この三語で書け! 即興文ものスレ 第十層

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281「リンゴ」「ジャージ」「太陽」
 上下ジャージを着たお婆さんというものを見たのは生まれてこの方初めて
だし、またリンゴに話しかけるお婆さんというものを見たのも生まれてこの方
初めてだった。好奇心も手伝ってか、僕はお婆さんに話しかける。
「お婆さん、リンゴは今日の天気の事なんかに興味ありませんよ」
「おやおや、太陽が出ているとリンゴだって喜ぶんじゃないかえ」
お婆さんの、いかにも戦前の人の台詞らしい答えに一瞬言葉を詰まらせた
僕だが、すぐに反撃の言葉を吐く。この婆さんボケちゃいないみたいだ。
「でもお婆さん、リンゴは返事をしないんだから、聞いてみたって無駄ですよ」
「ああ、寂しくてねえ。ついついこんな事をしてしまうんだよ。悪い人だねあたしは」
 寂しい、か。やはり人間、この年になれば誰しも孤独になってしまうものなのか。
「別に悪いことでは無いですけど……返事もしないリンゴに話しかけたって、
余計に寂しくなるだけでしょう?」
 僕がそういうとお婆さんの顔が突然笑いに崩れた。何だ? と訝しがる僕に
お婆さんは言う。
「いやね、こうしてリンゴに話しかけていると、あなたみたいな人が必ずやって来て、
話し相手になってくれるのよ。でも、これを言うとみんな怒って帰っちゃうんだけどね……」

 何が孤独だよ。僕よりよっぽど人生を楽しんでいるんじゃないか? そう考えて、
僕はため息をついた。

次のお題は
「挨拶」「呪縛」「親友」で。