この三語で書け! 即興文ものスレ 第十層

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286うり
「瞬殺」「牛切り」「髪」
「そう言えば張さんの噂知ってる?」小学五年生の妹が言った。
僕は妹と同じ小学校に通っていたけど、噂を全く知らなかった。
「中華料理屋の張さんが、間違って牛切り包丁で自分の腕を切り落として出血多量で死んじゃったんだって。
でね、自分の腕を探して張さんの亡霊が現れるんだって。出会った人は牛切り包丁で腕を切り落とされて瞬殺されちゃうんだって。
逃げても髪を振り乱して追い駆けて来るんだって。雨の日に出るらしいよ。」妹は眉間に皺を寄せた。
「牛切り包丁ってどんな包丁だろうね」妹は真剣な顔で尋ねた。僕も知らなかった。
「けんくん、ちょっといいかしら」僕は母親から買い物を頼まれて近所の肉屋に出掛けた。今にも降り出しそうな空だった。張さんの噂を思い出して背筋が寒くなった。
いつものおじさんでは無かった。おじさんがメンチカツとコロッケを揚げている時、ぽつぽつと雨が降り出した。僕は店を出ると一目散に駆け出した。
「おーい、ボウズ、忘れ物だぞ」おじさんが追い掛けて来た。僕は立ち止まった。
「オレの為に腕を置いていくのを忘れただろ?」おじさんはニヤッと笑った。振り上げられた包丁を見て僕は妹の誤解を恨んだ。
『ばかやろー、中華料理屋じゃなくて肉屋じゃん……』こんな場面なのに僕は妙に冷静だった。

次のお題は「竜宮城」「ダンプカー」「特売日」でお願い致します。