ。小銃の音ならなお良いだろう。
列車は2分遅れて5時15分に到着した。そこにいた人々は、それぞれ待合室を出て、
列車に向った。私は一人残った待合室で、短くなった煙草と、
その煙を相手にした。しばらくして、列車の発車音がした。
私は脱いでいた帽子をかぶり、吸殻を灰皿に捨て、待合室を後にした。

次のお題は「科学」「相克」「約束」でおながいします。